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第61話 作戦変更! 俺には俺の戦い方がある!

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「ボス、何のハラかわかんないっスけど、超ハラっス……」

 意味なく尻を触られ続けるというシチュエーションは、BB団の士気をいたく下げた。

「ちょっと悪乗りした。これなら必死に逃げてくれると思ったんだよ」
「尻がムズムズするっス」
「それは何かの虫がいるせいじゃないか?」
「中身じゃないっス! がわの話っス!」

 本当にデリケートだったのね。悪かったわよ。

「罪滅ぼしに、シングルモルト・ウイスキーは1人1本ずつ支給するからさ。それで水に流してよ」
「今晩は全員で酔いつぶれて記憶を無くしますんで、明日は有給にして下さいっ!」

 わかりましたよ。私も鬼じゃないんだから。あ、鬼ごっこやってたんだっけ?
 たまにはお休みでのんびりしてもらいましょう。お留守番はよろしくね。

 ◆◆◆

「変態鬼ごっこも終わったようニャし、準備は良いニャか?」
「やり方は悪ふざけが過ぎたけど、ちゃんと訓練の実は上げたよ」
「ニャら心置きなく出発するニャ」

 今回の遠征チームは、少し編成替えをすることになった。
 前回はメンバーが多すぎて誰が戦闘に参加するかでもめたからね。少し、人数を絞ることにした。

 まず、俺の移動手段に革命がおこったため、アロー君には留守番組の護衛をお願いした。
 表の稼業はお休みにしているが、ほら、招かれざる客とかがやって来るかもしれないから。狙撃のできるアロー君は最高の警備員です。

 コビ1の傷は癒えたものの体毛はまだ生えそろっていない。ピンクの傷跡が痛々しく見えるので、今回はメンバーから外し療養に専念してもらうことにした。
 と言っても、地上では目立つので増田の「どこダン」でスタンバイしてもらう。元の住処だから落ち着くでしょう。

 ストーン5も「荷物持ち」の必要性がほぼなくなったので、2名は待機要員として「どこダン」に控えてもらう。ダンジョン通路では3人並ぶのも難しいところがあるからね。

 トビーの制空力とスラ1の応用性は捨てがたいので、残留決定。俺とアリスさんは指定席だ。

 うん? ビリー・ジーンは?
 すっかり毛並みが良くなってねえ。さらさらのふわふわなもんだから、俺のペット要員として同行してもらう。

 動物とのふれあいには精神安定化効果があるというけど、本当だね。
 BJは動物じゃないけど。懐けばモンスターも可愛いもんです。

「どこダン」に入って出たら目的地。攻略中ダンジョンの第3階層にやって来ました。

 ダンジョンの中まで・・・・・・・・・転移できるというのは、たまらなく便利だね。途中の無駄な移動をすべてカット! 料理番組の「でき上がったものがこちらです」って奴とおんなじだね。

 折角だからとここで「俺ダン」の性能テストをやってみた。ここから「我が家」まで帰れるか?
 せえので入って、せえので出る。

 できますね。俺にも。

「ここに行きたい」と思うと、候補地がパラパラスクロールする感じ?

 残念ながら生前の訪問地はメモリーに入っていないらしく、候補地にはできなかった。異世界には渡れないってことね。

「時空魔法」とでも言うべきダン・マススキルでもできないことをやり遂げたアリスさんはやっぱりすごい。
 100年掛かったけどね。

 階段部屋を出た第3階層の風景は、何と言うか「洞窟らしい洞窟」だった。ダンジョンだからノーマルなのだが、オープン・フィールド型に慣れるとせまっ苦しい感じがする。

 ストーン5の人数を減らしてきて正解だったね。増やす必要がある時はいつでも召喚できるからね。

「前衛はいつも通りストーン5のダイヤマン、サファイアマン、エメラルドマンで構成ニャ」
「まあ、奥様。とってもお高そうな前衛陣ですこと」

「中衛は宇宙わらび餅、続いてジジイ。後衛をアリスにゃんが務めるニャ」

 通路の狭さを考慮した、縦長陣というわけですな。

「俺としては遭遇戦ではストーンズ越しの狙撃で戦闘参加。その他は遊撃としてかく乱戦闘を主戦場とするっていう形で戦いたいんだけど」
「結構ニャ。フレンドリ・ファイアに気を付けるニャ」
「そうだね。射線上に体を晒さないよう注意するよ」

