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4 デートですか?
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「ええ? そうですか? 星さんの方がお洒落でカッコいいと思いますけど」
男同士で何やってんだ? と思いながら、洋介は返す。
かなり歳が離れてるので、本当は最初から年上マウンティグして『君』呼びすべきか迷ったのだ。
勤めていた会社で、同僚が、年下の男は『君』女は『ちゃん』で呼ぶ事にやたらと拘っていた。それがまるで自分の方が立場が上だと誇示している、マウンティグしているように洋介には見えた。洋介は初対面では男女問わず『さん』付が基本でありそのほうが丁寧だと考えていた。だが、その同僚が『君』『ちゃん』で呼ぶ事に、女性は眉を顰めたけれど、男性は喜んで受け入れているようだった。『さん』と呼ぶ洋介を他人行儀だと言う者さえいた。確かに仲良くなってから切り替えどきに迷って結局『さん』で通すことは多かった。自分との距離より、同僚との方が距離が近く見えて羨ましいと思うこともあった。後輩が、同僚には下手に出ていても、自分のことは甘く見ているんじゃないかと思う時もあった。
それでも洋介は星を『星さん』と呼ぶ事にした。まあ、二度と会わないから、それで上手くマウンティグを取れなくても会社のように困る事もない。
「でも、ザックリしたタートルネックのセーターも、ダッフルコートも似合ってます」
「そうですか?」
だが、このダッフルコートは二十年位着ている。年代物だ。
因みにタートルネックのセーターは自分で編んだ。フィッシャーマンズセーターっぽいデザインが気に入っている。去年の秀作だ。昨今の洋介は編み物男子だ。子供の頃、手芸の得意な祖母に教えて貰ったのだ。小学生の頃一時夢中になり過ぎて「男の子なのに」と富士子を心配させたが、じきに飽き、引きこもりになって暇な時にそう言えばと思い出してまた始めたら思いの外ハマった。今度は富士子は何も言わなかった、返って「私にも編んで」と言ったくらいだ。まあ、初対面でそれを星に暴露するつもりはない。
引きこもってから服は買っていない。服にも流行にも興味がなくなった。
ダッフルは昔働いていた頃に買った物だから良いやつだ。セレクトショップで買ったイギリス製で、店員に「これなら一生着れますよ」と太鼓判を押されたっけ。洋介は毎年安い服を買うより、高くても良い物をいくつか持って長く着たい派だ。
ーー因みに洋介の両親はは逆だ。洋介にとっては反面教師とも言える。富士子なんて買い込み過ぎて、飽きたりサイズが合わなくなったりした服の処分に困り、家を出た行介のベッドの上に高く積み上げている。康子ちゃんに最初のうちは「どう?」と譲ろうとしていてが、康子ちゃんは痩せている上に背が高いから、丸ぽっちゃりのおばさん服を着る筈がない。困った顔で断っているのを見かねた洋介が止めたら諦めたのは良いが、代わりに行介の部屋が酷いことになった。誰も使っていなかったから良いが、そろそろベッドの上は乗り切らなくなり、行介が使っていた子供用の勉強机の上を侵食し始めている。ーー
タートルも良い毛糸使っている。吃驚する程高かった、成る程セレクトショップのニットで良いと思ったやつが目玉が飛び出る程高かったりするのは毛糸代もあったんだなと納得した。ただ、ジーパンが……。そう言えばジーパンはファストショップで買った安物だった。
洋介は実家に帰ってかなり痩せ、若い頃の体重に戻った。運動して痩せたのではない。恐らく一人暮らしの乱れた食生活が実家で改善されたからだろう。喜ばしい事だが、昔買ったジーパンが履けなくなってしまった。良い物だったのに。いつもはベルトで締めてぶかぶかなのを無理やり履いていたが、流石にヤバイなと今日のは髪を切りに行ったついでに、急遽ファストショップでジャストサイズのジーパンを購入したのだ。
「コレ、ユニクロですけど」
「あ、そうなんですか? でも、岬さんが履いてると高そうに見えます」
なんて人だ。罪深い。自虐ネタのつもりで白状したら褒められた。それも自分よりお洒落な若いイケメンにだ。胡麻擂りでも、いい気になってしまう。
パスタがきたので食べながら話す。星は食べ方が美しい。男でこんなに食べ方が綺麗な奴は初めてだ。きっと育ちが良いのだろう。アメリカに留学していたって言ってたし、良いとこのボンボンなのだろう。
