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原点
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宇宙防衛機構の息の根のかかった病院には、オーパーツのせいで異形化してしまった人々が入院している。
黎明期は、オーパーツに浸食されてしまった人々は殺す以外に対処方法がなく、真壁が宇宙防衛機構に来るまでは、オーパーツと人体の分離方法がわからなかったが。真壁の出す毒は、オーパーツにも効くということが判明してからは、彼の毒を分析した末に、エージェントたちの武装に加えられた。真壁本人ほど正確な射出方法が未だに存在しないものの、この毒素を使えばオーパーツと人間を切り分けることも可能だったが。
それでも人体改造されてしまった後遺症は残されたままだ。適合者として、オーパーツに人格を上書き乗っ取りをされることなく生活できる人間はごく稀だ。適合者である真壁ですら、彼の放つ毒が原因で、普通の家で衣食住をこなすのが困難だから宇宙防衛機構の居住区で生活をしているのだ。
人体を無理矢理改造されてしまったショックを、どうにかカウンセリングと薬物治療で和らげようとする者、どうにか改造されてしまったあとの肉体で生活するためにリハビリに努める者、様々であった。
その中で、必死にリハビリに励む少女がいた。体の遺伝子を無理矢理弄られたせいで、一時期は歩けなくなるのではないかと懸念されていた和歌子は、今は掴まりながらではあるが、少しずつ歩けるようになっていた。
「和歌子ちゃん、頑張って……!」
「は、はい……!」
オーパーツにより改造されてしまった人々は、時にはひどい偏見と差別にまみえる上、異形体になった姿を皆にさらしているのだから、あれそれと風評被害にさらされることが多いが。あまりにも自分のことしか考えてない教師陣はともかく、友人たちは心配してたびたびお見舞いに来ていたため、和歌子も苦しいリハビリに耐えられるようになっていた。
一歩、二歩、三歩……。
今日のノルマまで歩ききったときには、慌てて理学療法士に捕まり、車椅子に乗せられて自室に戻ろうとしていたとき。
「おや、あなたは」
和歌子の担当の理学療法士が顔を上げた先には、宇宙防衛機構のエージェントが立っていた。
「お前か、響和歌子は」
「あ、はい……あのときは、助けてくれてありがとうございます……」
和歌子は困惑して、全く愛想のないエージェントを見上げていた。彼が助けてくれなかったら、何故か出る障壁のせいでどんどん怪我人が増えていくのを、オーパーツにより硬化した肉体の中に閉じ込められてしまった和歌子は泣きながら見ていることしかできなかったが。助けてくれたエージェントは、任務中もオフのときも、あまりにも素っ気ないのに、和歌子は困惑していた。
「あ、あのう……なんでしょうか?」
「お前の出身地は、閉鎖地区で合ってるか?」
「あ……はい」
理学療法士は困惑した末に、「彼女も今はリハビリで疲れていますから、せめてお話は自室でお願いします」と言い、ふたりを和歌子の部屋に連れて行った。
本来ならばこの病室も六人ばかりが寝られるはずなのだが。オーパーツに浸食された人間の状態は本当に千差万別であり、長時間手術をしてひと月寝たきり状態の人もいれば、後遺症でずっと泣き叫んでいたり悲鳴を上げ続けている人もいるため、宇宙防衛機構からは「ひとりひとつの部屋でお願いします」と陳情している。和歌子は比較的早くにリハビリにまで進めた人間のため、ひとりで六人部屋を使うのも申し訳なく思っているが、それくらい広くなかったら夜中に悲鳴を上げたり脱走して看護師たちが慌てて追いかけ回す患者に遭遇したときに他のベッドに逃げ出すことができず、この部屋に渋々滞在している。
理学療法士は「なにかあったらすぐに呼び出しボタンを押してください」と和歌子に言うと、扉を開けたまんま立ち去っていった。
廊下では慌ただしく歩き回る看護師や医者が見える中、やっとベッドに戻ることができた和歌子はエージェントを見上げる。
