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律動
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長瀬の首を、オーパーツの鋭利や先端が貫こうとする。
真壁は咄嗟に彼女目がけて毒の粘液をかけようとするが、全部かけると彼女が火傷を負う。だからと言ってフルフェイスのヘルメットなしで毒霧を使う訳にもいかない。
「おい、長瀬……!!」
思わず真壁が大声で叫んだとき、本部と連絡をしていた長瀬が「真壁さん?」と振り返った途端、オーパーツが彼女の首に突き刺さった。
血が出たのも一瞬。彼女は一瞬目を剥くが、やがて彼女は困惑した。
「あ、あの……? これ抜いて大丈夫ですか?」
【深度ゼロ。そのまま抜けば取れます】
端末のアナウンスに合わせ、長瀬はオーパーツを抜くと、そのままオーパーツをロケットに押し込んだ。それを一部始終、大河龍輝の顔をした外宇宙人が確認していた。
「おかしい……オーパーツが浸食できず、同胞のデータもインストールできない……あなた何者ですか?」
「えっ? ……そんなこと言われましても」
「……もういい、しゃべんな。さっさと消えろ」
「いえ、困ります。終身刑に、同胞が肉体を得ることができない地球人なんて、放っておいたら我々にとってすぐ不利益なこととなるでしょう。あなたのことは、少々調べさせてもらいますね」
そう言った次の瞬間。真壁は肉眼で捉えることができなかった。
(このスピード……誠のものと同じか!?)
目に見えぬ速さで動いた外宇宙人は、そのまま長瀬を横抱きに抱えた。本来、極上の顔の男に抱きかかえられればときめくものだが、相手は地球に混沌と混乱を巻き起こし、現総理の息子の体を乗っ取った存在だ。ときめきよりも先に恐怖が勝つ。
「な、にする気ですか……っ!?」
「先程も言いましたが、あなたのことは少々調べさせていただきます。それでは終身刑の方。あなたはせいぜいこの身に再び罰を受けるのをお待ちください」
誠のようなスピードで、外宇宙人は忽然と姿を消した。それに真壁は「……畜生!」と吠えた。手袋も使わぬ拳は、大事なものを溶かしかねない。彼にも理性というものがあった。
****
(このところ、さらわれてばっかりだ……私、お姫様体質でもないし、今初めてオーパーツがすぐ抜ける体質だって知ったんだけど……でもこれ、蛍くんも言ってたな。『どうしてオーパーツに浸食されないの?』って。そんなこと言われても、私だって知らないのに)
長瀬は視界があまりにも猛スピードで変わる恐怖を、現実逃避でどうにかやり過ごしていた。今下手に動けば、どれだけのスピードで走っているのかわからないが、間違いなく落ちてミンチになる。そんな外宇宙もオーパーツも関係ない死に方は嫌だった。関係あっても嫌だが、関係のない死に方はもっと嫌だった。
でもだんだん見えてきた。封鎖地区にしては、やけに小綺麗な場所。
(前、こんな場所は見つからなかったような気がする……三年前の事故で、地主さんも亡くなったみたいだから、それで勝手に住み着いているの……?)
