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授業
会室
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「こっちが同好会の会室でーす」
やっと名前を知ったキース先輩に案内されて来たのは男爵家の寮に程近い場所だった。
「ここはね、旧校舎だったの。だからちょっと古いんだ。ただ全部の同好会の会室がここにある訳じゃ無くてさあ、此処が嫌だっていう会は別に会室を持ったりしてる。この学院結構これが物を言う所なんだよね」
彼は最後の方だけ声を顰めると、右手の親指と人差し指で丸を作って見せた。
「ふえ」
タイスケが反応すると喜んで、
「ぷにちゃん二号、驚いちゃった?」
うふふーとタイスケの頬を突き出した。その為にアーロンと繋いでいた手が解かれたので、キース先輩の手が離れたのを良い事にアーロンは彼の横から逃げ出そうとイアンの後ろに回る。ぐ、ぐ、と背後からイアンをキース先輩の方へ押し出した。
「え、え、アーロン様……」
イアンが困った顔で振り向くのに、にこおっと笑いかけて、ぱっとイアンが持っていたキース先輩の荷物を奪い去った。
「ほら、男爵家の先輩を独り占めしとく訳にはいかないから。順番!」
「えー」
背が高いイアンは上半身を最大に仰け反らせて嫌だと訴えているが、アーロンだってもうキース先輩はお腹一杯なので引く気は無い。
「ね?」
く、顔が可愛い、こういう時だけ可愛い笑顔狡いとイアンはぶつぶつ言っていたが、当のキースが「ん? 今度はルーク弟?」と嬉しそうにイアンの手を取ったのでもう逃げられなかった。
アーロンは満足してイチロウの隣を歩く。
「しかし変わっていますね」
「ああ、そうですね」
「こういう説明は班毎に歩いて回るより、一ヶ所に一年生を集めて説明する方が早い気がします」
てっきりキース先輩の事だと思って同意したら、別の事だった。が、アーロンは素知らぬ顔で会話は続けた。
「んー、でも僕は何だか分かる様な気がします」
多分煩い人が居るのだろう、身分とか一緒にされたく無い人がとアーロンは思う。入学前に口酸っぱく三番目の兄ケビンに言われて居たけれど、男爵家の子息達は可哀想になる位自分達の爵位の低さを気にしている。その一方で爵位が高くても偉ぶらない、余り気にしない人も居る。例えば同じクラスの伯爵家の子息の様に。彼等の班とは此処に来る途中擦れ違っていた。彼は男爵家の子息達と楽しそうに会話していた。一方子爵家の子息達の班は、移動中一度も見かけていない。それには何か意味があるのではないか、と考えるのだ。
「あ、此処! 僕が入ってるとこ」
キース先輩がノックして直ぐドアを開ける。
「”キャベツ”」
ドアに書いてあるからそれがこの同好会の名前なのだろうと、思うが変な名前だ。
「あー、それね、最初に作った先輩の苦手な野菜」
「えええ?」
入って行くと、見知っている顔が数名居た。
「愚兄」
イアンの兄ルークも居た。
「あー、またルーク来てる!」
「キースせんぱーい」
ルークが嬉しそうにキースに手を振る。部屋は小さめの談話室、といった所だった。ソファや椅子が何脚か置いてあって、後はテーブルとお茶セットと本棚。
「こういう感じの部屋が幾つもあって、部屋の大きさは同好会の規模に寄る。うちの同好会はねー」
と言いながら、キースはソファに座っていたルークの横にぽすんと腰を下ろした。
「適当に集まってお喋りしたり、試験前に一緒に勉強したり、休日に皆で出掛けたりとか。同じ様な活動してるとこは結構多いかな。座って座って」
座面を叩きながら急かすので、アーロン達四人は適当に空いている場所に腰を下ろした。気持ちキース先輩から離れた所に。
「此処も昔は人数が多くてねえ、以前は侯爵家の先輩とかも居て大きい部屋だったんだけど、今はだいぶ減って。また昔みたいに人が増えると良いねえ」
とルークの肩に腕を回し、「ルークも入っちゃいなよ。掛け持ち可能でしょ?」とルークを勧誘し出した。ルークは背が高いので、キースは少しルークの首にぶら下がる様にくっついている。ルークはちょっと困った顔で、キースの腕を剥がしながら、「いや、でもやる事あるし、こうやって時々遊びに来てるから入ってるみたいなもんでしょ」と断っている。
「愚兄何の同好会入ってるの?」
「スキー。隣の部屋なんだ。イアンも入るか?」
「入らない」
即答されて、ルークが「冷たい!」と心臓を押さえて傷付いた素振りを見せる。それをキースが「可哀想に、可哀想に」と頭を撫でて慰める。イアンは二人の様子を見て、顔を少し顰めると立ち上がった。
「ありがとうございました。他も見に行きたい」
「あ、他所行く? 良いよー」
