金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

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第四章

第十一話 入園します!〜再会です!わーいです!〜

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 秋。マードでは新学期の始まる時期だ。ユリアンとリゼルは初等学園2年生に。リディラも初等学園1年生に。そして、リオンとルゼルは王立幼稚園年中部に入園だ。

 「兄上!ルゼと今日からです!」
 朝からリオンのテンションはマックスだ。
 幼稚園の入園式は初等学園や中等学園の入学式と日にちをずらした休みの日に行われたので、家族で参加できるようになっていた。
 初年度は園生の家の寄付金も多かったので入園式は家族たちへの園舎内覧式も兼ねていた。
 園児は初等学園の制服をアレンジした園服を着ている。初等学園との一番の違いは園児は帽子もあるところだ。
 「お帽子、曲がっていませんか?」
 「うん。大丈夫だよリオン」
 ユリアンはリオンと手を繋いで入園式会場に行く。早く早くと手を引くリオンが可愛い。
 園舎は警備の都合上、中等学園の敷地内に建てられた。
 会場に着くと既にクイン侯爵一家がいた。
 「リオン!」
 「ルゼ!」
 きゃー。両手を繋いでピョン。だけどパンプキンはグッと我慢。
 「幼稚園生になるんだものね」
 「うんうん。たくさんの人の前ではしないおやくそくよね」
 そんな二人を昨年初等学園の参観日に見ていた人々は微笑ましく、初めて二人を見る人々は信じられないものを見る目で眺めていた。
 「あ!アデル!」
 新年会でお友達になったアデルの姿を見てルゼルが駆け寄った。リオンも駆け寄りかけたが、アデルの近くにリタがいるのではと足が止まる。リタは従姉妹だと言っていたからなのか、その場にはいなかった。「うん」確認してもリオンは慎重にアデルの方に早歩きで向かった。
 「ルゼル様、おはようございます」ぺこり。
 「え?」
 アデルが緊張の面持ちで頭を下げた。
 ルゼル?そこにリオンもやってきた。アデルはリオンに向かっても
 「リオン様、おはようございます」
 と言ってぺこりと頭を下げた。
 「リオン?なんで?」
 リオンは言葉にして言った。
 アデルは両脇にいた両親をチラッと見てから少し俯いた。アデルの代わりにライン伯爵が答えた。
 「自分より身分の高い方々には敬称をキチンとつけるように話したのです」
 「え…」
 これはルゼルだ。
 確かに貴族には身分の格差がある。自分たちもヴァジュラは歳下だが殿下呼びをしている。だけどそれはヴァジュラが王族で、貴族とは別格中の別格だからだ。大人の貴族同士なら格差呼びがあるだろうが、子どもでもあるのか。だとしたら…
 「リオン…。今からリオン?…グスッ」
 ルゼルがリオンを見てつぶやいて涙目になった。
 確かにリオンは公爵家でルゼルは侯爵家。ルゼルの方が格下だ。
 何でだろう。「様」をつけただけで急にリオンが遠くに行ってしまった気になる。それはリオンも同じだった。
 「嫌だ。ルゼは今日からよ!ルゼがってつけるなら、私も今日から侯爵のお家の人になる!」
 そしてリオンは同行していたリリィラに向かい
 「母上、お家を侯爵にしてください。ダメなら私をどこかの侯爵家にに出してください。ルゼと仲良しのが良いです」
 と、これまた涙目で訴えた。このころにはルゼルは声を殺して帽子を両手で引き下げ、顔を隠すようにして、でも全然隠せていないままポロポロと涙をこぼしていた。
 それを見たアデルは自分の発言で事態が不穏になってオロオロするし、ライン伯爵も自分が言った手前助け舟を出せずに困り果てた顔をしていた。
 リリィラはのんびりと
 「そうねぇ…養子に出すなんて考えられないから、私がリオンを連れてクイン侯爵家に戻るのが一番かしらね…」
 などと言っている。それを聞いたユリアンは 
 「母上。父上が聞いたら卒倒します。おふざけはやめてください。リオンは本気なんですよ」
 とたしなめ、ジゼルは
 「いつ戻ってきても良いぞ」
 と言って笑い、シャロンに「旦那様」と睨まれた。
 アーネストが卒倒しそうな方向に話が流れて行こうとした時「ふふふ」と笑い声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。
 「あ、かっこいいお兄しゃん…」
