幼馴染を寝取られパーティから追放されいい年こいて実家に帰ると童貞のオレに何故か娘がいた!

雨露霜雪

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2章 我が家

オレと娘は似ている

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「おまたせ」

「ええ、随分と待たされたわ」

 俺の言葉に対し、母は珍しく嫌味たっぷりの言葉で返してきた。

「ごめんごめん。それじゃあ、説明するね」

「頼むわね」

 母は手に持っていたカップを、テーブル上のソーサーに音もなく置くと、前のめりではなくゆったりと聞く姿勢になる。
 それを見て、膝に肘を乗せ両の手を握る形で組んだオレの方が、今度は前のめりの姿勢になった。

「キャンディッドがオレの血を分けた親子だとか、『特別な力』を得ているかは正直分からない。でも、莫大な魔力を持っているのは確かだ」

「血の件に関して、私はそうだと思うのだけれど、前例のない話ですものね」

「まぁ、それはこの際置いておこう」

「そうね」

 母は僅かに寂しそうな表情を見せる。だが今は、そこを追求するつもりはない。

「で、多分なんだけど、キャンディッドは多過ぎる魔力が常に体内にあるから、常時『魔力酔い』している可能性が高い……と思う」

「聞いたことはあるけれど、滅多に起こらない症状なのよね?」

「一部の大魔術師や、魔力回復薬などを過剰に摂取した場合などに起こる症状だから、滅多には起こらないね。そして症状は人それぞれなんだけど、気持ちが沈む、イライラする、高揚するとか色々あって、キャンディッドの無感情も、もしかすると躾の結果ではなく、『魔力酔い』の所為じゃないかと思うんだ」

「そう……なのかしら?」

「魔力が暴発する前のキャンディッドは、普通の子だったんでしょ?」

 キャンディッドの覚醒後の話は聞いていたが、それ以前のことを聞いていなかったと気付いたオレは、ついでとばかりに質問してみた。

「クラージュと同じように成長は遅いけれど、体は丈夫だったわ。ただ、大人しくて聞き分けの良いところは貴方とそっくりね。――ああ、これも貴方と似ている部分なのだけれど、普段はあまり感情を表に出さず、それでいて会話などすれば、しっかり喜怒哀楽を見せていたわ」

「えっ! オレって、普段は感情を表に出してなかったの?」

「あら、気付いていなかったの?」

「全然知らなかったよ」

 娘の話をしているはずが、何故かオレ自身の過去に自分が驚いてしまった。
 そして続け様に、母はこう言い出したのだ。

 昔のオレは自主性がなく、母や姉の言われたことだけをやっていた。
 確かに言われたことはきっちりこなしていたので、それはいい。だが、自分から何かをすることがなかった。
 しかし姉が大怪我をした後、初めて自分のやりたいことを口にする。
 それが『強くなって一生お姉ちゃんを守る』という言葉だ。
 以降は、脇目も振らず鍛錬に励む日々。だが今度はそれだけにのめり込み、他のものが目に入らなくなった。
 フォリーとの婚約も空返事気味に了解し、『冒険者になれば強くなれる』と言う婚約者の言葉で、強くなるために村を出てしまった。

 それが何を示唆しているかといえば、オレは指図されて動くか、自分のやりたいことだけを見据えて動くかの両極端で、その間がすっぽり抜けている。と言うのだ。
 そしてそのそっぽり抜けている部分のオレこそが、無感情であったと。

「いや、まぁ言われてみると、そうだったかもしれない。でもオレとしては、どうすれば母さんと姉ちゃんを喜ばせられるか、っていつも考えてたと思うんだけど……。フォリーのことも、確かに最初は流されていたと認めるよ。でも途中からは考えて……たけど、終盤は全然眼中になかった…………」

 自分で話しながら、自分自身の言葉で、オレは嫌な気持ちになってしまった。

「フォリーのことは、取り敢えず置いときましょう。――そうね、昔のクラージュが、私とラフィーネをても敬愛してくれていたことは、私もあの子も分かっていたわ。キャンディもクラージュに近い感じの部分はあるわね。あの子は、更に父親であるクラージュも敬愛しているわ」

 何だか、お前がマザコンでシスコンだと知っていた、と言われている気がして、少々気恥ずかしくなってしまう。
 自分で思う分にはかまわないし、他人に言われても気にしない。だが、当の本人に知られているとなると、それはちょっとキツい。

