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愛し子
イアンの拘り
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イアンは背中を丸めるようにしてアーロンの椅子に座っている。居心地が悪そうだ。
寮の家具は備え付けなので、多分どの部屋も家具の大きさは同じで、だからイアンも部屋ではアーロンと同じ椅子を使っているのだろう。アーロンの部屋のだからという訳では無い筈だが、のっぽのイアンが座ると椅子はやけに小さく見えた。
確かに椅子とベッドで向かい合わせに座るというのはなんだか間抜けで落ち着かない。椅子だけに座りが悪い、かもしれないが、この部屋に座れるものはその二つしかないのだから仕方が無い。
火の国の二人だったら床に座るのに抵抗は無いかもしれないが、この国生まれのイアンに床を勧めるのは無理だろう。本当は机もこちらへ移動させるべきか迷ったが、上に物ものっているしちょっと面倒臭かったので止めた。でも二人の間に何も無いせいでイアンが落ち着かないなら机も移動させるべきだったか。
イアンは膝の上に大事そうに紙袋を抱えている。何が入っているのだろうと考えながらアーロンはベッドの端に腰掛けて足をぶらぶらさせていた。床迄届かないのだ。
「何?」
何やら言いたそうにもじもじしているイアンに問い掛ける。
「アーロン様、こういう時はベッドはまずい」
「どういう事?」
「ベッドにアーロン様が座るのはまずい」
「何で? 他人が寝てるベッドに座るのが嫌な人とかいるじゃない?」
イアンはそういう人だろうと思ったから、アーロンはベッドに腰掛けたのだ。椅子の方が高さが低いというのも背の低いアーロンにとっては大事な理由の一つだが。
それとも、椅子さえもアーロンが使った後だと気になる、とか言い出すのだろうか。勧める前に拭くべきだったか、でも考えてみたらまだ部屋の椅子には座ってなかった気がする。それを伝えたらイアンは安心するのだろうかとアーロンは思い悩む。
しかしイアンの問題は解決したようだ。
「あ、そういう理由。なら大丈夫」
「そう?」
よく分からないが、イアンが良いなら構わないと思って足をぶらぶらさせていると、イアンが紙袋を差し出した。
「これ、お土産。エッグタルト」
「ありがとう」
受け取って紙袋の中を覗く。ひい、ふう、みい、四つ以上入っている。イアンは幾つ食べるつもりなんだろう、甘党なのは分かっているが、小食なのも分かっている。
「今食べる?」
「うん」
「お茶入れよう。飲むよね?」
「うん」
家からお茶道具一式は持って来ていた。仕掛けの作業をするついでに、荷物を少し出しておいて良かった。実はまだ全部出した訳では無いが。
アーロンはお湯を沸かす魔道具に水を入れる為にベッドからぴょんと降り、浴室へ行こうとした所で、イアンに止められた。
「アーロン様、お茶何処で入れるの?」
「洗面所にお湯を沸かす魔道具があるから、さっき洗ったばっかりなんだけど」
えへへと笑って誤魔化す。昨日から部屋に入ったのに、荷物を全部出し切ってないなんてイアンはさぞ呆れるだろうと思い。
「そこの?」
だがイアンが気にしているのは別の事だった。そことイアンが指差しているのは、浴室。中に洗面所もあるので、アーロンはそこで水を汲んで沸かすつもりだった。
「うん」
「もしやそこで水も汲むつもり?」
「うん」
するとイアンは酸っぱい物でも食べさせられたかのような顔をした。
「魔道具貸して、下でお湯貰って来る」
「え、でもそこの水入れて沸かした方が楽じゃない?」
お湯を貰いに行く為には、三階から地下迄降りなくてはならない。
「貸して」
しかしきっぱりと手を差し出されて、アーロンは首を傾げながら洗面所から魔道具を持って来てイアンに渡した。
「下行って来る」
「うん。えっと、杯も渡した方がいい?」
「魔道具だけでいい」
「えっと、でも杯はここで洗ったんだけど、それは構わないの?」
「それはいいけど、そこの水を沸かして飲むのが許せない」
「そう?」
