金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

文字の大きさ
111 / 113
第四章

第三十四話 楽器を作ろう!〜ハロルド、活躍する

しおりを挟む
 「楽器作ります!」
 「ビクトリア様みたいに楽器作ります!」
 「あい!」
 今日はヴァジュラの遊び相手をする日でリオンとルゼルとアロンとハロルドは王子宮に来ていた。
 「楽器?」
 ヴァジュラは三人が何故こんなに目をキラキラさせて楽器を作りたがっているかわからないし、ビクトリアが誰なのかも知らない。
 「ビクトリア、誰?」
 「ビクトリア様は学園の一年生で革命を起こすすごいなお姉様です」
 リオンの説明にルゼルだけでなくアロンも力強く頷いている。これはビクトリアという人は只者ではないと察するヴァジュラだ。リオンの説明だとそのビクトリアは自作の楽器で素敵な音楽を奏でたらしい。それと革命がどう関係するのかわからないし、革命が何かもヴァジュラにはわからなかったがとにかく面白そうなので乗ってみることにした。
 「うん。受理」
 「御意ー」
 「御意ー」
 「ぎょいぃ」
 四人はとりあえず手頃な枝を探すことにした。ビクトリアの一本弦の楽器を真似してみるのだ。だが、手頃な枝など王子宮に落ちているはずがない。手入れが行き届いているからだ。枝など落ちていようはずがない。
 「枝、ない」
 「枝、ないですね…」
 うーん、と困っているとヴァジュラが閃いた。
 「ハロルド、持ってた」
 「はっ、ハロルド!」
 そういえばハロルドは時々棒を持って走り回っている。あれはどこから見つけてきたのだろう。
 「イリヤ、ハロルドは?」
 ハロルドは時々見当たらなくなる。沢山走り回っているかと思うと、静かに虫を観察していたり、どこで見つけたのか綺麗な花びらや葉や木の実を石の歩道に並べていたりする。ヴァジュラたちはそんな時、一緒に虫を眺めたり、なんの花かを当てっこしたりして楽しんでいた。
 今日もハロルドは見当たらない。だけど確かにリオンたちと同じ時間に来ていた。
 「ハロルド様ならイト爺の小屋かもしれませんね」
 ヴァジュラの侍従のイリヤが言うと護衛騎士のルカが
 「はい。ハロルド様ならキースとイト爺さんの小屋に行ってます」
 イト爺というのは庭師の爺やのことだ。主に王子宮の庭を手入れしている。
 「ハロルド、いつイト爺と仲良し?」
 ヴァジュラが驚いた顔で聞く。非常に濃いビックリ顔だ。
 しかし、なるほど、イト爺の小屋には庭で切った枝をまとめて置いてある。時々ハロルドが枝を持っていたのはイト爺からもらっていたのだと納得した。
 「ハロルド、やっぱりすごい。ワシたちも行くぞ!」
 「御意ー」
 四人はイト爺の小屋を目指して走った。
 イト爺の小屋に近づくとハロルドの笑い声が聞こえてきた。やはりハロルドはそこにいるのだ。
 「イト爺!」
 「おや、ヴァジュラ殿下。お久しぶりでございます」
 「おぅ、イト爺、元気!ワシ嬉しい」
 「殿下はお一人ですか?」
 「アロンたち一緒。みんなゆっくり」
 というよりヴァジュラが爆速で走るので追いつかないだけだ。
 「爺!枝、くれ!」
 「枝ですか?」
 「ビクトリアみたいな楽器作る。枝くれ」
 「はい?ビクトリアとは?」
 イト爺の頭にハテナが出たあたりでようやくリオンたちが追いついた。
 「うーん。ワシ話難しい。リオン話して」
 ヴァジュラからバトンを渡され、リオンはビクトリアが一本弦の手作り楽器を奏でること、それを自分たちも作りたいこと、そのためにしなる枝が欲しいことを説明した。
 「なるほど。それでしたら竹がよろしいかもしれませんね」
 そう言うとイト爺はどこからか切った竹を持ってきて子供たちの目の前で縦に切り分け始めた。
 「はわ!竹は綺麗に切れます!」
 「竹をこうして切って、もっと細くしたものを竹ひごと言って、それを工夫して色々な物を作るんです」
 「もしもなら?」
と、リオン。これにはイリヤが「例えばとお聞きです」と注釈を入れる。
 「例えば、虫かごとか」
 「あ、知ってます!蛍言うピカピカの虫が入ってるのルゼのおうちで見ました!」
 「あぁ、あれが竹ひご⁈ではでは、東の国のお料理で使うスマキ言うのもそうだね」
 「色々作れるのね」
 「竹ひご…ポテンシャル高いです」
 「ルゥルゥ、ポテンシャル、何?」
 「アロン、ポテンシャルはね、オヌシナカナカヤリオルナ思うことが沢山あるいうことです」
 「うーん、難し…」
 そんな話をしているうちに幅1センチほどの竹の棒ができた。その両端にイト爺が小さな穴を開けた。
 「この穴に糸を結んで張れば音が出せるようになりますよ」
 「わーい!」
 「やりますやります」
 「イト爺!大義!」
 早速四人はイト爺から花を纏めるのに使う細い紐をもらい、片方の穴に結び、もう片方の穴にも結ぼうとした。これがなかなか難しい。竹ひごをしならせて糸を結ぶには子どもたち一人の手では力が入り切らない。しばらくそれぞれ格闘していたが、やがてリオンが
