ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

08

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「ジェイデン、なぜ水不足なのか、教えて貰えるか?」

「え、ええ。でもその前に、殺気を抑えて貰えるかしら?ラースちゃんは仕方ないかもしれないけど、わたしですらツライわ。フェイトちゃんは………凄いわね、ある意味わたし以上だわ。」

そんなに漏れていたか。
申し訳なさを感じつつ、深呼吸して精神を落ちつける。

「すまなかった。」

「そんなになるなんて、本当にショックだったのね…。」

憐憫が滲んだ声で気遣われた。

「俺の家には温泉があったんだ。いつでも入り放題で……。」

もう、本当に辛い。

「あら、温泉ならこの国にもあるわよ。」

「っ!どこにあるんだ?」

「王都にはないし、お風呂として整備されてはいないけど、田舎の方に何ヶ所かあるわ。」

秘湯でも温泉なら良し!

「ありがとう、ジェイデン。希望が持てる。」

「風呂ってそんなに良いもんか?俺は入った事ないからわからんな。《クリーン》で用は足りるからな…。フェイトはどうだ?」

「僕もです。でもシオンさんがここまで魅了されてるんですから、とても良いものなんでしょうね。」

その通りだ、フェイト。
さすがにわかってるな。

「風呂や温泉の良さは入った者にしかわからない。だが、単に身体の汚れを落とすために入浴するのではないんだ。明日を生きる活力が得られるし、何より心も身体も気持ち良い。お湯に疲れが溶け出て行く感覚は堪らないぞ。」

他にも語れるが、風呂に入った事が無ければピンとこないだろう。

「そうね。身体の中からじんわり温まる、あの感覚………。とっても気持ち良いもの。」

「あなたは入浴の経験が?」

「ええ、ハンターの依頼で外国へ行ったときにね。」

と言う事は、この国じゃなければ風呂に入れる、と?

「そうか。ではこの国を出る事も選択肢に入ってくるな…。ハンターは国に縛られないと聞いたし、風呂文化のある所に拠点を置くのが良いか?」

「シオンさんこ「この国を出ていくのかっ、シオン!?」の国を出て行っちゃうんですか?」

ラースの剣幕に目を瞠る。

「どうした、ラース?」と問えば、はっ、として「いや、あの、……すまん」と歯切れが悪い。

「シオンさんが居なくなったら寂しいです……。」

「そんな顔しないでくれ。今すぐ出て行ける訳じゃ無いし、選択肢が増えただけだ。暫くはこの国に居るよ。」

「って事は結局出て行くんじゃねぇのかよ。」

すっかり拗ねてるじゃないか。

「何でそんなに膨れてるんだ?例え出て行ったとしても、ラースに会いたくなったら戻ってくるぞ?もちろんフェイト、ジェイデン、あなたたちにも。」

「ぐっ!ズルいぞ、その言い方!」
「僕、ついて行っちゃおうかな…。」
「ラースちゃん、遅めの青い春ね。」

「アンジェラさん!?あなたまでからかわないでくれ!」

やるな、ジェイデン。
俺もイジるか。

「もしそうなったら一緒に行こうか、フェイト?」

「良いんですか!?」
「俺も誘えよ!」

「何言ってんだ、あんたには工房があるだろう?」

俺の言葉にラースは頭を抱えながら「そうだった!」と叫んでいる。

こうも思い通りに反応されると、ニヤニヤしてしまうな。

「その顔…。また俺で遊んでんのか!」

「バレたか。俺を魔王扱いするからだ。」

「本気で拗ねるぞ!」

「あんたが拗ねても可愛くないぞ。なあ、フェイト。」

「うーん。可愛いより、子どもっぽいって感じですかね。」

「な。」

「俺、28だぞ!お前らより歳食ってんの!」

「若いって良いわぁ。」

あなたから見たら俺も子どもかな、ジェイデン。

「さて、話が前後して申し訳ないが、なぜ水不足なのか教えて貰えるか?」

「ええ。すごく単純な事なんだけど、この国の中央部はね、雨がほとんど降らないの。」

は?
じゃあどうやって水を確保してるんだ?
湧水と国境を越えてこちらに流れ下る河川か?
魔法のある世界だし、魔道具もか…。

「幸いなことに大きな地下水脈があってね、そこから魔道具を使って汲み上げてるの。でも、水脈があっても汲み上げる能力は限られてるから、お風呂みたいにたくさん水が必要なものには使えないの。建物には貯水タンクがあってね、上水用タンクに決まった量の水が送られてきて、使った水は下水タンクに溜めておくの。その水は下水道を通して集められて《クリーン》をした後で農業なんかに使われてるわ。」

風呂に回す水が無いなんて…。
涙が出そうだ。

「魔道具はどうなんだ?水は生み出せないのか?」

是非ともできると言ってほしい。

「えっと、あるにはあるんですが……。」

良くない話みたいだな…。

「費用対効果がとても悪いんです。魔道具の素材もかなり高価ですし、運用しようとすると膨大な魔力を消費します。魔法を付与したり素材を加工するので、僕の魔力はそれなりに多いのですが、それでもバケツ1杯分くらいが限界でしょうね。」

「と、いうことは…。」

「魔道具で水を生み出すのは現実的ではありません。」

魂、抜けそうだ。
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