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律動
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普段ならば真壁のバイクに長瀬が乗るのがデフォルトだし、昨日は蛍の服のために迎えの車を呼んで移動したが。
今日は蛍が「巧兄ちゃんとがいい」と言い張ったため、真壁は蛍を後ろに乗せ、長瀬は柏葉の車に乗っていた。
「何度も言うけれど、後ろに乗るのはふたり乗りだからって意味だけでなく、後方支援の意味もあるから。もしオーパーツ襲撃が合っても飛び出さないでね。こちらも端末で情報追ってるから」
「長瀬はいっつもこんな面倒臭いことしてるの?」
「うん、そうだね、面倒臭いかもしれないけど、しないとその場にいる人の命にかかわるから」
「ふうん」
端末を蛍に持たせるか否かを悩んだが、結局は真壁に「オーパーツのアラートが鳴ってもそのまま先に蛍くんを封鎖地区に送ってあげてください。いくら戦えるからって、民間人を前線に出すのは気が引けます」と頭を下げた。
真壁はいつものむっつりとした無愛想な顔をして、長瀬を見た。
「問題はないと思うがな。あいつもずっとオーパーツのロボットを壊し続けてたんだし」
「……あの子、相手が人間の場合、真壁さんみたいに手加減できないと思いますから」
「ああ、そっちか。それならたしかに無理だな」
無理なのか。と真壁があっさりと認めたのに思わず突っ込みながら、移動したのである。
幸いというべきか、オーパーツ襲撃のアラートが鳴ることなく、封鎖地区まで到着できたみたいだ。
「ほら、長瀬さんは軽いもの運んで。こっちは比較的軽いけど必要な調味料一式」
「はい……出汁とかって、普段意識してないですけどかなり必要ですもんね」
「塩分は摂り過ぎても体壊すけど、なさ過ぎても体駄目にするからね」
長瀬が渡されたのは出汁一式。他のものと比べれば比較的軽いが、それでも袋にみっちり詰まっていたら量がある。醤油、味噌、塩なども同様に運びつつ、蛍は水や米を運びはじめた。真壁は野菜を運んでいる。
「これ、宇宙防衛機構からの」
「あら! これでもうちょっとだけレパートリー増やせるわね! ありがとう!」
「ん」
それぞれに食料を運び終えてから、真壁と長瀬は柏葉を連れて、帳と誠のいる部屋まで出かけていった。さすがに瓦礫だらけの場所にモニターだらけの部屋をつくっているとは思ってもいなかっただろう柏葉は、部屋の様子を見て当然ながら引きつっていた。
「……よくこれだけの設備で、うちのサーバーハッキング仕掛けられましたねえ……」
「まあ俺の異能と、才能」
「アハハハハ……すんません。こいつ引きこもりエリートなんで。引きこもって全部の生活済ませようってしてたような奴なんで、あまり気にせんでください!」
誠にベシベシと殴られる帳をなんとも言えない顔で見てから、「さて」と柏葉が口火を切った。
「ここで外宇宙人の居場所の特定をしたいから、早乙女さんから設置したいもの運ぶよう言われてたんだけど。これの設置の許可できる?」
「回線強化だったか? そりゃかまわねえが、大丈夫なのかね」
柏葉の許可取りに、あっさりと帳は許可を下ろしつつも、おかしなことを言う。
それに長瀬は「あの?」と尋ねた。
「外宇宙人の連中、あいつらもおそらくネット回線使って土地の情報見られる。この土地を龍脈として特定したのだって、おそらくはネットで地球の地図を観測したからだ。じゃかなったら、こんな古めかしいだけで歴史もなんもねえ場所選ぶ訳ねえんだわ」
「……これって、乗っ取った人たちの記憶見てるんでしょうか?」
「さあ? 外宇宙人に人格乗っ取られかけたケースを俺はあんまり知らない」
真壁はしばらく黙ってから、長瀬に「おい」と言った。長瀬は頷いた。
「あのう……私たちの知人でひとりだけ、深度4……本当に外宇宙人に人格ごと乗っ取られてギリギリ助けたケースが存在するんですけど。聞いてみてもいいですか?」
「なんだ、いたのか。そんな奴」
