蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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「……どうした、いろり? やっぱり洋服は慣れねえから似合わ」
「写真を撮らせていただけますか」
「へ?」
「お写真をお撮りしてもよろしいでしょうかああ!!??」
「お!? お、おお、別にいいけどよ」

 いろりはスカートのポケットから素早くスマートフォンを取り出すと、あらゆる角度から激しく連写した。それはもう、容量が大丈夫か心配になるほどの連写速度と回数であった。

「……あ、ああ、写ってます! 蛇珀様が写真に……!」
「どれどれ。……おお、本当だ、人間くせえ……って今は人間だったな」

 スマートフォンに撮れた画像を確認しながら喜ぶいろりを見ると、蛇珀も嬉しくなる。

「……いろり」
「はい! ――んっ……」

 同じ画面を見ていた蛇珀に名を呼ばれ元気よく振り向くと、不意に口づけされたいろりは驚きで一瞬固まった。
 唇が離れると、蛇珀は少し意地悪そうに八重歯を見せて笑った。

「本物がいるのに画面に夢中だったからついな」

 惚れ惚れする男ぶりにいろりは顔を真っ赤にし、頭から爆発音がした、気がした。
 百恋と違い、蛇珀はいかに自分が魅力的な容姿の持ち主か無自覚である。

「じゃ、蛇珀様が心臓に悪い……」
「なんだ? 病なら治してやれるぞ」
「このままでいいです……」
「しかし髪がうっとうしいな、いっそばっさり切るか」
「え…………?」

 いろりは世界の終わりのような顔つきで蛇珀を見た。
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