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束の間の微熱
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七日間。ときおりメイドが寝室の前に置いていく食事と水を摂る以外は、ほぼ発情していただけだった。
最初は嫌悪感でいっぱいだったはずのアンジェリカは、最終的には熱に翻弄されるだけになり、熱と発情が治まったときには、ただ羞恥心と虚無感でいっぱいになり、布団に潜って出られなくなっていた。
「……殺して」
「死ぬな。番に死なれると俺が悲しい」
なにより恐ろしいのは、この七日間、ほぼベッドから出られなかったアンジェリカに、ユリウスは最後まで付き合ったのである。彼女は彼の顔も見たくなくて、布団から必死に出ないよう抵抗していると、ユリウスは布団ごと彼女を抱き締め、うなじをなぞる。
「あまり可愛いことをしてくれるな。もう発情は治まったな」
「……おかげさまで」
「そうか。避妊も済ませているなら、問題はないだろう」
「……避妊薬を飲んで、怒らないのですか?」
後宮がなんのためにあるのか。
それは子を成すためである。わざわざ後宮に皇太子が通っているのだって、妻を孕ませるためのはずなのに。
アンジェリカは驚いた顔で、布団から出てきた。既に行為は終わっているにもかかわらず、想像を絶する色香で、思わずまた布団に潜り込もうとしたが、布団を引き下げる手をユリウスに掴まれてしまった。
「あまりに顔が見られなくて寂しかった。これだけ可愛がったのにな」
「……話を逸らさないでください。どうして私が子を成したら……」
「気持ちもないのに子を成したら、貴様がショックのあまりに他界するかもしれない。そう考えたら、気持ちがまとまるまで子を成すべきではないと俺は思うが。番に先立たれると、臓腑が冷え上がって後追いするんだそうだ」
「……嘘ばっかり。獅子皇国はそもそも一夫多妻制じゃないですか、どうして私の国の真似事ばかりなさるのですか。おかしいですよ」
「おかしいか?」
「私にはそう思えますが」
「お前の国ではどうだったのだ? 夫が妻に愛を囁くとき、これほど辛辣に返されるのが日常だったのか?」
ユリウスに尋ねられ、アンジェリカは言葉を詰まらせる。
自分の両親は、子だくさんであった。というよりも白狼王国の王家は代々子だくさんであり、王族が降嫁するのも、土地を与えられてそこの一貴族になるのも、そこまで珍しくはなかった。アルファの顕現があまりなされなくなったのも、一族の血を同じ場所に留めるというような発想が、そもそもなかったからだろうとは学者の一説で出ている。
一方獅子皇国は、偉大な血筋を必ず後世に残すために後宮をつくったと聞いている。今の皇帝陛下のことはアンジェリカもあまりよくは知らないが、少なくとも戦争が一番激化していた頃は、後宮には妃がたくさんいて、なんとしても血を残さないといけないと躍起になっていたとか聞き及んでいる。
文化が違う。営みが違う。守らないといけない優先順位が違う。
その中で、ユリウスはなにを思ってアンジェリカに基準を合わせようとするのか、彼女にはそれがいまいちわからなかった。そもそも彼がアンジェリカに基準を合わせようとするのは、番になる前からなのだ。
「あなたはどうして、私に対してそこまでなさるんですか?」
「……憐れだなと思っているだけだ」
「同情されるいわれはありません」
他の言い方があるだろうが、アンジェリカにはそれしか言えなかった。
本来、番が成立した場合、番に依存してしまうものらしい。実際アンジェリカは発情期に入ったとき、発情したこと以外なにも考えられなくなり、その混乱を彼のフェロモンの匂いが止めたのには、ショックを受けていた。
だからこそ、番になる前からのユリウスの行動を、彼女は謀りかねていた。
ユリウスはじぃーっとアンジェリカを見たが、やがてのそりと起き上がり、寝間着を拾い上げる。
「湯浴みに行くが。アンジェリカは立てるか?」
「……申し訳ありません。私にはその体力がございません」
「そうか。まあ、七日間も励んだらそうなるか。湯浴みが終わり次第、メイドを呼んでくる。今日一日はゆっくりと寝て過ごすがいい。食事は摂れるか?」
「……少しくらいならば。そもそも発情期の間もなにかしら食べていたとは思いますが」
「あれを食べていると言えるか。わかった。貴様にも入る滋養のあるものを用意させるから、それを摂るように」
言いたいことを言うだけ言って、そのままユリウスは立ち去ってしまった。
残されたのはムスクの匂い。その中、アンジェリカは布団に潜って考え込んでしまった。
(あの人がなにを考えているのかわからない……そもそも私を同情して皇太子妃にしたの? 獅子皇国がうちの国を滅ぼすと脅さなかったらそんなことしなくてもよかったのに。それとも……他が原因? でも他ってなに?)