「はい。柏葉さん、回線強化は少しだけ待ってください。ひとまずは情報抜いてきます」
「了解。ただ自分はさすがにオーパーツとは戦えないから、なるべく早く戻ってきてね」
「はい! 真壁さん行きましょう」
「ん」
ふたりは慌てて病院へと向かっていった。
****
水穂はリハビリで、なんとか補助を使って歩けるくらいには回復していた。あれだけ硬化していた皮膚も無事に元の人の肌に戻り、元気にしていた。ただ元々綺麗だった彼女の長い髪は病院内の理容室で失敗したのか、下手なショートカットになってしまっていたのだけは残念だった。
「もう最悪! 私だったらもっと綺麗に髪を切るのに! リハビリの邪魔にならないんだったら髪なんて切らなかったのに本当にもう!」
「水穂さんお元気になって本当によかったです……」
「本当。でもふたりとも急いでどうしたの? 最近封鎖地区に通ってるとかは、前にひょろっとお見舞いに来てくれた柏葉さんが教えてくれたけど」
「柏葉さん、水穂さんところにお見舞い来てたんですか……」
「うふふ、接点がほとんどないから嬉しかったぁ……」
柏葉は早乙女と一緒にあれこれ裏仕事をしている臭いから、大方彼女の人格が本当に外宇宙人に乗っ取られたままじゃないか確認に来ていたのだろう。仲がいい長瀬では、彼女が変わってしまっていても「疲れているんだ」と言い訳をして、どうしても贔屓目で目が曇ってしまうから。でも柏葉がなにも言わないということは、彼女の人格は元の彼女のものなのだろうと、そこは安心する。
ふたりがしゃべっているのにいい加減鬱陶しくなったのか、真壁が「おい」と口を挟んできた。
「あんたは外宇宙人に体を乗っ取られていたが、あれはどういう感覚なんだ?」
「どういう……と言われても……」
「……あんたが体を乗っ取られていたときの記憶を覚えているか、否かだ」
「……上手く言えないんだけど、私の体が勝手にオーパーツで弄られたとき、目で見ているものが全部モニター越しの光景に見えたのよね……自分のものという実感がないというか。私の体がなんかとっても悪いことしてるって見えているんだけど、でもこれ私はここにいるんだから、私がしてる訳じゃないっていう、変な感覚」
「……なるほど」
「でも外宇宙人は水穂さんと口調や考えがちょっとだけ似てましたよ。水穂さんはあそこまで残忍じゃないんですけど」
「えー、ヤダ。外宇宙人みたいな人格っってなに」
「ごめんなさい、者のたとえです……でも外宇宙人と意思疎通はできてたんで、やっぱり水穂さんの記憶を参照して、私たちとしゃべってたってことですかねえ?」
「知らん」
真壁にばっさりと切られつつ、念のため長瀬は水穂に尋ねる。
「……水穂さんオーパーツの欠片に突き刺されたとき、人格乗っ取られてましたけど。今はもう、その人格残ってないんですよねえ」
「残ってないわね。病院の先生だけでなく、宇宙防衛機構の人ともカウンセリングしたけど、綺麗さっぱり消えてて、なんか偉い人が頭抱えてた。外宇宙人とコンタクトできれば、オーパーツ襲撃のもろもろを解決する糸口が見つかったのかもしれないって」
「でしょうね……」
早乙女が変人過ぎるだけで、宇宙防衛機構の学者連中は概ね変人気質だ。元々宇宙に行くための技術を、宇宙からの防衛のために使わなければいけなくなってしまったから、余計に気を揉んでいるんだろう。
長瀬は「ありがとうございます」と挨拶してから、水穂のリハビリ室から帰ることにした。
「なんだかもうちょっと情報集まると思ったんですけど、あんまりでしたね」
「……いや、そうでもない」
「真壁さん?」
「……誰だ」
ふたりで駐車場に向かう中、真壁が手袋を外しながら病院の外を睨んだ。
アスファルトの上を、端正な顔つきの長身の男性が立っていた。この日本人場慣れして柔和な顔は、ニュースでさんざん見た覚えがある。
「……あなた……まさか。大河三兄弟の」
「どうも我々が読んでいた回線でわざわざ情報が追加されたので撒き餌ではないかと思いましたが。とんだ重要人物が手に入りそうですね」
