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第二章
第九話 リオンとルゼルの大げんか(初)〜側から見たら可愛いだけ
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リオンとルゼルが激しく喧嘩をしている!ということで、それを見ようと王宮の中庭には大勢の人が集まっていた。とは言っても彼らの護衛と従者以外は低木の庭木にしゃがむように隠れたり、大木の幹に隠れるなどして二人の喧嘩の邪魔をしないよう配慮していた。…喧嘩に配慮というのもおかしな話だが。
発端はマグヌス、ユリアン、リゼルが騎士に混じって剣術の手解きを受けているときの一報だった(マグヌスは6歳になるのを機に、時々騎士団の練習場でも練習するようになっている)。休憩を取りに出た騎士がすぐに戻ってきて言った。
「二天使が喧嘩してる!」
走って戻ってきたことがわかるほど息切れしている。戦中の伝令並みだ。
二天使とはリオンとルゼルを知る者たちがつけた二人を現す騎士たちがつけた愛称だ。
ヴァジュラが生まれた頃から二人の社会的露出が増え、その外見のあまりの美しさと仕草の可愛らしさから誰からともなく『天使』と呼ぶようになり、二人の甲乙つけ難い美しさ、仲の良さから、いつのまにか人は二人一緒にいると『二天使』と呼ばれるようになった。
「喧嘩?」「二天使が?」
全員が伝令係を見た…正確には休憩中の奴…だが。伝令係ははぁはぁと息を切らしつつウンウンと頷く。そして一言。
「…可愛い」
至福の表情。
全員が察した。間違いない!これは百パー癒される喧嘩!見る栄養剤!
次の瞬間、全員が無言でダッシュした。無言なのは声で気取られ、喧嘩をやめさせてしまわないためだ。
走るリゼルが小声で「怪我をするような心配はないのかな」と言う。するとユリアンが「大丈夫だろう。護衛もついているし、あの二人は叩いたり押されたりした経験がまずないのだから、そんな行動に思い至らないよ」と小声で返す。
それを聞いたマグヌスは、自分がリオンたちくらいの頃、ユリアンとリゼルと三人で取っ組み合いの喧嘩をしたことを思い出した。いや、正確には取っ組み合いはマグヌスとリゼルか。ユリアンは口で攻撃しただけで手は出さなかったな。でも確かユリアンが勝ったのではなかったか?と思い出していると、小さないさかいの声と、そこここでしゃがんで様子を見守る城の者たちが見えてきた。
ここで冒頭場面となる。
王妃付きの侍女がマグヌスたちに気づくと人差し指を口に当てうなずいた。騎士たちもうなずき、しゃがんで前進する。
よく見ると写真家と画家もいる。録音家もいるのかもしれない。「母上はご公務の日だからな」
と、二人のやりとりがハッキリ聞こえる所まで来た。
「ぞーしゃんは?ぞーしゃんは?」怒った口調のルゼルの声だ。
ぞーしゃん?象さんかな?後から来た騎士たちはハテナだが、先発覗き見隊は全員ほわぁっとした表情になっている。ルゼルはまだサ行がうまく言えない。可愛いから言えなくて良い。
「ぞーさんは、はじめからぞーさん。だからぞーさんは、ぞーさんなの!」こちらも怒った口調のリオン。
見ると二人とも両手をグーにして向かい合い激しく(?)論争している。
リオンは眉が気持ち上がり、眉間に力が入り、頬を少し赤らめている。ルゼルはリオンよりもっと力が入り、頬だけでなく目の周りも少し赤くし、翡翠の瞳にうっすら涙を溜めていた。どちらも半端なく愛らしい怒り顔で、美幼児の底知れぬ美しさに驚くばかりだ。
「かっ、かばしゃんはっ?」
「かばさんも、はじめから、かばさん!だから、かばさんなのっ!」
「…これはなんだ?」
マグヌスが顔見知りの侍女に尋ねる。
「はい、先程からヴァジュラ殿下に献上されたウサギについてお話し合いをされているのです」
先頃ヴァジュラが一歳になり、それを機に情操教育の一つとして生き物を与えることになった。マグヌスの時は安易に犬だったのだが、その日のうちにマグヌスが噛まれ(マグヌスがかまいすぎたためだが、犬のせいになった。その犬とは今では仲良しだ)それを踏まえ、条件として「噛みつかない、ひっかかない、騒がない、動きすぎない、かわいい」というものが挙げられ、白羽の矢が当たったのがウサギだった。
そのウサギをヴァジュラと共に育てるよう命じられたのがヴァジュラ側近候補現遊び相手のリオンとルゼルだ。
「お二人がウサギの名前についてはヴァジュラ殿下が命名されるまで勝手につけないとお決めになったところまでは良かったのですが…当面、便宜上なんと呼ぶかというお話になり…」
『ウサギちゃん』を提案したリオンに対し、『ウサギさん』を提案したルゼルとでお互い一歩も引かないのだと。
「うっ。何その可愛い喧嘩…」とリゼルが口を手で押さえ、ユリアンも「天使の喧嘩はどこまでも平和だな」と眉を下げる。
「ところでウサギちゃんとウサギさんの違いとはなんだ?」
マグヌスが素朴な疑問を投げかける。それに対しリゼルが言う。
「多分ですけど、アロンが1歳になり、ルゼルがもうじき3歳になるので、父上がルゼルに3歳という兄の自覚をもつようお話になって…その一つとして一人称を『ルゼル』から『私』に変えたのです。実際は『ルゼル』と言ってしまうことが多いのですが…。リディラも『ルゼルちゃん』と呼んでいたのを『ルゼル』に変えたので…少しお兄さんの言い方が気に入っているんです。だからウサギに『ちゃん付け』は失礼で抵抗があるのかと…」
それを聞いたユリアンが言う。
「なるほどな。うちでは愛らしいものは『ちゃん付け』で言うからなぁ。ウサギはリオンにとって赤子の頃から可愛いものに分類されているし…」
「ああ…」
マグヌスとリゼルはヴァジュラに会った時にリオンが「うしゃぎしゃん、いるましゅか?」と聞いていたのを思い出した。リオンは赤子の頃から枕元にウサギのぬいぐるみを置き、ずっとお気に入りで可愛がっているのだ。「それでか」と三人は納得した。
それを知った後なら、確かに象は「象さん」とは言っても「象ちゃん」とは言わないよなぁとも。
「んーっ、んーっ。へびしゃんはっ?」
ルゼルが同じ結果になりそうなことをまた言った。
「『へびちゃん』いわないもん。へびさんはへびさん!」ほら。
「んーっ、んーっ。きりんしゃんはっ?」
「『きりんちゃん』いわないもん。きりんさんはきりんさんなのっ!」
「んーっ、んーっ。…りろんのばかぁー。りろん、きらいぃ」
全員がハッとした。天使が悪口を?しかし「ばかぁ」のなんと優しい響きなことか…。ほわぁ。
しかしここで状況が一変した。
言われたリオンのグーの手が力なくパーになり、下に落とされたのだ。そしてリオンが…
「るじぇ、りろんきらい?」と言った後、紫の瞳にみるみる涙が溜まり…
「ふわぁーん」
と天を仰いで泣き出したのだ。
それを見たルゼルはみるみる青ざめ…「あっあっ」と手をハタハタして慌てた後、やはり天を仰いで「ふえええぇん」と泣き出してしまった。
覗き見隊全員が「かわいそう」と思うと同時に「でも可愛い。癒される」と見入っていた。その時「そろそろですわね」と言って王妃侍女次長のライラがスッと二人の前に歩み出た。
