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働かされる。

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「それでしたらこちらの、紫芋のモンブランはいかがでしょうか? 胡麻の風味で香ばしさもあり、無塩バターを使用しているので、ご年配の方にもお勧めです。そしてこちらの秋のお散歩クマちゃんは、まろやかな柿と二種類の栗が使われていて、ほっぺのお花には豆乳が含まれています。素材の味を活かすために、砂糖は極力控えた、パティシエのこだわりが感じられる仕上がりになっています」

 そこまで言い終えたくるみは、ようやく周りの注目を浴びていることに気がついた。
 目の前の親子はもちろん、列に並んだ他の客や、横にいる洋子まで、呆気に取られた様子でくるみを見ている。
 商品の素晴らしさを伝えようとしただけなのに、説明が細かすぎて、ちゃっかりパティシエを売り込むセールストークのようになってしまった。
 ――しまった、やりすぎた。
 明らかに浮いていると自覚したくるみは、どうしようかと焦り始めるが、客の反応は意外なものだった。

「そういえばジージはあまり甘いのが好きじゃないって言ってたかしら、バーバと私はお芋が好きだから、このお芋のにしようかしら」
「あーちゃん、これー!」

 母親に続いて、女の子がクマのケーキを指差した。
 ショーケースに鎮座するクマは、どれか誇らしげに輝いて見える。

「クマさん、かわゆ!」

 鼻息を荒くしてアピールする女児が愛らしく、くるみは顔の筋肉をふにゃふにゃにして笑った。

「うん、かわゆ~だね」

 結局二人はくるみが勧めたケーキを、五つずつ買って帰った。
 なんとか滞りが解消し、くるみが一安心したのも束の間。「ゴホン」という小さな咳払いに気づくと、振り向いた先には甘路がいた。
 どんどん減ってゆくショーケースの中身を補うため、出来上がったケーキを運んできたタイミングで、くるみの台詞をバッチリ聞いてしまったのだ。

「……少し、一人に時間をかけすぎじゃないか」

 まずい、怒らせたかもしれないと思ったくるみは、とにかく謝らなければと再び焦り出した。
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