 何しろ当チームでは俺が一番打たれ弱いからね。味方に撃たれてあの世に行くのは悲しすぎる。
 BB団を相手に鍛えた「隠密行動」で姑息に戦おう。

「トビーチームの偵察情報が届いたニャ。徘徊モンスターはゴーレムにマッドハンド、さまよう鎧に踊る宝石ニャ」
「ふうむ。生き物系がいないね。ここは『坑道』という設定なのかな?」
「宝石がいるからニャ? だとしたらドロップ・アイテムに期待が持てるかもニャ」
「これまでがこれまでだからなあ。あまり大きな期待はしないでおこう」

 期待が大きければ外れた時の失望も大きくなる。貧乏人が高望みをするとろくなことがない。

「モンスターの種類としては相手にしやすいタイプじゃないか。読みにくいのは踊る宝石くらいでしょ?」
「他は物理中心の攻撃しか想像できないニャ。踊る宝石と言えば精神系の攻撃が予想されるニャが」
「後はマッドハンドのデバフくらいか? ぬかるみで滑らせたりしそうだな」

 タイプ的にはどいつも火や水には強そうだ。冷凍で動きを遅くして、物理で止めを刺すパターンを俺達は想定した。

「個人的にはゴーレム対ストーンズのガチンコ対決とか見てみたいね。数が整ったら、3対3変則タッグマッチでも良いんじゃない?」
「マッドハンドが紛れ込んだら泥仕合になりそうニャ」

「しかし、困ったなあ……」
「何がニャ?」
「いや、用意していた戦法がここのモンスターには効きそうもないんで」

 無生物だからなあ。

 用意していた戦法とはこうだ。俺ダンで地下に潜り、敵の死角に回り込む。でもって、地下から・・・・六尺スタンで敵を麻痺させるという作戦だ。

 あ、卑怯とか言わないで。戦いで勝つための作戦ですから。必要もないのに危険を冒す奴は阿呆ですからね。

 そう思って立てた作戦なのに、「鉱物」相手じゃ効き目が無いよね。どうしよう……。

「今更ニャ。戦いは常に現存戦力で何とかなるように工夫するものニャ」
「確かにね。古今東西の名将とはそういう工夫で道を切り拓いた人たちなんでしょうな」

 しかし、俺には才能も胆力も、豪運もないからなあ。

 あるのは風呂付1Kの「俺のダンジョン」くらいだわ。あれで何とかなるわけないしなあ。
 うん? 要は使い方次第か? ふうむ……。

「アリスさん!」
「何にゃ?」
「えー、敵の戦力に合わせて装備の変更を行います。ついては『俺ダン』への潜伏を許可願います!」
「伏兵化するニャか? ジジイには詭道こそふさわしいのはわかっているニャ。ニャらば、自由に暴れるが良いニャ!」

 要するに戦力カウントしていないから自由にして良しってことだろうけど。自由にやらせてもらえるなら何でもええわ。

 アリスさんの許可をもらった俺は早速「俺ダン」を開いて、黒い影に飛び込んだ。BJが指示もしていないのに付いて来た。賢い奴らだね。

 さて、忙しいですぞ。俺は即興で立てた作戦に必要な資材を調達に出掛けた。ご近所のホームセンターまでチャリでひとっ走りだ。

 うん? てゆうかダンジョン内なんだからダン・マスの自由権限極大化してるんじゃないの?
 やり直し! 1回外へ出て、もう1回入り直し! ホームセンターへゴー!

 おー! 直接店の入り口に着いたね。カートを引いて買い物だ。お金は払わないけど。
 あっちの棚からこっちの棚へと俺は店内を走り回った。他のお客さんの迷惑になるから店内走行禁止だけど、当店は俺1人の貸し切りだからね。

 カートに満載の資材を仕入れた俺はカートごと1Kの部屋まで戻った。

 さて、戦闘装備を整えますかね? 調達した資材を利用して、俺はダンジョン攻略用の武器を準備した。

 衣装もチェンジだ。グレーのつなぎにゴム手袋、ヘルメットに防塵マスク、安全眼鏡も忘れずに、足元は当然安全靴ですよ。

「忘れ物無し! いざ、ダンジョンへ出陣だ! ここもダンジョンだけど」
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