漫才:真っ赤な噓

藍染 迅

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漫才:真っ赤な嘘

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A:「嘘の話なんやけどね」
B:「いきなりやね。今から嘘つくんやね?」
A:「関西ではきつねうどんがメジャーで、関東ではたぬきそばが定番やろ?」
B:「まあ、一般的にはそうやね。うどんは関西で関東はそばですよね」
A:「せやねん。うどんはきつねで、そばはたぬきて分かれるやん?」
B:「たしかに」
A:「それって理由があんねん。嘘やけどな」
B:「……嘘なんか? ええわ、嘘でも。何でか教えて?」
A:「あんな。昔、関西には狐がようけおったんやわ」
B:「ふん、ふん。そんで?」
A:「牛とか豚とかはまだ飼ってない頃でな?」
B:「昔は畜産とかしてへんかったんかぁ」
A:「温かいうどんに狐の肉を入れとったんや」
B:「ほんまもんの狐肉?」
A:「嘘やで? ほいで、関東には狐より狸の方がようけおったんや」
B:「ああ、そんで関東は狸の肉を入れてた訳か?」
A:「嘘やで?」
B:「ああ、嘘やねんな。ほいで、なんで関西はうどんで関東はそばなん?」
A:「狐の肉は癖ないけど、狸の肉はちょっと臭みがあんねん」
B:「へぇー、そうなん?」
A:「嘘やで? せやから、関西は薄口醤油に出汁の利いたつゆで食べるようになったんよ」
B:「透き通ったやつな。関東は狸の癖を消すために濃い目の醤油になったいうことか?」
A:「嘘やけどな?」
B:「嘘なんか? ほいで?」
A:「薄口しょうゆのだし汁やったら、うどんの相性の方がええねんな、そばより」
B:「たしかにそばやったら濃いつゆの方が馴染むなぁ」
A:「嘘やけどな? そんで『赤いきつね』と『緑のたぬき』てあるやん?」
B:「カップ麺の定番やな」
A:「あれ、なんできつねが赤くて、たぬきが緑か分かる?」
B:「なんでかな? 理由あんの?」
A:「きつねいうたらお稲荷さんやろ?」
B:「たしかにな」
A:「『いなり』って『稲荷いねに』て書くやん?」
B:「ああ、稲の荷物なんかな?」
A:「ちゃうで。元々は『稲を煮る』て書いて『稲煮いねに』やったんや」
B:「へぇー。ほんまか?」
A:「嘘やけどな。むかしむかしは、今とは米の種類が違ごうたんやね」
B:「古代米っていうやつ?」
A:「そうそう。赤い米やったんよ」
B:「たしかに。聞いたことある」
A:「赤い米を煮たら、赤い汁が出るやろ? せやから『稲煮いねに』が赤い色の象徴になったんや」
B:「鳥居もそんで赤い色になったんか?」
A:「嘘やで? でも、たぬきが緑になる訳は知らんやろ?」
B:「ああ、それな。なんでなん?」
A:「あれは、『緑のたぬき』やのうて『緑ネタ抜き』やねん」
B:「何それ?」
A:「せやかて、緑には狐の肉も狸の肉も、お揚げさんも入ってへんやろ」
B:「天カスが入ってるやん?」
A:「『カス』言うてもうてるやん。その時点で具として数えられへんやろ?」
B:「ほんで『ネタ抜き』?」
A:「せや。『緑のたぬき』はほんまやったら『緑ネタ抜き、ただし天カスサービス付き』やねん」
B:「長いわ! 『緑のたぬき』でええやろ!」
A:「そう言って『緑のたぬき』に名前が決まったんや」
B:「へぇー、そういうことか?」
A:「いや、絶対に嘘やで」
B:「何やねん、この話? もうええ。やめさせてもらうわ」

(おわり)
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