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ライム先輩とのお出掛け
三箇所目の魔道具屋
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カフェで休憩した後、坂の下迄歩くと馬車が待っていたので乗り込む。
「皆楽しめた様で良かった。次で買い物は最後だが、良かったら夕食も食べてから帰らないかい? 私がご馳走しよう」
一年生三人は顔を見合わせた。アーロンは今晩も火の国の寮でご馳走になるつもりだった。けれども三人は、三番目の兄ケビンから昨日、ライム先輩に何かご馳走すると言われたら喜んで受けろ、向こうの方が身分が高いんだからそれが礼儀だと、しつこく言われて来ている。実際、今迄の飲食も素直に可愛く?お礼を言ってご馳走になって来た。
「イチロウ様晩御飯の準備ってして来た?」
「米は水に浸けてきましたが、まあ何とかなります」
「そう?」
アーロンとイチロウが夕飯の支度について確認していると、タイスケがライム先輩に尋ねた。
「あの、その場合ライム先輩がアーロン様を男爵家の寮迄送って下さるんすか?」
「任せてくれ給え」
「え?」
「いや、アーロン様買った物もあるし、おいら達の寮に来るより自分のお部屋に戻った方が良くないっすか?」
「あ、そうだった」
すっかり土日は火の国の寮で過ごして月曜日を迎えるのが当たり前になっていた自分に気が付き、アーロンははっとした。
「ライム先輩、宜しいのですか?」
「勿論」
「では、ご馳走になって帰る?」
アーロンが火の国の二人に聞くと二人とも頷いたので、ご馳走になる事に決まった。
「我が領地の食事を出す店があるからそちらへ案内しよう」
「わあ、楽しみっす」
「うん、量が多いから心して」
一年生三人が盛り上がるのをライム先輩が微笑ましそうに眺める。その内に馬車は目的地に着いた。
「ここから少し歩くよ。護衛が居るから問題無いが、あまり治安の良く無い地域なので離れない様にしなさい」
「はい」
少し薄暗くなり始めた王都の街を歩く。馬車が停まった所から細い路地を進んで行くとその店はあった。アパルトマンの一階だが特に看板も出ていなく、そうと教えて貰わなければ気が付かない。ライム先輩が扉を開け、一年生三人が入ったら一杯になってしまう様な小さな店だった。受付台があって、その向こうは直ぐに工房になっていた。店主と思わしき小柄な老人が丸椅子に腰掛け机に向かって作業している。
四人が入って来たのに、気が付くと店主は作業を止め、片目に嵌めていた拡大鏡を外しながらアーロン達にはよく分からない言葉で何かを呟いた。
【懐かしい気配がすると思ったが、大分薄いな】
アーロンはライム先輩を見たが、先輩も意味は分からない様だった。それどころか、店主が何か呟いたのさえ気が付いてもいない様だ。
「店主、髪の色を変える魔道具を所望したいのだが」
「髪の色変えかい?」
白い髭をふさふさと蓄えた店主は、四人をじっと見て、
「ふむ」
と頷いた。イチロウとタイスケを手招く。
「地毛は黒か? この国では過ごし難かろう」
「そうなのです。今は染めております」
「ふむ。もう一寸寄りなさい」
イチロウとタイスケを受付台の前に立たせると、店主はくるりと椅子の向きを変えた。狭い店内なので、受付と作業が椅子の向きを変えるだけで移動せずに出来る作りになっている様だ。
「どれ、二人とも手を、どちらでも良いので出して」
言われるまま、二人は片方の腕を差し出した。店主はその手首を握ると少し考え込む様にした。
「火の国の御仁か」
「そうです。我が国をご存知なのですか?」
「ああ、花街に火の国の商会があるだろう」
「あ」
とイチロウはぽっと頬を染めた。タイスケが少し口を尖らせて、
「ご老人、あんなとこ出入りしてるんすか?」
と言うので、アーロンは花街にある火の国の店が何を売っているのか想像が出来てしまった。だが店主はちっとも悪びれた様子は無く、
「珍しい異国の品が売っているとあれば、見に行きたくなるのが職人の性じゃ」
と言って退けた。そして、
「ふむ。もう良い」
と二人の手を下ろさせると、
「で、金は如何程出せる?」
とイチロウに聞いた。ライム先輩は何も話さず、店主と火の国の二人に任せる様で黙ってやり取りを見ている。
「そうですね。馬一頭分で三年もつ物は出来ますか?」
「三年か、出来ぬ事はないがお主らに使うとなると少し大きくなるがそれは構わないか?」
「少し大きくとは、どれ位でしょうか?」
「ふむ、そうだな」
と店主は作業台に椅子の向きを戻すと、引き出しを開けてごそごそと探ってから、腕輪と、首飾りを出した。腕輪は幅が太く店主の手の幅位も太さがあり、首飾りも鎖の先端に付けられている飾りが懐中時計位の大きさで、どちらも重そうだった。
「これ位の大きさは必要だろう」
「ちょっと持って見てもいいっすか?」
「ああ。試してみなさい」
タイスケはまず腕輪を取った。腕に嵌めてみて、
「これ位なら問題無いっす」
と言い、外して、今度は首飾りを手に取った。そして着けもせずに、
「これは無理っす」
と言い切った。イチロウは試さずに、タイスケのやる事を見ている。
「ご老人、こっちの腕輪で、同じのを両腕分作る事は可能っすか?」
「両腕分?」
「そうっす。別にこれ位の重さなら修行で使う重しみたいなもんなんで、運動する時とかに邪魔にはならないんすけど、片方だけだと身体が傾いて変な癖が付いちゃうっす。左右に同じ重さが必要っす。首飾りの方は運動の邪魔になるんで論外す」
「成る程、ふーむ」
と店主は腕を組んで少し考えた。
「両腕なら、もう少し幅も細く出来るだろう。ふむ、それでやってみるか」
と作業台に向かってしまった。拡大鏡を取り付け作業を始めると、それきりこちらを見ようともしない。
「え、終わりっすか? この後はどうしたら?」
とタイスケが慌てる。店主は作業をしたまま、
「火の国の商会と、お主らは繋がりがあるんじゃろ? 出来たら商会に届けておく」
と答えたが、その後はタイスケが何を言っても作業に集中したまま無視だ。その様子を見て、ライム先輩が、
「出よう」
と一年生達を促すので訳が分からないままアーロン達は店の外に出た。
外はすっかり暗くなっていた。
「えっと」
とタイスケがライム先輩に話を聞きたそうにしたが、ライム先輩は、
「説明は後で。店に入る前に話した様に、ここらは治安が良く無い。まずは馬車に戻ろう」
と急き立てるので、一年生達は首を捻りながらも従った。
「皆楽しめた様で良かった。次で買い物は最後だが、良かったら夕食も食べてから帰らないかい? 私がご馳走しよう」
一年生三人は顔を見合わせた。アーロンは今晩も火の国の寮でご馳走になるつもりだった。けれども三人は、三番目の兄ケビンから昨日、ライム先輩に何かご馳走すると言われたら喜んで受けろ、向こうの方が身分が高いんだからそれが礼儀だと、しつこく言われて来ている。実際、今迄の飲食も素直に可愛く?お礼を言ってご馳走になって来た。
「イチロウ様晩御飯の準備ってして来た?」
「米は水に浸けてきましたが、まあ何とかなります」
「そう?」
アーロンとイチロウが夕飯の支度について確認していると、タイスケがライム先輩に尋ねた。
「あの、その場合ライム先輩がアーロン様を男爵家の寮迄送って下さるんすか?」
「任せてくれ給え」
「え?」
「いや、アーロン様買った物もあるし、おいら達の寮に来るより自分のお部屋に戻った方が良くないっすか?」
「あ、そうだった」
すっかり土日は火の国の寮で過ごして月曜日を迎えるのが当たり前になっていた自分に気が付き、アーロンははっとした。
「ライム先輩、宜しいのですか?」
「勿論」
「では、ご馳走になって帰る?」
アーロンが火の国の二人に聞くと二人とも頷いたので、ご馳走になる事に決まった。
「我が領地の食事を出す店があるからそちらへ案内しよう」
「わあ、楽しみっす」
「うん、量が多いから心して」
一年生三人が盛り上がるのをライム先輩が微笑ましそうに眺める。その内に馬車は目的地に着いた。
「ここから少し歩くよ。護衛が居るから問題無いが、あまり治安の良く無い地域なので離れない様にしなさい」
「はい」
少し薄暗くなり始めた王都の街を歩く。馬車が停まった所から細い路地を進んで行くとその店はあった。アパルトマンの一階だが特に看板も出ていなく、そうと教えて貰わなければ気が付かない。ライム先輩が扉を開け、一年生三人が入ったら一杯になってしまう様な小さな店だった。受付台があって、その向こうは直ぐに工房になっていた。店主と思わしき小柄な老人が丸椅子に腰掛け机に向かって作業している。
四人が入って来たのに、気が付くと店主は作業を止め、片目に嵌めていた拡大鏡を外しながらアーロン達にはよく分からない言葉で何かを呟いた。
【懐かしい気配がすると思ったが、大分薄いな】
アーロンはライム先輩を見たが、先輩も意味は分からない様だった。それどころか、店主が何か呟いたのさえ気が付いてもいない様だ。
「店主、髪の色を変える魔道具を所望したいのだが」
「髪の色変えかい?」
白い髭をふさふさと蓄えた店主は、四人をじっと見て、
「ふむ」
と頷いた。イチロウとタイスケを手招く。
「地毛は黒か? この国では過ごし難かろう」
「そうなのです。今は染めております」
「ふむ。もう一寸寄りなさい」
イチロウとタイスケを受付台の前に立たせると、店主はくるりと椅子の向きを変えた。狭い店内なので、受付と作業が椅子の向きを変えるだけで移動せずに出来る作りになっている様だ。
「どれ、二人とも手を、どちらでも良いので出して」
言われるまま、二人は片方の腕を差し出した。店主はその手首を握ると少し考え込む様にした。
「火の国の御仁か」
「そうです。我が国をご存知なのですか?」
「ああ、花街に火の国の商会があるだろう」
「あ」
とイチロウはぽっと頬を染めた。タイスケが少し口を尖らせて、
「ご老人、あんなとこ出入りしてるんすか?」
と言うので、アーロンは花街にある火の国の店が何を売っているのか想像が出来てしまった。だが店主はちっとも悪びれた様子は無く、
「珍しい異国の品が売っているとあれば、見に行きたくなるのが職人の性じゃ」
と言って退けた。そして、
「ふむ。もう良い」
と二人の手を下ろさせると、
「で、金は如何程出せる?」
とイチロウに聞いた。ライム先輩は何も話さず、店主と火の国の二人に任せる様で黙ってやり取りを見ている。
「そうですね。馬一頭分で三年もつ物は出来ますか?」
「三年か、出来ぬ事はないがお主らに使うとなると少し大きくなるがそれは構わないか?」
「少し大きくとは、どれ位でしょうか?」
「ふむ、そうだな」
と店主は作業台に椅子の向きを戻すと、引き出しを開けてごそごそと探ってから、腕輪と、首飾りを出した。腕輪は幅が太く店主の手の幅位も太さがあり、首飾りも鎖の先端に付けられている飾りが懐中時計位の大きさで、どちらも重そうだった。
「これ位の大きさは必要だろう」
「ちょっと持って見てもいいっすか?」
「ああ。試してみなさい」
タイスケはまず腕輪を取った。腕に嵌めてみて、
「これ位なら問題無いっす」
と言い、外して、今度は首飾りを手に取った。そして着けもせずに、
「これは無理っす」
と言い切った。イチロウは試さずに、タイスケのやる事を見ている。
「ご老人、こっちの腕輪で、同じのを両腕分作る事は可能っすか?」
「両腕分?」
「そうっす。別にこれ位の重さなら修行で使う重しみたいなもんなんで、運動する時とかに邪魔にはならないんすけど、片方だけだと身体が傾いて変な癖が付いちゃうっす。左右に同じ重さが必要っす。首飾りの方は運動の邪魔になるんで論外す」
「成る程、ふーむ」
と店主は腕を組んで少し考えた。
「両腕なら、もう少し幅も細く出来るだろう。ふむ、それでやってみるか」
と作業台に向かってしまった。拡大鏡を取り付け作業を始めると、それきりこちらを見ようともしない。
「え、終わりっすか? この後はどうしたら?」
とタイスケが慌てる。店主は作業をしたまま、
「火の国の商会と、お主らは繋がりがあるんじゃろ? 出来たら商会に届けておく」
と答えたが、その後はタイスケが何を言っても作業に集中したまま無視だ。その様子を見て、ライム先輩が、
「出よう」
と一年生達を促すので訳が分からないままアーロン達は店の外に出た。
外はすっかり暗くなっていた。
「えっと」
とタイスケがライム先輩に話を聞きたそうにしたが、ライム先輩は、
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