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授業
ライム先輩とのお昼
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昼食の時間が近付いたので教室に戻る事になった。
タイスケの希望する運動系の同好会は三時間目の施設案内の時に次いでに回る事になった。その方が、実際に運動する場所等も見れるし、今話しを聞きに行っても、残り三人が詰まらないだろうからだそうだ。
「えー! ライム様とお食事なの?」
「そうっす」
「それは遅れられないね」
「キース先輩お知り合いっすか?」
「挨拶位は。クラス違うしねー。僕とは違う世界の人だもの」
タイスケはすっかりキース先輩の隣が定位置になっている。アーロンは後ろに逃げたので、キースはタイスケの腕に絡み付く様にして歩いている。若干タイスケの方がキースより背が低いので側から見るとべったりくっ付かれている状態だ。ただタイスケは最初の頃よりはキースに対しての拒否反応は減ってきた様で、平然としている。
キースはやはり顔が広い様で、時々他の上級生から声を掛けられ立ち止まる。それで結構時間が取られる。「ノート貸して」だの、「来週の水曜日に」だの会話が聞き取れるが、上級生がアーロン達にも「おっ、一年生か」と話し掛けて来ようとするとキースが「駄目! 今、案内中だから邪魔しないで!」と阻み思い出したように早足で進み出す。というのを何回か繰り返していて、アーロンは内心ではそもそもキースが相手しなければいいのに、と思うが口には出せない。
だがそれも、タイスケが「全然進まないっす」と文句を言ったら止めてくれた。
「それにしても、教室迄迎えに来てくれるって凄いね」
「そうなんすか?」
「うん、だってライム様の方が爵位上でしょう?」
「あ、そういうのも気にしないといけないんすね」
「うん、普通はそうだけど。でも向こうから来てくれるなら来て貰えばいいんじゃない?」
「そういうもんすか?」
「そうそう」
話も盛り上がっている様だし、二人の相性は良さそうだ。イアンとイチロウも黙ってアーロンの両側を歩いていて、三人でタイスケとキースの会話を黙って聞きながらついて行っている状況だ。
(なんか凄いなタイスケ様。もしかして誰とでも仲良くなれる人なのかな)
アーロンはちょっと寂しい気持ちになる。だからと言って、タイスケにとって代わりたい訳でも無いし、キースと仲良くしたい訳でも無いが。
一年生の教室へ近付くとまた廊下に人が増えている。
「うわ、凄いねえ」
人が多いので、五人でくっつく様にして真ん中を歩いて行く。
「この人達って上級生っすよね?」
「うん。二年と三年は講義無いからね」
「暇なんすかね」
「うーん。あんまり楽しみが無いんだよ。許してあげて」
「でもこれはちょっと」
「まあ、さすがに今日だけでしょ。明日は学院も許さないと思う」
「それならいいっすけど」
なんとか人混みを掻き分けながらCクラスの教室に辿り着きアーロン達を教室に入れると、キースは「じゃあまた午後にねー」と出て行った。同時に講義終わりの鐘が鳴り出す。
「やっと解放されたっす」
「え、楽しんでたんじゃ無いの?」
せいせいしたという様子のタイスケにアーロンが驚くと、「そんな訳無いに決まってるじゃ無いっすか」とお冠だった。
「皆嫌がってるから、おいらが引き受けただけっす」
「そうなの?」
「そうっすよ。べたべたくっ付かれるの嫌だったけど我慢しました」
「あ、そうなんだ。ごめん」
ぺこりと頭を下げると、タイスケは「いやあ、そこ迄嫌だった訳でも無いっすけど」と慌てて手を振って否定した。
「大丈夫ですよ。本当に嫌だったら振り解いてますから」
とイチロウがアーロンを取りなす。
まあ確かにタイスケはイチロウの護衛も兼ねている様なので、それ位の力量はあるのだろう。どう見てもキースはそういった意味では強そうに見えなかったし。
喋っていると、子爵家の子息達が教室に戻って来た。その中の太めの少年、デクスターが真っ直ぐ此方へやって来る。
(あ、あの人達の事すっかり忘れてた……)
なんかもうキース先輩の事でお腹一杯なのに、これから彼等を相手するのだと思い出すとうんざりしてしまう。男爵家の子息もデクスターの迷い無い行動につい避けてしまい、アーロンの方まで真っ直ぐ一本道が出来てしまう。男爵家の子息は細身か小柄な生徒が多く、それに比べるとデクスターは大分巨体の部類に入る。のっしのっしと音が響きそうな、重そうな歩き方だ。爵位云々の前に、体格的にぶつかられたらひとたまりも無いだろう。
今ここにライム先輩が来てくれたら口を利かずに断れるのに、と思うがまだ来ない。
「君、昼食を一緒にどうだ」
(僕の名前は君じゃ無いですけど)
いらっとくるが、よそゆきの笑顔をアーロンは作る。
「申し訳ありません。先約がございますので」
断るとデクスターはタイスケやイチロウ、イアンを「こいつらなんかより我々を優先すべきだろう」と睨み付けた。
(何でほっておいてくれないんだろう。そもそも、今日初めて僕に話し掛けて来て、第一声がそれ?)
