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卵の国
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ここは、卵の国。
僕の仕事は、卵を配達棚に入れること。
卵の種類は次々と増えるため、今では100億なのか1000億なのか、それとも、もっと沢山なのか、誰にもわからない。
だけど、僕は、新しい卵が運ばれてくると、その卵が何の卵なのかを突き止めるため、卵図鑑の中からその卵の名前を探し出さなくてはならないんだ。
どうしても見つからない時は、卵博士のところへ行って、直接卵を見てもらうしかない。
今日も、新しい卵が届いた。
さっきから、図鑑をめくっているけれど、どうにも名前が見つからない。
僕は仕方なく卵を抱えると、卵博士のところへ急いだ。
だけど、慌てたせいで、石ころにつまづいて、卵を落としてしまった。
僕は、しまった!と思ったけれど、その卵の殻はすごく硬くて、どうにか割れずに済んだ。
うっかり卵を落として割ってしまったら大変だ。
そんな時は僕が卵にされて、配達されることになる。
僕の仲間の何人かは、もうすでに卵になった。
つまり、卵博士のところへ卵を持っていく途中で卵を落として割ってしまったのだ。
そして、彼らは卵になって、配達先へ届けられた。
運よく命として生まれることができた仲間もいたけれど、届けられた先で割られてフライパンの上で焼かれて、あっという間に食べられてしまった仲間もいる。
まあ、彼らも、配達先の人の体の一部になったわけだから、全く役に立たなかったとは言いきれない。
だけど、僕はまだこの仕事をしていたいから、卵にはなりたくない。
「博士、卵を持ってきました」
「おお、今度はどんな卵かな?」
博士は曇ったメガネをこすりながら近づいてきた。
「これは、う~ん、たしか、あれだ!」
博士は積み上げられた分厚い本の中から一冊を取り出した。
当然の様に他の本は床の上に落ちてしまったけれど、博士はおかまいなしだ。
そして、どんどんページをめくった。
「これだ!」
博士はあるページを指さした。
そこには、ウンダラットの卵と書いてあった。
「ウンダラットっていうんですか」
「そうだ。わしも、これにお目にかかるのは初めてだ」
博士はワクワクした表情で卵を持ち上げると、ひっくり返したり揺らしたりしながら観察を続けた。
そして、ウンダラットのページに何か書き込むと本を閉じた。
「さあ、持っていきなさい」
「はい。ありがとうございました」
僕は、今度は落とさないようにと注意しながら、それでも大急ぎで、卵を持ち帰った。
卵の国では、次にどんな卵を作るか決める卵議会が開かれる。
そして、卵工場で卵が作られ、次に僕が働いている卵配送センターに運ばれ、そのあと卵配送業者によって配達先に運ばれていく。
配達先がどうやって決められているのかは誰も知らない。
それは卵の国のごく一部の偉い人だけに極秘で伝えられるらしい。
でも、それも本当なのかは分からない。
ただ、そんなことはどうでもよかった。
僕は、この仕事が好きだし、この仕事を任されていることに誇りを持っている。
「ただいま帰りました」
僕が配送センターの扉を開けると、なぜだか中はシンと静まり返っていた。
あれ、みんなはどこに行ったんだろう?
僕は仲間を探してみたけれど、誰もいない。
「おーい、みんな、どこに行ったんだよー」
僕は大きな声で呼んでみたけれど、返事はない。
こんなことは初めてで、僕はとても不安になった。
そして、まさかと思いながらも、僕は配達棚に近づいた。
すると、仲間の名前が書かれた卵が棚に並んでいた。
僕は最初ギョッとしたけれど、そのあと彼らの配送先を見てホッとしたんだ。
彼らの配送先は全て彼らの名前と同じだ。
つまり、彼らは彼らの生まれるべき場所へと届けられるのだから。
僕の仕事は、卵を配達棚に入れること。
卵の種類は次々と増えるため、今では100億なのか1000億なのか、それとも、もっと沢山なのか、誰にもわからない。
だけど、僕は、新しい卵が運ばれてくると、その卵が何の卵なのかを突き止めるため、卵図鑑の中からその卵の名前を探し出さなくてはならないんだ。
どうしても見つからない時は、卵博士のところへ行って、直接卵を見てもらうしかない。
今日も、新しい卵が届いた。
さっきから、図鑑をめくっているけれど、どうにも名前が見つからない。
僕は仕方なく卵を抱えると、卵博士のところへ急いだ。
だけど、慌てたせいで、石ころにつまづいて、卵を落としてしまった。
僕は、しまった!と思ったけれど、その卵の殻はすごく硬くて、どうにか割れずに済んだ。
うっかり卵を落として割ってしまったら大変だ。
そんな時は僕が卵にされて、配達されることになる。
僕の仲間の何人かは、もうすでに卵になった。
つまり、卵博士のところへ卵を持っていく途中で卵を落として割ってしまったのだ。
そして、彼らは卵になって、配達先へ届けられた。
運よく命として生まれることができた仲間もいたけれど、届けられた先で割られてフライパンの上で焼かれて、あっという間に食べられてしまった仲間もいる。
まあ、彼らも、配達先の人の体の一部になったわけだから、全く役に立たなかったとは言いきれない。
だけど、僕はまだこの仕事をしていたいから、卵にはなりたくない。
「博士、卵を持ってきました」
「おお、今度はどんな卵かな?」
博士は曇ったメガネをこすりながら近づいてきた。
「これは、う~ん、たしか、あれだ!」
博士は積み上げられた分厚い本の中から一冊を取り出した。
当然の様に他の本は床の上に落ちてしまったけれど、博士はおかまいなしだ。
そして、どんどんページをめくった。
「これだ!」
博士はあるページを指さした。
そこには、ウンダラットの卵と書いてあった。
「ウンダラットっていうんですか」
「そうだ。わしも、これにお目にかかるのは初めてだ」
博士はワクワクした表情で卵を持ち上げると、ひっくり返したり揺らしたりしながら観察を続けた。
そして、ウンダラットのページに何か書き込むと本を閉じた。
「さあ、持っていきなさい」
「はい。ありがとうございました」
僕は、今度は落とさないようにと注意しながら、それでも大急ぎで、卵を持ち帰った。
卵の国では、次にどんな卵を作るか決める卵議会が開かれる。
そして、卵工場で卵が作られ、次に僕が働いている卵配送センターに運ばれ、そのあと卵配送業者によって配達先に運ばれていく。
配達先がどうやって決められているのかは誰も知らない。
それは卵の国のごく一部の偉い人だけに極秘で伝えられるらしい。
でも、それも本当なのかは分からない。
ただ、そんなことはどうでもよかった。
僕は、この仕事が好きだし、この仕事を任されていることに誇りを持っている。
「ただいま帰りました」
僕が配送センターの扉を開けると、なぜだか中はシンと静まり返っていた。
あれ、みんなはどこに行ったんだろう?
僕は仲間を探してみたけれど、誰もいない。
「おーい、みんな、どこに行ったんだよー」
僕は大きな声で呼んでみたけれど、返事はない。
こんなことは初めてで、僕はとても不安になった。
そして、まさかと思いながらも、僕は配達棚に近づいた。
すると、仲間の名前が書かれた卵が棚に並んでいた。
僕は最初ギョッとしたけれど、そのあと彼らの配送先を見てホッとしたんだ。
彼らの配送先は全て彼らの名前と同じだ。
つまり、彼らは彼らの生まれるべき場所へと届けられるのだから。
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