幼馴染を寝取られパーティから追放されいい年こいて実家に帰ると童貞のオレに何故か娘がいた!

雨露霜雪

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2章 我が家

オレは母との話し合いを思い出す 3

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「もしかして、今のオレが女性を本気で抱きしめたりしても、もう子どもはできないの?」

「何を言っているの?」

 気を取り戻したオレが、胸中に渦巻く不安を口にしたというのに、母は冷めた口調かつジトッとした目でオレを見てきた。

「だって、母さんが言ったじゃないか、『女性に触れたり、ましてや抱きしめたりしたら子どもができてしまうから、絶対に女性に触れては駄目よ』って」

「あれは、クラージュが子孫繁栄にのめり込まないようにするために、申し訳ないけれど嘘を教えたのよ」

「酷いよ母さん……」

「クラージュ、貴方はもう二十五歳でしょ。本当の子作りの方法くらい、とっくに知っているでしょうに」

「オレ……知らないんだ……」

 女性を抱きしめると子どもが生まれるって、オレは本気で思っていたのに……。
 じゃ、じゃあ、昔フォリーが言っていた『本当に子どもができることもしてるんだけどね』って言うのは、オレを貶めるためではなく、本当のことだったのか?!
 抱きしめたりする以外で、どんな事をするんだ?

 仲間とそういった話になると、常に席を外していたオレは、本当の子作りの方法を知らないまま二十五歳になっている。そのため、想像すらできないのだ。

「あの事件の後、クラージュが夢精してしないことに気付いた時点で、本当のことを教えておくべき……いや、『血の制約』があったから、きっと言えなかったわね」

 母が非常に申し訳なさそうにしている。しかも、尻すぼみで最後は何を言っているのかよく分からなかった。
 とはいえ、オレはそんなシュンとした母を見たくないので、気丈に振る舞うようにした。

「別に、子どもが絶対に必要なわけでもないしね。そもそも、婚約者だったフォリーもいないし、オレに子作りの予定なんてないから問題ないよ」

 どうだろう、極力明るく伝えたつもりだけど、ちゃんと伝わったかな?

「でもね、クラージュにはもう子どもがいるから大丈夫よ」

「そういえば、姉ちゃんの子――キャンディッドだっけか? あの子はオレの娘って扱いなんだよね」

「違うの」

「あれ、何が違うの?」

 あの子はオレの娘だと言っていたのに、何が違うというのだろう、とオレは真剣に悩んでしまう。
 そんなオレに、母は一瞬だけニコッと微笑み、真面目な顔で話を続けた。

「キャンディッドはね、瞳の色こそラフィーネと同じ蒼なのだけれど、髪の色が真っ黒なの」

 母の言葉を聞いて、短時間だけ母の隣に座っていた少女を思い出した。
 確かに、あの子の髪は真っ黒だった……と。

「真っ黒って、すごく珍しくない?」

「そう。――クラージュの黒に近いダークブラウンも珍しいのだけれど、真っ黒はそれ以上に珍しいわ」

 キャンディッドの母であるラフィーネは、シルバーアッシュの髪だが、根本が若干暗く毛先が明るいグラデーションで、全体的に見れば明るい色合いだ。
 そもそも母がローズゴルドだったり、元婚約者のフォリーはレデッシュと言われる赤毛だったり、身近な人を含めて明るい毛色の人が多い。……いや、世界的に見てもそうなのだ。
 オレのようにブラウン系の人も見かけなくもないが、暗い色合いの人は少なく、特にオレのような黒に近い暗い色合いともなると、かなり珍しい部類だ。
 そこへきて真っ黒な髪を持つとなると、オレなど比べ物にならないほど希少と言えよう。

「クラージュはあまり聞きたくないだろうけれど、ラフィーネを襲った人たち・・・に暗い色合いの髪の者はいなかったの」

「確かに聞きたくない話だ」

「……で、でね、私は気付いたの」

「何にさ」

 オレは不機嫌を隠そうともせず、感情を露わにしていた。

「クラージュが不思議な力でラフィーネに血を分け与えたでしょ?」

「多分だけど、そうだね」

「あのとき、生死を彷徨う程に血が少なくなっていたラフィーネに、クラージュの血が大量に注がれ、それこそ貴方の血がキャンディッドに流れているのでは、と私は思ったの」

「そんなことあるの?」

「そんな話、聞いたこともないのだから絶対とは言えないわ。ただ、暗い髪色は天帝の血筋に多いのよ」

 聞いたことがある。過去には、明るい毛色の天帝も僅かだがいたらしいが、それこそ天帝には珍しかったらしく、殆どの天帝は暗い髪色の人物だったと。
 ローズゴールドの母から暗いダークブラウンのオレが生まれたのも、父である現天帝の血の影響だろう。
 ちなみに、現天帝の髪はダークブラウンらしく、オレに比べれば明るいがそれでも暗い色合いとのことだ。

 とはいえ、真っ黒も希少ではあるが、全く存在していないわけではない。オレも旅の途中に一人だけだが関わったことがある。ごくごく平凡な一般人だった。
 それを考えると、天帝に縁が有る無しに拘らず、髪の明暗は様々なのだろう。
 だからこそ、髪色だけで能力を判別することはできないのだ。