「あのう、それで。私が閉鎖地区出身なことで、なにかありましたか?」
「一応俺もあそこ出身だからだ」
「あ……だとしたら、あそこであったこと、エージェントさんも覚えているんですか? 箝口令敷かれちゃってますけど」
今まで、いくら顔が整っていても、無表情で無愛想なのが怖く見えていたエージェントが、急激に親しみを覚えた和歌子は、そう尋ねる。
今はすっかりと閉鎖されてしまい、復興も再開発もされないまま放置されている場所。本来の名前もすっかりと忘れ去られ、いきなり故郷を奪われた人たちは渋々よそに引っ越さざるを得なくなった。
オーパーツが襲撃してきたにもかかわらず、なぜかニュースにもならず、SNSでも噂が流れることがない事件。あそこから離れて、だんだんあれはただの悪い夢なのではと思えてきた和歌子にとって、あそこに住んでいた人に対しては大なり小なり親しみがある。
エージェントはしばらく考えた末に、口を開いた。
「あのとき、なにがあったのか思い出せる範囲で教えてほしい」
「あれ、エージェントさんはあそこであったこと、覚えてないんですか?」
「……覚えてるから、今は宇宙防衛機構に身を寄せている」
「ああ、すみません……エージェントさんも、オーパーツの被害者……なんですよね?」
和歌子はそこまで言うと、エージェントはむっつりと口を閉じるのだから、これは言ってはいけないことだったのかと、慌てて「すみませんすみません、無神経ですみません」と謝るのに、エージェントは「謝らなくていい」とだけ言ってきた。
無愛想だし、無表情だが、別に無口ではないらしい。
「あそこにいきなりオーパーツが降ってきたところまでは覚えている。そのあと、俺は浸食されて、適合者になった」
「ああ……だとしたら、そのまま入院してて、覚えてないってことで合ってしまうか?」
エージェントが頷く。その中、和歌子は「あくまで私の視点ですけど」と前置きしてから、口を開いた。
「あのとき、オーパーツ襲来のことはニュースにはなかったと思います。でも、あそこでたくさん降ってきたせいで、街はボロボロになりました。あそこ、未だに20世紀の建物多かったんで……そこが一気に吹き飛んで瓦礫の山になったと思います。しばらくは、皆学校とか公民館に避難してましたけど、三日も経たない内に、国から退去命令が出ました」
「……国から? 市町村や県ではなく?」
「はい……意味がわかりません。今でもそれに対して怒っている人たちは、あそこになにをどうやってるのかまで知りませんが、抗議活動で住んでいますし……あそこの復興も再開発も進まないせいで、私たちは帰れません」
「……わかった」
そこまで言ってから、エージェントはポンと和歌子のベッドの近くのサイドテーブルになにかを置いた。お見舞いで生花は捨てないといけなく、植木は論外。彼が持ってきたのはブリザーブフラワーであり、始末も持ち帰りも比較的楽なものだった。
「長いこと世話になった」
「い、いえ……私のなにがお役に立てるのかわかりませんけど。お役に立てたのなら嬉しいです!」
「……ガキがあんまりそういうこと言うな。悪い奴らに利用されんぞ」
それだけ言い残し、エージェントは去って行った。
和歌子は少しだけぽかぽかしたものを感じながら、ブリザーブフラワーの中身を見た。
紫色を基調とした花であり、入れられている花はガーベラとニゲラで、花言葉も【前進】【不屈の精神】とやけに前向きなものばかりである。
それを見て口元を綻ばせつつ、和歌子は「あぁあ」と言った。
「あのお兄さん、もう恋人さんいるんだなあ……」
年頃の少女が、無愛想で無表情でも命懸けで助けてくれた上に、不器用な優しさが見え隠れする大人の男性に惹かれない訳がなかったが。これだけきめ細やかなお見舞いの品を持ってきて……食べ物だと仲がよくない限りはアレルギーのことを考えて持ってこられる訳がなく、見舞いの花もタブーを一切犯さずに選んでくる……なおかつ時間のことも気にして去って行く。あれだけぶっきらぼうな言動でそこまで気が回るということは、誰か親しい女性からの助言があったと考えて過言ではない。
