猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜

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お礼

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 そんな二人を速やかにかわした猫宮さんは、ふとなにか訴えるように私に視線を送ってきた。
 パッチリとした大きな瞳に、ほのかに浮かぶ子供じみた色。

「ねえ、ちづちゃんの料理はないの?」

 少し拗ねたように眉を垂らし唇を尖らせる。
 猫宮さんに催促された私は膝を折ると、ワゴンの下部に残った一皿を拾い上げた。
 みんなの勢いに押され、すっかり出遅れていた。そもそも私のは最後でいいと思っていた。十二支たちに比べれば、付き合いが浅いのは仕方がないから。
 だけど、猫宮さんが望んでくれるなら、迷う必要なんてない。
 心地よい緊張感に包まれながら、猫宮さんのそばまで歩き、そっと料理を披露する。
 長方形の和皿に一列に並んだ俵型の白米。その上にはいろんな色をした魚が載っている。
 それが視界に入るや否や、猫宮さんの瞳は爛々と輝き出した。

「猫宮さん、魚がお好きなようなので……」

 他の料理に比べれば派手さに欠けるとは思いつつも、私はお寿司に決めた。
 魚を捌き、酢飯を作り、丁寧に一つ一つ、心を込めてしっかり握った。

「ね、猫宮さんのお世話をしてくれた、お寿司屋さんのように、うまくはないと思いますが、よかったら――」

 食べてください。
 と言う前に、ツヤツヤ光る赤身が形のいい口元へ運ばれていった。
 初めて見る彼の食いっぷりは、可愛い顔に似合わず豪快だった。
 瞼を閉じて味わうように、けれど上品に咀嚼し、ゴクリと喉を鳴らす。
 次に改めて私を見た猫宮さんは、花が咲くように微笑んだ。

「美味しい……すっっごく美味しいよ、ちづちゃん!」
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