 気づいたのは泣いていたルゼルだ。泣いていたから呂律が怪しい。
 ルゼルの視線の先にいた声の主はラウル・ネイルだった。
 新年会で手品をしていたネイル国の王子だ。
 「ラウル王子殿下」
 気づいたジゼルがサッと頭を下げた。それを聞いたライン伯爵夫妻もジゼルに倣う。子どもたちも同様だ。頭を下げた勢いで静かに泣いていたルゼルが「えぐっ」と声を漏らした。
 ラウルはジゼルを知っているらしい。手をヒラヒラさせて
 「ああ、クイン侯爵、頭を上げて。私がそんな立場じゃないのはご存知でしょう?」
 と笑って言った。敗戦国の王子だからという意味だ。
 「いや、しかし…」
 と言いかけるジゼルを制しラウルが続ける。
 「リオン君。心配しないで。確かに世の中に身分格差はあるから時と場合によってはちゃんとすべきだけど、ここでは仲良くなっていくと自然と呼び方は自由な形になっていくよ。学園は王族以外は付き合いがラフなんだよ。君の父上もルゼル君の父上は呼び捨てだろう?そうだよね、クイン侯爵?」
 確かに、ジゼルは侯爵だが、公爵のアーネストを「アーネスト」と呼び捨てだ。
 「では、では、ルゼはもうずっとずっと仲良しだから、ルゼは私をリオンって言わなくて良いですか?」
 リオンが晴れやかな顔でラウルに聞く。
 「そうだよ。ルゼル君はリオン君を今まで通りに呼べば良いんだよ。それから君も」
 とアデルに向かって
 「リオン君とルゼル君と仲良しならはなくても良いんだよ。そうだよね、伯爵?」
 話を振られたライン伯爵は少しホッとした表情で答える。
 「はい。その通りです。私の言葉が足りず、子どもたちを不安にさせました。殿下、ありがとうございます」
 そのやりとりを聞いていたリゼルが「良かったね、ルゼル」と言うとルゼルが声を上げて泣き出した。
 「ふわわぁん。良かったです。リオンが遠く遠くに行ってしまいそうでした。うう…アデルもずっとずっと仲良しでいてくださいぃ…うわぁん」
 安心して泣いてしまう様子はかわいそうだかなんとも愛らしく、一連の流れを遠巻きに見ていた誰もが「内覧より良いものを見た」と思っていた。
 周囲の人々と違いリオンだけはルゼルの涙につられやすく、ルゼルの涙に滅法弱い。オロオロしながらリオンはラウルに聞く。
 「ラウル殿下、ありがとございました。これでルゼルとアデルとずっとずっと仲良しのできます。
 それでそれで、何でラウル殿下はここにいるのですか?初等学園の人ではありませんでしたか?今日は手品ないですか?ルゼは殿下の手品大好き大好きです。見たらきっと涙も止まり…うぐっうぐっ」
 「リオン」
 ユリアンが慌てて質問を止めたが、ラウルは気にする様子はなく、
 「相変わらず面白い」
 と言って答え始めた。
 「私はこの秋から中等学園生になったんだよ。それがここにいる理由と初等学園の人かどうかの答え。幼稚園の園舎と近いから見かけたら声をかけてね。それから手品は今日もあるよ」
 そう言ってラウルはポケットからトランプを取り出した。軽く切ったトランプをアデルの前に出す。
 「君は新年会で私の手品見てないよね。だから君に。一枚カード抜いて、私に見えないように皆に見せてからまたここに戻して」
 アデルは急なオーダーにビクつきつつもリオンとルゼルがキラキラの目で頷くのでその通りにした。抜いたカードはクラブのジャック。皆に見せた後、カードの束に戻す。それをラウルはユリアンに渡し「気のすむまで切って」と言う。ユリアンが念入りに切ってからカードの束をラウルに渡す。渡されるとラウルはニコッと笑って
 「これ、ユリアンが切ったよね?だけど不思議なことに、一番上に君が選んだカードがあるんだよ」
 とアデルに言う。アデルもまさかという顔をしているが、それはリオンもルゼルも同じだ。
 「じゃ、一番上をめくってみて」
 とラウルが今度はリゼルに言う。リゼルは「はい、わかりました」と言って一番上のカードをめくる。
 大人も子どもも緊張の瞬間だ。果たして…リゼルがめくったカードは…
 「!クラブのジャック…」
 「おお」
 大人は拍手。ユリアンとリゼルも拍手。
 「すごい…これが手品…」
 アデルは呆然とし、
 「きゃー」
 「きゃー」
 リオンとルゼルは大喜びだ。
 リディラは…この一連の様子を様々な角度からカメラにおさめていた。

 いよいよ、リオンとルゼルの幼稚園生活が始まる。
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