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使命編-10

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女王を倒してからはあとは楽なものだった

あちこちから残党の魔獣もでてくるが、女王や護衛魔獣に比べたらかわいくみえる
兵士が協力し順に討伐していく

洞窟を出ていちど陣地へと戻る
けが人を治療し、簡単な食事を準備する



「ジアン・・・大丈夫??」

「ああ、おかげで助かった」

ギューッとされるが、本当に生きた心地がしなかった

生きててくれてよかった
もう二度とあんな思いはしたくない



「今回は本当に、マキア殿にたすけられたなっ!!」

グレゴリー様は水をがばがばと飲みながらガハハハ!と笑っている

陽気な性格とは思えないくらいの形相で女王にとどめを刺していた
腕の筋肉は盛り上がり、ムキっ!!と音が鳴りそうだ

もう結構な歳なのに・・

全盛期はいったいどれだけ強かったんだろうか

もしかして・・・獣人属ってそういうの関係ないのかな?

「ああ、本当に・・・もしいなかったらどれだけの被害があったか・・・」
本当にありがとうとリリー様にもお礼を言われた

「い、いえ・・本当にいざという時にあたし何もできなく・・」

魔力が枯渇することもないのはあたしの努力のたまものでも何でもない

たまたまだ
みんなみたいに特訓して剣で戦ったわけでもない

むしろ迷惑しかかけていないのではないだろうか

「みんな・・無事でよかったです・・・」
本当にそれに限る

「俺、吹き飛ばされた時に回復した?」
ガロがろっ骨をさすりながらやってきた

「あぁ、女王に吹き飛ばされた時でしょ?」
口から血が出ていたくらいだから、内臓がやられたと思ったし・・・

「うん、癒の魔力をとばしたんだよ」

「・・・もうなんでもありか」
教えることはもうないな~といいながら苦笑いをしている

この世界のマキアが体からいなくなってからは、魔力の精度がぐんとあがったのは確かだ

「みんながいなければ倒せなかったな」
ジアンが頭をなでてくれる

確かに・・連係プレーがすごかったし

「終わったんだよね?あとは帰れる?」

「ああ、後始末をしたらそれぞれの地区へ帰還だ」

ああ~ようやくだ~
早くお風呂にゆっくりと使って眠りたい

シールドがきれたら・・って考えて夜中も眠りが浅かったし





「少し・・確認してきたんだが・・」

会議用のテントへ移動し、今後の流れの話を始めるとリリー様の顔つきが変わる

「とらえたものは・・呪の魔力だ」

「なんと!!」
「まじかよ」
「確かなんですか?!」

みんなびっくりしている

呪って・・あれだよね。癒と同じくらいめったにいないって魔力

癒に関しては定期的に出現するけど、魔力量が少ない
呪に関してはほとんど出現せずに、しても魔力量が少ない

呪だったとしてもさほど問題はない魔力だったはずだ

たまに闇依頼で呪いのペンダントを作成してくれとか、その程度のはず

「魔力量は・・そうだな、多分5000前後だ」

「多いな!」
グレゴリー様が目を見開く

あたしが30000弱だから・・・なんか5000っていってもさほど・・・って感じに思えてしまう

でも、ジアンで7900、リンクで6800
5000をすぎれば多いって話だし

多いのかな

「どうですか?何か話しましたか??」
ジアンも眉間にしわを寄せている

「いや、ずっと黙ったままだ」

「飯を抜け!いずれしゃべる!」
グレゴリー様・・・それは・・・

「納得だな~だからこんなに増えたのか~」
ガロが手を頭に組んで合点いったぜ~って言っている

「だから?」
思わず聞いてしまう

「呪の魔力の持ち主が現れる年は、魔獣の大量発生を確認しているんだ」
本当に数年、数十年に一度だが・・・とジアンが教えてくれた

へーなんだろう
なんか因果関係があるのかな

「あまり記録にも残っていないから、迷信に近いと思ったが・・・本当なんだろうな」

う~ん・・よくわからないけど

「その呪の人とらえたからって、特に魔獣が減るわけじゃないんでしょ?」

「ああ、だが今回は女王を倒している。次世代の女王が生まれるまで数年はかかるだろう」

魔獣の生殖サイクルがあるらしい

「グレゴリー様の部隊ですよ」
リリー様がジト目でグレゴリー様をにらんでいる

「ぐははは!いやぁすまなんだ!さっぱり見抜けなかったでな!」
笑っているが・・あかんやつだろ

「今回の討伐に志願兵を募ったからの~急だったし確認が甘くなってしまったわい」
仕方がないわな

「でも、おかげで捕まえられましたね」ガロが結果オーライと喜んでいる

「なんでここまできたんだろうね?なんか目的があったのかな?」

不思議だ

例えば・・・魔獣が大量発生することが本人もわかっているのなら安全な街にいても問題はないはず

志願してきたということは・・・知らなかった?



もしくは・・・ここにこないといけない理由があった・・・?




「とりあえず、一度帰還する。グレゴリー様のところできちんと取り調べしてください」
リリー様が報告書は早めにお願いしますよ!と念を押している

「わかったわかった!大丈夫だ」
屈託のないグレゴリー様の笑顔は大好きだ








でも



大きな口をあけてにこやかに笑うグレゴリー様をみたのはこれが最後だった






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