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落とされる。
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「甘路さん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
キョトンとするくるみに、甘路は誤魔化すように返事をした。
今までそんなことを思ったことがなかったので、自分自身に驚いていたのだ。
――おいおい、それはないだろ。
密かに自分にツッコミながら、チーズケーキを食べる甘路。
くるみも引き続きケーキを口にすると、ある質問をする。
「このジャムってなんでしょう? 甘路さんならわかりますか?」
甘路はドキリとして、フォークを握りしめる。
くるみはチーズケーキの表面、黒い部分に塗られたツヤツヤに光ったジャムのことを言っているのだ。
同じ品を食べていて、ケーキに使われる材料を、甘路がわからないのはおかしい。
しかし、いくら答えてやりたくても、どうしようもない。適当に言ってもし間違えれば、いつかすぐにバレるだろう。なによりも、甘路はくるみに、その場しのぎの嘘をつきたくなかった。
黙り込んだ甘路を、くるみはよく見ていた。そしてサポートのような発言をする。
「甘酸っぱくて桃のような梅のような、優しい味がするんですが」
「……それなら、アプリコットジャムだろうな、杏の酸味を飛ばして甘く煮たものだ」
くるみの言葉をヒントに、甘路は正解を引き当てた。
なんとか乗り切れたと一安心していた甘路だったが、くるみにはもうほとんどわかっていた。
初めてのランチ、くるみの手料理を食べた時、そして今の反応……なによりも、甘路がくるみをスカウトした本当の理由が、すべてそれに繋がっていると。
――甘路さん……もしかして――……?
くるみはその事実を明らかにしなければならないと思った。自分の勘違いであればいいと願いながら。
「いや、なんでもない」
キョトンとするくるみに、甘路は誤魔化すように返事をした。
今までそんなことを思ったことがなかったので、自分自身に驚いていたのだ。
――おいおい、それはないだろ。
密かに自分にツッコミながら、チーズケーキを食べる甘路。
くるみも引き続きケーキを口にすると、ある質問をする。
「このジャムってなんでしょう? 甘路さんならわかりますか?」
甘路はドキリとして、フォークを握りしめる。
くるみはチーズケーキの表面、黒い部分に塗られたツヤツヤに光ったジャムのことを言っているのだ。
同じ品を食べていて、ケーキに使われる材料を、甘路がわからないのはおかしい。
しかし、いくら答えてやりたくても、どうしようもない。適当に言ってもし間違えれば、いつかすぐにバレるだろう。なによりも、甘路はくるみに、その場しのぎの嘘をつきたくなかった。
黙り込んだ甘路を、くるみはよく見ていた。そしてサポートのような発言をする。
「甘酸っぱくて桃のような梅のような、優しい味がするんですが」
「……それなら、アプリコットジャムだろうな、杏の酸味を飛ばして甘く煮たものだ」
くるみの言葉をヒントに、甘路は正解を引き当てた。
なんとか乗り切れたと一安心していた甘路だったが、くるみにはもうほとんどわかっていた。
初めてのランチ、くるみの手料理を食べた時、そして今の反応……なによりも、甘路がくるみをスカウトした本当の理由が、すべてそれに繋がっていると。
――甘路さん……もしかして――……?
くるみはその事実を明らかにしなければならないと思った。自分の勘違いであればいいと願いながら。
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