蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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出逢い

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「目を開けてみな、そして俺を見ろ」

 蛇珀の言葉に少女は閉じていた目を恐る恐る開き始める。瞼を持ち上げる感覚、それは生まれつき盲目であった彼女にとっては初めてであったが、それを至極当然のようにこなすことができた。

 まるで蕾んでいた花が一気に咲いたように、彼女の世界が彩りを持つ。
 その円な瞳は黒真珠のような神秘的な煌めきを持ち、蛇珀を見つめた。
 それを見た蛇珀は満足げに笑うと、踏ん反り返るように胸を張った。

「さあ仕切り直しだ、存分に驚け! なんなら俺の神々しさに跪いたっていい」
「神、様……」
「――は?」
 
 話の途中で口を挟まれ、思わず蛇珀は動きを止め少女を見た。
 すると彼女は初めて明かりを灯した瞳に敬服と感激のすべてを込めて、蛇珀を映していたのである。
 少女は興奮してベッドから飛び降りると、蛇珀の両の手を握りしめた。

「あ、あなたが神様なんですね! 初めて見ました、本当にいらっしゃるなんて! 私の目を治してくださるなんて、ああ、なんと感謝を申し上げていいのか……ありがとうございます、ありがとうございます!」

 少女は蛇珀の手を離すと少し距離を取った床にひれ伏し、何度も頭を下げた。
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