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出会い2
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何時間眠ったんだろ。
赤い空が私の目に飛び込んできた。
すぐに夕方だと悟った。
体が重く起きようと力を入れると激痛が走る。
「いたっ」
自然に漏れた声に彼が反応した。
「大丈夫?」
少し寝ぼけた声。
「大丈夫です。ベッドの起こし方ご存知ですか? 痛くて起きれないんです。」
「分かります。確かこのボタン押して。」
ベッドにぶら下がっていたリモコンを手渡してくれた。
「あーあ」
こんな簡単なのね。
私はベッドを起こした。
恥ずかしさ紛れに、
「寝てばかりいると頭が痛くて」
と、適当なことを喋っていた。
今度は彼が、
「あーあ」
と呟いた。
短い沈黙が続く。なんだか気まずい。だいたいどうしてこの人がまだいるの?
旦那は?
店長は?
加害者は?
頭が割れそうに痛くなった。まだ混乱している。点滴を刺している腕もだんだん痛くなってきて、自分の顔が歪んでいくのが分かった。
彼は看護師さんを呼びに行ってくれた。
看護師さんは私の脈を取り、点滴の様子を見た。
「浅井さん。大丈夫?打撲だけど、しばらくは入院してもらいますねー」
「入院?」
「そうよ。ご家族まだ来られてないの。入院の手続きあるんだけど。」
「主人、単身赴任なので、弟に連絡します。」
彼が気を使って鞄を渡してくれた。鞄も事故のために傷だらけになっていた。そうだ。着ていた服はどうなったの??? たいした服ではないけれど、私の中ではA軍だった。要するにお出かけ用。
「もしもし、浩二。お姉ちゃん。事故にあって入院なの。手続きあるから来てくれない? お父さんには黙ってて」
要件だけ言ってさっさと切った。
浩二は、すぐ行くと言ってくれた。さほどに時間は掛からないだろう。
そうだ。この彼は何故いるの?いつまでいるの?何してるの?
今日は、あらゆるパターンが頭を巡る。
また頭痛・・・
「弟さん、来てくれるまでいます。店長さんに頼まれたので。」
彼は言い訳がましく語った。
「店長が?」
「店閉めたら来るとは言ってました。僕、あなたのこと店でしか知らないから咄嗟に店長さんをお呼びしたんです。」
「あーあ」
今やっと状況把握出来た。また沈黙の後、浩二が慌ただしく病室に入ってきた。
浩二は、私が入院するS県立医大の近くのお嬢様学校で教鞭をとっている。真面目な学校の先生だ。
「ネーサン、どうしたわけ!?」
想定内の反応。ただ、今の私には頭が痛い反応だった。
そして怪訝そうに彼を見た。
「助けて頂いた、あ、あ・・・」
「近藤です。」
「そう、近藤さん。」
「実はですね。」
と近藤さんは、事故の概要を端的に説明してくれた。私も始めて全容が理解できた。
「近藤さん、姉がお世話になりました!」
流石体育の先生、キビキビした態度で深々と頭を下げてくれた。
「入院の手続きしてくるよ。事故についても保険会社と話をするよ。後で何かあってもいけないなら、完治するまで入院してもらうよ。義兄さんには僕から連絡して、帰宅の必要はないと言っておく。それと、あの店長にも連絡しておく。来る必要ないし、しばらく休むって言うより辞めるっていうよ!」
「勝手なこと言わないでよ。辞めるなんて。」
「続ける必要ないだろ。」
「困るわ。勝手なこと。」
「とにかく、体治せよ。」
浩二は、吐き捨てるように言って、いの一番に店長に電話をした。
「ユキちゃんによろしくぅ」
という声だけが漏れ聞こえた。
その後も浩二は、手早くすべての手続きを済ませてくれた。
私は寝ていれば良いそうだ。その様子を近藤さんは、ぼんやり見ていた。
のんびりした人。なんだか可愛い。
それが彼との出会いだった。
赤い空が私の目に飛び込んできた。
すぐに夕方だと悟った。
体が重く起きようと力を入れると激痛が走る。
「いたっ」
自然に漏れた声に彼が反応した。
「大丈夫?」
少し寝ぼけた声。
「大丈夫です。ベッドの起こし方ご存知ですか? 痛くて起きれないんです。」
「分かります。確かこのボタン押して。」
ベッドにぶら下がっていたリモコンを手渡してくれた。
「あーあ」
こんな簡単なのね。
私はベッドを起こした。
恥ずかしさ紛れに、
「寝てばかりいると頭が痛くて」
と、適当なことを喋っていた。
今度は彼が、
「あーあ」
と呟いた。
短い沈黙が続く。なんだか気まずい。だいたいどうしてこの人がまだいるの?