そもそも番であったら自動的に相思相愛になるものなのかは、長いことアルファが顕現していなかった関係で、情報伝達に穴がある。アンジェリカはその辺りを自分よりも詳しいユールに聞いたほうがいいんだろうかと考え込んでしまった。
****
メイドが持ってきたのは、大麦のお粥であった。これならばなんとかアンジェリカでも入るため、それを三杯食べてやっと彼女は満足に動けるようになった。
「失礼します……姫様、ご無事ですか?」
「ユール……ええ、死ぬかと思ったわ。発情期ってこれだけ大変なものだったの? なにも考えられなくなるって、本当におそろしいことなのね」
「申し訳ございません……避妊薬さえ入れなかったら、もうちょっと発情を緩やかにする成分を強くできたのですが……」
「子を成したらいよいよもっていいように使われるから仕方がないわね」
「姫様……」
久々にワインが飲めることにほっとして、軽く一杯いただいたところで、ユールが重々しく口を開いた。
「……カラスが参りました」
「えっ? お父様は息災? 魔術師団の皆は、私がオメガに堕とされたことでなんと……」
「それがですね……【このまま夫婦の営みに励むように】とのことですが……」
「……どういう意味? 私、このまま殿下の番でいないと駄目なの?」
「普通に考えたらそうなってしまうのですが……姫様はおつらいですか?」
ユールは尋ねる。それにアンジェリカは困り果てた。
七日間、彼は献身的だったのだ。彼女は本当に発情のこと以外頭からは完全に切り離されてしまい、体と心がバラバラの状態だった。その中でもユリウスは彼女に食事と水分補給を欠かさず行い、定期的に彼女の体を拭き清めていた。
番であり、もう彼からは逃げることができなくなった身の上で、彼はずっと献身的だった。理由を聞いてもそれが曖昧だったがため、アンジェリカは彼への気持ちをどう取るべきか未だに答えを出せずにいた。
「わからないの。あの人、暴君だと思っていた。最初は私が嫌がっても痛がっても無視していたから、もっと暴力的な人だと思っていたのに。もしかして違うんじゃないかしらと思ってきている。でもそう思うのが怖いの」
「……と、おっしゃいますと?」
「私が番だから大切にしているっていうのなら、どうして私を番にしたの? なんだか順序が逆じゃないかしら? そんなに自動的に感情って変わるものなの? 私はオメガになってからも、魔術も使えるし、魔術師団に教わった知識は消えてない……オメガはもっと劣等みたいな扱いだったのに、そんなことはなかった。発情期は全く身動き取れないのだけは本当に困るけれど……だから彼を信じていいのかが、本当にわからないの」
「……姫様、少々持論を述べてもよろしいですか?」
「……ユール?」
ユールは心底困った顔で、アンジェリカの髪を撫でた。
「……七日間、ただ性欲に身を任せるだけでしたら、姫様はこれだけ美しいままでいられる訳がありません。もっと性欲に身を任せた亭主を持ったがためにボロボロにされた女などいくらでもいらっしゃいますから。これだけ大切にしてくれた相手を嫌うのは、それはそれはつらいと思います」
「……私、いくらなんでもチョロ過ぎやしないかしら?」」
「それは私にもわかりませんが。ただ姫様、わたくしにはまるで、姫様は殿下を好きにならない理由を欲しているように思えますよ。わたくしは……姫様が苦しくないのが一番だと思っています」
その言葉に、アンジェリカはなんとも言えない気持ちになってしまった。
私怨で殺そうとした相手を好きになる。そんなことが赦されていいんだろうか。なによりも相手がなにをそこまで自分に合わせようとするかがわからない。だから彼女は脅えてあと一歩手を伸ばすことができないでいる。
最初は嫌悪感でいっぱいだったはずのアンジェリカは、最終的には熱に翻弄されるだけになり、熱と発情が治まったときには、ただ羞恥心と虚無感でいっぱいになり、布団に潜って出られなくなっていた。
「……殺して」
「死ぬな。番に死なれると俺が悲しい」
