薔薇の耽血(バラのたんけつ)

碧野葉菜

文字の大きさ
68 / 142
吸血族の城

17

しおりを挟む
「僕は少し休む」
「ええ、どうぞごゆるりと」

 そう言うと美汪は踵を返し、手をひらひら振って部屋を出て行った。

「休むって、美汪は大丈夫なんですか?」
「儀式は集中力が必要ですから、少し疲れられたのでしょう。元より吸血族は明るい場所や時間帯は苦手ですから、人間の生活リズムに合わせている今、帰宅すれば暗闇で英気を養われております。何、心配はご無用ですよ、ぼっちゃまはああ見えて体力がおありですから」

 人間にとって日光浴が必要であるように、吸血族の美汪には暗闇が必要であった。そのため城内は一定の暗さを保っているのである。
 
「さあ、どうぞ。存分にお召し上がりください」
「あ、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて……とっても美味しそうなバームクーヘンにザッハトルテですね」
「よくおわかりで」
「甘いもの、大好きなので」

 ふわふわと微笑む穏花に、コーエンも穏やかな笑顔を返しながら二種の洋菓子を皿に取り分けると、先ほどまで寝台として使われていた食卓に置く。
 そしてポットに入れたフレイバーティーを丸いティーカップへと注いでいく。
 鼻をくすぐる甘酸っぱいアプリコットの香りに、穏花は思わずうっとりとした。

「うーん、いい匂いです」
「穏花お嬢様はフレイバーティーがお好きだと伺いましたので」
「お、お嬢様なんて!? ……あれ、それ誰に聞いたんですか?」
「もちろんぼっちゃまに――おや、どうやら覚えておられないようですね」

 穏花は不思議そうに首を傾げた。

 ――私……美汪に紅茶の話なんてしたかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...