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第四章
第三十話 参観日初日。リオンたちの証言〜デビスがちょっと不憫
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その頃、ユリアンとリゼルは図書室で宿題をしながら今日学園を走った噂について話していた。
「ねぇリゼル、最近リディラが仲良くなったビクトリア嬢ってキエル副団長が迎えたという養女だったんだってね」
「うん。確かにトリーナ伯爵って言い慣れないからみんなキエル副団長って言っていてピンときていなかったよ」
「そのビクトリア嬢が啖呵を切ったというのも本当なのかな?」
「噂を聞くとリディラが言いそうな内容なんだけど…」
「私も思った。だけどビクトリア嬢は学長室に行って、リディラはそのまま授業受けていたんでしょ?だからやっぱり啖呵を切ったのはビクトリア嬢なんだよ」
「気になるね」
「気になるな」
時間軸として考えると、事件の起きた時にリオンたちはその場にいたはずだ。そんな時は記憶力の良いリオンたちと冷静に俯瞰視するアロンに聞くのが一番。二人は素早く宿題を終わらせるとリオンたちを探した。
リオンたちはアトリエにいた。そこには噂の本人、ビクトリアもいた。
「あ…っと、ビクトリア嬢とリディラ」
「あ、リゼル様、お邪魔しております」
綺麗な仕草で挨拶をするビクトリア。その様子からは噂の啖呵を切るような令嬢にはとても見えない。
「お兄様方、ご一緒にお茶します?」
「あ、ああ」
リディラの提案に歯切れの悪い兄たちだ。
「なんです?なんだかお兄様方変よ?」
「あ、うーん。今日の感想をルゼルたちに聞こうと思ったらリディラとビクトリア嬢もいたから聞きにくいというか…」
「あら、構わなくてよ。ねぇビクトリア」
「はい…。あの…私は色々あって今日の授業には出ていなかったので、授業の感想でしたら気を遣っていただくこともないので…」
いや、聞きたいのは授業の感想じゃないからなぁとユリアンたちが思っていると座って絵を描いていたリオンとルゼルが話し出した。
「あのね、アネーレの笛がとっても素敵素敵だったの」
「音が空気を伝わって広がるのお話も楽しかったの」
「まーいんねぇ様の笛とアニューレばいおいんはピッタリなの」
「アニューレたちの計算もすごかったです!」
「みんなスパパパ~って早いでした」
「ユリアンにぃしゃまん、かきかきないで計算なの」
「え?アロン、私が暗算していたのを見ていたの?」
「あい!みんな鉛筆でかきかきなの。でもでもアニューレはお空にかきかき」
あぁ、空中で指を動かしていたあれね。
「マグヌスしゃまん時々お机に指でかきかき。でもでも、ユリアンにぃしゃまん、こうで」
と、言ってアロンは腕を組む仕草をして
「こうで」
と、言って目を瞑り
「こうして、こう」
と、言って目をカッと見開いて、サッと挙手した。確かにユリアンの暗算スタイルだ。
「似てる!」
そう言ってリゼルが笑った。
「ええ?私ってそんなことしてる?」
ユリアンが照れた。
そして次に話し出したのはリオンだ。
「だけど今日一番すごいだったのはビクトリア様です」
「え?わ、私?」
アロンたちの可愛い報告を、孤児院にいる年下の子たちを思い出しながらにこやかに聞いていたビクトリアは、急に自分の名前を出されて驚いた。
「はい!ビクトリア様、とてもかっこいいでした!」
ルゼルの言葉にアロンも頷き、リディラが続ける。
「あれは痺れたわ」
リディラが痺れるビクトリアの啖呵?知りたい!ユリアンは素知らぬ顔でリオンに聞いた。
「それはどんな?」
前のめりのリオンが先に話し出した。