キースが直ぐに同意したので、アーロン達は部屋に居た面々に感謝を告げて、キャベツの部屋から出た。
やっと名前を知ったキース先輩に案内されて来たのは男爵家の寮に程近い場所だった。
「ここはね、旧校舎だったの。だからちょっと古いんだ。ただ全部の同好会の会室がここにある訳じゃ無くてさあ、此処が嫌だっていう会は別に会室を持ったりしてる。この学院結構これが物を言う所なんだよね」
彼は最後の方だけ声を顰めると、右手の親指と人差し指で丸を作って見せた。
「ふえ」
タイスケが反応すると喜んで、
「ぷにちゃん二号、驚いちゃった?」
うふふーとタイスケの頬を突き出した。その為にアーロンと繋いでいた手が解かれたので、キース先輩の手が離れたのを良い事にアーロンは彼の横から逃げ出そうとイアンの後ろに回る。ぐ、ぐ、と背後からイアンをキース先輩の方へ押し出した。
「え、え、アーロン様……」
イアンが困った顔で振り向くのに、にこおっと笑いかけて、ぱっとイアンが持っていたキース先輩の荷物を奪い去った。
「ほら、男爵家の先輩を独り占めしとく訳にはいかないから。順番!」
「えー」
背が高いイアンは上半身を最大に仰け反らせて嫌だと訴えているが、アーロンだってもうキース先輩はお腹一杯なので引く気は無い。
「ね?」
く、顔が可愛い、こういう時だけ可愛い笑顔狡いとイアンはぶつぶつ言っていたが、当のキースが「ん? 今度はルーク弟?」と嬉しそうにイアンの手を取ったのでもう逃げられなかった。
アーロンは満足してイチロウの隣を歩く。
「しかし変わっていますね」
「ああ、そうですね」
「こういう説明は班毎に歩いて回るより、一ヶ所に一年生を集めて説明する方が早い気がします」
てっきりキース先輩の事だと思って同意したら、別の事だった。が、アーロンは素知らぬ顔で会話は続けた。
「んー、でも僕は何だか分かる様な気がします」
多分煩い人が居るのだろう、身分とか一緒にされたく無い人がとアーロンは思う。入学前に口酸っぱく三番目の兄ケビンに言われて居たけれど、男爵家の子息達は可哀想になる位自分達の爵位の低さを気にしている。その一方で爵位が高くても偉ぶらない、余り気にしない人も居る。例えば同じクラスの伯爵家の子息の様に。彼等の班とは此処に来る途中擦れ違っていた。彼は男爵家の子息達と楽しそうに会話していた。一方子爵家の子息達の班は、移動中一度も見かけていない。それには何か意味があるのではないか、と考えるのだ。
「あ、此処! 僕が入ってるとこ」
キース先輩がノックして直ぐドアを開ける。
「”キャベツ”」
ドアに書いてあるからそれがこの同好会の名前なのだろうと、思うが変な名前だ。
「あー、それね、最初に作った先輩の苦手な野菜」
「えええ?」
入って行くと、見知っている顔が数名居た。
「愚兄」
イアンの兄ルークも居た。
「あー、またルーク来てる!」
「キースせんぱーい」
ルークが嬉しそうにキースに手を振る。部屋は小さめの談話室、といった所だった。ソファや椅子が何脚か置いてあって、後はテーブルとお茶セットと本棚。
「こういう感じの部屋が幾つもあって、部屋の大きさは同好会の規模に寄る。うちの同好会はねー」
と言いながら、キースはソファに座っていたルークの横にぽすんと腰を下ろした。
「適当に集まってお喋りしたり、試験前に一緒に勉強したり、休日に皆で出掛けたりとか。同じ様な活動してるとこは結構多いかな。座って座って」
座面を叩きながら急かすので、アーロン達四人は適当に空いている場所に腰を下ろした。気持ちキース先輩から離れた所に。
「此処も昔は人数が多くてねえ、以前は侯爵家の先輩とかも居て大きい部屋だったんだけど、今はだいぶ減って。また昔みたいに人が増えると良いねえ」
とルークの肩に腕を回し、「ルークも入っちゃいなよ。掛け持ち可能でしょ?」とルークを勧誘し出した。ルークは背が高いので、キースは少しルークの首にぶら下がる様にくっついている。ルークはちょっと困った顔で、キースの腕を剥がしながら、「いや、でもやる事あるし、こうやって時々遊びに来てるから入ってるみたいなもんでしょ」と断っている。
「愚兄何の同好会入ってるの?」
「スキー。隣の部屋なんだ。イアンも入るか?」
「入らない」
即答されて、ルークが「冷たい!」と心臓を押さえて傷付いた素振りを見せる。それをキースが「可哀想に、可哀想に」と頭を撫でて慰める。イアンは二人の様子を見て、顔を少し顰めると立ち上がった。
「ありがとうございました。他も見に行きたい」
「あ、他所行く? 良いよー」
キースが直ぐに同意したので、アーロン達は部屋に居た面々に感謝を告げて、キャベツの部屋から出た。
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