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1.変な客
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昼下がりの書店は、今日は静かだ。
お喋り好きな美山さんは、今日はお休み。
たしか、娘さんの発表会だとか聞いた。
冴えない書店員、木村小春。
今年30歳越えて、31歳へと変わる喪女。
黒髪に化粧気のない薄いナチュラルテイストの涙黒子のある所謂何処にでもいる女それが私だ。
本に囲まれて静かに暮らすのが好きで、刺激なんてこれっぽっちもいらないタイプだ。
……だったはずなんだけど。
このそこそこの田舎にある街の書店で働いているが給料は暮らせているぐらいの物。
思ったより貰えているのは、若い者はもっと貰って人生楽しめと店長や会社の意向で上げてもらっている。
全国展開はしてないが、本店と支店数点があるぐらいだが、でも良い所だ。
レジの電子音と、ページをめくる紙の音だけが、書店の中に響く。
商店街の書店にいる地味な女の店員。
声は小さくて、どこにでもいる“冴えない店員”だ。
新刊を棚に並べ、カバーをかけ、レジの小銭を数える。
仕事に不満はない。けれど、特別な喜びもない。
朝が来て、夜が過ぎていく。
日々は静かで、少しだけ寂しい。
そういえば、来年は閏年だっけ。
出版社が持ってきた古びた今年のカレンダーをヒラヒラと眺める。
窓の外で仲睦まじく歩く高齢のカップルを微笑ましく眺める。
この前、この書店に顔を赤くして高齢の男性がぶっきらぼうに言いながら尋ねたのだ。
「好いたれでぃに日々の感謝を込めた旅行がしたい。おすすめの雑誌や書物はあるか?」
私はそれを聞いて、目を丸くした。
私とその場にいた美山さんで、その相手の女性の事を聞くと、妻だそうで、最近孫に勧められて見たアザラシのユアチューズアプリからのチャンネルを見てアザラシが更に好きなったらしい。
だったら近場の水族館ねと言い合った。
その他にも、少し離れた海辺のゴミ拾いとかのキャンペーンとかに参加など、色々話したなと思い出す。
ショーウィンドウの窓の外の2人は何かを会話しながらも仲良しそうだった。
恋ね……
恋は過去にあるが淡い初恋だった。
叶う事はもうないだろう。
巷でも言われてる様に、初恋は叶わないものだった。
忘れていたのに、思い出したのは果たして、偶然か。
たぶん、忘れてたけど、こうして何かあると顔を出すのは諦めきれてないのか。
あぁ、叶わないのにな。
既に縁は切れたというか、切った。
彼は違う人の手を取ったのだ。
私が少し遅くなっただけで。
「これ、ください。」
顔を正面に向けると青いフードの影。
まだ幼さの残る声に、私は微笑んだ。
常連の中学生、たぶん制服の感じからして公立ぽさはある。
名前は知らない。
けれど毎週1で漫画や新作の小説やライトノベルなどを二冊ずつ彼は買う。
その姿はすっかりおなじみになっていた。
「今日も来てくれたんだね。」
「うん。新刊、楽しみにしてたんです。」
私がバーコードを読み取ると、彼は小さくうなずいて、財布から丁寧にお札を出す。
でも、彼の事はよく知らない。
それにただの客の事だし、話半分に聴いてる。
お釣りを受け取るとき、彼はいつも決まって言うのだ。
「僕、応援してます!小春ちゃん!」
最初は驚いた。
会った事あったけ?と聞き返したかったけれど、彼はいつも照れくさそうに笑って、すぐに手を振って店を出ていった。
ドアのベルが鳴り、青いフードが陽射しの中に去っていく。
「知り合いには居なかったはず……?」
レジの小さな古びた画面に映る自分の顔を見ながら、私は小さく首を傾げた。
こんなに、見知らぬ少年に親しげに下のネームを呼ばれる程名乗ってないし、深い仲も無いし、呼ばれる関係でもない。
同じ言葉と謎を残して、少年は去っていった。
最初に聞かれた事を暇だったし、彼が真剣そうだったから、たわいもない世間話としてなにかを話したぐらいだったけかな?