「はい!兄上!あのあの!デビス・タビアスというお兄様がビクトリア様に意地悪をしていたの!とても悪いこと!」
リオンに続いてルゼルが言う。
「デビス・タビアス様は悪い子なの!」
ここからはリオンとルゼルが眉間にシワを寄せたりプクーと頬を膨らませながら交互に話し出す。
「ビクトリア様の鉛筆を折ったの」
「ビクトリア様のおてても踏もうとしたの」
「デビス・タビアス様は紳士のカザカミにオケナイの」
「貴族のキョージがミウケラレナイの」
「だからビクトリア様がビシッて言ったの」
「デビス・タビアス様はイバリンボだって」
「なーんにもできないの人だって」
「デビス・タビアス様には侯爵家のチャクナンていうことしかないの人だって」
「そう、デビス・タビアス様のとりえはチャクナンなだけなの」
「デビス・タビアス様は孤児院の4歳の人に負けるって」
「たいしたことないの人だって、ビクトリア様が!」
一気に話す二人の横でアロンはうんうんと頷き、リディラもそうそうと頷き、ビクトリアは両手で真っ赤になった顔を隠している。
「…それはなかなか」
ユリアンとリゼルは、それがどんな迫力ある口調だったのか目の前にいるビクトリアからは想像できないと思う一方で、流石ライラの目に止まるだけある令嬢だとも思っていた。さらに、デビスに対しては、同じ貴族家の嫡男としてその振る舞いには確かに紳士の風上に置けないところがあると当然怒りを抱きつつも、何にもできない人とか、取り柄が嫡男ということだけとか…そのあたりは身につまされるものがあった。
その後、リディラから発端はデビスたちがビクトリアの鉛筆を折ったこと、デビスがビクトリアの手も踏もうとしたこと、デビスがビクトリアを突き飛ばしたことなどを経てのビクトリアの啖呵だったと具体的な客観的事実の説明があった。
どうやら真相はユリアンたちが噂として聞いていたよりももっとドラマチックだったらしいと思っていると、アロンがポツリと言った。
「デビスタビアスしゃまん、ビクトリアねぇ様好きなの」
「はぁ?」
「えっ?」
「…んん?」
「あ?」
発声は違えど同じ表情で驚くユリアン、リゼル、リディラにビクトリアだ。
「何を言い出すの?アロンちゃん…」
リディラもそれは流石にないだろうと思っている。リオンとルゼルもビックリして目がまん丸だ。いつも以上に紫と翡翠が誇張して見える。それくらい衝撃的なアロンの呟きだった。最も動揺していたのはビクトリアだ。
「あ、あ、アロン様…な、ないないないない。ないです。それだけはないですよ」
ビクトリアがやっとのことで言った。だがアロンはケロリとして
「ううん。絶対絶対なの。デビスタビアスしゃまんもビックリなの」
ユリアンはアロンの言葉から、これはデビス自身も気づいていない想いなのかもしれないと思った。だが、もしそうだとしても話を聞く限りではデビスがビクトリアに好かれるとはとても思えない。それならばデビスは自分の想いに気づかないでいる方が良いのでは?と考えているとリオンとルゼルがまん丸な目のまま言った。
「…デビス・タビアス様、失恋します」
「大失恋です」
二人はデビスの失恋を決めつけていた。
確かに、デビスがビクトリアのことを好きだとしても何一つ好かれる要素が今のところないように思われた。
「うーん。デビス…」
取り柄は嫡男ということだけと言われたり、四歳児に「悪い子」と評されたり…
「ねぇユリアン…。すべて本当だったとしたらデビス・タビアスは自業自得なんだとは思うのだけど…」
「あぁ、わかるよリゼル…。そうだとしてもなんとなく、なんていうか…不憫な気になるというか…」
小声で話し合うユリアンたちに被せるように、アロンがトドメを刺した。
「さっき、ふくだんちょしゃまんにもお話ししたの。ふくだんちょしゃまん怒ったお顔で笑ってたの。『ハッ、フビンな奴め』言ってたの」