「……誰のことだ」
「あなたは我々の一族の中でも危険な能力を持っているもの。あなたは本来永久封印のはずでしたが、テラフォーミングのために箱船から出してしまいました……それが、そもそもの間違いだったのです」
「……箱船?」
初めて聞く言葉だった。
とにかく、大河龍輝の姿をした外宇宙人が、いきなり病院前で接触してきたのだ。長瀬は合わせて端末を操る。
「市立本宮病院、市立本宮病院前で、深度5の外宇宙人と接触……大河龍輝の体を乗っ取っています」
実際に見るまで、信じていいのかわからなかったのだが、実際に見てみたらそうとしか言いようがない姿。
外宇宙人は酷薄に笑った。そして手を構える。それに長瀬はひやりとする。
その仕草は、水穂の体を乗っ取っていた外宇宙人がしていたものと全く同じもの。
「真壁さん! レーザービーム!」
「最近流行ってるのかよ」
手袋を取り、一気に毒霧を拡散させる。今この場から動けば、病院にレーザービームが焼かれる……ここにはオーパーツで被害を受けた人々が大勢治療とリハビリを受けている真っ最中なのだ。
霧を見て、「ふむ」と外宇宙人は唸る。
「地球人の体は不便ですね。その上、この毒は我々にも効く」
「石っころにも効くのかよ」
「ええ、悪用する気だったので、彼は極刑として、硬化刑に処したのですが、テラフォーミングの際に脱走しましたからね。まさか同じ場所に落下し、彼は地球人との同化に失敗して力だけ奪われ、我々は地球人との同化に成功するとは思ってもいませんでしたが」
「……そうかよ」
毒霧は使えるものの、彼を殺せば終わるという話でもあるまい。
真壁は続いて毒を撒く……痺れて動きを鈍らせるものだが、それは彼はひょいと避けた。
「毒は我々の知っている特性とほぼ同じもの。我々では毒には手に負えませんが」
「ならさっさと消えろ。ここから出て行け」
「同胞を守ろうとするのは素晴らしいことだと思います。ですが、彼女はどうなんでしょうね」
そう言いながら、彼は手から石を取り出した……それは紛れもなくオーパーツの欠片だった。彼はなんの迷いもなく、真壁の真後ろで本部とコンタクトを取っていた長瀬を狙ったのである。
今日は蛍が「巧兄ちゃんとがいい」と言い張ったため、真壁は蛍を後ろに乗せ、長瀬は柏葉の車に乗っていた。
「何度も言うけれど、後ろに乗るのはふたり乗りだからって意味だけでなく、後方支援の意味もあるから。もしオーパーツ襲撃が合っても飛び出さないでね。こちらも端末で情報追ってるから」
「長瀬はいっつもこんな面倒臭いことしてるの?」
「うん、そうだね、面倒臭いかもしれないけど、しないとその場にいる人の命にかかわるから」
「ふうん」
端末を蛍に持たせるか否かを悩んだが、結局は真壁に「オーパーツのアラートが鳴ってもそのまま先に蛍くんを封鎖地区に送ってあげてください。いくら戦えるからって、民間人を前線に出すのは気が引けます」と頭を下げた。
真壁はいつものむっつりとした無愛想な顔をして、長瀬を見た。
「問題はないと思うがな。あいつもずっとオーパーツのロボットを壊し続けてたんだし」
「……あの子、相手が人間の場合、真壁さんみたいに手加減できないと思いますから」
「ああ、そっちか。それならたしかに無理だな」
無理なのか。と真壁があっさりと認めたのに思わず突っ込みながら、移動したのである。
幸いというべきか、オーパーツ襲撃のアラートが鳴ることなく、封鎖地区まで到着できたみたいだ。
「ほら、長瀬さんは軽いもの運んで。こっちは比較的軽いけど必要な調味料一式」
「はい……出汁とかって、普段意識してないですけどかなり必要ですもんね」
「塩分は摂り過ぎても体壊すけど、なさ過ぎても体駄目にするからね」
長瀬が渡されたのは出汁一式。他のものと比べれば比較的軽いが、それでも袋にみっちり詰まっていたら量がある。醤油、味噌、塩なども同様に運びつつ、蛍は水や米を運びはじめた。真壁は野菜を運んでいる。
「これ、宇宙防衛機構からの」
「あら! これでもうちょっとだけレパートリー増やせるわね! ありがとう!」
