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秘密

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 ただでさえ人の少ない学校は、生徒たちが帰宅すればさらに静けさを増す。
 部活をしているメンバーたちが運動場で声をかけ合っているが、校舎内ではすれ違う者は滅多にいない。
 
 穏花は複雑な心境で美汪に指定された場所へ向かっていた。
 あの痛みと恐怖を思えば足取りは重くなる。しかし、美汪に血を吸われたことで確かに花を吐く量が減ったことを思えば、急ぎたくなる気持ちもあった。

 古びた校舎の三階奥、三年生の教室から渡り廊下で隔たれた一角に、視聴覚室はある。
 使用されるのはテレビを用いた授業の際くらいだ。クラブ活動も関係なく、教師も滅多に顔を出さないこの部屋に放課後誰かがいることなどまずない。
 ――だが、今は違う。

 穏花は薄汚れたクリーム色のドアの前に立ち、意を決したようにそれを叩いた。

 少し待っても中から何も反応がないため、穏花は恐る恐る扉を横にスライドさせ、中を覗いた。

 開いてすぐ目に入る教壇側の壁に設置されたホワイトボードに、大きな液晶テレビ。
 そしてその前に、普段は教師が使用するはずのねずみ色の机、丸椅子が置かれており……そこに、彼はいた。

 美汪は穏花に背を向ける形で、一段低い先にずらりと並ぶ生徒たち用の白い机と椅子を眺めていた。

 穏花は教室に一歩足を踏み入れると、勇気を出して美汪に話しかけることにした。
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