洋介の周囲の人間、家族含めて、は、肘はつく、脚は組む、ソースは飛ばす、ナイフとフォークを使おうものならガチャガチャ言わす。口に物を入れたまま話し、挙句備え付きの紙ナプキンで鼻をかむ。かんだ後の紙ナプキンは、目の前の人が食べている途中でも自分の食事が終われば丸めて皿の上。最後は楊枝でシーシー。男同士なら皆そうだ。岬一家の外食も酷いことになる。まともなのは他所から来た康子ちゃんだけだ。富士子もあんまり褒められたものではないが孫の前ではしゃんとする。行介も自分の子供の前ではちゃんとする。平介は言わずもがな。行介一家のいない、親子三人の時は本当に酷い。洋介はそうなりたくないから気を付けている。
だのに、星は自然体でちゃんとして見える。背筋をピンと伸ばして、脚は綺麗に揃い、両肩は力まず。適度な量がフォークにくるっと巻かれて、ソースなんか一滴も零さずに形の良い口に吸い込まれていく。話してる最中に、くちゃくちゃと食べてる物が見えたりも、カトラリーの音もしない。間違っても食後に楊枝は使わないだろう。
前の職場の昼飯は、結構ストレスだった。上司に汚い食べ方をする人がいて。時々口端に泡がついてるのが非常に気になった。食べカスもだ。洋介はその人となるべく一緒に食べに出ない様にしていたが、時々捕まってしまった。そういう時は奢ってくれなくていいから、頼む、一人で食わせてくれと、心の底から思ったが、口には出せなかった。
じいっと星の手元を見ていたら、不審に思われたのか「どうしました?」と訊かれた。「食べ方綺麗ですね」と褒めると、「岬さんの方こそ」と返された。お世辞だろうか? こうやって相手の良いところを見つけて褒め合うのって、なんかアレみたいと洋介は考える。
アレって何だっけ? アレ……そう、デートだ。そういや、これってデートだったっけ。お見合いだもんな、一応。洋介はこそばゆくなった。落ち着かない。
「山菜、お好きなんですか?」
今度は、星が洋介の手元を見ながら訊いて来た。
「はい。蕎麦とかでも、山菜蕎麦とか頼んじゃいます。星さんは?」
「あまり。でも、岬さんがお好きなら、今度頼んでみます」
「いやあ、無理して食べるもんじゃないですよ。人によっては味がないって嫌う人もいますし」
「そのパスタ、味しないんですか?」
星が眉を顰める。
「お店の人呼びましょうか?」
吃驚だ。店の失敗?みたいにとられたようだ。まずいまずい、なんでそんな風に取るんだ? アメリカナイズされているのか? アメリカ人って直ぐ店にクレームとかつけちゃいそうだからそのせいか? アメリカの大学出たって言ってたけど、卒業して大分経ってるだろ? 何でそんな日本語通じないんだ、訂正しなくちゃと洋介は慌てた。
「あ、いやあ。言い方が悪かったな。パスタの味はちゃんとしますよ。バター醤油味です。俺好きなんです。バター醤油。山菜の話ですよ、味がないってのは」
「あ、勘違いしました」
照れ隠しのように笑う顔が幼く見えて、ちょっと好感が持てた。
「味がしないのに、お好きなんですね。山菜」
「ええ、まあ」
不思議そうな顔をするので、もうちょっと付け足すことにした。
「あんまり大きな声では言えないんですけどね」
と洋介はちょっと声を潜めて、星に顔を近づけた。内緒話のようになって、星も洋介に顔を近づけてくる。その肌がやけにツルツルとしてシミ一つ、毛穴一つない。若い。
「山菜っていうだけあって、山で採れるもんでしょう? 本物は美味いけどあんまりたくさん採れるもんじゃないし鮮度もある、都会で買うと高いんですよ、こういう店で出るのは安い中国産なんじゃないのかな? 山から採ってきたのか、畑で育ててるのかは分かりませんが工場で缶詰とかにした水煮を使ってるんです。でないと店の方が採算が取れません。だから山菜そのものの味はどうしても薄くなるんですよ。まあ元々味が濃いってものでもないですけど」
「え、偽物なんですか?」
顔を近づけていたお陰か、元々の育ちの良さからか、大声ではなかったので助かった。これが富士子だったら、店に響くくらいの声を張り上げて周りの客を振り向かせ、店に居づらくなっただろう。
洋介は慌てて訂正する。
「あ、本物って言ったって、中国産が偽物って言ってる訳じゃないですよ。日本産じゃないとか、採れたてでないって意味です」
「あ、そうでしたか、失礼しました」
「いえ」
安心して、洋介はそっと星から顔を離した。気のせいか、星が一瞬残念そうな顔をしたような気がした。気のせい、だよな?
