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吸血族の城

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「美汪は、暗くても平気なの?」
「むしろ暗い方がよく見える。吸血族は夜行性だからね」
「あ……もしかして、野外の体育を休んでるのって」
「長時間直射日光に晒されると肌が焼けて命に関わる。人工的な照明なら問題ない……あまりいい気分はしないけどね」
「やっぱり、そうなんだね」

 美汪の話に、穏花は吸血族のことを知るきっかけとなった、あの記事を思い出していた。

「あのね、私が棘病について調べてた時に、吸血族について詳しく書いてあったサイトがあって……もう消えちゃったんだけど、そこに載ってたことが、全部当たってる気がする」
「当然だね、それはコーエンが書いたものなんだから」
「え……!?」
「……君はいささか他人のことを気にしすぎじゃないか。不治の病に侵されている自分のことだけ心配しなよ」

 美汪はあきれたように、しかしやや気遣うように声のトーンを落としていた。

 やがて穏花はある場所に仰向けに寝かされた。何か大きく、僅かに冷たく硬い、台のようなところだった。
 穏花から離れた美汪が、古びたマッチで彼女を取り囲むように置かれたキャンドルに火を灯してゆく。
 
 ダヴィンチの絵画、最後の晩餐に描かれた食卓に似た横長の白い寝台。そこにキャンドルの炎により浮かび上がる少女の寝姿は、異様な光景と言えた。

「美汪……何、するの……?」
「君の病の進行具合を見る儀式だ。黙って、両手は胸に、足をしっかり閉じて、目は開いたまま、視線は天井だ」

 穏花は息を呑み、美汪の指示に従った。
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