これは名前を出した方が良いだろうと判断し、
「ライム先輩がお誘いくださって、お約束しているのです」
と言うと、デクスターはばんと直ぐ側の机を、太い指の大きな手で叩いた。一瞬で教室が静まり返る。
「そんな詰まらない嘘を吐く程、我等の誘いが嫌なのか!」
「残念だな、君はもう少し賢いと思ったのだが」
デクスターだけでなく、強面のイーライも近付いて来た。彼はデクスターのように巨体では無いが、威圧感がある。男爵家の子息達は皆怯えてはいるが、ライム先輩が来ると知っているから会話に入って来ようとはしない。ただ、伯爵家の子息ははらはらして、こちらに来ようか止めようか逡巡しているのが見える。変に助けに入られて、彼と子爵家の子息が揉める事になったら大変だ。何とかしないとと、アーロンは焦る。
(ライム先輩、今ですよ。今来てくれたら、惚れちゃうのに)
等と思っていたら、やっと待ち人が来た。
タイスケの希望する運動系の同好会は三時間目の施設案内の時に次いでに回る事になった。その方が、実際に運動する場所等も見れるし、今話しを聞きに行っても、残り三人が詰まらないだろうからだそうだ。
「えー! ライム様とお食事なの?」
「そうっす」
「それは遅れられないね」
「キース先輩お知り合いっすか?」
「挨拶位は。クラス違うしねー。僕とは違う世界の人だもの」
タイスケはすっかりキース先輩の隣が定位置になっている。アーロンは後ろに逃げたので、キースはタイスケの腕に絡み付く様にして歩いている。若干タイスケの方がキースより背が低いので側から見るとべったりくっ付かれている状態だ。ただタイスケは最初の頃よりはキースに対しての拒否反応は減ってきた様で、平然としている。
キースはやはり顔が広い様で、時々他の上級生から声を掛けられ立ち止まる。それで結構時間が取られる。「ノート貸して」だの、「来週の水曜日に」だの会話が聞き取れるが、上級生がアーロン達にも「おっ、一年生か」と話し掛けて来ようとするとキースが「駄目! 今、案内中だから邪魔しないで!」と阻み思い出したように早足で進み出す。というのを何回か繰り返していて、アーロンは内心ではそもそもキースが相手しなければいいのに、と思うが口には出せない。
だがそれも、タイスケが「全然進まないっす」と文句を言ったら止めてくれた。
「それにしても、教室迄迎えに来てくれるって凄いね」
「そうなんすか?」
「うん、だってライム様の方が爵位上でしょう?」
「あ、そういうのも気にしないといけないんすね」
「うん、普通はそうだけど。でも向こうから来てくれるなら来て貰えばいいんじゃない?」
「そういうもんすか?」
「そうそう」
話も盛り上がっている様だし、二人の相性は良さそうだ。イアンとイチロウも黙ってアーロンの両側を歩いていて、三人でタイスケとキースの会話を黙って聞きながらついて行っている状況だ。
(なんか凄いなタイスケ様。もしかして誰とでも仲良くなれる人なのかな)
アーロンはちょっと寂しい気持ちになる。だからと言って、タイスケにとって代わりたい訳でも無いし、キースと仲良くしたい訳でも無いが。
一年生の教室へ近付くとまた廊下に人が増えている。
「うわ、凄いねえ」
人が多いので、五人でくっつく様にして真ん中を歩いて行く。
「この人達って上級生っすよね?」
「うん。二年と三年は講義無いからね」
「暇なんすかね」
「うーん。あんまり楽しみが無いんだよ。許してあげて」
