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紹介される。

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「ってことはくるみちゃん、甘路くんの部屋も入ったの?」

 路和の次の質問に、くるみは小首を傾げた。どうしてそんなことを聞くのかと。

「おい、父さん、これ以上余計なことは」
「いえ、その部屋はまだ……甘路さんに二階には入るなと言われていて」
「そっかぁ、なるほどねぇ」

 今度はなにを言う気かと、甘路の警戒レベルが上がる。しかし。

「甘路くん、アレ」
「ん?」
「くるみちゃん、行くよ!」

 路和に玄関と逆方向を指差され、甘路はまんまと釣られてそちらを見た。こんな手に引っかかるなんて、甘路もまだまだ甘い、甘路だけに。
 その隙にくるみに号令をかけた路和は、年齢を感じさせない走りで階段を上る。くるみは一瞬驚いたものの、言われた通りに路和を追いかけた。
 リビングの出入り口にポツンと残された甘路は、ようやく事態を理解すると階段を駆け上がる。
 しかし、時すでに遅し。甘路が二階に到着する頃には、路和がドアを開いていた。
 その正面に立っているくるみには、中の様子がハッキリ見て取れた。
 甘路は二階の部屋に入るなと言っていた。くるみはその約束を守り、一度もドアを開けたことはない。
 そんな開かずの扉の向こうを、くるみは今、初めて知った。
 そして、その第一声は――。

「……やっぱり、泥棒が入ったんじゃ……?」
「入ってないよ、これが甘路くんのマイルームだから」

 白っぽい明かりに照らされた部屋は、実際の広さよりも狭く感じる。なぜなら、物がたくさん置いてあるからだ。
 いや、置いてあるというよりも、散乱していると言ったた方が正しい。
 床に積まれた洋菓子関係の本に、くるみが畳んだはずの洗濯物があちこちに落ちている。ベッドの枕や布団はグチャグチャに乱れているし、空き缶やペットボトルもほったらかしで、なぜかチェストの引き出しやクローゼットは半開きになったままだ。
 甘路はこんな部屋を見られるのが嫌で、くるみを寄せつけないようにしていたのだ。
 くるみはてっきり、職人特有の、自分の世界に踏み込まれたくないこだわりがあるのかと思っていたが、そんなことはまったくないのだった。

「……自分でも汚いとは思っているんだが、気づくとこうなっている」

 くるみに知られたと悟った甘路は、頭痛がする思いで白状しながら足を進めた。
 甘路は汚い自覚があるが、洋菓子作りに没頭するあまり、他のことはおざなりだ。
 ちなみに母の甘音は汚い自覚すらなく、リビングが散らかり放題でも「なにが悪いの?」というタイプだった。
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