なにより恐ろしいのは、この七日間、ほぼベッドから出られなかったアンジェリカに、ユリウスは最後まで付き合ったのである。彼女は彼の顔も見たくなくて、布団から必死に出ないよう抵抗していると、ユリウスは布団ごと彼女を抱き締め、うなじをなぞる。
「あまり可愛いことをしてくれるな。もう発情は治まったな」
「……おかげさまで」
「そうか。避妊も済ませているなら、問題はないだろう」
「……避妊薬を飲んで、怒らないのですか?」
後宮がなんのためにあるのか。
それは子を成すためである。わざわざ後宮に皇太子が通っているのだって、妻を孕ませるためのはずなのに。
アンジェリカは驚いた顔で、布団から出てきた。既に行為は終わっているにもかかわらず、想像を絶する色香で、思わずまた布団に潜り込もうとしたが、布団を引き下げる手をユリウスに掴まれてしまった。
「あまりに顔が見られなくて寂しかった。これだけ可愛がったのにな」
「……話を逸らさないでください。どうして私が子を成したら……」
「気持ちもないのに子を成したら、貴様がショックのあまりに他界するかもしれない。そう考えたら、気持ちがまとまるまで子を成すべきではないと俺は思うが。番に先立たれると、臓腑が冷え上がって後追いするんだそうだ」
「……嘘ばっかり。獅子皇国はそもそも一夫多妻制じゃないですか、どうして私の国の真似事ばかりなさるのですか。おかしいですよ」
「おかしいか?」
「私にはそう思えますが」
「お前の国ではどうだったのだ? 夫が妻に愛を囁くとき、これほど辛辣に返されるのが日常だったのか?」
ユリウスに尋ねられ、アンジェリカは言葉を詰まらせる。
自分の両親は、子だくさんであった。というよりも白狼王国の王家は代々子だくさんであり、王族が降嫁するのも、土地を与えられてそこの一貴族になるのも、そこまで珍しくはなかった。アルファの顕現があまりなされなくなったのも、一族の血を同じ場所に留めるというような発想が、そもそもなかったからだろうとは学者の一説で出ている。
一方獅子皇国は、偉大な血筋を必ず後世に残すために後宮をつくったと聞いている。今の皇帝陛下のことはアンジェリカもあまりよくは知らないが、少なくとも戦争が一番激化していた頃は、後宮には妃がたくさんいて、なんとしても血を残さないといけないと躍起になっていたとか聞き及んでいる。
文化が違う。営みが違う。守らないといけない優先順位が違う。
その中で、ユリウスはなにを思ってアンジェリカに基準を合わせようとするのか、彼女にはそれがいまいちわからなかった。そもそも彼がアンジェリカに基準を合わせようとするのは、番になる前からなのだ。
「あなたはどうして、私に対してそこまでなさるんですか?」
「……憐れだなと思っているだけだ」
「同情されるいわれはありません」
他の言い方があるだろうが、アンジェリカにはそれしか言えなかった。
本来、番が成立した場合、番に依存してしまうものらしい。実際アンジェリカは発情期に入ったとき、発情したこと以外なにも考えられなくなり、その混乱を彼のフェロモンの匂いが止めたのには、ショックを受けていた。
だからこそ、番になる前からのユリウスの行動を、彼女は謀りかねていた。
ユリウスはじぃーっとアンジェリカを見たが、やがてのそりと起き上がり、寝間着を拾い上げる。
「湯浴みに行くが。アンジェリカは立てるか?」
「……申し訳ありません。私にはその体力がございません」
「そうか。まあ、七日間も励んだらそうなるか。湯浴みが終わり次第、メイドを呼んでくる。今日一日はゆっくりと寝て過ごすがいい。食事は摂れるか?」
「……少しくらいならば。そもそも発情期の間もなにかしら食べていたとは思いますが」
「あれを食べていると言えるか。わかった。貴様にも入る滋養のあるものを用意させるから、それを摂るように」
言いたいことを言うだけ言って、そのままユリウスは立ち去ってしまった。
残されたのはムスクの匂い。その中、アンジェリカは布団に潜って考え込んでしまった。
(あの人がなにを考えているのかわからない……そもそも私を同情して皇太子妃にしたの? 獅子皇国がうちの国を滅ぼすと脅さなかったらそんなことしなくてもよかったのに。それとも……他が原因? でも他ってなに?)
