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第二章 ノアは絶対死なせない!
第四十話
しおりを挟む「お嬢様に幸いお怪我もなかったようですし、申し訳ございませんが、私達は先に寮へと戻らせて頂きます。お嬢様はかなりお疲れのご様子なので、休ませてあげたいのです。」
アリアに促され、放心状態のまま立ち上がる。
「そうだね。その方がいい。マリアンヌ、大丈夫かい?送っていくよ。」
そう言って手を差し出される殿下。
「いえいえ殿下、マリアンヌは僕が送って行きますので。」
殿下の前に立ち塞がり、手を差し出すノア。二人は睨み合い、牽制しあっていた。
そこにアリアが咳払いをして口を挟む。
「殿下もノア様もありがとうございます。お嬢様は私が責任を持ってお送り致しますので、お二人はセリア様のお側にいてあげて下さいませんか?」
アリアに言われ、二人は「いや、しかし‥‥。」と渋っていたが、最後は「‥‥それでは、宜しく頼むよ。」とアリアに託された。
そしてアリアに手を引かれ、医務室を後にした。
到着した寮の部屋は白を基調とした落ち着いた雰囲気で、リビングと個室が二部屋あった。
アリアが温かい紅茶とお菓子を用意してくれたので、ソファーに座り、頂いた。
「‥‥美味しい‥‥。」
学園に来て初めて落ち着くことが出来たような気がする。
「アリア、学園にもついてきてくれて本当にありがとう。アリアがいてくれて本当に良かったわ‥‥。」
幼い頃より側にいてくれるアリアは歳の離れたお姉様的存在。
「いいえ、お嬢様が一人前になられるまでは他の者には任せておけません。お側にいさせて下さい。」
にっこりと微笑むアリア。いてくれるだけで安心するわ。
‥‥それにしてもノアも殿下も物凄くアプローチしてくれるけれど、正直言って疲れる。毎回ドキドキするけど、ドキドキするのは恋愛経験がないからよね‥‥?
「‥‥ねぇアリア。私、ノアも殿下も嫌いじゃないの。だけど、抱きしめられてもドキドキはするけど、あんまり嬉しくないというか‥‥。恋愛って、どんな感じなのかしら‥‥?」
おかしな事を聞いているのは分かっているけれど、訳が分からなくなって頭がパンクしそうだった。アリアはそんな私に優しく微笑みかけてくれる。
「お嬢様はまだ恋をしていらっしゃらないのですね。恋をすると毎日その人のことばかり考えてしまい、一挙手一投足に悩んだり、喜んだりしますよ。いつも側にいたい、触れたいとも思います。お嬢様はお二人をそのように思われますか?見ている限り、ノア様と恋人ごっこをされていてもあまり嬉しそうには見えませんでしたよ?」
‥‥二人とも眉目秀麗で文武両道、かなり素敵なので、見惚れてしまう事はあるけれど‥‥‥そこまでは思わないかな‥‥‥?やっぱり、恋ではないのね。
「いつか私も恋ができるかしら?」
あんな素敵な二人にも恋しないなんて、一生恋が出来ないんじゃないかしら‥!?それはそれで嫌だわ‥‥。
「できますよ!私もお嬢様がどんな方に恋をされるのか楽しみです。その時は全力で応援しますから!」
「‥‥ありがとう。」
‥‥それと‥‥マクゴガナル様とセリア様のことはどうしましょう‥‥。きっと、私のこと憎んでいるわよね‥‥。
‥‥明日の入学式、大丈夫かしら‥‥?
‥‥今日は色々あったから眠れそうにないわ‥‥。
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