だが蛍も誠も帳すらも、どこから来たのか知らないと言っていた。帳の異能に引っかからなかったということは、彼らの持つ異能によって情報を遮断されたと考えたほうがいい。
長瀬はどうにか封鎖地区にいる帳や誠に連絡を取る手段を考えている間に、「着きました」と彼女は外宇宙人に堕とされた。
「おい、原住民を連れてきてどうする」
高速で走る男に声をかけてきたのは、長瀬を連れ去った男によく似た顔立ちをしつつも、髪の毛一本睫毛や産毛のひとつひとつまで違和感が拭えないような極上の美丈夫であった。元々大河三兄弟はアイドルのようにSNSで持て囃されていたため、長瀬でも顔は普通に知っているが、それでも彼らの異様さは、髪の毛から産毛までがオーパーツのように地球上だと存在しえないものに作り替えられてしまっている影響だろう。遺伝子を無理矢理弄って肉体を乗っ取り異能を与えられ、最終的に人格も乗っ取られる。
こうまざまざと見せられると、長瀬は恐怖と畏怖で身動きが取れなくなりそうになりながらも、どうにか胸元にある端末の感触を確認していた。今見つかって没収されたら困るため、堕とされたまま倒れたままの姿勢でいる。
「先程、終身刑の脱走者が乗っ取った原住民に出会いました」
「……そいつ大丈夫なのか?」
「どうも肉体は乗っ取り損ねたようで、あれの力を原住民が使っています。困りますね」
「……このところ、原住民の肉体が乗っ取れてもなお、冷凍封印されていたのは……」
「ええ。あれの猛毒のせいで、同胞は肉体を得ることを防がれていたようです」
彼らの話を聞きながら、長瀬は胸元の端末をどうにか手を使わずにいじれないかとジタバタする。彼女が不自然にずっと倒れているせいか、とうとうこの屋敷で出迎えた男に「おい」と首根っこを掴まれた。
「なにを企んでいるかは知らんが、あまり派手なことをしてくれるなよ」
「……派手なことなんてしません。できません」
「どうだかな。ガラクシアス、こいつをどうする?」
「彼女には同胞が同化できませんでした。なにやら秘密がありそうなので、このまま解剖して調べたいのです」
それに長瀬は口元が引きつりそうになるのを必死で堪える。顔がどれだけよかろうが、所詮彼らは外宇宙人。地球人のことをそもそも人間と思っているかどうかさえ怪しい。
(逃げないと駄目だけど……ここは今まで知りようもなかった情報がたくさん得られそうだし……どうにか情報を取得してから逃げ出せないかな。でもな……)
長瀬は内心二回も目の前で自分をさらわれた真壁のことを思い、かなり申し訳なくなっている。
(真壁さんに迷惑かけ過ぎだ、私は戦えない後方支援しかできないのに……せめて、自力でどうにかして逃げないと……心配なんてあの人してくれるかわからないし)
とりあえず、龍輝の体を乗っ取っているのはガラクシアスという名前だということだけは記憶に留め、彼女は静かに連れて行かれた。どの部屋も和洋折衷であり、その中で地下の座敷牢みたいな部屋に放り込まれたときは、さすがに彼女も「ひい」と声を上げた。
「大人しくしててくださいね。大人しくしたらすぐ終わりますから」
「命がですか?」
「我々がこの星に住む礎になれるのです。感謝してくださいね」
「やっぱり死ぬんじゃない」
長瀬はなおも噛み付こうかと思ったが、それより早くガラクシアスの側近らしき次男の虎徹に取り付いた
男に閉められてしまった。外宇宙人だったらもしかすると引き戸の開閉わからないんじゃと淡い期待をしたものの、普通に閉まっているので、外宇宙にも引き戸が存在するらしいことを知り、長瀬はムッとしながらも、胸元の端末を確認した。
「……電波が通ってない。でも録音機能が使えたから、さっきまでの会話はどうにか録音できたか」
これを見せれば帳なり早乙女なりがなんらかの解析をしてくれるだろう。そう思いながら、端末を一旦懐中電灯の代わりにして、閉じ込められた部屋の確認をした。
どうもここの屋敷はやのつく自由業の方が残していった屋敷らしく、座敷牢として、畳に戸で閉められてしまっている。先程降りた階段を使わないと出られないらしく、座敷牢の辺り一面は地下で出口がない。
