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97.公爵領の危機
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朝公爵邸に戻ると、公爵邸はひどい状況であった。建物がいたるところで破壊されている。多くの護衛の従士が殺されたようである。
公爵邸を襲った人間は撃退されたようであるが、傷つくと逃げずに自殺を図った暗殺者も多くいたようである。一応死体は片付けたようであるが、あちこちに血痕が残っている。公爵家の家族は無事のようである。
ユリアーネお義姉様が
「ハルトから連絡を受けてからすぐに、市内の従士を公爵邸に集め防御を固めたのだけど、このありさま。ハルトから連絡がなければ私たちも死んでいたと思うわ」
「トゥール公爵家の従士ってなんでこんなに弱いのだ。ネイメー伯爵家だと月に1回、多いと2回ぐらいは帝国の暗殺者が来るぞ。
それになんであんなにオーガや地竜をほっておいたのだ。あれだけ数が多いと、テイマーに統率されなくても被害が出るだろう」
「フアニートはあまり剣とか魔法とか強くなくて、それでほとんど部下の従士に任せているから」
「それで帝国との境の北の砦はどうなった」
「昨日はそれどころじゃなかったので何もしていないわ」
俺は帝国との境界の山岳地帯に索敵を行った。すると多数の帝国兵が南下してくるのが分かった。数は1万、それとも2万、よくわからん。
狭い山道を延々と行軍の列が見える。騎馬兵もいるようである。辺境伯家の守りが固いことから今回はトゥール公爵家に的を絞ったようである。
俺はユリアーネお義姉様に
「北の山岳地帯から帝国兵が南下してくる。数は1万以上2万以下ぐらいだ。北の砦は落ちたとみる方がいいだろう」
「えー、どうするの。公爵家の主力は魔獣討伐でナットー町に行っているし、ヴァルターズ従士もいないし。ハルト何とかしてよ」
「何とかしてと言われても、俺は公爵家の人間ではないので、俺は公爵家の人間に命令できない。
俺が命令できるのは、俺が連れてきたネイメー伯爵家の従士100人だけだ。
100人では2万の帝国兵には勝てない。
俺たちがナットー町を出る時、ヴァルターズ従士には領都が危ないとは伝えた」
「ハルトが命令できるようにすればいいのね。フアニートに話をするから来て」
ということでフアニート様がいる病室に連れてこられたのだが、フアニート様は状況の説明を受けると
「私が行ければいいのだけど、こんな状態なので、ハルト君、公爵領の軍の指揮を執ってほしい」
と言われたのだが
「ああ、この人は分かっていないのだ」
そう思った。
「そうじゃなくて、私が公爵家の人間に命令しても、公爵家の人間は言うことを聞かないということです。公爵家の血を引いている人間が命令しないといけないということです」
「息子のキニアニオに戦争に行けというのか。キニアニオは、まだ6歳だぞ。無理だ」
「無理じゃないです。私が冒険者としてテー公爵の護衛として王都行の一行に加わった時も6歳でしたし、途中30人の盗賊にも襲われました。
それに私の娘クララも6歳ですが、今回の公爵領の魔獣討伐に加わっていて、昨夜も一緒に戦闘に参加していました。
キニアニオ様が行かないというなら、帰らせてもらいます」
「見捨てるのか」
「見捨てるのではなく、2万の帝国軍に勝てないということです。私も死にたくないですから」
「わかった、キニアニオの同行を許可する。ただし、安全面については最大限の考慮を図ってほしい」
「それは約束できません。私は戦場の指揮を執るわけですから、キニアニオ様の安全については公爵家で護衛をつけてください」
「ユリア-ネ、すぐにヴァルターズ従士を呼び戻せ。そして、彼をキニアニオの護衛につけろ」
「わかったわ」
「それと、公爵様、この公爵家のことなので言いにくいのですが、公爵家の情報が帝国に漏れていると思うのです。そうでなければ、暗殺者の襲撃でこれだけの被害は出ないと思うのです。
ネイメー伯爵家にも帝国の暗殺者がよく来ますが、たいていは領都に入った段階で私のところに情報が来ます。町にもうちのスパイを忍ばせてありますので、彼らから情報が上がってきます。