そもそも番であったら自動的に相思相愛になるものなのかは、長いことアルファが顕現していなかった関係で、情報伝達に穴がある。アンジェリカはその辺りを自分よりも詳しいユールに聞いたほうがいいんだろうかと考え込んでしまった。
****
メイドが持ってきたのは、大麦のお粥であった。これならばなんとかアンジェリカでも入るため、それを三杯食べてやっと彼女は満足に動けるようになった。
「失礼します……姫様、ご無事ですか?」
「ユール……ええ、死ぬかと思ったわ。発情期ってこれだけ大変なものだったの? なにも考えられなくなるって、本当におそろしいことなのね」
「申し訳ございません……避妊薬さえ入れなかったら、もうちょっと発情を緩やかにする成分を強くできたのですが……」
「子を成したらいよいよもっていいように使われるから仕方がないわね」
「姫様……」
久々にワインが飲めることにほっとして、軽く一杯いただいたところで、ユールが重々しく口を開いた。
「……カラスが参りました」
「えっ? お父様は息災? 魔術師団の皆は、私がオメガに堕とされたことでなんと……」
「それがですね……【このまま夫婦の営みに励むように】とのことですが……」
「……どういう意味? 私、このまま殿下の番でいないと駄目なの?」
「普通に考えたらそうなってしまうのですが……姫様はおつらいですか?」
ユールは尋ねる。それにアンジェリカは困り果てた。
七日間、彼は献身的だったのだ。彼女は本当に発情のこと以外頭からは完全に切り離されてしまい、体と心がバラバラの状態だった。その中でもユリウスは彼女に食事と水分補給を欠かさず行い、定期的に彼女の体を拭き清めていた。
番であり、もう彼からは逃げることができなくなった身の上で、彼はずっと献身的だった。理由を聞いてもそれが曖昧だったがため、アンジェリカは彼への気持ちをどう取るべきか未だに答えを出せずにいた。
「わからないの。あの人、暴君だと思っていた。最初は私が嫌がっても痛がっても無視していたから、もっと暴力的な人だと思っていたのに。もしかして違うんじゃないかしらと思ってきている。でもそう思うのが怖いの」
「……と、おっしゃいますと?」
「私が番だから大切にしているっていうのなら、どうして私を番にしたの? なんだか順序が逆じゃないかしら? そんなに自動的に感情って変わるものなの? 私はオメガになってからも、魔術も使えるし、魔術師団に教わった知識は消えてない……オメガはもっと劣等みたいな扱いだったのに、そんなことはなかった。発情期は全く身動き取れないのだけは本当に困るけれど……だから彼を信じていいのかが、本当にわからないの」
「……姫様、少々持論を述べてもよろしいですか?」
「……ユール?」
ユールは心底困った顔で、アンジェリカの髪を撫でた。
「……七日間、ただ性欲に身を任せるだけでしたら、姫様はこれだけ美しいままでいられる訳がありません。もっと性欲に身を任せた亭主を持ったがためにボロボロにされた女などいくらでもいらっしゃいますから。これだけ大切にしてくれた相手を嫌うのは、それはそれはつらいと思います」
「……私、いくらなんでもチョロ過ぎやしないかしら?」」
「それは私にもわかりませんが。ただ姫様、わたくしにはまるで、姫様は殿下を好きにならない理由を欲しているように思えますよ。わたくしは……姫様が苦しくないのが一番だと思っています」
その言葉に、アンジェリカはなんとも言えない気持ちになってしまった。
私怨で殺そうとした相手を好きになる。そんなことが赦されていいんだろうか。なによりも相手がなにをそこまで自分に合わせようとするかがわからない。だから彼女は脅えてあと一歩手を伸ばすことができないでいる。
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