121 / 189
紹介される。
18
しおりを挟む
くるみが向かったのは、甘路と初めてランチに言った場所。ハワイアンな雰囲気の広々としたカフェだ。
近場でオシャレなランチといえば、真っ先にここが思いついた。
ネイビーのジーンズに、カーキ色のマウンテンパーカーを羽織ったくるみに、黒のノーカラージャケットにパンツ、キャメルのインナーシャツ姿の蜜流が並んで歩く。
初めて会った時もそうだったが、蜜流の服装は黒を基調としていて、パリッとした印象が強い。顔や雰囲気は甘い王子様のようだが、シック系が好みなようだ。
二人が店に着くと、カウンター越しに立ったマスターが振り向く。そして、蜜流の姿に気づくと「ああ」と言って微笑んだ。
「蜜流くん、いらっしゃ――」
「はいはーーい、くるみん、こっちこっちーー」
蜜流はマスターと目を合わせることなく、くるみの背中を後ろから押してテラス席に進んだ。
代官山に来ると、蜜流はよくここで食事をする。そのためマスターとは顔見知りだ。
それがバレたら、この辺りに土地勘がないのが嘘だとわかってしまうため、蜜流は強行突破した。
そんなことを知らないマスターは首を捻っているが、この際仕方がない。
蜜流は先にくるみを席に座らせると、自分も座ってメニューを見始めた。
肌寒い秋空の下、ガーデンパラソルから漏れる光が、明るい髪をキラキラと輝かせる。
テラス席にいる他の客に、食事を運ぶ店員。その色めきたった視線が、一気に集中するのがわかる。
以前、誰かさんと来た時と同じだ。
――これが、デジャブってやつかな……?
甘路と一緒にいるようになって、ついでに注目を浴びることに慣れてきた。
そんなくるみに、蜜流は両手で頬杖をつきながら尋ねる。
「ねーね、くるみん」
「はい」
「ぶっちゃけ、かんちゃんと付き合ってへんよね?」
突然の爆弾投下に、くるみは口にしていた水を吹きそうになった。
他の人たちには上手く通せているのに、今日来たばかりの蜜流に見破られるなんて。
微塵も考えていなかったくるみは、対処法もまるで頭になかった。
「あ……ああああのあのあの」
「D’accord、全然問題なし、誰にも言わへんから安心して」
冷や汗をかきながら目を回すくるみに、蜜流は歯切れのいい口調で伝えた。
くるみの反応から、九割の疑いが確信に変わったからだ。
蜜流の言葉を聞いたくるみは、一瞬驚いたものの、しばらくすると意味を理解して胸を撫で下ろした。
くるみは嘘をつくのが下手だ。それは蜜流から見ても明白で。そんな彼女になぜ不向きなことをさせるのか疑問だった。
「なんでそんなふりまでしてるんかは……?」
探るように顔を傾けて見る蜜流に、くるみは持っていたグラスを置いて、膝に手を置いた。
「……すみません、それは絶対に言えないんです」
申し訳なさそうにしながらも、決して目を逸らさず、ハッキリと答えるくるみ。
その様子を見た蜜流は、残念な気持ちよりも喜びの方が勝っていた。
くるみが甘路との約束を守る姿勢に安堵したのだ。
「……やろうねぇ」
蜜流はそう呟くと、頬を支えていた手をグラスに伸ばした。
近場でオシャレなランチといえば、真っ先にここが思いついた。
ネイビーのジーンズに、カーキ色のマウンテンパーカーを羽織ったくるみに、黒のノーカラージャケットにパンツ、キャメルのインナーシャツ姿の蜜流が並んで歩く。
初めて会った時もそうだったが、蜜流の服装は黒を基調としていて、パリッとした印象が強い。顔や雰囲気は甘い王子様のようだが、シック系が好みなようだ。
二人が店に着くと、カウンター越しに立ったマスターが振り向く。そして、蜜流の姿に気づくと「ああ」と言って微笑んだ。
「蜜流くん、いらっしゃ――」
「はいはーーい、くるみん、こっちこっちーー」
蜜流はマスターと目を合わせることなく、くるみの背中を後ろから押してテラス席に進んだ。
代官山に来ると、蜜流はよくここで食事をする。そのためマスターとは顔見知りだ。
それがバレたら、この辺りに土地勘がないのが嘘だとわかってしまうため、蜜流は強行突破した。
そんなことを知らないマスターは首を捻っているが、この際仕方がない。
蜜流は先にくるみを席に座らせると、自分も座ってメニューを見始めた。
肌寒い秋空の下、ガーデンパラソルから漏れる光が、明るい髪をキラキラと輝かせる。
テラス席にいる他の客に、食事を運ぶ店員。その色めきたった視線が、一気に集中するのがわかる。
以前、誰かさんと来た時と同じだ。
――これが、デジャブってやつかな……?
甘路と一緒にいるようになって、ついでに注目を浴びることに慣れてきた。
そんなくるみに、蜜流は両手で頬杖をつきながら尋ねる。
「ねーね、くるみん」
「はい」
「ぶっちゃけ、かんちゃんと付き合ってへんよね?」
突然の爆弾投下に、くるみは口にしていた水を吹きそうになった。
他の人たちには上手く通せているのに、今日来たばかりの蜜流に見破られるなんて。
微塵も考えていなかったくるみは、対処法もまるで頭になかった。
「あ……ああああのあのあの」
「D’accord、全然問題なし、誰にも言わへんから安心して」
冷や汗をかきながら目を回すくるみに、蜜流は歯切れのいい口調で伝えた。
くるみの反応から、九割の疑いが確信に変わったからだ。
蜜流の言葉を聞いたくるみは、一瞬驚いたものの、しばらくすると意味を理解して胸を撫で下ろした。
くるみは嘘をつくのが下手だ。それは蜜流から見ても明白で。そんな彼女になぜ不向きなことをさせるのか疑問だった。
「なんでそんなふりまでしてるんかは……?」
探るように顔を傾けて見る蜜流に、くるみは持っていたグラスを置いて、膝に手を置いた。
「……すみません、それは絶対に言えないんです」
申し訳なさそうにしながらも、決して目を逸らさず、ハッキリと答えるくるみ。
その様子を見た蜜流は、残念な気持ちよりも喜びの方が勝っていた。
くるみが甘路との約束を守る姿勢に安堵したのだ。
「……やろうねぇ」
蜜流はそう呟くと、頬を支えていた手をグラスに伸ばした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる