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紹介される。

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 くるみが向かったのは、甘路と初めてランチに言った場所。ハワイアンな雰囲気の広々としたカフェだ。
 近場でオシャレなランチといえば、真っ先にここが思いついた。
 ネイビーのジーンズに、カーキ色のマウンテンパーカーを羽織ったくるみに、黒のノーカラージャケットにパンツ、キャメルのインナーシャツ姿の蜜流が並んで歩く。
 初めて会った時もそうだったが、蜜流の服装は黒を基調としていて、パリッとした印象が強い。顔や雰囲気は甘い王子様のようだが、シック系が好みなようだ。
 二人が店に着くと、カウンター越しに立ったマスターが振り向く。そして、蜜流の姿に気づくと「ああ」と言って微笑んだ。

「蜜流くん、いらっしゃ――」
「はいはーーい、くるみん、こっちこっちーー」

 蜜流はマスターと目を合わせることなく、くるみの背中を後ろから押してテラス席に進んだ。
 代官山に来ると、蜜流はよくここで食事をする。そのためマスターとは顔見知りだ。
 それがバレたら、この辺りに土地勘がないのが嘘だとわかってしまうため、蜜流は強行突破した。
 そんなことを知らないマスターは首を捻っているが、この際仕方がない。
 蜜流は先にくるみを席に座らせると、自分も座ってメニューを見始めた。
 肌寒い秋空の下、ガーデンパラソルから漏れる光が、明るい髪をキラキラと輝かせる。
 テラス席にいる他の客に、食事を運ぶ店員。その色めきたった視線が、一気に集中するのがわかる。
 以前、誰かさんと来た時と同じだ。
 ――これが、デジャブってやつかな……?
 甘路と一緒にいるようになって、ついでに注目を浴びることに慣れてきた。
 そんなくるみに、蜜流は両手で頬杖をつきながら尋ねる。

「ねーね、くるみん」
「はい」
「ぶっちゃけ、かんちゃんと付き合ってへんよね?」

 突然の爆弾投下に、くるみは口にしていた水を吹きそうになった。
 他の人たちには上手く通せているのに、今日来たばかりの蜜流に見破られるなんて。
 微塵も考えていなかったくるみは、対処法もまるで頭になかった。

「あ……ああああのあのあの」
「D’accord、全然問題なし、誰にも言わへんから安心して」

 冷や汗をかきながら目を回すくるみに、蜜流は歯切れのいい口調で伝えた。
 くるみの反応から、九割の疑いが確信に変わったからだ。
 蜜流の言葉を聞いたくるみは、一瞬驚いたものの、しばらくすると意味を理解して胸を撫で下ろした。
 くるみは嘘をつくのが下手だ。それは蜜流から見ても明白で。そんな彼女になぜ不向きなことをさせるのか疑問だった。

「なんでそんなふりまでしてるんかは……?」

 探るように顔を傾けて見る蜜流に、くるみは持っていたグラスを置いて、膝に手を置いた。

「……すみません、それは絶対に言えないんです」

 申し訳なさそうにしながらも、決して目を逸らさず、ハッキリと答えるくるみ。
 その様子を見た蜜流は、残念な気持ちよりも喜びの方が勝っていた。
 くるみが甘路との約束を守る姿勢に安堵したのだ。

「……やろうねぇ」

 蜜流はそう呟くと、頬を支えていた手をグラスに伸ばした。
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