和歌子の甘い恋は、あっという間に打ち砕かれてしまった。
****
真壁が病院から出てきたのを、長瀬は心配して見ていた。
「大丈夫でしたか? 後遺症とかは……」
「問題ない。意識もはっきりしていたし、リハビリでもあれだけ歩けてりゃ、あと一週間で退院といったところだろ。適合者でもないから、能力も消えていた」
「よかったあ……日常に戻れて」
彼女のように日常に戻れるケースは稀だ。大概は遺伝子操作の影響で持ってしまった能力に引きずり回される。真壁のように適合者になっていたのなら、オーパーツに人格を乗っ取られた後遺症もないからまだいいが。人格を乗っ取られ、悪事を働いていた良心の呵責で自分を追い込んでしまい日常に戻れなくなってしまうケースは後を経たないのだから。
「それで……いったいなにを聞きに行ってたんですか? びっくりしましたよ。水穂さんのお見舞いについていきたいなんて言い出したから」
元々長瀬は水穂のお見舞いに来ていたのだが、彼女は深度4まで浸食が進んでしまった上に、体が遺伝子操作のせいで大幅に弄られてしまっている。集中治療室に入れられて、最低限元の人間に近いように戻さないと、リハビリどころか人間としての生活もままならないため、ただ集中治療室に入れられた彼女を見守り、彼女の家族に頭を下げること以外に長瀬ができることはなかった。
真壁はじっと病院を見てから、長瀬のほうに視線を戻す。
「封鎖地区のことについて、話を聞いていた。あそこには、早乙女ですら数年かかってやっと調査許可が降りたと言っていたが」
「言っていましたね……真壁さんは当時のこと、ほとんど覚えては……」
「オーパーツ襲撃前のときはともかく、オーパーツ襲撃中のことはほとんど覚えてねえ。あそこでオーパーツにぶっ刺されていたから、そのまま病院に運ばれて、気付けば適合者になっていた。ここでなにが起こったのか全くわからん」
「あそこ、未だに人が住んでるんですよね……粉塵だらけで危なくないのかな」
「さあな。意味がわからねえから、抗議の声を上げてんだろ」
真壁は吐き捨てるように言った。
「……政府の連中はなにを掴んでやがる」
黎明期は、オーパーツに浸食されてしまった人々は殺す以外に対処方法がなく、真壁が宇宙防衛機構に来るまでは、オーパーツと人体の分離方法がわからなかったが。真壁の出す毒は、オーパーツにも効くということが判明してからは、彼の毒を分析した末に、エージェントたちの武装に加えられた。真壁本人ほど正確な射出方法が未だに存在しないものの、この毒素を使えばオーパーツと人間を切り分けることも可能だったが。
それでも人体改造されてしまった後遺症は残されたままだ。適合者として、オーパーツに人格を上書き乗っ取りをされることなく生活できる人間はごく稀だ。適合者である真壁ですら、彼の放つ毒が原因で、普通の家で衣食住をこなすのが困難だから宇宙防衛機構の居住区で生活をしているのだ。
人体を無理矢理改造されてしまったショックを、どうにかカウンセリングと薬物治療で和らげようとする者、どうにか改造されてしまったあとの肉体で生活するためにリハビリに努める者、様々であった。
その中で、必死にリハビリに励む少女がいた。体の遺伝子を無理矢理弄られたせいで、一時期は歩けなくなるのではないかと懸念されていた和歌子は、今は掴まりながらではあるが、少しずつ歩けるようになっていた。
「和歌子ちゃん、頑張って……!」
「は、はい……!」
オーパーツにより改造されてしまった人々は、時にはひどい偏見と差別にまみえる上、異形体になった姿を皆にさらしているのだから、あれそれと風評被害にさらされることが多いが。あまりにも自分のことしか考えてない教師陣はともかく、友人たちは心配してたびたびお見舞いに来ていたため、和歌子も苦しいリハビリに耐えられるようになっていた。
一歩、二歩、三歩……。
今日のノルマまで歩ききったときには、慌てて理学療法士に捕まり、車椅子に乗せられて自室に戻ろうとしていたとき。
「おや、あなたは」
和歌子の担当の理学療法士が顔を上げた先には、宇宙防衛機構のエージェントが立っていた。