洗うのは良くて、なんで洗面所の水は飲めないんだろうと不思議に思いながらも、出来たばかりの友達の拘りに変に逆らって波風立てるのも良くない、とアーロンは素直に魔道具を渡した。
寮の家具は備え付けなので、多分どの部屋も家具の大きさは同じで、だからイアンも部屋ではアーロンと同じ椅子を使っているのだろう。アーロンの部屋のだからという訳では無い筈だが、のっぽのイアンが座ると椅子はやけに小さく見えた。
確かに椅子とベッドで向かい合わせに座るというのはなんだか間抜けで落ち着かない。椅子だけに座りが悪い、かもしれないが、この部屋に座れるものはその二つしかないのだから仕方が無い。
火の国の二人だったら床に座るのに抵抗は無いかもしれないが、この国生まれのイアンに床を勧めるのは無理だろう。本当は机もこちらへ移動させるべきか迷ったが、上に物ものっているしちょっと面倒臭かったので止めた。でも二人の間に何も無いせいでイアンが落ち着かないなら机も移動させるべきだったか。
イアンは膝の上に大事そうに紙袋を抱えている。何が入っているのだろうと考えながらアーロンはベッドの端に腰掛けて足をぶらぶらさせていた。床迄届かないのだ。
「何?」
何やら言いたそうにもじもじしているイアンに問い掛ける。
「アーロン様、こういう時はベッドはまずい」
「どういう事?」
「ベッドにアーロン様が座るのはまずい」
「何で? 他人が寝てるベッドに座るのが嫌な人とかいるじゃない?」
イアンはそういう人だろうと思ったから、アーロンはベッドに腰掛けたのだ。椅子の方が高さが低いというのも背の低いアーロンにとっては大事な理由の一つだが。
それとも、椅子さえもアーロンが使った後だと気になる、とか言い出すのだろうか。勧める前に拭くべきだったか、でも考えてみたらまだ部屋の椅子には座ってなかった気がする。それを伝えたらイアンは安心するのだろうかとアーロンは思い悩む。
しかしイアンの問題は解決したようだ。
「あ、そういう理由。なら大丈夫」
「そう?」
よく分からないが、イアンが良いなら構わないと思って足をぶらぶらさせていると、イアンが紙袋を差し出した。
「これ、お土産。エッグタルト」
「ありがとう」
受け取って紙袋の中を覗く。ひい、ふう、みい、四つ以上入っている。イアンは幾つ食べるつもりなんだろう、甘党なのは分かっているが、小食なのも分かっている。
「今食べる?」
「うん」
「お茶入れよう。飲むよね?」
「うん」
家からお茶道具一式は持って来ていた。仕掛けの作業をするついでに、荷物を少し出しておいて良かった。実はまだ全部出した訳では無いが。
アーロンはお湯を沸かす魔道具に水を入れる為にベッドからぴょんと降り、浴室へ行こうとした所で、イアンに止められた。
「アーロン様、お茶何処で入れるの?」
「洗面所にお湯を沸かす魔道具があるから、さっき洗ったばっかりなんだけど」
えへへと笑って誤魔化す。昨日から部屋に入ったのに、荷物を全部出し切ってないなんてイアンはさぞ呆れるだろうと思い。
「そこの?」
だがイアンが気にしているのは別の事だった。そことイアンが指差しているのは、浴室。中に洗面所もあるので、アーロンはそこで水を汲んで沸かすつもりだった。
「うん」
「もしやそこで水も汲むつもり?」
「うん」
するとイアンは酸っぱい物でも食べさせられたかのような顔をした。
「魔道具貸して、下でお湯貰って来る」
「え、でもそこの水入れて沸かした方が楽じゃない?」
お湯を貰いに行く為には、三階から地下迄降りなくてはならない。
「貸して」
しかしきっぱりと手を差し出されて、アーロンは首を傾げながら洗面所から魔道具を持って来てイアンに渡した。
「下行って来る」
「うん。えっと、杯も渡した方がいい?」
「魔道具だけでいい」
「えっと、でも杯はここで洗ったんだけど、それは構わないの?」
「それはいいけど、そこの水を沸かして飲むのが許せない」
「そう?」
洗うのは良くて、なんで洗面所の水は飲めないんだろうと不思議に思いながらも、出来たばかりの友達の拘りに変に逆らって波風立てるのも良くない、とアーロンは素直に魔道具を渡した。
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