「だとしたら……この階段から助けを求めないと駄目で……これかなり昔のものだけど、壊せるかな」
さすがにライターもなければ、刃物もない。戸を破って逃げ出すにしても、戸は昔のいい材木が使われているらしく、ホームセンターで売っているようなベニヤ板のように衝撃に弱いこともないみたいだ。
せめて電波が届いたら助けを求められるが。でもここは帳の異能でも特定できなかった以上、屋敷一面に障壁でも張り巡らされて、帳の異能を遮断しているのだろう。
「どうしよう。このままだとバラバラにされて終わる」
自分がオーパーツが刺さらない体質なのは意味がわからないし、外宇宙人からしてもイレギュラーらしいが。そんな理由で解剖されたくない。
他になにかないかと長瀬は端末を見ながらうろうろしていると、ミチミチと音を立ててこちらになにかが来るのに気付いた。
(まずい、脱獄しようとしているのもう勘付かれた? 手元にあるのは……)
そこでようやく長瀬はスタンガンの存在を思い出す。これが外宇宙人に効くのかどうか。長瀬は手にスタンガンを構える。
(本当にどうしようもなかったら、これを使って……)
「あのう、大丈夫ですか?」
「……へ?」
やってきた少年の姿に、思わず長瀬は目が点になった。
座敷牢の向こう側にやってきたのは、蛍と同年代かそれよりも年下に見える、あどけない少年だった。だがこの顔も見覚えがある。大河三兄弟のほとんどSNSでも載らず、たまに載るとアイドルのような扱いを受けている、麟太郎の姿をした外宇宙人だった。だが。
彼は外宇宙人にしてはやけに地球人に近い外見をしている。柔らかそうな表情も、先程の兄ふたりと比べても硬質な感じがしない。髪だって人毛とほとんど遜色ないように見える。
「……あなたは?」
「すみません、兄様たちがひどいことをして。僕はドリフォーロスと言います」
「ドリフォーロス……」
「地球の皆さんに、ひどいことをしてごめんなさい」
「……あなたは、外宇宙人にしては話がわかるほうみたいだけど……」
「僕はずっと箱船で、この星を見ていましたから」
ドリフォーロスの言葉は優しい。
長瀬はその言葉を聞きながら考え込む。
(彼の口調には嘘がないように見えるけど……でも兄様たちって言っていることは、さっきのガラクシアスたちとは兄弟ってことでいいんだよね。信じていいのかな……)
そもそもの問題として、彼らと対話は可能なのか、戦うしかできないのかがわからない。それをまずは確認したかった。
「お願い、あなたの知っていることを全部話して。あなたとなら、仲良くなれると思うから」
それは一か八かの賭けだった。
長瀬は服の袖にスタンガンを隠し持ちながら、できれば彼にはこれを使いたくないと思った。でも、情報なしに逃げ帰っても、後味の悪い結末になるような気がして、せめてひとつでも多く情報が欲しかったのだ。
真壁は咄嗟に彼女目がけて毒の粘液をかけようとするが、全部かけると彼女が火傷を負う。だからと言ってフルフェイスのヘルメットなしで毒霧を使う訳にもいかない。
「おい、長瀬……!!」
思わず真壁が大声で叫んだとき、本部と連絡をしていた長瀬が「真壁さん?」と振り返った途端、オーパーツが彼女の首に突き刺さった。
血が出たのも一瞬。彼女は一瞬目を剥くが、やがて彼女は困惑した。
「あ、あの……? これ抜いて大丈夫ですか?」
【深度ゼロ。そのまま抜けば取れます】
端末のアナウンスに合わせ、長瀬はオーパーツを抜くと、そのままオーパーツをロケットに押し込んだ。それを一部始終、大河龍輝の顔をした外宇宙人が確認していた。
「おかしい……オーパーツが浸食できず、同胞のデータもインストールできない……あなた何者ですか?」
「えっ? ……そんなこと言われましても」
「……もういい、しゃべんな。さっさと消えろ」
「いえ、困ります。終身刑に、同胞が肉体を得ることができない地球人なんて、放っておいたら我々にとってすぐ不利益なこととなるでしょう。あなたのことは、少々調べさせてもらいますね」
そう言った次の瞬間。真壁は肉眼で捉えることができなかった。
(このスピード……誠のものと同じか!?)
