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愛される。

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 十二月二十四日、街が華やぐクリスマスイブ。
 くるみはもう数日前からこの日を待ちかねていた。
 ロマンチックな聖夜だとか、サンタからのプレゼントだとか、そんなことが狙いではない。
 くるみの胸を高鳴らせる理由はただ一つ。
 愛しい人の帰還だった。
 くるみは今日も仕事だったが、昼過ぎには店を出た。
 ドゥートンのクリスマスケーキはすべて予約完売、商品の受け取りは午前中なので、それが終わると今日は店じまいになる。
 甘路がいる時は、当日用の小さなクリスマスケーキも出したりするが、今年は不在なので予約分だけにしたのだ。
 ちなみにクリスマスケーキは、事前に甘路が作ったものを、他のパティシエたちに見せていた。作り方を教え、何度かくるみに味見もしてもらい、同じ仕上がりになるまで特訓した。また路和の手助けもあり、初めて甘路がいないクリスマスも問題なく乗り切れた。
 早くに帰宅したくるみは、なにかしていないと落ち着かず、グラタンにビーフシチュー、ミートローフにピザ、ローストチキンまで用意してしまった。
 用意といっても出来上がったものを買ってきたのではない、ローストチキンも家で焼き、ピザは生地から作るという熱心ぶり。つまりすべてくるみの手作りだった。
 ずらりと並んだ料理の中央に、ドンと居座る丸鶏の存在感がすごい。

「……ど、どうしよう、楽しみすぎて、張り切っちゃった……」
 
 改めてダイニングテーブルを見たくるみは、ちょっとやりすぎたかもしれないと思った。
 しかし後悔はない。明らかに二人分ではないが、今ならいくらでも食べられそうな気がした。
 そしてようやく約束の時間が来ると、ダウンコートを羽織り家を出る。
 クリスマスカラーのワンピースにタイツとブーツ。こんなにイベントを意識する日が来るなんて、くるみ自身が一番驚いていた。
 電車を乗り継ぎ、羽田空港へ。
 甘路には家で待っていてくれと言われたが、居ても立っても居られないくるみが、空港まで行くと申し出たのだ。
 夜を照らすイルミネーションも、今のくるみの目には入らず、目的地に到着するなり、ターミナルに急いだ。
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