ライラは黒髪をふんわり後ろでシニヨンにしてメガネをかけた50歳のベテラン侍女だが、30代後半の見た目の若さを持つ、妙に雰囲気のある侍女だ。
宮廷内の困り事にスマートな対応をする姿を度々見ているマグヌスは密かにライラに憧れている。
そのライラが二天使に向かい、子ども扱いする素振りなく、柔らかく話しかける。
「お二方、いかがなされました?」
「ふわああぁん。るじぇ、りろんきらいきらいなのぉ」とリオン。
「ふえっ、ふえっ、ちがっ、ちがっ」ルゼルは泣きすぎて言葉にならない。
「嫌いではないのに、嫌いと仰ってしまったんですか?」
ルゼルはコクコクとしながら「ごえんしゃいーぃ」と泣いている。
「ではお嫌いではないのですね?」
ルゼルはコクコクと、むしろブンブンと首を縦に振りながら「しゅきぃ」と言って泣く。
「ではきちんと謝って、好きなことをお伝えしないといけませんね」
ブンブン。
「りろん、ごえんしゃいぃー。しゅきぃー。ふええぇん。しゅきよぅ。ふえぇん」
そんなことはリオン以外全員知っている。とばかりに覗き見隊はウンウンと頷いている。が、当のリオンは半信半疑で泣きながら
「ほ…ほんと?」と聞く。
泣いているルゼルはリオンの声が聞こえずまだ泣いている。そのルゼルの手をリオンが取った。
「るじぇ、ほんと?きらい、ない?」
ルゼルは泣きながらコクコクと頷き「しゅきぃ」と言って涙をポロポロ流す。リオンはそれを聞いてやっと安心した顔で
「りろんも、るじぇ、しゅきぃ」と言って泣き笑いで握った手を上下に動かす。それを聞いたルゼルが再度
「ごえんしゃいぃ」半泣きで言うと
「いいよー」とリオンはもうニコニコだ。
もう空から花が降ってくるのでは?と思うほどの平和に満ちた空間になった。
落ち着いた二人を見てライラが言う。
「それでどのようなことで、このようなことになったのですか?」
すべて見ていたのにライラは女優だ。二天使はウサギの呼び名で喧嘩になったとつたない言葉で説明した。聴き終えたライラは、さも困ったという顔で
「呼び方ですか。難しいですね。リオン卿とルゼル卿のお二人が良いと思える呼び名となると…」
それを聞いた二人の顔がハッとした。いや、覗き見隊もハッとした。
「「うしゃぎきょう‼︎」」二人が同時に言った。そして二人して手を繋いでピョンピョン跳ねた。ピョンピョンしながら回り出した。
キャッキャという二天使を見守った全員が、その日幸せな気持ちで寝付くことができた。
その後しばらく王宮関係者の間で、動物や物の名前の後に「卿」をつけて言うことが大流行したのは言うまでもない。
後にこの喧嘩は「ウサギ卿事件、ルゼル様の乱」と呼ばれる伝説の喧嘩となった。
発端はマグヌス、ユリアン、リゼルが騎士に混じって剣術の手解きを受けているときの一報だった(マグヌスは6歳になるのを機に、時々騎士団の練習場でも練習するようになっている)。休憩を取りに出た騎士がすぐに戻ってきて言った。
「二天使が喧嘩してる!」
走って戻ってきたことがわかるほど息切れしている。戦中の伝令並みだ。
二天使とはリオンとルゼルを知る者たちがつけた二人を現す騎士たちがつけた愛称だ。
ヴァジュラが生まれた頃から二人の社会的露出が増え、その外見のあまりの美しさと仕草の可愛らしさから誰からともなく『天使』と呼ぶようになり、二人の甲乙つけ難い美しさ、仲の良さから、いつのまにか人は二人一緒にいると『二天使』と呼ばれるようになった。
「喧嘩?」「二天使が?」
全員が伝令係を見た…正確には休憩中の奴…だが。伝令係ははぁはぁと息を切らしつつウンウンと頷く。そして一言。
「…可愛い」
至福の表情。
全員が察した。間違いない!これは百パー癒される喧嘩!見る栄養剤!