「で、でも、キャンディッドはオレと違って、体は丈夫だったんだよね? それなら、外で遊び回ったりしなかったの?」

 オレは話題の転換を試みた。

「それがね、ラフィーネはまだ見ぬ父をキャンディの記憶に刻みつけるように、『お父さんはこうだったのよ』とよく聞かせていたの。それがいけなかったのかしらね、気付いたらキャンディもクラージュと同じような行動をとるようになっていたわ」

 一種の刷り込みのようなものだろう。

「オレと同じような行動って、実際どんな感じなの?」

「何もなければボーッと外を眺めているだけで、私やラフィーネがお願いごとを頼むと、嬉しそうに言われたことをして、終わると報告してくれるから、『よくできたわね』って褒めてあげると喜ぶ、そんな感じかしらね」

「……オレもそんな感じだったっけ?」

「そっくりじゃない」

 オレ自身の記憶では、ボーッとしていたのではなく、母や姉の喜ぶ顔を想像していたはず。その考え事の途中で何か用を頼まれ、それをこなしていただけに過ぎない……と思うのだが。
 だから母に、『それがいけなかったのかしらね』などと言われるようなことではないと思う。だがしかし、傍からみるとただボーッとしているだけに見えるのかもしれない。
 実際、考えるだけで行動に移した記憶はないわけだし……。

「そうそう」

「今度は何?」

「クラージュもキャンディも、『文字の読み書きの練習してもいいのよ』って言ってあげると、それを指示されたと判断したのかしらね、一生懸命お勉強してたわ。しかも、独学でどんどん覚えてしまうところも似てるわね」

 そういえば、読み書きができると母も姉も褒めてくれ、それが嬉しくて更に練習をしていた覚えがある。
 そんなオレを見て、自分にも教えてほしいと言うフォリーに文字を教えて、手紙をもらったような……って、この記憶はどうでもいい。

「だけれど、クラージュにはフォリーという幼馴染の遊び相手がいたでしょ。でも、キャンディにはお友達がいなかったの」

 今はどうであれ、当時はフォリーと仲良くしていたのは確かだ。

「だからね、それではいけないと思って、村の子どもたちと遊ばせるようにしたの。それこそ最初の頃はキャンディも少し明るくなって、私もラフィーネも安心したものだわ。でもその後、あの暴発を起こしてしまって……」

 ああ、そういった経緯なのか。
 って、過去の話ばかりしてると、オレも嫌なことを思い出してしまう。

「まぁ、話を元に戻そう。――キャンディッドが仮に魔力酔いしていて、その症状があの子の場合は無気力……とは違うだろうけど、思考を破棄する感じで感情も捨ててしまっている、と考えていたんだけど、母さんの話しを聞いていると、どうやらそうでもない気もしてきたな」

「私は魔術についてサッパリ分からないから、何とも言えないわね」

「一応オレの考えとしては、魔術をしっかり覚えて、適度に魔力を放出していけば、元の明るいキャンディッドに戻ると思っていたんだ。でも、元からあまり活発でなかったなら、この考えは違うと思う」

「どちらにせよ、キャンディには魔術を教えるのでしょ? それなら、魔術を覚えた結果、あの子が明るくなったら、それはクラージュの予想が当たっていた。そうでなくても、キャンディが立派な魔術士になれるのであれば、それはあの子の将来の役に立つ。――うん、どちらに転んでも、良いことに変わりないわ」

 オレとしては予想が外れた気がして、少しガッカリしていたのだが、母はしっかり前向きに捉えている。

 ――ガチャッ

 突然、居間の扉の開閉音が聞こえた。

「おっさ……ラジュ、お風呂、空いた」

 風呂上がりの少女が、ホカホカと湯気を立ち昇らせて部屋にやってくると、母の前でオレにおっさんと言うと叱られるのを思い出したのか、魔術の先生であるラジュという名で呼んでくる。
 お父さんと呼んでもらえないのは、少し寂しい気もするが……。
 そんな哀愁漂う新米父親のオレは、真剣な会話をする集中力が途切れたことで、ドサリとソファーに深く凭れた。
 だがそんなオレの前に、キャンディッドがトテトテと寄ってくる。すると小柄な少女は、オレの目の前でクルリと反転するではないか。
 オレは今の自分が置かれた状況に、物凄い既視感がある。

 それは昨日――
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