この時私はそんな感想を抱きながらも考えた。
お喋り好きな美山さんは、今日はお休み。
たしか、娘さんの発表会だとか聞いた。
冴えない書店員、木村小春。
今年30歳越えて、31歳へと変わる喪女。
黒髪に化粧気のない薄いナチュラルテイストの涙黒子のある所謂何処にでもいる女それが私だ。
本に囲まれて静かに暮らすのが好きで、刺激なんてこれっぽっちもいらないタイプだ。
……だったはずなんだけど。
このそこそこの田舎にある街の書店で働いているが給料は暮らせているぐらいの物。
思ったより貰えているのは、若い者はもっと貰って人生楽しめと店長や会社の意向で上げてもらっている。
全国展開はしてないが、本店と支店数点があるぐらいだが、でも良い所だ。
レジの電子音と、ページをめくる紙の音だけが、書店の中に響く。
商店街の書店にいる地味な女の店員。
声は小さくて、どこにでもいる“冴えない店員”だ。
新刊を棚に並べ、カバーをかけ、レジの小銭を数える。
仕事に不満はない。けれど、特別な喜びもない。
朝が来て、夜が過ぎていく。
日々は静かで、少しだけ寂しい。
そういえば、来年は閏年だっけ。
出版社が持ってきた古びた今年のカレンダーをヒラヒラと眺める。
窓の外で仲睦まじく歩く高齢のカップルを微笑ましく眺める。
この前、この書店に顔を赤くして高齢の男性がぶっきらぼうに言いながら尋ねたのだ。
「好いたれでぃに日々の感謝を込めた旅行がしたい。おすすめの雑誌や書物はあるか?」
私はそれを聞いて、目を丸くした。
私とその場にいた美山さんで、その相手の女性の事を聞くと、妻だそうで、最近孫に勧められて見たアザラシのユアチューズアプリからのチャンネルを見てアザラシが更に好きなったらしい。
だったら近場の水族館ねと言い合った。
その他にも、少し離れた海辺のゴミ拾いとかのキャンペーンとかに参加など、色々話したなと思い出す。
ショーウィンドウの窓の外の2人は何かを会話しながらも仲良しそうだった。
恋ね……
恋は過去にあるが淡い初恋だった。
叶う事はもうないだろう。
巷でも言われてる様に、初恋は叶わないものだった。
忘れていたのに、思い出したのは果たして、偶然か。
たぶん、忘れてたけど、こうして何かあると顔を出すのは諦めきれてないのか。
あぁ、叶わないのにな。
既に縁は切れたというか、切った。
彼は違う人の手を取ったのだ。
私が少し遅くなっただけで。
「これ、ください。」
顔を正面に向けると青いフードの影。
まだ幼さの残る声に、私は微笑んだ。
常連の中学生、たぶん制服の感じからして公立ぽさはある。
名前は知らない。
けれど毎週1で漫画や新作の小説やライトノベルなどを二冊ずつ彼は買う。
その姿はすっかりおなじみになっていた。
「今日も来てくれたんだね。」
「うん。新刊、楽しみにしてたんです。」
私がバーコードを読み取ると、彼は小さくうなずいて、財布から丁寧にお札を出す。
でも、彼の事はよく知らない。
それにただの客の事だし、話半分に聴いてる。
お釣りを受け取るとき、彼はいつも決まって言うのだ。
「僕、応援してます!小春ちゃん!」
最初は驚いた。
会った事あったけ?と聞き返したかったけれど、彼はいつも照れくさそうに笑って、すぐに手を振って店を出ていった。
ドアのベルが鳴り、青いフードが陽射しの中に去っていく。
「知り合いには居なかったはず……?」
レジの小さな古びた画面に映る自分の顔を見ながら、私は小さく首を傾げた。
こんなに、見知らぬ少年に親しげに下のネームを呼ばれる程名乗ってないし、深い仲も無いし、呼ばれる関係でもない。
同じ言葉と謎を残して、少年は去っていった。
最初に聞かれた事を暇だったし、彼が真剣そうだったから、たわいもない世間話としてなにかを話したぐらいだったけかな?
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