「何にしても、キャンディッドは姉ちゃんの実子で、戸籍上はオレの子ってことになってるなら、オレが育てるよ。姉ちゃんがいない現状なら、尚のことオレが育てるしかないでしょ」

 実は、オレが姉に関して心を揺さぶられた情報の一つに、姉が消息不明というのもあった。
 九年ほど前、忽然と姿を消したらしいが、村の誰もが姉の行方を知らないと言う。
 人口の少ない村だ、誰にも姿を見られずに村からいなくなっても不思議ではないが、どうにも腑に落ちない。

 そしてオレは後悔した。
 九年前といえばオレはまだ体も出来上っておらず、一応は冒険者の資格を持っていたが、半人前のFランク。それでも、アロガンのパーティから追い出された時点で、意地を張らず村に戻っていれば、もしかして姉の失踪を防げたかもしれない。
 そう思うと、選択が全て裏目だった自分をぶん殴りたくなる。
 どうしてもっと考えられなかったのか、どうしてハズレばかり引いてしまうのかと、過去の自分を責めずにはいられなかった。

 自分の反省はさておき、今は失踪のことを掘り返して聞く状況ではない。あくまで、『現状、姉はここにいない』という認識で会話をするのみだ。

 それはそうと、オレが子作りの行為・・・・・と勘違いしていた『女性を思いっきり抱きしめる』という行為をしたことがない。それですらハードルが高いというのに、きっとそれを上回るであろう本当の子作り行為・・・・・・・・。当然ながら、オレにその経験は一切ない。
 所謂『童貞』というやつだ。であるにも拘らず、そのオレがいきなり子持ちになるとは……。

「そう言ってもらえて嬉しいわ。私としては、ラフィーネとクラージュの本当の子だと思って育てていたの。だけれど、貴方の血が本物であれば、血の繋がりはない・・・・・・・・けれど、血を分けた・・・・・”本当の親子”に違いないわ」

 オレの気も知らず、母は随分と格好良い言葉を言い放つが、童貞なのに『本当の親子』と言われると、何だか物悲しい気持ちになってしまう。

「そ、そういえば、キャンディッドは?」

 オレが頭の中を整理しているとき、母はキャンディッドの様子を見てきたはず。

「えっ、普通にお昼寝してたわよ」

「おいおい母さん、そろそろ『飯食って寝る』って時間だよ。変な生活習慣にさせちゃダメだろうに」

「あら、もう父親気取り?」

 オホホホと上品に笑う母だが、顔はニタニタしていて何だかゲスい。それに、オレとしては一般論を言っただけだ。変な勘繰りは止めていただきたい。

「とにかく起こしてきてよ。しっかり話しがしてみたいし」

「その前にもう一点」

「まだ何かあるの?」

 オレは旅の疲れはそれほど感じないが、頭を使う生活をしていなかった所為で、精神的に疲労してきている。小難しい話はもうしたくない心境だ。

「キャンディッドについてよ」

「まぁ、話しをする前に少しでも知っておいた方がいいか」

「そうしてちょうだい」

「分かった」

 一応オレの娘・・・・の話しだ。生活していくうちに知ることもあるだろうが、事前情報が有るに越したことはない。

「キャンディッドはね、クラージュと同じ様に成長が遅く、体が小さいの」

「それって、天帝の血の影響?」

「その可能性……いいえ、きっとそうでしょうね」

 どうやら、母の中でオレとキャンディッドは『血を分けた親子』で確定しているようだ。

「天帝の血を受け継ぐ男児の場合、七歳から十歳を迎える前に精通して、二十歳を過ぎたら覚醒する、と言ったわよね」

「そう聞いたね」

「でも女児の場合、男児とは逆に早ければ七歳、遅くても十歳を迎える前に『特別な力』が発現するのだけれど、初潮は二十歳を過ぎてからなの。でも、体の成長は普通の子とあまり変わらないはずなのだけれど……」

「しょちょう……って何だ?」

 会話の内容より、聞き慣れない言葉の方にオレの興味は惹かれてしまった。

「……それは追々教えるわ」

 何故だろうか、母が落胆している。

「そ、それで、キャンディッドは昔のオレみたいに虚弱体質だから、大事に扱えってこと?」

「そうではないの」

 オレが話を元に戻すと、母もキリッとした顔付きになった。

「さっきも話したとおり、キャンディッドにはクラージュの血が色濃く……いいえ、もしかする貴方の『力』すら吸い取ったのかもしれないの」

「どういうこと?」

「あの子は既に覚醒しているのだけれど、力が膨大過ぎて上手に制御できないのよ」

「制御不能な膨大な力って……」

 それってかなり危険じゃないか?

「どうやら、感情が力となって現れてしまうようで、とにかく感情を抑えつけるような教育をしてきたの」

「何だか可愛そうだな」

「そうも言っていられないのよ。……キャンディッドが五歳の頃の話なのだけれど――」

 五歳だとまだ覚醒前だよな、などと思いつつ、オレは母の言葉に耳を傾けた。
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