「でもこれはちょっと」
「まあ、さすがに今日だけでしょ。明日は学院も許さないと思う」
「それならいいっすけど」
なんとか人混みを掻き分けながらCクラスの教室に辿り着きアーロン達を教室に入れると、キースは「じゃあまた午後にねー」と出て行った。同時に講義終わりの鐘が鳴り出す。
「やっと解放されたっす」
「え、楽しんでたんじゃ無いの?」
せいせいしたという様子のタイスケにアーロンが驚くと、「そんな訳無いに決まってるじゃ無いっすか」とお冠だった。
「皆嫌がってるから、おいらが引き受けただけっす」
「そうなの?」
「そうっすよ。べたべたくっ付かれるの嫌だったけど我慢しました」
「あ、そうなんだ。ごめん」
ぺこりと頭を下げると、タイスケは「いやあ、そこ迄嫌だった訳でも無いっすけど」と慌てて手を振って否定した。
「大丈夫ですよ。本当に嫌だったら振り解いてますから」
とイチロウがアーロンを取りなす。
まあ確かにタイスケはイチロウの護衛も兼ねている様なので、それ位の力量はあるのだろう。どう見てもキースはそういった意味では強そうに見えなかったし。
喋っていると、子爵家の子息達が教室に戻って来た。その中の太めの少年、デクスターが真っ直ぐ此方へやって来る。
(あ、あの人達の事すっかり忘れてた……)
なんかもうキース先輩の事でお腹一杯なのに、これから彼等を相手するのだと思い出すとうんざりしてしまう。男爵家の子息もデクスターの迷い無い行動につい避けてしまい、アーロンの方まで真っ直ぐ一本道が出来てしまう。男爵家の子息は細身か小柄な生徒が多く、それに比べるとデクスターは大分巨体の部類に入る。のっしのっしと音が響きそうな、重そうな歩き方だ。爵位云々の前に、体格的にぶつかられたらひとたまりも無いだろう。
今ここにライム先輩が来てくれたら口を利かずに断れるのに、と思うがまだ来ない。
「君、昼食を一緒にどうだ」
(僕の名前は君じゃ無いですけど)
いらっとくるが、よそゆきの笑顔をアーロンは作る。
「申し訳ありません。先約がございますので」
断るとデクスターはタイスケやイチロウ、イアンを「こいつらなんかより我々を優先すべきだろう」と睨み付けた。
(何でほっておいてくれないんだろう。そもそも、今日初めて僕に話し掛けて来て、第一声がそれ?)
これは名前を出した方が良いだろうと判断し、
「ライム先輩がお誘いくださって、お約束しているのです」
と言うと、デクスターはばんと直ぐ側の机を、太い指の大きな手で叩いた。一瞬で教室が静まり返る。
「そんな詰まらない嘘を吐く程、我等の誘いが嫌なのか!」
「残念だな、君はもう少し賢いと思ったのだが」
デクスターだけでなく、強面のイーライも近付いて来た。彼はデクスターのように巨体では無いが、威圧感がある。男爵家の子息達は皆怯えてはいるが、ライム先輩が来ると知っているから会話に入って来ようとはしない。ただ、伯爵家の子息ははらはらして、こちらに来ようか止めようか逡巡しているのが見える。変に助けに入られて、彼と子爵家の子息が揉める事になったら大変だ。何とかしないとと、アーロンは焦る。
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等と思っていたら、やっと待ち人が来た。
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