上 下
105 / 137

人属編-30

しおりを挟む
よくあることらしく、人属の人たちはああ~また?みたいな感じの雰囲気だ

パーティではよくあることなのだろう
人属による獣人卑下が


少し外の空気でも吸おうと中庭へ出た

「あんなの気にするなよ」
ガロが一緒についてきてくれた

「うん、平気平気」
ガロは何度も人属を行き来しているからたくさんそういう目にあっているだろう

もうなれっこのようだ

「あれよりひどいやつもいたぜw」

「あたしも~新婚旅行のときにさ~・・・」とうさぎ地区であたしを買おうとした人がいたって話をした

「あるある~俺もガタイがいいからさ~ごはんやるから、傭兵になれとか言われたりするぜ」

ごはんってwww
もう完璧動物扱いだね~がっくりだわ

「そうじゃない人属もいるんだよ」

「うん、わかってる」

アンドレア様にダンテ様、ナターシャ様もとてもいい人たちだ
こういうのは根気よくいい方向へゆっくりと進めるしかないしね


「・・・・お姉さま?」


噴水の向こう側に小柄な人属の子がいる

びっくりした目はくりくりして大きく、栗色のツインテールの髪型は自分の魅力をよくわかっているのだろう、あざとさを十分にひきだしている

隣には長身な男性
口をあけてびっくりした顔をしている

「マキアお姉さまですよね?」

・・・なに・・・

マキアの親族?

警戒アラームが頭に響く
体がこの子は要注意と警鐘を鳴らしている

近寄ってこようとしている

すぐに立ち上がって後ずさりをする

「マキア・・」

ガロがこれ、妹じゃね?って顔で見てくるがあたしは顔を横に振る

察してくれたのか「申し訳ございません。お嬢様は体調がすぐれないもので、失礼させていただきます」
すぐに私の前に立って代わりに返事をし、隠すようにホールへ戻ってくれた

「マキア、ジアン呼んでくる」
すぐにシェイクやリンクの側へおいて、ジアンを呼びに行ってくれた

「どうしたの?マキア」
リンクがむしゃむしゃとまだ食べている

「大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ」
シェイクも心配している

「・・・なんか妹っぽいのにあった・・・」

・・・

・・・

二人ともまじか・・って顔している
こっちがだよ~

特に会いたくないし、あっても話すことない
えっと・・・名前なんだったけ

3年前くらいにジアンに報告書見せられたよね

確か・・・「サナ・・・」

そうだ、サナ・リゾーレスト

「マキア!大丈夫か?!」
ジアンが駆けつけてくれた

「うん、大丈夫。なんかいたみたい」

そりゃ王族の結婚式で、貴族がほとんど参加するとなればリゾーレスト伯爵もくるだろう

が、この人数の中だいぶ容姿も変わった私を見つけるかと思えばそうでもないと思っていたんだが・・・甘かったか

「部屋に戻るか?」

「ううん、大丈夫。ちょっとドキドキしたけど。最後までいるから」



夜も更け、お酒も入ってきたのかあちこちで大声が聞こえてくる

酔っぱらいがふえてきたな

「もう少ししたら戻ろう」
ジアンに連れられて、公爵家への挨拶を終わらせた後に手を握られた

「うん、つかれ・・・!!」グイっと腕をひっぱられた

予期しない衝撃で体が後ろにねじれる

「やっぱり!マキアじゃないか!!」

大柄な男性で、口ひげが気持ち悪いおじさんに引っ張られたようだ

「ハハハ!!!なんだなんだ!この耳は!!」
めっちゃ笑っている

お酒を飲んでいるのもあるんだろうけど、楽しくてわらっているのではなく馬鹿にした笑い

耳を指で捕まれ、グググっと引っ張られる

「おーおー!本当に耳だぞ!!くっついてるぞ!!」

「・・いたい!!」

ギュっとひっぱられ、ちぎれそうだ

耳につけていたイヤリングは衝撃で外れ、傷ついた耳から血がでてくる

「何をしているんですか!手をはしてください!!」
ジアンが間に入り、おじさんの手首をつかみ耳から話しくれた

「痛いな!!何をするんだ!犬が!!」

飼い犬に手を嚙まれる状態なのか、自分がしたことはよくて獣人にされることはだめらしい
典型的な人属派

「ほらぁ、やっぱり!マキアお姉さまだわ」

この声・・ちらりとみればニヤリと笑っているサナがいた

てことは・・・このおじさんが・・・お父様・・・?
ドクンドクン・・と動悸が激しくなる

そのおじさんの後ろには背の高いひょろっとした女性がいた
あれは・・・継母。サナを連れてきたんだっけ


頭に大量の情報が流れ込む

写真が連続して映し出されるように、今までのマキアの思い出がよみがえる
この家族は禄でもないと瞬時に判断できるほど、ひどかった

本当の母が死んでから、父は女遊びがひどくなり、ギャンブルもするようになり
酒も毎日大量に飲み、あちこちの事業に手を出し手は失敗した

継母のミションは男爵家からサナをつれて再婚した相手
マキアには厳しく、しつけと称して食事も服も部屋もろくにあたえなかった

マキアはどんどん弱り、痩せていった

サナはあたしの部屋からほとんどのものをもっていった
最後には母の形見である指輪までも

何度目かの事業の失敗で、伯爵家が多額の借金を抱えたときにあたしは捨てられた

獣人属への転化を無理やりさせられ、その後放置
この人たちは転化報奨金でうはうはだったはずだ


・・・まぁ結果転化してよかったんだけどね
ひどい人間もいたものだわ


マキアの記憶がどどどっと流れてきて頭痛がひどかった

ジアンの声も遠くに聞こえる
切れた耳がじんじんといたい





プツリ・・と意識が途切れた
しおりを挟む

処理中です...