私の予想ではメイドの何人かは公爵家の人間の予定を外部の人間に漏らしていると思います。
また公爵邸を警備する従士の1人あるいは2人ぐらい、それから、領軍のかなり上位にいる人間が軍の配置を漏らしていると思います。
でなければ、今回のような魔獣の氾濫に合わせて公爵邸の襲撃と公爵領へのスムーズな侵攻は出来ないと思います」
「わかった。これについても対処する」
「それと軍の動員については誰と話をすればいいのですか」
「ヴァルターズ従士だが、ヴァルターズ従士が戻るまではユリアーネと家令に話をしてほしい」
「わかりました」
「ハルト殿、無理を言って申し訳ないが、どうかトゥール公爵家を救ってほしい」
「できるだけはやってみます」
俺は今、公爵邸の一室で公爵領の地図を広げながらユリアーネお義姉様とキニアニオ様と家令とクララと一緒に戦況の確認と今後の予定を協議している。
帝国は北の山岳の山道を通って続々と公爵領に侵攻している。道が狭いこともあり、進軍の速度は遅い。しかし、時間をかければ敵が領都まで押し寄せ領都が包囲されてしまう。
これに対して、公爵軍の主力はナットー町で魔獣討伐をしており、すぐに呼び戻せる状況ではない。とりあえず、移動速度の速い騎兵だけでも呼び戻すことにした。
それと歩兵については領都あるいは周辺の町や村から市民兵を募集することにした。敵軍は約1万5千、対してこちらは騎兵が千、歩兵についてはどれくらい集まるかわからないが最低でも5千は集めたいと俺は言った。
そして、決戦の地は領都北方ブセルターンここに俺が土魔法で砦を作って、帝国軍を迎え撃つ。ここで帝国軍をくぎ付けにして、その間王国の救援軍が来るのを待つ。俺の予想では1か月ぐらい篭城すれば救援軍が来るだろうと思っている。
まず、俺とネイメー伯爵軍が魔道馬車で先行してブセルターンに向かい、砦の構築を図る。
クララはキニアニオ様の護衛に置いていく。
次にヴァルターズ従士と千人の騎兵が戻れば、彼らとともにキニアニオ様とクララがブセルターンに向かう。
歩兵は集まり次第、公爵家の30台の魔道馬車で領都とブセルターンの間をピストン輸送する。
これが今回決まった計画である。
公爵邸を襲った人間は撃退されたようであるが、傷つくと逃げずに自殺を図った暗殺者も多くいたようである。一応死体は片付けたようであるが、あちこちに血痕が残っている。公爵家の家族は無事のようである。
ユリアーネお義姉様が
「ハルトから連絡を受けてからすぐに、市内の従士を公爵邸に集め防御を固めたのだけど、このありさま。ハルトから連絡がなければ私たちも死んでいたと思うわ」
「トゥール公爵家の従士ってなんでこんなに弱いのだ。ネイメー伯爵家だと月に1回、多いと2回ぐらいは帝国の暗殺者が来るぞ。
それになんであんなにオーガや地竜をほっておいたのだ。あれだけ数が多いと、テイマーに統率されなくても被害が出るだろう」
「フアニートはあまり剣とか魔法とか強くなくて、それでほとんど部下の従士に任せているから」
「それで帝国との境の北の砦はどうなった」
「昨日はそれどころじゃなかったので何もしていないわ」
俺は帝国との境界の山岳地帯に索敵を行った。すると多数の帝国兵が南下してくるのが分かった。数は1万、それとも2万、よくわからん。
狭い山道を延々と行軍の列が見える。騎馬兵もいるようである。辺境伯家の守りが固いことから今回はトゥール公爵家に的を絞ったようである。
俺はユリアーネお義姉様に
「北の山岳地帯から帝国兵が南下してくる。数は1万以上2万以下ぐらいだ。北の砦は落ちたとみる方がいいだろう」
「えー、どうするの。公爵家の主力は魔獣討伐でナットー町に行っているし、ヴァルターズ従士もいないし。ハルト何とかしてよ」
「何とかしてと言われても、俺は公爵家の人間ではないので、俺は公爵家の人間に命令できない。
俺が命令できるのは、俺が連れてきたネイメー伯爵家の従士100人だけだ。
100人では2万の帝国兵には勝てない。
俺たちがナットー町を出る時、ヴァルターズ従士には領都が危ないとは伝えた」
「ハルトが命令できるようにすればいいのね。フアニートに話をするから来て」