目に見えぬ速さで動いた外宇宙人は、そのまま長瀬を横抱きに抱えた。本来、極上の顔の男に抱きかかえられればときめくものだが、相手は地球に混沌と混乱を巻き起こし、現総理の息子の体を乗っ取った存在だ。ときめきよりも先に恐怖が勝つ。
「な、にする気ですか……っ!?」
「先程も言いましたが、あなたのことは少々調べさせていただきます。それでは終身刑の方。あなたはせいぜいこの身に再び罰を受けるのをお待ちください」
誠のようなスピードで、外宇宙人は忽然と姿を消した。それに真壁は「……畜生!」と吠えた。手袋も使わぬ拳は、大事なものを溶かしかねない。彼にも理性というものがあった。
****
(このところ、さらわれてばっかりだ……私、お姫様体質でもないし、今初めてオーパーツがすぐ抜ける体質だって知ったんだけど……でもこれ、蛍くんも言ってたな。『どうしてオーパーツに浸食されないの?』って。そんなこと言われても、私だって知らないのに)
長瀬は視界があまりにも猛スピードで変わる恐怖を、現実逃避でどうにかやり過ごしていた。今下手に動けば、どれだけのスピードで走っているのかわからないが、間違いなく落ちてミンチになる。そんな外宇宙もオーパーツも関係ない死に方は嫌だった。関係あっても嫌だが、関係のない死に方はもっと嫌だった。
でもだんだん見えてきた。封鎖地区にしては、やけに小綺麗な場所。
(前、こんな場所は見つからなかったような気がする……三年前の事故で、地主さんも亡くなったみたいだから、それで勝手に住み着いているの……?)
だが蛍も誠も帳すらも、どこから来たのか知らないと言っていた。帳の異能に引っかからなかったということは、彼らの持つ異能によって情報を遮断されたと考えたほうがいい。
長瀬はどうにか封鎖地区にいる帳や誠に連絡を取る手段を考えている間に、「着きました」と彼女は外宇宙人に堕とされた。
「おい、原住民を連れてきてどうする」
高速で走る男に声をかけてきたのは、長瀬を連れ去った男によく似た顔立ちをしつつも、髪の毛一本睫毛や産毛のひとつひとつまで違和感が拭えないような極上の美丈夫であった。元々大河三兄弟はアイドルのようにSNSで持て囃されていたため、長瀬でも顔は普通に知っているが、それでも彼らの異様さは、髪の毛から産毛までがオーパーツのように地球上だと存在しえないものに作り替えられてしまっている影響だろう。遺伝子を無理矢理弄って肉体を乗っ取り異能を与えられ、最終的に人格も乗っ取られる。
こうまざまざと見せられると、長瀬は恐怖と畏怖で身動きが取れなくなりそうになりながらも、どうにか胸元にある端末の感触を確認していた。今見つかって没収されたら困るため、堕とされたまま倒れたままの姿勢でいる。
「先程、終身刑の脱走者が乗っ取った原住民に出会いました」
「……そいつ大丈夫なのか?」
「どうも肉体は乗っ取り損ねたようで、あれの力を原住民が使っています。困りますね」
「……このところ、原住民の肉体が乗っ取れてもなお、冷凍封印されていたのは……」
「ええ。あれの猛毒のせいで、同胞は肉体を得ることを防がれていたようです」
彼らの話を聞きながら、長瀬は胸元の端末をどうにか手を使わずにいじれないかとジタバタする。彼女が不自然にずっと倒れているせいか、とうとうこの屋敷で出迎えた男に「おい」と首根っこを掴まれた。
「なにを企んでいるかは知らんが、あまり派手なことをしてくれるなよ」
「……派手なことなんてしません。できません」
「どうだかな。ガラクシアス、こいつをどうする?」
「彼女には同胞が同化できませんでした。なにやら秘密がありそうなので、このまま解剖して調べたいのです」
それに長瀬は口元が引きつりそうになるのを必死で堪える。顔がどれだけよかろうが、所詮彼らは外宇宙人。地球人のことをそもそも人間と思っているかどうかさえ怪しい。
(逃げないと駄目だけど……ここは今まで知りようもなかった情報がたくさん得られそうだし……どうにか情報を取得してから逃げ出せないかな。でもな……)
長瀬は内心二回も目の前で自分をさらわれた真壁のことを思い、かなり申し訳なくなっている。
(真壁さんに迷惑かけ過ぎだ、私は戦えない後方支援しかできないのに……せめて、自力でどうにかして逃げないと……心配なんてあの人してくれるかわからないし)