「お前か、響和歌子は」
「あ、はい……あのときは、助けてくれてありがとうございます……」
和歌子は困惑して、全く愛想のないエージェントを見上げていた。彼が助けてくれなかったら、何故か出る障壁のせいでどんどん怪我人が増えていくのを、オーパーツにより硬化した肉体の中に閉じ込められてしまった和歌子は泣きながら見ていることしかできなかったが。助けてくれたエージェントは、任務中もオフのときも、あまりにも素っ気ないのに、和歌子は困惑していた。
「あ、あのう……なんでしょうか?」
「お前の出身地は、閉鎖地区で合ってるか?」
「あ……はい」
理学療法士は困惑した末に、「彼女も今はリハビリで疲れていますから、せめてお話は自室でお願いします」と言い、ふたりを和歌子の部屋に連れて行った。
本来ならばこの病室も六人ばかりが寝られるはずなのだが。オーパーツに浸食された人間の状態は本当に千差万別であり、長時間手術をしてひと月寝たきり状態の人もいれば、後遺症でずっと泣き叫んでいたり悲鳴を上げ続けている人もいるため、宇宙防衛機構からは「ひとりひとつの部屋でお願いします」と陳情している。和歌子は比較的早くにリハビリにまで進めた人間のため、ひとりで六人部屋を使うのも申し訳なく思っているが、それくらい広くなかったら夜中に悲鳴を上げたり脱走して看護師たちが慌てて追いかけ回す患者に遭遇したときに他のベッドに逃げ出すことができず、この部屋に渋々滞在している。
理学療法士は「なにかあったらすぐに呼び出しボタンを押してください」と和歌子に言うと、扉を開けたまんま立ち去っていった。
廊下では慌ただしく歩き回る看護師や医者が見える中、やっとベッドに戻ることができた和歌子はエージェントを見上げる。
「あのう、それで。私が閉鎖地区出身なことで、なにかありましたか?」
「一応俺もあそこ出身だからだ」
「あ……だとしたら、あそこであったこと、エージェントさんも覚えているんですか? 箝口令敷かれちゃってますけど」
今まで、いくら顔が整っていても、無表情で無愛想なのが怖く見えていたエージェントが、急激に親しみを覚えた和歌子は、そう尋ねる。
今はすっかりと閉鎖されてしまい、復興も再開発もされないまま放置されている場所。本来の名前もすっかりと忘れ去られ、いきなり故郷を奪われた人たちは渋々よそに引っ越さざるを得なくなった。
オーパーツが襲撃してきたにもかかわらず、なぜかニュースにもならず、SNSでも噂が流れることがない事件。あそこから離れて、だんだんあれはただの悪い夢なのではと思えてきた和歌子にとって、あそこに住んでいた人に対しては大なり小なり親しみがある。
エージェントはしばらく考えた末に、口を開いた。
「あのとき、なにがあったのか思い出せる範囲で教えてほしい」
「あれ、エージェントさんはあそこであったこと、覚えてないんですか?」
「……覚えてるから、今は宇宙防衛機構に身を寄せている」
「ああ、すみません……エージェントさんも、オーパーツの被害者……なんですよね?」
和歌子はそこまで言うと、エージェントはむっつりと口を閉じるのだから、これは言ってはいけないことだったのかと、慌てて「すみませんすみません、無神経ですみません」と謝るのに、エージェントは「謝らなくていい」とだけ言ってきた。
無愛想だし、無表情だが、別に無口ではないらしい。
「あそこにいきなりオーパーツが降ってきたところまでは覚えている。そのあと、俺は浸食されて、適合者になった」
「ああ……だとしたら、そのまま入院してて、覚えてないってことで合ってしまうか?」
エージェントが頷く。その中、和歌子は「あくまで私の視点ですけど」と前置きしてから、口を開いた。
「あのとき、オーパーツ襲来のことはニュースにはなかったと思います。でも、あそこでたくさん降ってきたせいで、街はボロボロになりました。あそこ、未だに20世紀の建物多かったんで……そこが一気に吹き飛んで瓦礫の山になったと思います。しばらくは、皆学校とか公民館に避難してましたけど、三日も経たない内に、国から退去命令が出ました」