ということでフアニート様がいる病室に連れてこられたのだが、フアニート様は状況の説明を受けると
「私が行ければいいのだけど、こんな状態なので、ハルト君、公爵領の軍の指揮を執ってほしい」
と言われたのだが
「ああ、この人は分かっていないのだ」
そう思った。
「そうじゃなくて、私が公爵家の人間に命令しても、公爵家の人間は言うことを聞かないということです。公爵家の血を引いている人間が命令しないといけないということです」
「息子のキニアニオに戦争に行けというのか。キニアニオは、まだ6歳だぞ。無理だ」
「無理じゃないです。私が冒険者としてテー公爵の護衛として王都行の一行に加わった時も6歳でしたし、途中30人の盗賊にも襲われました。
それに私の娘クララも6歳ですが、今回の公爵領の魔獣討伐に加わっていて、昨夜も一緒に戦闘に参加していました。
キニアニオ様が行かないというなら、帰らせてもらいます」
「見捨てるのか」
「見捨てるのではなく、2万の帝国軍に勝てないということです。私も死にたくないですから」
「わかった、キニアニオの同行を許可する。ただし、安全面については最大限の考慮を図ってほしい」
「それは約束できません。私は戦場の指揮を執るわけですから、キニアニオ様の安全については公爵家で護衛をつけてください」
「ユリア-ネ、すぐにヴァルターズ従士を呼び戻せ。そして、彼をキニアニオの護衛につけろ」
「わかったわ」
「それと、公爵様、この公爵家のことなので言いにくいのですが、公爵家の情報が帝国に漏れていると思うのです。そうでなければ、暗殺者の襲撃でこれだけの被害は出ないと思うのです。
ネイメー伯爵家にも帝国の暗殺者がよく来ますが、たいていは領都に入った段階で私のところに情報が来ます。町にもうちのスパイを忍ばせてありますので、彼らから情報が上がってきます。
私の予想ではメイドの何人かは公爵家の人間の予定を外部の人間に漏らしていると思います。
また公爵邸を警備する従士の1人あるいは2人ぐらい、それから、領軍のかなり上位にいる人間が軍の配置を漏らしていると思います。
でなければ、今回のような魔獣の氾濫に合わせて公爵邸の襲撃と公爵領へのスムーズな侵攻は出来ないと思います」
「わかった。これについても対処する」
「それと軍の動員については誰と話をすればいいのですか」
「ヴァルターズ従士だが、ヴァルターズ従士が戻るまではユリアーネと家令に話をしてほしい」
「わかりました」
「ハルト殿、無理を言って申し訳ないが、どうかトゥール公爵家を救ってほしい」
「できるだけはやってみます」
俺は今、公爵邸の一室で公爵領の地図を広げながらユリアーネお義姉様とキニアニオ様と家令とクララと一緒に戦況の確認と今後の予定を協議している。
帝国は北の山岳の山道を通って続々と公爵領に侵攻している。道が狭いこともあり、進軍の速度は遅い。しかし、時間をかければ敵が領都まで押し寄せ領都が包囲されてしまう。
これに対して、公爵軍の主力はナットー町で魔獣討伐をしており、すぐに呼び戻せる状況ではない。とりあえず、移動速度の速い騎兵だけでも呼び戻すことにした。
それと歩兵については領都あるいは周辺の町や村から市民兵を募集することにした。敵軍は約1万5千、対してこちらは騎兵が千、歩兵についてはどれくらい集まるかわからないが最低でも5千は集めたいと俺は言った。
そして、決戦の地は領都北方ブセルターンここに俺が土魔法で砦を作って、帝国軍を迎え撃つ。ここで帝国軍をくぎ付けにして、その間王国の救援軍が来るのを待つ。俺の予想では1か月ぐらい篭城すれば救援軍が来るだろうと思っている。
まず、俺とネイメー伯爵軍が魔道馬車で先行してブセルターンに向かい、砦の構築を図る。
クララはキニアニオ様の護衛に置いていく。
次にヴァルターズ従士と千人の騎兵が戻れば、彼らとともにキニアニオ様とクララがブセルターンに向かう。
歩兵は集まり次第、公爵家の30台の魔道馬車で領都とブセルターンの間をピストン輸送する。
これが今回決まった計画である。
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