とりあえず、龍輝の体を乗っ取っているのはガラクシアスという名前だということだけは記憶に留め、彼女は静かに連れて行かれた。どの部屋も和洋折衷であり、その中で地下の座敷牢みたいな部屋に放り込まれたときは、さすがに彼女も「ひい」と声を上げた。
「大人しくしててくださいね。大人しくしたらすぐ終わりますから」
「命がですか?」
「我々がこの星に住む礎になれるのです。感謝してくださいね」
「やっぱり死ぬんじゃない」
長瀬はなおも噛み付こうかと思ったが、それより早くガラクシアスの側近らしき次男の虎徹に取り付いた
男に閉められてしまった。外宇宙人だったらもしかすると引き戸の開閉わからないんじゃと淡い期待をしたものの、普通に閉まっているので、外宇宙にも引き戸が存在するらしいことを知り、長瀬はムッとしながらも、胸元の端末を確認した。
「……電波が通ってない。でも録音機能が使えたから、さっきまでの会話はどうにか録音できたか」
これを見せれば帳なり早乙女なりがなんらかの解析をしてくれるだろう。そう思いながら、端末を一旦懐中電灯の代わりにして、閉じ込められた部屋の確認をした。
どうもここの屋敷はやのつく自由業の方が残していった屋敷らしく、座敷牢として、畳に戸で閉められてしまっている。先程降りた階段を使わないと出られないらしく、座敷牢の辺り一面は地下で出口がない。
「だとしたら……この階段から助けを求めないと駄目で……これかなり昔のものだけど、壊せるかな」
さすがにライターもなければ、刃物もない。戸を破って逃げ出すにしても、戸は昔のいい材木が使われているらしく、ホームセンターで売っているようなベニヤ板のように衝撃に弱いこともないみたいだ。
せめて電波が届いたら助けを求められるが。でもここは帳の異能でも特定できなかった以上、屋敷一面に障壁でも張り巡らされて、帳の異能を遮断しているのだろう。
「どうしよう。このままだとバラバラにされて終わる」
自分がオーパーツが刺さらない体質なのは意味がわからないし、外宇宙人からしてもイレギュラーらしいが。そんな理由で解剖されたくない。
他になにかないかと長瀬は端末を見ながらうろうろしていると、ミチミチと音を立ててこちらになにかが来るのに気付いた。
(まずい、脱獄しようとしているのもう勘付かれた? 手元にあるのは……)
そこでようやく長瀬はスタンガンの存在を思い出す。これが外宇宙人に効くのかどうか。長瀬は手にスタンガンを構える。
(本当にどうしようもなかったら、これを使って……)
「あのう、大丈夫ですか?」
「……へ?」
やってきた少年の姿に、思わず長瀬は目が点になった。
座敷牢の向こう側にやってきたのは、蛍と同年代かそれよりも年下に見える、あどけない少年だった。だがこの顔も見覚えがある。大河三兄弟のほとんどSNSでも載らず、たまに載るとアイドルのような扱いを受けている、麟太郎の姿をした外宇宙人だった。だが。
彼は外宇宙人にしてはやけに地球人に近い外見をしている。柔らかそうな表情も、先程の兄ふたりと比べても硬質な感じがしない。髪だって人毛とほとんど遜色ないように見える。
「……あなたは?」
「すみません、兄様たちがひどいことをして。僕はドリフォーロスと言います」
「ドリフォーロス……」
「地球の皆さんに、ひどいことをしてごめんなさい」
「……あなたは、外宇宙人にしては話がわかるほうみたいだけど……」
「僕はずっと箱船で、この星を見ていましたから」
ドリフォーロスの言葉は優しい。
長瀬はその言葉を聞きながら考え込む。
(彼の口調には嘘がないように見えるけど……でも兄様たちって言っていることは、さっきのガラクシアスたちとは兄弟ってことでいいんだよね。信じていいのかな……)
そもそもの問題として、彼らと対話は可能なのか、戦うしかできないのかがわからない。それをまずは確認したかった。
「お願い、あなたの知っていることを全部話して。あなたとなら、仲良くなれると思うから」
それは一か八かの賭けだった。
長瀬は服の袖にスタンガンを隠し持ちながら、できれば彼にはこれを使いたくないと思った。でも、情報なしに逃げ帰っても、後味の悪い結末になるような気がして、せめてひとつでも多く情報が欲しかったのだ。
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