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紹介される。

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「父さん、余計なこと言わないでくれ」
「だって本当のことでしょ」

 不満を言い合ってはいるが、ちっとも深刻にはならない。普段から慣れたやり取りなのだろう、仲のいい親子の雰囲気に、くるみは少し羨ましさを感じた。

「それで今日も月一の訪問に来たわけだけど……ずいぶん家の中が綺麗だし、冷蔵庫には食材も揃ってて、庭の花も手入れされてるし、変だなーと思ったんだ」
「くるみ、庭の手入れまでしてたのか?」
「あ、はい、朝に少し……せっかく綺麗なので、大事にしたいなと」

 見るからに若そうなのに、立派な家事スキルと礼儀正しさ。これだけで路和はすっかりくるみを気に入ってしまった。
 
「そっかそっか、それなら僕はお役御免なはずだ、甘路くん、なにも言ってくれないんだもんなぁ、こんな素敵な彼女がいるなら、早く紹介してくれたらよかったのに」

 うんうんと大きく頷く路和に、くるみは顔のパーツが歪みそうになる。
 彼女――そんな言葉が自分に使われてしまい、くるみは目を泳がせて動揺するしかなかった。

「え、あ、あの、私は」
「三階の部屋が埋まっていたし、同棲してるんでしょ?」
「ああ、そうだ」

 くるみが路和への返事を考える暇もなく、甘路がさらっと答えた。
 驚いたくるみが隣に立つ甘路を見上げると、チラッと動いた瞳がくるみを映してうっすら細まる。
 アイコンタクトというやつだ。言葉はなくても、甘路がなにを言いたいか伝わってきた。
 ――話を合わせてくれ。
 そう訴えていると感じたくるみは、頭を切り替えて甘路に応じることにした。

「は、ハイッ、じちゅはしょうなんでし」

 声が裏返った上、噛んでしまって散々な返事だが、嘘をつき慣れていないので仕方がない。
 しかし、甘路はこんな時でも冷静に、堂々と話を続ける。
 
「くるみはうちの従業員でもあるんだ、接客販売と……企画的なことをお願いしてる」
「へえー! それはよかった、じゃあ将来は甘路くんと一緒にドゥートンを経営してくれるのかな!? うわぁ、めちゃくちゃ楽しみだよ~!」

 どんどん大きくなる話に、くるみはついていけずに白い顔をしている。

「父さん、ハヤトチリするなよ、くるみが困ってるだろ」
「わぁ、ごめんね、くるみちゃん、嬉しくなっちゃってつい」
「……い、いいえ、ワタクシは全然!」
「まだそこまでは決めてない、後は俺たちに任せてくれ」

 まだ――という一言が、くるみの心をノックする。まるでこれから、その続きがあるかのようだ。
 ――いやいや、偽物の彼女なんだから。
 勘違いしてはいけないと、くるみは自分自身に言い聞かせた。
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