「……国から? 市町村や県ではなく?」
「はい……意味がわかりません。今でもそれに対して怒っている人たちは、あそこになにをどうやってるのかまで知りませんが、抗議活動で住んでいますし……あそこの復興も再開発も進まないせいで、私たちは帰れません」
「……わかった」
そこまで言ってから、エージェントはポンと和歌子のベッドの近くのサイドテーブルになにかを置いた。お見舞いで生花は捨てないといけなく、植木は論外。彼が持ってきたのはブリザーブフラワーであり、始末も持ち帰りも比較的楽なものだった。
「長いこと世話になった」
「い、いえ……私のなにがお役に立てるのかわかりませんけど。お役に立てたのなら嬉しいです!」
「……ガキがあんまりそういうこと言うな。悪い奴らに利用されんぞ」
それだけ言い残し、エージェントは去って行った。
和歌子は少しだけぽかぽかしたものを感じながら、ブリザーブフラワーの中身を見た。
紫色を基調とした花であり、入れられている花はガーベラとニゲラで、花言葉も【前進】【不屈の精神】とやけに前向きなものばかりである。
それを見て口元を綻ばせつつ、和歌子は「あぁあ」と言った。
「あのお兄さん、もう恋人さんいるんだなあ……」
年頃の少女が、無愛想で無表情でも命懸けで助けてくれた上に、不器用な優しさが見え隠れする大人の男性に惹かれない訳がなかったが。これだけきめ細やかなお見舞いの品を持ってきて……食べ物だと仲がよくない限りはアレルギーのことを考えて持ってこられる訳がなく、見舞いの花もタブーを一切犯さずに選んでくる……なおかつ時間のことも気にして去って行く。あれだけぶっきらぼうな言動でそこまで気が回るということは、誰か親しい女性からの助言があったと考えて過言ではない。
和歌子の甘い恋は、あっという間に打ち砕かれてしまった。
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真壁が病院から出てきたのを、長瀬は心配して見ていた。
「大丈夫でしたか? 後遺症とかは……」
「問題ない。意識もはっきりしていたし、リハビリでもあれだけ歩けてりゃ、あと一週間で退院といったところだろ。適合者でもないから、能力も消えていた」
「よかったあ……日常に戻れて」
彼女のように日常に戻れるケースは稀だ。大概は遺伝子操作の影響で持ってしまった能力に引きずり回される。真壁のように適合者になっていたのなら、オーパーツに人格を乗っ取られた後遺症もないからまだいいが。人格を乗っ取られ、悪事を働いていた良心の呵責で自分を追い込んでしまい日常に戻れなくなってしまうケースは後を経たないのだから。
「それで……いったいなにを聞きに行ってたんですか? びっくりしましたよ。水穂さんのお見舞いについていきたいなんて言い出したから」
元々長瀬は水穂のお見舞いに来ていたのだが、彼女は深度4まで浸食が進んでしまった上に、体が遺伝子操作のせいで大幅に弄られてしまっている。集中治療室に入れられて、最低限元の人間に近いように戻さないと、リハビリどころか人間としての生活もままならないため、ただ集中治療室に入れられた彼女を見守り、彼女の家族に頭を下げること以外に長瀬ができることはなかった。
真壁はじっと病院を見てから、長瀬のほうに視線を戻す。
「封鎖地区のことについて、話を聞いていた。あそこには、早乙女ですら数年かかってやっと調査許可が降りたと言っていたが」
「言っていましたね……真壁さんは当時のこと、ほとんど覚えては……」
「オーパーツ襲撃前のときはともかく、オーパーツ襲撃中のことはほとんど覚えてねえ。あそこでオーパーツにぶっ刺されていたから、そのまま病院に運ばれて、気付けば適合者になっていた。ここでなにが起こったのか全くわからん」
「あそこ、未だに人が住んでるんですよね……粉塵だらけで危なくないのかな」
「さあな。意味がわからねえから、抗議の声を上げてんだろ」
真壁は吐き捨てるように言った。
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