「うわっ」
と言ったのはユリアン。
「ふっ」
と笑ったのはリディラ。
何も言わず、顔を隠したまま耳まで赤くしたのはビクトリアだった。
「ねぇリゼル、最近リディラが仲良くなったビクトリア嬢ってキエル副団長が迎えたという養女だったんだってね」
「うん。確かにトリーナ伯爵って言い慣れないからみんなキエル副団長って言っていてピンときていなかったよ」
「そのビクトリア嬢が啖呵を切ったというのも本当なのかな?」
「噂を聞くとリディラが言いそうな内容なんだけど…」
「私も思った。だけどビクトリア嬢は学長室に行って、リディラはそのまま授業受けていたんでしょ?だからやっぱり啖呵を切ったのはビクトリア嬢なんだよ」
「気になるね」
「気になるな」
時間軸として考えると、事件の起きた時にリオンたちはその場にいたはずだ。そんな時は記憶力の良いリオンたちと冷静に俯瞰視するアロンに聞くのが一番。二人は素早く宿題を終わらせるとリオンたちを探した。
リオンたちはアトリエにいた。そこには噂の本人、ビクトリアもいた。
「あ…っと、ビクトリア嬢とリディラ」
「あ、リゼル様、お邪魔しております」
綺麗な仕草で挨拶をするビクトリア。その様子からは噂の啖呵を切るような令嬢にはとても見えない。
「お兄様方、ご一緒にお茶します?」
「あ、ああ」
リディラの提案に歯切れの悪い兄たちだ。
「なんです?なんだかお兄様方変よ?」
「あ、うーん。今日の感想をルゼルたちに聞こうと思ったらリディラとビクトリア嬢もいたから聞きにくいというか…」
「あら、構わなくてよ。ねぇビクトリア」
「はい…。あの…私は色々あって今日の授業には出ていなかったので、授業の感想でしたら気を遣っていただくこともないので…」
いや、聞きたいのは授業の感想じゃないからなぁとユリアンたちが思っていると座って絵を描いていたリオンとルゼルが話し出した。
「あのね、アネーレの笛がとっても素敵素敵だったの」
「音が空気を伝わって広がるのお話も楽しかったの」
「まーいんねぇ様の笛とアニューレばいおいんはピッタリなの」
「アニューレたちの計算もすごかったです!」
「みんなスパパパ~って早いでした」
「ユリアンにぃしゃまん、かきかきないで計算なの」
「え?アロン、私が暗算していたのを見ていたの?」
「あい!みんな鉛筆でかきかきなの。でもでもアニューレはお空にかきかき」
あぁ、空中で指を動かしていたあれね。
「マグヌスしゃまん時々お机に指でかきかき。でもでも、ユリアンにぃしゃまん、こうで」
と、言ってアロンは腕を組む仕草をして
「こうで」
と、言って目を瞑り
「こうして、こう」
と、言って目をカッと見開いて、サッと挙手した。確かにユリアンの暗算スタイルだ。
「似てる!」
そう言ってリゼルが笑った。
「ええ?私ってそんなことしてる?」
ユリアンが照れた。
そして次に話し出したのはリオンだ。
「だけど今日一番すごいだったのはビクトリア様です」
「え?わ、私?」
アロンたちの可愛い報告を、孤児院にいる年下の子たちを思い出しながらにこやかに聞いていたビクトリアは、急に自分の名前を出されて驚いた。
「はい!ビクトリア様、とてもかっこいいでした!」
ルゼルの言葉にアロンも頷き、リディラが続ける。
「あれは痺れたわ」
リディラが痺れるビクトリアの啖呵?知りたい!ユリアンは素知らぬ顔でリオンに聞いた。
「それはどんな?」
前のめりのリオンが先に話し出した。
「はい!兄上!あのあの!デビス・タビアスというお兄様がビクトリア様に意地悪をしていたの!とても悪いこと!」
リオンに続いてルゼルが言う。
「デビス・タビアス様は悪い子なの!」
ここからはリオンとルゼルが眉間にシワを寄せたりプクーと頬を膨らませながら交互に話し出す。
