109 / 119
109.飲み屋で憂さ晴らし
しおりを挟む
その後、何日たっても、イングブリオ王国軍の指揮官は、フラ王国の艦隊に対する攻撃を仕掛ける様子がない。相変わらず、俺達だけで港の周囲を哨戒している。
イライラしてきたので、
「あの、フラ王国の艦隊はどうするのだ、また夜襲をかけられたら終わりではないか」
すると、
「この前のように、お前たちが哨戒に出て、フラ王国の艦隊の動きを知らせてくれればいい。今は冬だ。風向きも逆だし帆船は動きづらい。嵐にでも遭えば敵に会う前に全滅だ」
全く取り合ってくれない。
仕方がないので、また3隻で哨戒をしている。
こんな時は、ぱあーと、飲み屋へでも行って憂さを晴らすか。マンネリズム子爵と一緒に、港の飲み屋に行った。適当に入った飲み屋だったが、結構流行っている。
見ると、飲み屋の娘さんが給仕をしている。けっこうな美人である。さすが異世界。見ているだけで福眼である。
しかし、レンの怒った顔が浮かんできて、何もできない。
『旅の恥は掻き捨て』と言っても俺たちは貴族、すぐに誰だかばれる。
結局マンネリズム子爵とぐちぐち愚痴を言っていたら、
「お兄さんたち、港に来ている軍艦の水兵さん」
向こうから話しかけてきた。
「相手から声をかけてくるということは俺たちに気があるのでは」
何となくスケベ心が持ち上げてくる。
でもここは慎重に、相手にいい印象を与えて、〇〇はやっぱり無理かな。レンの怒った顔が再度浮かんでくる。
何気ない風をよそおい、
「そうだけど」
さらりと答える。
「ひょっとしてお貴族さん」
相手が嬉しそうな顔をして聞いてくる。
うーん、いい感じ、
「まあ、一応」
さらりと答える。
「やっぱりそうなのだ、何となくうちに来る客とは雰囲気が違っているから」
そこからは酒の勢いもあり、割と饒舌になる。
「一応、服は平民の服を着てきたけど、違うのかな」
「服は平民だけど、顔が違うから、そちらのお兄さんすごくいい男だし」
と言って、俺に迫ってくる。おおいい感じ。
でも
「俺は妻を愛しているので浮気をする気はない」
柄にもないことを言ってしまった。
レンの顔が浮かんだが、すぐにレンの顔はかき消してアンナやリズそしてエバの顔を思い浮かべて落ち着いた。
「やだー、お兄さん。本気にしたの、かわいい」
と言って、腕を絡めてくる。
これはひょっとして〇〇もありかな。しかし、やっぱり一歩踏み切れない自分が悲しい。
マンネリズム子爵も同じようである。こんな美人を前にして静観している。ひょっとするとマンネリズム子爵の妻はすごい美人だったりして。何となく悲しくなる。
取りあえず無難な回答をしておく
「お姉さん美人だし、こんなしがない下級貴族相手にしなくても、もっといい男がいるだろう」
すると娘さんは
「そうでもないよ、うちに来る客は、こんな上品な客は来ないから。私の体を上から下まで舐め回すように見て、いくらだと聞く」
やっぱりこんな美人だと〇〇したくなるよな。
でもそれを言うと俺たちの紳士のイメージが崩れる。
俺たちが何も言わないと、
「でも、誤解しないでよ、私そんなことしたことないから」
娘さんは慌てて答えた。
「そう、それはよかった」
そう、これは俺の心からの本音である。よかった〇〇のようである。
そんな会話をひとしきりした後、
「あのね、話変わるのだけど、この戦争が終わったら、私を屋敷で働かせてくれない。貴族のメイド、あこがれているの」
それを聞いて、
「こんな美人メイドが屋敷にいたらいいよな」
と思ってしまう。でも同時に
「レンが怒るだろうな」
とも思ってしまう。
「貴族のメイド、考えておく」
取りあえず無難な回答に終始する。
「絶対だよ、わたしはマリア、覚えていてね」
向こうも必死のようである。
「覚えていたらね」
そう言って飲み屋を後にした。
今日は楽しかった。若い娘さんと会話するのもいいもんだ。しかし最後は向こうもかなり必死だったような気がする。
他国でも平民の生活は大変なようだ。必死に生きる。何となくそんな暮らしの一端を垣間見たような気がした。
王国歴331年12月、フラ王国に置いてきぼりを食らって飲み屋で憂さを晴らすハルト、22歳、シフエルブルグ港は嵐の前の静けさである。
イライラしてきたので、
「あの、フラ王国の艦隊はどうするのだ、また夜襲をかけられたら終わりではないか」
すると、
「この前のように、お前たちが哨戒に出て、フラ王国の艦隊の動きを知らせてくれればいい。今は冬だ。風向きも逆だし帆船は動きづらい。嵐にでも遭えば敵に会う前に全滅だ」
全く取り合ってくれない。
仕方がないので、また3隻で哨戒をしている。
こんな時は、ぱあーと、飲み屋へでも行って憂さを晴らすか。マンネリズム子爵と一緒に、港の飲み屋に行った。適当に入った飲み屋だったが、結構流行っている。
見ると、飲み屋の娘さんが給仕をしている。けっこうな美人である。さすが異世界。見ているだけで福眼である。
しかし、レンの怒った顔が浮かんできて、何もできない。
『旅の恥は掻き捨て』と言っても俺たちは貴族、すぐに誰だかばれる。
結局マンネリズム子爵とぐちぐち愚痴を言っていたら、
「お兄さんたち、港に来ている軍艦の水兵さん」
向こうから話しかけてきた。
「相手から声をかけてくるということは俺たちに気があるのでは」
何となくスケベ心が持ち上げてくる。
でもここは慎重に、相手にいい印象を与えて、〇〇はやっぱり無理かな。レンの怒った顔が再度浮かんでくる。
何気ない風をよそおい、
「そうだけど」
さらりと答える。
「ひょっとしてお貴族さん」
相手が嬉しそうな顔をして聞いてくる。
うーん、いい感じ、
「まあ、一応」
さらりと答える。
「やっぱりそうなのだ、何となくうちに来る客とは雰囲気が違っているから」
そこからは酒の勢いもあり、割と饒舌になる。
「一応、服は平民の服を着てきたけど、違うのかな」
「服は平民だけど、顔が違うから、そちらのお兄さんすごくいい男だし」
と言って、俺に迫ってくる。おおいい感じ。
でも
「俺は妻を愛しているので浮気をする気はない」
柄にもないことを言ってしまった。
レンの顔が浮かんだが、すぐにレンの顔はかき消してアンナやリズそしてエバの顔を思い浮かべて落ち着いた。
「やだー、お兄さん。本気にしたの、かわいい」
と言って、腕を絡めてくる。
これはひょっとして〇〇もありかな。しかし、やっぱり一歩踏み切れない自分が悲しい。
マンネリズム子爵も同じようである。こんな美人を前にして静観している。ひょっとするとマンネリズム子爵の妻はすごい美人だったりして。何となく悲しくなる。
取りあえず無難な回答をしておく
「お姉さん美人だし、こんなしがない下級貴族相手にしなくても、もっといい男がいるだろう」
すると娘さんは
「そうでもないよ、うちに来る客は、こんな上品な客は来ないから。私の体を上から下まで舐め回すように見て、いくらだと聞く」
やっぱりこんな美人だと〇〇したくなるよな。
でもそれを言うと俺たちの紳士のイメージが崩れる。
俺たちが何も言わないと、
「でも、誤解しないでよ、私そんなことしたことないから」
娘さんは慌てて答えた。
「そう、それはよかった」
そう、これは俺の心からの本音である。よかった〇〇のようである。
そんな会話をひとしきりした後、
「あのね、話変わるのだけど、この戦争が終わったら、私を屋敷で働かせてくれない。貴族のメイド、あこがれているの」
それを聞いて、
「こんな美人メイドが屋敷にいたらいいよな」
と思ってしまう。でも同時に
「レンが怒るだろうな」
とも思ってしまう。
「貴族のメイド、考えておく」
取りあえず無難な回答に終始する。
「絶対だよ、わたしはマリア、覚えていてね」
向こうも必死のようである。
「覚えていたらね」
そう言って飲み屋を後にした。
今日は楽しかった。若い娘さんと会話するのもいいもんだ。しかし最後は向こうもかなり必死だったような気がする。
他国でも平民の生活は大変なようだ。必死に生きる。何となくそんな暮らしの一端を垣間見たような気がした。
王国歴331年12月、フラ王国に置いてきぼりを食らって飲み屋で憂さを晴らすハルト、22歳、シフエルブルグ港は嵐の前の静けさである。
1
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
召喚獣スライムに転生したが、美少女召喚士が自分のすごさにまったく気づかない
椎名 富比路
ファンタジー
美少女召喚士リップルに召喚される形で、スライムの【ロピ】ちゃんとして転生したヒロミ。
リップルは誰しも認める天才美少女召喚士で、召喚獣からも慕われている。
なのに、本人はまったく無自覚で、自分の力より召喚獣のほうが優秀だと思っている。
だが、ロピちゃん本人も、自分が最強だと気がついていなかったのである……。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
{完結保証}規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜
Saioonji
ファンタジー
母に殴られ、命を奪われた――そのはずだった。
だが目を覚ました先は、白く豪奢な王城の一室。
赤子の身体、仕えるメイド、そして“皇子”という立場。
前世では愛されず、名前すら価値を持たなかった少年が、
今度は世界の中心に生まれ落ちてしまった。
記憶を失ったふりをしながら、
静かに、冷静に、この世界を観察する皇子。
しかし彼の中には、すでに常識外れの思考と力が芽生えていた。
――これは復讐でも、救済でもない。
自由を求めただけの少年が、
やがて国を、歴史を、価値観そのものを揺るがしていく物語。
最強であることすら、彼にとってはただの前提条件だった。
重複投稿作品です
小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
2025/09/12(金)5巻発売!同日コミカライズ開始!
2026/03/16(月)コミカライズ1巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~
ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。
彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる