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ライム先輩とのお出掛け
午後
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昼食を終えた後は馬車で本屋へ向かった。
少し開けた場所に馬車が停まる。そこは丘の上に立つ寺院の前だった。
「此処で景色を眺めてから、歩いて移動しよう」
ライム先輩の言葉に、馬車から降りた一年生三人は感嘆の声を上げる。
「わあ」
そこからは王都が一望出来た。アーロン達以外にも同じ様にその景色を見に来ている人々の姿がある。目の前、青い空の下は、一面に、王都を埋め尽くさんばかりの白い石造りの建物達が並んで居た。
「凄いっすねえ」
「あの全てに人が住んでいるのですね。それも貴族だけではなく平民も」
感心した様な火の国の二人に、ライム先輩が尋ねる。
「火の国とはやっぱり違うかい?」
「我が国の建物は木造ですので、背が低いです」
「平民の家は精々一階か二階建っすかね」
「色もこの様に輝く様な白ではありません」
「茶色っすよ」
「王都も昔は木製の建物だったそうだよ。だが火事を恐れて、今のような石造りになったらしい」
「成る程、どの都市でも火事は大きな問題なのですね。確かに火の国でも同じです」
イチロウはライム先輩の言葉に頷いている。
「うん。今の王都には、建物の高さ制限や屋根の傾斜、外観の規制もあるそうだ。確か高さは七階迄だったかな」
「はあ、素晴らしいですねえ。しっかり学んで帰らなければ」
噛み締める様に言うイチロウにアーロンは、やっぱり二人は凄いなと思った。普段普通に会話しているのですっかり忘れていたが、そもそも二人は異国から来ていて元は別の国の言葉を話していたのだ。今のアーロンが火の国へ行って、二人の様に学院に通うとなった時、二人の様に違和感無く会話出来る様になる為にはどれ程の長い時間を掛けて準備しないといけないのか、想像も付かない。
景色を見た後は、連れ立って歩く。少し離れて囲む様に護衛とマーリーもついて来ている。坂道を下る様に歩いて行く。
「この道は下迄ずっと本屋が続いているのだよ」
「へえー」
ライム先輩の言葉に、アーロンとイチロウが目を輝かせる。
アーロンは気になっていた事を尋ねた。
「あの、本屋って新しい本だけの本屋でしょうか? 出来たら古本屋が良かったのですが。その、僕、余り高い本は買えないので……」
「ああ、それなら心配しないで大丈夫だよ。この通りにはどちらの本屋もあるから」
とライム先輩はアーロンの肩にそっと手を置いた。アーロンは安堵の息を吐く。
「何だか今日は高価な物を見てばかりだったので、どきどきしちゃって」
「うん。アーロン君はどんな本が見たいのかい?」
「魔道具の、色々な魔法陣が載っている本か、小さな物の分解図か設計図みたいのです。あ、あと領地の子供達に送りたいので、絵本とか子供用の本も」
「成る程。火の国のお二人も同じで大丈夫かい?」
イチロウが答える。
「タイスケは本に興味は無いのですが、自分はこの国で今一番人気の小説を買い求めたいです」
「成る程。そうしたら、二手に分かれようか? アーロン君と私、火の国の二人。火の国のお二人には、マーリーを付けよう。本屋には先程の様な失礼な店員は居ない筈だから安心してくれ給え」
ライム先輩の言葉に火の国の二人が顔を見合わせた。迷っている様なのに、ライム先輩が苦笑して続ける。
「王都はね、特別な土地なのだよ。例えば先程の店員の様な態度を、私の領地で、私や私の連れにとる物が居たとしよう、その店はもう私の領地ではやって行けない、それは分かるよね?」
火の国の二人が頷く。
「王都の民は自尊心が高いのだ。何しろ領主は国王陛下だからね、頭を下げるのは王家にだけだと思っている。まあ、それでもライムの名前を出したら大丈夫だと私も思っていたので、正直あれには驚いたよ。もしかしたら先程の店には後ろに貴族が付いていて、その貴族は私の家よりも爵位が高いのかもしれない。ただね、どちらにしても本屋だけはそれは無いから安心しなさい。何故なら本は物では無い。知識を売っているのだから。それに本には有りとあらゆる国について書かれているし、有りとあらゆる国の本がある。異国についてやその国の本を売っているのに、その国の人に売らない等と馬鹿げた事を言う筈がない。もし売ってくれないとしたら、それは君が異国人だからでは無く、読みこなせないと思っているからだ。そしてイチロウ殿、貴殿にはそれを覆すだけの学力も学びたいという気持ちもあるだろう?」
「はい」
「ならば問題無い」
二人の話をアーロンはよく分からないけど凄いなあと思って聞いていた。すると隣にタイスケが寄って来て耳打ちした。
「まあ、此処からは若いお二人のみでって事で、おいら達お邪魔虫は暫く別行動します」
「え?」
「ライム先輩だってほんのちょびっとはそういうお気持ちあるでしょうから、さすがに空気読みますよっと」
片目を瞑って離れていくタイスケに呆気に取られている内に、組分けは出来上がってしまっていた。こちらに残っている方が多いが、火の国の二人にも護衛は付いて行った。さあ行こうと歩き出すライム先輩にアーロンも付いて行く。
「アーロン君の希望の本がありそうな本屋に案内するが、もし歩いている途中で入ってみたい店があったら遠慮せずに言っておくれ」
「はい」
アーロンは心地良い微風に蒼い目を細めているライム先輩を見上げた。
「此処の通りって、先輩も良くいらっしゃるのですか?」
「何度か来た事はあるよ。だが、恥ずかしながら私はあまり読書家ではなくてね」
「そうなのですね」
「うん。アーロン君は本が好きなのかい?」
「うーん。魔道具の本や、図鑑みたいのは好きですけど、小説は読みません。だから、本好きかって聞かれるとそうでは無いかもしれないですね」
「成る程。では、私たちは似た様な二人という事だね」
「そうですね」
と二人でくすくすと笑い合った。
少し開けた場所に馬車が停まる。そこは丘の上に立つ寺院の前だった。
「此処で景色を眺めてから、歩いて移動しよう」
ライム先輩の言葉に、馬車から降りた一年生三人は感嘆の声を上げる。
「わあ」
そこからは王都が一望出来た。アーロン達以外にも同じ様にその景色を見に来ている人々の姿がある。目の前、青い空の下は、一面に、王都を埋め尽くさんばかりの白い石造りの建物達が並んで居た。
「凄いっすねえ」
「あの全てに人が住んでいるのですね。それも貴族だけではなく平民も」
感心した様な火の国の二人に、ライム先輩が尋ねる。
「火の国とはやっぱり違うかい?」
「我が国の建物は木造ですので、背が低いです」
「平民の家は精々一階か二階建っすかね」
「色もこの様に輝く様な白ではありません」
「茶色っすよ」
「王都も昔は木製の建物だったそうだよ。だが火事を恐れて、今のような石造りになったらしい」
「成る程、どの都市でも火事は大きな問題なのですね。確かに火の国でも同じです」
イチロウはライム先輩の言葉に頷いている。
「うん。今の王都には、建物の高さ制限や屋根の傾斜、外観の規制もあるそうだ。確か高さは七階迄だったかな」
「はあ、素晴らしいですねえ。しっかり学んで帰らなければ」
噛み締める様に言うイチロウにアーロンは、やっぱり二人は凄いなと思った。普段普通に会話しているのですっかり忘れていたが、そもそも二人は異国から来ていて元は別の国の言葉を話していたのだ。今のアーロンが火の国へ行って、二人の様に学院に通うとなった時、二人の様に違和感無く会話出来る様になる為にはどれ程の長い時間を掛けて準備しないといけないのか、想像も付かない。
景色を見た後は、連れ立って歩く。少し離れて囲む様に護衛とマーリーもついて来ている。坂道を下る様に歩いて行く。
「この道は下迄ずっと本屋が続いているのだよ」
