枯れる前に

みよし

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友達以上愛人未満

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 私と近藤さんは、自己紹介から始まって、いつしか自分たちの身の上を語り始めていた。
 共通の話題もないので、ある意味仕方ないことではあった。
 そのうち、お互い尋問の如くに質問攻めになっていた。聞きたいって言うより会話のキャッチボールが楽しかったって感じ。
 夫以外の彼と食事・・・
 自分の人生でドラマチックな体験のように思えた。
 大学を卒業して父のコネで母校のS学院高校で教鞭を取ったが、3年で退職し結婚した。転勤族の夫について色々な街を転々とし、子供を諦めた10年前に実家の近くに家を買った。彼は通勤が1時間以上かかる支店に配属になったら、残業を理由に支店の近所にマンスリーマンションを借りて一人暮らしを始めた。
 だからほとんど、家には住んでいない。そのうち、各支店で適当な子を見つけ、逢瀬を楽しんでいる。
 適当な子の中には本気になって私のところに乗り込んで来る子もいた。捨てられた腹いせに彼の事調べ上げて、証拠書類の数々をぶつけてきた。
 笑ってしまった。心はすでに冷めていて怒る気も怒らなかったから。
 生活費さえ貰えればいい。3食昼寝付きのこの生活を辞める気にはなれなかった。
 家を購入して、生活拠点が定まったことから私はアルバイトを始めた。子供も諦めたから正規職員も考えたが、就職活動もしたことがなかったので、気持ちの面でハードルが高かった。
 店頭の張り紙などを見て、そのお店に声をかけるような就職活動だった。お弁当屋さんに、ケーキ屋さん、そしてパン屋さん。
 一番長く続いたのは、あの店長、桜井さんのお陰だった。
「そろそろお開きにしましょうか?店長来られませんでしたね。」
「ホント。もう10時半ですね。」
「まだまだ話足りないな。久々に人と話をしたって感じだから。」
「人と話?職場でも話はするでしょ?」
「僕は外から来た人間だから市役所では余所者で腫れ物扱いですよ。会話も上辺だけ」
「そうですか?私で良ければ話相手になりますよ。」
 自分でも驚くくらい大胆な発言してしまった。
「そうだ、うちで、お茶でもというかコーヒーでも如何です?」
 ここまで来たらどうでも良かった。照れ隠しでさらに大胆に声をかけた。意識していないと言わんばかりに。
「いや、それはちょっと」
 そりゃそうだよね。
「ですよねー いくら男性として全く意識していないですけど、この時間ですしね。人目もありますしねー」
 恥ずかしかった。多分顔は真っ赤だ。アルコール一切口にしていない。
「明日も仕事だから、本日は帰ります。今度良かったら店長も誘ってウチで鍋でもしませんか?家族は鍋が嫌いで家では全くしないんですよ。」
「鍋ですか?暑いのに?」
 今は6月半ば。鍋ですかーって感じ。 
「駄目かな?例えばしゃぶしゃぶとか」
「いいお肉買ってきて?」
「そうそう」
「店長に都合聞きますね。」 
「できれば休日前で。」
「店は、日曜休みだから土曜日いいかも。」
「助かります。あの連絡先聞いても良いですか?」
 私達は電話番号交換した。ラインのお友達登録も。
 お店の会計を済ませて外にでた。割り勘を希望したが次回からよろしくと言って彼は帰って行った。
 送ってくれるかな?少し期待してだけど、全然そんな素振りもなかった。
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