「ビクトリア様の鉛筆を折ったの」
「ビクトリア様のおてても踏もうとしたの」
「デビス・タビアス様は紳士のカザカミにオケナイの」
「貴族のキョージがミウケラレナイの」
「だからビクトリア様がビシッて言ったの」
「デビス・タビアス様はイバリンボだって」
「なーんにもできないの人だって」
「デビス・タビアス様には侯爵家のチャクナンていうことしかないの人だって」
「そう、デビス・タビアス様のとりえはチャクナンなだけなの」
「デビス・タビアス様は孤児院の4歳の人に負けるって」
「たいしたことないの人だって、ビクトリア様が!」
一気に話す二人の横でアロンはうんうんと頷き、リディラもそうそうと頷き、ビクトリアは両手で真っ赤になった顔を隠している。
「…それはなかなか」
ユリアンとリゼルは、それがどんな迫力ある口調だったのか目の前にいるビクトリアからは想像できないと思う一方で、流石ライラの目に止まるだけある令嬢だとも思っていた。さらに、デビスに対しては、同じ貴族家の嫡男としてその振る舞いには確かに紳士の風上に置けないところがあると当然怒りを抱きつつも、何にもできない人とか、取り柄が嫡男ということだけとか…そのあたりは身につまされるものがあった。
その後、リディラから発端はデビスたちがビクトリアの鉛筆を折ったこと、デビスがビクトリアの手も踏もうとしたこと、デビスがビクトリアを突き飛ばしたことなどを経てのビクトリアの啖呵だったと具体的な客観的事実の説明があった。
どうやら真相はユリアンたちが噂として聞いていたよりももっとドラマチックだったらしいと思っていると、アロンがポツリと言った。
「デビスタビアスしゃまん、ビクトリアねぇ様好きなの」
「はぁ?」
「えっ?」
「…んん?」
「あ?」
発声は違えど同じ表情で驚くユリアン、リゼル、リディラにビクトリアだ。
「何を言い出すの?アロンちゃん…」
リディラもそれは流石にないだろうと思っている。リオンとルゼルもビックリして目がまん丸だ。いつも以上に紫と翡翠が誇張して見える。それくらい衝撃的なアロンの呟きだった。最も動揺していたのはビクトリアだ。
「あ、あ、アロン様…な、ないないないない。ないです。それだけはないですよ」
ビクトリアがやっとのことで言った。だがアロンはケロリとして
「ううん。絶対絶対なの。デビスタビアスしゃまんもビックリなの」
ユリアンはアロンの言葉から、これはデビス自身も気づいていない想いなのかもしれないと思った。だが、もしそうだとしても話を聞く限りではデビスがビクトリアに好かれるとはとても思えない。それならばデビスは自分の想いに気づかないでいる方が良いのでは?と考えているとリオンとルゼルがまん丸な目のまま言った。
「…デビス・タビアス様、失恋します」
「大失恋です」
二人はデビスの失恋を決めつけていた。
確かに、デビスがビクトリアのことを好きだとしても何一つ好かれる要素が今のところないように思われた。
「うーん。デビス…」
取り柄は嫡男ということだけと言われたり、四歳児に「悪い子」と評されたり…
「ねぇユリアン…。すべて本当だったとしたらデビス・タビアスは自業自得なんだとは思うのだけど…」
「あぁ、わかるよリゼル…。そうだとしてもなんとなく、なんていうか…不憫な気になるというか…」
小声で話し合うユリアンたちに被せるように、アロンがトドメを刺した。
「さっき、ふくだんちょしゃまんにもお話ししたの。ふくだんちょしゃまん怒ったお顔で笑ってたの。『ハッ、フビンな奴め』言ってたの」
「うわっ」
と言ったのはユリアン。
「ふっ」
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