「ん」
それぞれに食料を運び終えてから、真壁と長瀬は柏葉を連れて、帳と誠のいる部屋まで出かけていった。さすがに瓦礫だらけの場所にモニターだらけの部屋をつくっているとは思ってもいなかっただろう柏葉は、部屋の様子を見て当然ながら引きつっていた。
「……よくこれだけの設備で、うちのサーバーハッキング仕掛けられましたねえ……」
「まあ俺の異能と、才能」
「アハハハハ……すんません。こいつ引きこもりエリートなんで。引きこもって全部の生活済ませようってしてたような奴なんで、あまり気にせんでください!」
誠にベシベシと殴られる帳をなんとも言えない顔で見てから、「さて」と柏葉が口火を切った。
「ここで外宇宙人の居場所の特定をしたいから、早乙女さんから設置したいもの運ぶよう言われてたんだけど。これの設置の許可できる?」
「回線強化だったか? そりゃかまわねえが、大丈夫なのかね」
柏葉の許可取りに、あっさりと帳は許可を下ろしつつも、おかしなことを言う。
それに長瀬は「あの?」と尋ねた。
「外宇宙人の連中、あいつらもおそらくネット回線使って土地の情報見られる。この土地を龍脈として特定したのだって、おそらくはネットで地球の地図を観測したからだ。じゃかなったら、こんな古めかしいだけで歴史もなんもねえ場所選ぶ訳ねえんだわ」
「……これって、乗っ取った人たちの記憶見てるんでしょうか?」
「さあ? 外宇宙人に人格乗っ取られかけたケースを俺はあんまり知らない」
真壁はしばらく黙ってから、長瀬に「おい」と言った。長瀬は頷いた。
「あのう……私たちの知人でひとりだけ、深度4……本当に外宇宙人に人格ごと乗っ取られてギリギリ助けたケースが存在するんですけど。聞いてみてもいいですか?」
「なんだ、いたのか。そんな奴」
「はい。柏葉さん、回線強化は少しだけ待ってください。ひとまずは情報抜いてきます」
「了解。ただ自分はさすがにオーパーツとは戦えないから、なるべく早く戻ってきてね」
「はい! 真壁さん行きましょう」
「ん」
ふたりは慌てて病院へと向かっていった。
****
水穂はリハビリで、なんとか補助を使って歩けるくらいには回復していた。あれだけ硬化していた皮膚も無事に元の人の肌に戻り、元気にしていた。ただ元々綺麗だった彼女の長い髪は病院内の理容室で失敗したのか、下手なショートカットになってしまっていたのだけは残念だった。
「もう最悪! 私だったらもっと綺麗に髪を切るのに! リハビリの邪魔にならないんだったら髪なんて切らなかったのに本当にもう!」
「水穂さんお元気になって本当によかったです……」
「本当。でもふたりとも急いでどうしたの? 最近封鎖地区に通ってるとかは、前にひょろっとお見舞いに来てくれた柏葉さんが教えてくれたけど」
「柏葉さん、水穂さんところにお見舞い来てたんですか……」
「うふふ、接点がほとんどないから嬉しかったぁ……」
柏葉は早乙女と一緒にあれこれ裏仕事をしている臭いから、大方彼女の人格が本当に外宇宙人に乗っ取られたままじゃないか確認に来ていたのだろう。仲がいい長瀬では、彼女が変わってしまっていても「疲れているんだ」と言い訳をして、どうしても贔屓目で目が曇ってしまうから。でも柏葉がなにも言わないということは、彼女の人格は元の彼女のものなのだろうと、そこは安心する。
ふたりがしゃべっているのにいい加減鬱陶しくなったのか、真壁が「おい」と口を挟んできた。
「あんたは外宇宙人に体を乗っ取られていたが、あれはどういう感覚なんだ?」
「どういう……と言われても……」
「……あんたが体を乗っ取られていたときの記憶を覚えているか、否かだ」
「……上手く言えないんだけど、私の体が勝手にオーパーツで弄られたとき、目で見ているものが全部モニター越しの光景に見えたのよね……自分のものという実感がないというか。私の体がなんかとっても悪いことしてるって見えているんだけど、でもこれ私はここにいるんだから、私がしてる訳じゃないっていう、変な感覚」
「……なるほど」