次の瞬間、全員が無言でダッシュした。無言なのは声で気取られ、喧嘩をやめさせてしまわないためだ。
走るリゼルが小声で「怪我をするような心配はないのかな」と言う。するとユリアンが「大丈夫だろう。護衛もついているし、あの二人は叩いたり押されたりした経験がまずないのだから、そんな行動に思い至らないよ」と小声で返す。
それを聞いたマグヌスは、自分がリオンたちくらいの頃、ユリアンとリゼルと三人で取っ組み合いの喧嘩をしたことを思い出した。いや、正確には取っ組み合いはマグヌスとリゼルか。ユリアンは口で攻撃しただけで手は出さなかったな。でも確かユリアンが勝ったのではなかったか?と思い出していると、小さないさかいの声と、そこここでしゃがんで様子を見守る城の者たちが見えてきた。
ここで冒頭場面となる。
王妃付きの侍女がマグヌスたちに気づくと人差し指を口に当てうなずいた。騎士たちもうなずき、しゃがんで前進する。
よく見ると写真家と画家もいる。録音家もいるのかもしれない。「母上はご公務の日だからな」
と、二人のやりとりがハッキリ聞こえる所まで来た。
「ぞーしゃんは?ぞーしゃんは?」怒った口調のルゼルの声だ。
ぞーしゃん?象さんかな?後から来た騎士たちはハテナだが、先発覗き見隊は全員ほわぁっとした表情になっている。ルゼルはまだサ行がうまく言えない。可愛いから言えなくて良い。
「ぞーさんは、はじめからぞーさん。だからぞーさんは、ぞーさんなの!」こちらも怒った口調のリオン。
見ると二人とも両手をグーにして向かい合い激しく(?)論争している。
リオンは眉が気持ち上がり、眉間に力が入り、頬を少し赤らめている。ルゼルはリオンよりもっと力が入り、頬だけでなく目の周りも少し赤くし、翡翠の瞳にうっすら涙を溜めていた。どちらも半端なく愛らしい怒り顔で、美幼児の底知れぬ美しさに驚くばかりだ。
「かっ、かばしゃんはっ?」
「かばさんも、はじめから、かばさん!だから、かばさんなのっ!」
「…これはなんだ?」
マグヌスが顔見知りの侍女に尋ねる。
「はい、先程からヴァジュラ殿下に献上されたウサギについてお話し合いをされているのです」
先頃ヴァジュラが一歳になり、それを機に情操教育の一つとして生き物を与えることになった。マグヌスの時は安易に犬だったのだが、その日のうちにマグヌスが噛まれ(マグヌスがかまいすぎたためだが、犬のせいになった。その犬とは今では仲良しだ)それを踏まえ、条件として「噛みつかない、ひっかかない、騒がない、動きすぎない、かわいい」というものが挙げられ、白羽の矢が当たったのがウサギだった。
そのウサギをヴァジュラと共に育てるよう命じられたのがヴァジュラ側近候補現遊び相手のリオンとルゼルだ。
「お二人がウサギの名前についてはヴァジュラ殿下が命名されるまで勝手につけないとお決めになったところまでは良かったのですが…当面、便宜上なんと呼ぶかというお話になり…」
『ウサギちゃん』を提案したリオンに対し、『ウサギさん』を提案したルゼルとでお互い一歩も引かないのだと。
「うっ。何その可愛い喧嘩…」とリゼルが口を手で押さえ、ユリアンも「天使の喧嘩はどこまでも平和だな」と眉を下げる。
「ところでウサギちゃんとウサギさんの違いとはなんだ?」
マグヌスが素朴な疑問を投げかける。それに対しリゼルが言う。
「多分ですけど、アロンが1歳になり、ルゼルがもうじき3歳になるので、父上がルゼルに3歳という兄の自覚をもつようお話になって…その一つとして一人称を『ルゼル』から『私』に変えたのです。実際は『ルゼル』と言ってしまうことが多いのですが…。リディラも『ルゼルちゃん』と呼んでいたのを『ルゼル』に変えたので…少しお兄さんの言い方が気に入っているんです。だからウサギに『ちゃん付け』は失礼で抵抗があるのかと…」
それを聞いたユリアンが言う。
「なるほどな。うちでは愛らしいものは『ちゃん付け』で言うからなぁ。ウサギはリオンにとって赤子の頃から可愛いものに分類されているし…」
「ああ…」
