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守られる。

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「そうだ、十時……ってことは十一時くらいでいいかな」

 甘路は前もって言った帰宅時間より、一時間ほど遅れることが多い。
 なのでくるみは、風呂の予約時間をそれに合わせて決めている。なるべく沸いてすぐの風呂に入ってほしいという、くるみの気遣いだ。
 くるみは風呂掃除をすると、予約時刻を設定して蓋を閉めた。
 そしてリビングに戻ると、ブーッブーッと大きな振動音が耳につく。
 ソファー前にあるローテーブルに置いた、くるみのスマホが小刻みに動いていた。
 それを見たくるみは、急いでテーブルに向かった。長さからしてメッセージではないとわかる。ついさっきまでやり取りをしていたので、すっかり甘路からの電話だと思い込んでいたのだ。
 しかし、スマホを手にした瞬間、くるみの顔から笑みが消える。
 着信相手が思った人物ではなかったからだ。
 画面に表示された名前をたどったくるみは、急に暗い影に全身を締めつけられた気がした。
 ――なんで……どうして?
 胸の内で自問しても、答えは出ない。
 家を出ていってすぐの頃、やたらと着信があり、甘路に出るなと言われて無視していた。
 そこからパタッとやみ、きっと母と二人で仲良く暮らしているのだろうと思っていたが。
 もしかしたら母が借金でも作ってきたのだろうか、まだ卒業までしばらくあるし、首が回らなくなったのかもしれない。だから助けを求めて――?
 そんなふうにくるみが、仏心を出したのがよくなかった。
 相手はそんなくるみの心情をよくわかっている。そしてそれを利用できることも。

「あ、おねーちゃん、久しぶりー」

 つい通話ボタンを押してしまったくるみは、電話口から聞こえる声にホッとしてしまう。以前と変わらず元気そうな様子だったからだ。

「……う、うん、久しぶり……どう、したの?」

 もしかしたら単純に、気にかけて連絡をくれたのかもしれない。
 そんなくるみの淡い期待は、あんずの次の台詞に吹き飛ばされる。

「お姉ちゃんが働いてるのって、パティスリードゥートンだったんだね?」

 くるみの世界が止まる。
 目の前が白くなって、呼吸をするのも忘れた。
 どうして知っているのか、なぜそんなことを言ってくるのか、くるみは混乱を極めた。

「……な、なんで、それ」
「水臭いなぁ、あたしとお姉ちゃんの仲なのに、隠し事なんて」
「別に、隠してたわけじゃ……」
「ねぇ、どうやって入ったの? いろいろ調べたけど、住み込みで雇ってるなんてどこにも書いてないし」

 当然、その理由を教えるわけにはいかない。
 あんずに言えば、どこまで知れ渡るかわからない。かといって上手い言い訳も思いつかず、くるみは口を結ぶしかなかった。
 しばらく経ってもなにも答えないくるみに、痺れを切らしたあんずがまた口を開く。
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