旦那は?
店長は?
加害者は?
頭が割れそうに痛くなった。まだ混乱している。点滴を刺している腕もだんだん痛くなってきて、自分の顔が歪んでいくのが分かった。
彼は看護師さんを呼びに行ってくれた。
看護師さんは私の脈を取り、点滴の様子を見た。
「浅井さん。大丈夫?打撲だけど、しばらくは入院してもらいますねー」
「入院?」
「そうよ。ご家族まだ来られてないの。入院の手続きあるんだけど。」
「主人、単身赴任なので、弟に連絡します。」
彼が気を使って鞄を渡してくれた。鞄も事故のために傷だらけになっていた。そうだ。着ていた服はどうなったの??? たいした服ではないけれど、私の中ではA軍だった。要するにお出かけ用。
「もしもし、浩二。お姉ちゃん。事故にあって入院なの。手続きあるから来てくれない? お父さんには黙ってて」
要件だけ言ってさっさと切った。
浩二は、すぐ行くと言ってくれた。さほどに時間は掛からないだろう。
そうだ。この彼は何故いるの?いつまでいるの?何してるの?
今日は、あらゆるパターンが頭を巡る。
また頭痛・・・
「弟さん、来てくれるまでいます。店長さんに頼まれたので。」
彼は言い訳がましく語った。
「店長が?」
「店閉めたら来るとは言ってました。僕、あなたのこと店でしか知らないから咄嗟に店長さんをお呼びしたんです。」
「あーあ」
今やっと状況把握出来た。また沈黙の後、浩二が慌ただしく病室に入ってきた。
浩二は、私が入院するS県立医大の近くのお嬢様学校で教鞭をとっている。真面目な学校の先生だ。
「ネーサン、どうしたわけ!?」
想定内の反応。ただ、今の私には頭が痛い反応だった。
そして怪訝そうに彼を見た。
「助けて頂いた、あ、あ・・・」
「近藤です。」
「そう、近藤さん。」
「実はですね。」
と近藤さんは、事故の概要を端的に説明してくれた。私も始めて全容が理解できた。
「近藤さん、姉がお世話になりました!」
流石体育の先生、キビキビした態度で深々と頭を下げてくれた。
「入院の手続きしてくるよ。事故についても保険会社と話をするよ。後で何かあってもいけないなら、完治するまで入院してもらうよ。義兄さんには僕から連絡して、帰宅の必要はないと言っておく。それと、あの店長にも連絡しておく。来る必要ないし、しばらく休むって言うより辞めるっていうよ!」
「勝手なこと言わないでよ。辞めるなんて。」
「続ける必要ないだろ。」
「困るわ。勝手なこと。」
「とにかく、体治せよ。」
浩二は、吐き捨てるように言って、いの一番に店長に電話をした。
「ユキちゃんによろしくぅ」
という声だけが漏れ聞こえた。
その後も浩二は、手早くすべての手続きを済ませてくれた。
私は寝ていれば良いそうだ。その様子を近藤さんは、ぼんやり見ていた。
のんびりした人。なんだか可愛い。
それが彼との出会いだった。
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