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あふれる想い

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 圭太たちが去って行った後、二人残された穏花と美汪は依然としてその場から動けず、静けさだけが流れていた。
 一向にこちらを見ようとしない美汪に、穏花は意を決して口を開いた。

「あ、あの、美汪……助けてくれて、ありが」

 と、そこで突如美汪が振り返り、穏花は言葉を切った。
 ギョッとするほど鋭い眼光、つり上がった細い眉。確実に怒っている表情で、美汪はずんずんと土を踏みしめ、穏花の目の前にやって来た。


「――――この……バカッ!!」


 意外すぎる第一声に、穏花はびくりと身体を震わせたが、それは恐怖ではなく単なる驚きだった。

「何男に呼び出されて一人でほいほい会いに行ってるの!? お人好しな君のことだからどうせいつもお世話になってるし無下にできないとかくだらないことを考えたんだろうね!? で、あんな目に遭わされておきながらまだ友達だって!? 本当に君は究極のバカだよ!!」

 文字の羅列だけで判断すればまるで穏花を軽視しているようだが、そのすべては美汪の優しさでできていることは明らかだった。
 よほど急いで駆けつけてくれたのだろう、上着すら羽織らず白いシャツ一枚の格好で、我を失い、声を荒げ、必死に怒りを露にする美汪。
 穏花はもう、言葉に惑わされるのをやめた。
 美汪が「言葉ほど無意味なものはない」と言った理由が、わかった気がした。

「大体君はいつもいつも!」
「美汪」
「何!?」
「私…………美汪が、好き」

 ――ひらり。

 初雪が舞い降りたことさえ、二人は気づけなかった。
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