マグヌスとリゼルはヴァジュラに会った時にリオンが「うしゃぎしゃん、いるましゅか?」と聞いていたのを思い出した。リオンは赤子の頃から枕元にウサギのぬいぐるみを置き、ずっとお気に入りで可愛がっているのだ。「それでか」と三人は納得した。
それを知った後なら、確かに象は「象さん」とは言っても「象ちゃん」とは言わないよなぁとも。
「んーっ、んーっ。へびしゃんはっ?」
ルゼルが同じ結果になりそうなことをまた言った。
「『へびちゃん』いわないもん。へびさんはへびさん!」ほら。
「んーっ、んーっ。きりんしゃんはっ?」
「『きりんちゃん』いわないもん。きりんさんはきりんさんなのっ!」
「んーっ、んーっ。…りろんのばかぁー。りろん、きらいぃ」
全員がハッとした。天使が悪口を?しかし「ばかぁ」のなんと優しい響きなことか…。ほわぁ。
しかしここで状況が一変した。
言われたリオンのグーの手が力なくパーになり、下に落とされたのだ。そしてリオンが…
「るじぇ、りろんきらい?」と言った後、紫の瞳にみるみる涙が溜まり…
「ふわぁーん」
と天を仰いで泣き出したのだ。
それを見たルゼルはみるみる青ざめ…「あっあっ」と手をハタハタして慌てた後、やはり天を仰いで「ふえええぇん」と泣き出してしまった。
覗き見隊全員が「かわいそう」と思うと同時に「でも可愛い。癒される」と見入っていた。その時「そろそろですわね」と言って王妃侍女次長のライラがスッと二人の前に歩み出た。
ライラは黒髪をふんわり後ろでシニヨンにしてメガネをかけた50歳のベテラン侍女だが、30代後半の見た目の若さを持つ、妙に雰囲気のある侍女だ。
宮廷内の困り事にスマートな対応をする姿を度々見ているマグヌスは密かにライラに憧れている。
そのライラが二天使に向かい、子ども扱いする素振りなく、柔らかく話しかける。
「お二方、いかがなされました?」
「ふわああぁん。るじぇ、りろんきらいきらいなのぉ」とリオン。
「ふえっ、ふえっ、ちがっ、ちがっ」ルゼルは泣きすぎて言葉にならない。
「嫌いではないのに、嫌いと仰ってしまったんですか?」
ルゼルはコクコクとしながら「ごえんしゃいーぃ」と泣いている。
「ではお嫌いではないのですね?」
ルゼルはコクコクと、むしろブンブンと首を縦に振りながら「しゅきぃ」と言って泣く。
「ではきちんと謝って、好きなことをお伝えしないといけませんね」
ブンブン。
「りろん、ごえんしゃいぃー。しゅきぃー。ふええぇん。しゅきよぅ。ふえぇん」
そんなことはリオン以外全員知っている。とばかりに覗き見隊はウンウンと頷いている。が、当のリオンは半信半疑で泣きながら
「ほ…ほんと?」と聞く。
泣いているルゼルはリオンの声が聞こえずまだ泣いている。そのルゼルの手をリオンが取った。
「るじぇ、ほんと?きらい、ない?」
ルゼルは泣きながらコクコクと頷き「しゅきぃ」と言って涙をポロポロ流す。リオンはそれを聞いてやっと安心した顔で
「りろんも、るじぇ、しゅきぃ」と言って泣き笑いで握った手を上下に動かす。それを聞いたルゼルが再度
「ごえんしゃいぃ」半泣きで言うと
「いいよー」とリオンはもうニコニコだ。
もう空から花が降ってくるのでは?と思うほどの平和に満ちた空間になった。
落ち着いた二人を見てライラが言う。
「それでどのようなことで、このようなことになったのですか?」
すべて見ていたのにライラは女優だ。二天使はウサギの呼び名で喧嘩になったとつたない言葉で説明した。聴き終えたライラは、さも困ったという顔で
「呼び方ですか。難しいですね。リオン卿とルゼル卿のお二人が良いと思える呼び名となると…」
それを聞いた二人の顔がハッとした。いや、覗き見隊もハッとした。
「「うしゃぎきょう‼︎」」二人が同時に言った。そして二人して手を繋いでピョンピョン跳ねた。ピョンピョンしながら回り出した。
キャッキャという二天使を見守った全員が、その日幸せな気持ちで寝付くことができた。
その後しばらく王宮関係者の間で、動物や物の名前の後に「卿」をつけて言うことが大流行したのは言うまでもない。
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