「でも外宇宙人は水穂さんと口調や考えがちょっとだけ似てましたよ。水穂さんはあそこまで残忍じゃないんですけど」
「えー、ヤダ。外宇宙人みたいな人格っってなに」
「ごめんなさい、者のたとえです……でも外宇宙人と意思疎通はできてたんで、やっぱり水穂さんの記憶を参照して、私たちとしゃべってたってことですかねえ?」
「知らん」
真壁にばっさりと切られつつ、念のため長瀬は水穂に尋ねる。
「……水穂さんオーパーツの欠片に突き刺されたとき、人格乗っ取られてましたけど。今はもう、その人格残ってないんですよねえ」
「残ってないわね。病院の先生だけでなく、宇宙防衛機構の人ともカウンセリングしたけど、綺麗さっぱり消えてて、なんか偉い人が頭抱えてた。外宇宙人とコンタクトできれば、オーパーツ襲撃のもろもろを解決する糸口が見つかったのかもしれないって」
「でしょうね……」
早乙女が変人過ぎるだけで、宇宙防衛機構の学者連中は概ね変人気質だ。元々宇宙に行くための技術を、宇宙からの防衛のために使わなければいけなくなってしまったから、余計に気を揉んでいるんだろう。
長瀬は「ありがとうございます」と挨拶してから、水穂のリハビリ室から帰ることにした。
「なんだかもうちょっと情報集まると思ったんですけど、あんまりでしたね」
「……いや、そうでもない」
「真壁さん?」
「……誰だ」
ふたりで駐車場に向かう中、真壁が手袋を外しながら病院の外を睨んだ。
アスファルトの上を、端正な顔つきの長身の男性が立っていた。この日本人場慣れして柔和な顔は、ニュースでさんざん見た覚えがある。
「……あなた……まさか。大河三兄弟の」
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「……誰のことだ」
「あなたは我々の一族の中でも危険な能力を持っているもの。あなたは本来永久封印のはずでしたが、テラフォーミングのために箱船から出してしまいました……それが、そもそもの間違いだったのです」
「……箱船?」
初めて聞く言葉だった。
とにかく、大河龍輝の姿をした外宇宙人が、いきなり病院前で接触してきたのだ。長瀬は合わせて端末を操る。
「市立本宮病院、市立本宮病院前で、深度5の外宇宙人と接触……大河龍輝の体を乗っ取っています」
実際に見るまで、信じていいのかわからなかったのだが、実際に見てみたらそうとしか言いようがない姿。
外宇宙人は酷薄に笑った。そして手を構える。それに長瀬はひやりとする。
その仕草は、水穂の体を乗っ取っていた外宇宙人がしていたものと全く同じもの。
「真壁さん! レーザービーム!」
「最近流行ってるのかよ」
手袋を取り、一気に毒霧を拡散させる。今この場から動けば、病院にレーザービームが焼かれる……ここにはオーパーツで被害を受けた人々が大勢治療とリハビリを受けている真っ最中なのだ。
霧を見て、「ふむ」と外宇宙人は唸る。
「地球人の体は不便ですね。その上、この毒は我々にも効く」
「石っころにも効くのかよ」
「ええ、悪用する気だったので、彼は極刑として、硬化刑に処したのですが、テラフォーミングの際に脱走しましたからね。まさか同じ場所に落下し、彼は地球人との同化に失敗して力だけ奪われ、我々は地球人との同化に成功するとは思ってもいませんでしたが」
「……そうかよ」
毒霧は使えるものの、彼を殺せば終わるという話でもあるまい。
真壁は続いて毒を撒く……痺れて動きを鈍らせるものだが、それは彼はひょいと避けた。
「毒は我々の知っている特性とほぼ同じもの。我々では毒には手に負えませんが」
「ならさっさと消えろ。ここから出て行け」
「同胞を守ろうとするのは素晴らしいことだと思います。ですが、彼女はどうなんでしょうね」
そう言いながら、彼は手から石を取り出した……それは紛れもなくオーパーツの欠片だった。彼はなんの迷いもなく、真壁の真後ろで本部とコンタクトを取っていた長瀬を狙ったのである。
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