 「一人じゃ難しです」
 と言った。するとすぐさまルゼルが
 「そうだよ、リオン!一人じゃ難しだから、二人ですると良い思う!」
 「あ、そだね!」
 二人はそう言うと相談し合うこともなく、リオンが自分の竹ひごを力を入れて曲げ、ルゼルがその間にもう一方の穴に紐を結んだ。
 「できた!」
 「はわ!できました!」
 リオンの楽器の出来上がりだ。試しにリオンが弦を弾くと、ビーンと不思議な音が出た。
 「できた!私の楽器できた!」
 「はわわ!リオンできたね!」
 すぐに今度はリオンがルゼルの竹ひごをしならせ、ルゼルが紐を結ぶ。ルゼルの楽器も出来上がりだ。
 「やったー」
 それを見ていたヴァジュラとアロンも早速共同作業に移った。ヴァジュラがしならせる係でアロンが結ぶ係だ。ところが…
 バキッ
 ヴァジュラが力加減できずに竹を折ってしまった。
 「すまん…イト爺…」
 「いえいえ、それより殿下にお怪我はありませんか?」
 「ない。でも竹、無駄にした…すまん」
 しょんぼりするヴァジュラにイト爺は新しい竹ひごを渡した。だが、再び
 バキッ
 さらにもう一度
 バキッ
 今度はアロンがしならせることにしたが力が足りず全くしならせることが出来なかった。
 「…イト爺…竹、いっぱいダメした。すまん」
 ヴァジュラが肩を落としてイト爺に言う。だがイト爺はニコニコして言った。
 「殿下はお優しい。陛下がお小さい頃は謝ることなく片っ端から折り歩いていましたよ」
 そう言って、はっはっは懐かしい、と笑った。
 「父オー…カジョー」
 しょんぼりするヴァジュラの横で、アロンは折れた竹ひごを持ってマジマジと眺めていた。
 「ヴァジュラしゃまん、すごい。ちからもち。竹、ばっきんした」
 「うん…でも楽器作れない」
 ヴァジュラはしょんぼりしたままだ。ところがアロンはその折れた竹を片手に一つずつ持つと、両方を叩き合わせて音を出した。
 「ヴァジュラしゃまん、これ、音出る。トントン言う」
 本当だ、竹を打つと音が出る。しかも叩く場所を少しずらすと音が変わる。それを見たリオンとルゼルが交互に言った。
 「すごい!ビクトリア様の楽器と違う楽器になりました!」
 「トントン、カンカンて違う音が出てます!」
 「これも楽器?」
 ヴァジュラが二人に聞くと二人は深く頷いた。
 「ワシ、楽器作れた?」
 作れましたと言われ、ヴァジュラはしょんぼりから立ち直った。そしてアロンから竹を受け取ると「うおー」と喜びながらトントンと竹を叩き始めた。アロンも別の折れた竹を拾ってトントン叩き始めた。するとどこからかハロルドがやってきて折れた竹を拾った。
 ヴァジュラがトントン叩くとハロルドがトントンとする。ヴァジュラがトントントンとするとハロルドもトントントンとした。
 「すごい!ハロルド、間違いしないで真似っこしてます!」
 「ハロルド、お前すごい!これはできるか?」
 ヴァジュラが少しリズムをつけて、トントントトントンとすると、ハロルドは正確にトントントトントンと真似をした。
 「すごい!これならどうだ?」
 ハロルドはどんなリズムも真似してみせた。
 「ハロルド!お前、カジョー!」
 「ハロルド!すごいです。全部真似っこできてます!」
 「ハロルド、サイノー、開花です!」
 当のハロルドは皆の賛辞には何も返さないがとても楽しそうに笑顔でリズムを真似ていた。
 やがて、ヴァジュラとハロルドのリズムに合わせてリオンとルゼルが一本弦をビンビンと奏で、アロンがゴニョゴニョと歌いながら頭を揺らし、小さな音楽会が始まった。

 その様子を騎士やイト爺はニコニコして眺めていたが、イリヤは「いやいや、リズムを刻めるヴァジュラ殿下も凄いですし、それを正確に返せるハロルド様も非凡です。これはハロルド様の特技になりそうですね。バークレイ侯爵にお伝えしなければ」と密かに思っていた。「それにしても、ヴァジュラ殿下は相変わらず力加減ができないですね」とも思っていた。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件

やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。  発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。  何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。  そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。  残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

処理中です...