「へえー」
ライム先輩の言葉に、アーロンとイチロウが目を輝かせる。
アーロンは気になっていた事を尋ねた。
「あの、本屋って新しい本だけの本屋でしょうか? 出来たら古本屋が良かったのですが。その、僕、余り高い本は買えないので……」
「ああ、それなら心配しないで大丈夫だよ。この通りにはどちらの本屋もあるから」
とライム先輩はアーロンの肩にそっと手を置いた。アーロンは安堵の息を吐く。
「何だか今日は高価な物を見てばかりだったので、どきどきしちゃって」
「うん。アーロン君はどんな本が見たいのかい?」
「魔道具の、色々な魔法陣が載っている本か、小さな物の分解図か設計図みたいのです。あ、あと領地の子供達に送りたいので、絵本とか子供用の本も」
「成る程。火の国のお二人も同じで大丈夫かい?」
イチロウが答える。
「タイスケは本に興味は無いのですが、自分はこの国で今一番人気の小説を買い求めたいです」
「成る程。そうしたら、二手に分かれようか? アーロン君と私、火の国の二人。火の国のお二人には、マーリーを付けよう。本屋には先程の様な失礼な店員は居ない筈だから安心してくれ給え」
ライム先輩の言葉に火の国の二人が顔を見合わせた。迷っている様なのに、ライム先輩が苦笑して続ける。
「王都はね、特別な土地なのだよ。例えば先程の店員の様な態度を、私の領地で、私や私の連れにとる物が居たとしよう、その店はもう私の領地ではやって行けない、それは分かるよね?」
火の国の二人が頷く。
「王都の民は自尊心が高いのだ。何しろ領主は国王陛下だからね、頭を下げるのは王家にだけだと思っている。まあ、それでもライムの名前を出したら大丈夫だと私も思っていたので、正直あれには驚いたよ。もしかしたら先程の店には後ろに貴族が付いていて、その貴族は私の家よりも爵位が高いのかもしれない。ただね、どちらにしても本屋だけはそれは無いから安心しなさい。何故なら本は物では無い。知識を売っているのだから。それに本には有りとあらゆる国について書かれているし、有りとあらゆる国の本がある。異国についてやその国の本を売っているのに、その国の人に売らない等と馬鹿げた事を言う筈がない。もし売ってくれないとしたら、それは君が異国人だからでは無く、読みこなせないと思っているからだ。そしてイチロウ殿、貴殿にはそれを覆すだけの学力も学びたいという気持ちもあるだろう?」
「はい」
「ならば問題無い」
二人の話をアーロンはよく分からないけど凄いなあと思って聞いていた。すると隣にタイスケが寄って来て耳打ちした。
「まあ、此処からは若いお二人のみでって事で、おいら達お邪魔虫は暫く別行動します」
「え?」
「ライム先輩だってほんのちょびっとはそういうお気持ちあるでしょうから、さすがに空気読みますよっと」
片目を瞑って離れていくタイスケに呆気に取られている内に、組分けは出来上がってしまっていた。こちらに残っている方が多いが、火の国の二人にも護衛は付いて行った。さあ行こうと歩き出すライム先輩にアーロンも付いて行く。
「アーロン君の希望の本がありそうな本屋に案内するが、もし歩いている途中で入ってみたい店があったら遠慮せずに言っておくれ」
「はい」
アーロンは心地良い微風に蒼い目を細めているライム先輩を見上げた。
「此処の通りって、先輩も良くいらっしゃるのですか?」
「何度か来た事はあるよ。だが、恥ずかしながら私はあまり読書家ではなくてね」
「そうなのですね」
「うん。アーロン君は本が好きなのかい?」
「うーん。魔道具の本や、図鑑みたいのは好きですけど、小説は読みません。だから、本好きかって聞かれるとそうでは無いかもしれないですね」
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「そうですね」
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