「岬さんは物知りですね」
「そうですか?」
日本人だったら誰でも知ってる常識だと思う。アメリカ生活が長いからなのか、若いからなのか。キラキラとした目で、感心したように見上げられると、照れる。俺、教えたがりのオヤジになってるかもと思いながらも洋介は満更でもなかった。
男同士で何やってんだ? と思いながら、洋介は返す。
かなり歳が離れてるので、本当は最初から年上マウンティグして『君』呼びすべきか迷ったのだ。
勤めていた会社で、同僚が、年下の男は『君』女は『ちゃん』で呼ぶ事にやたらと拘っていた。それがまるで自分の方が立場が上だと誇示している、マウンティグしているように洋介には見えた。洋介は初対面では男女問わず『さん』付が基本でありそのほうが丁寧だと考えていた。だが、その同僚が『君』『ちゃん』で呼ぶ事に、女性は眉を顰めたけれど、男性は喜んで受け入れているようだった。『さん』と呼ぶ洋介を他人行儀だと言う者さえいた。確かに仲良くなってから切り替えどきに迷って結局『さん』で通すことは多かった。自分との距離より、同僚との方が距離が近く見えて羨ましいと思うこともあった。後輩が、同僚には下手に出ていても、自分のことは甘く見ているんじゃないかと思う時もあった。
それでも洋介は星を『星さん』と呼ぶ事にした。まあ、二度と会わないから、それで上手くマウンティグを取れなくても会社のように困る事もない。
「でも、ザックリしたタートルネックのセーターも、ダッフルコートも似合ってます」
「そうですか?」
だが、このダッフルコートは二十年位着ている。年代物だ。
因みにタートルネックのセーターは自分で編んだ。フィッシャーマンズセーターっぽいデザインが気に入っている。去年の秀作だ。昨今の洋介は編み物男子だ。子供の頃、手芸の得意な祖母に教えて貰ったのだ。小学生の頃一時夢中になり過ぎて「男の子なのに」と富士子を心配させたが、じきに飽き、引きこもりになって暇な時にそう言えばと思い出してまた始めたら思いの外ハマった。今度は富士子は何も言わなかった、返って「私にも編んで」と言ったくらいだ。まあ、初対面でそれを星に暴露するつもりはない。
引きこもってから服は買っていない。服にも流行にも興味がなくなった。
ダッフルは昔働いていた頃に買った物だから良いやつだ。セレクトショップで買ったイギリス製で、店員に「これなら一生着れますよ」と太鼓判を押されたっけ。洋介は毎年安い服を買うより、高くても良い物をいくつか持って長く着たい派だ。
ーー因みに洋介の両親はは逆だ。洋介にとっては反面教師とも言える。富士子なんて買い込み過ぎて、飽きたりサイズが合わなくなったりした服の処分に困り、家を出た行介のベッドの上に高く積み上げている。康子ちゃんに最初のうちは「どう?」と譲ろうとしていてが、康子ちゃんは痩せている上に背が高いから、丸ぽっちゃりのおばさん服を着る筈がない。困った顔で断っているのを見かねた洋介が止めたら諦めたのは良いが、代わりに行介の部屋が酷いことになった。誰も使っていなかったから良いが、そろそろベッドの上は乗り切らなくなり、行介が使っていた子供用の勉強机の上を侵食し始めている。ーー
タートルも良い毛糸使っている。吃驚する程高かった、成る程セレクトショップのニットで良いと思ったやつが目玉が飛び出る程高かったりするのは毛糸代もあったんだなと納得した。ただ、ジーパンが……。そう言えばジーパンはファストショップで買った安物だった。
洋介は実家に帰ってかなり痩せ、若い頃の体重に戻った。運動して痩せたのではない。恐らく一人暮らしの乱れた食生活が実家で改善されたからだろう。喜ばしい事だが、昔買ったジーパンが履けなくなってしまった。良い物だったのに。いつもはベルトで締めてぶかぶかなのを無理やり履いていたが、流石にヤバイなと今日のは髪を切りに行ったついでに、急遽ファストショップでジャストサイズのジーパンを購入したのだ。
「コレ、ユニクロですけど」
「あ、そうなんですか? でも、岬さんが履いてると高そうに見えます」
なんて人だ。罪深い。自虐ネタのつもりで白状したら褒められた。それも自分よりお洒落な若いイケメンにだ。胡麻擂りでも、いい気になってしまう。
パスタがきたので食べながら話す。星は食べ方が美しい。男でこんなに食べ方が綺麗な奴は初めてだ。きっと育ちが良いのだろう。アメリカに留学していたって言ってたし、良いとこのボンボンなのだろう。
洋介の周囲の人間、家族含めて、は、肘はつく、脚は組む、ソースは飛ばす、ナイフとフォークを使おうものならガチャガチャ言わす。口に物を入れたまま話し、挙句備え付きの紙ナプキンで鼻をかむ。かんだ後の紙ナプキンは、目の前の人が食べている途中でも自分の食事が終われば丸めて皿の上。最後は楊枝でシーシー。男同士なら皆そうだ。岬一家の外食も酷いことになる。まともなのは他所から来た康子ちゃんだけだ。富士子もあんまり褒められたものではないが孫の前ではしゃんとする。行介も自分の子供の前ではちゃんとする。平介は言わずもがな。行介一家のいない、親子三人の時は本当に酷い。洋介はそうなりたくないから気を付けている。
だのに、星は自然体でちゃんとして見える。背筋をピンと伸ばして、脚は綺麗に揃い、両肩は力まず。適度な量がフォークにくるっと巻かれて、ソースなんか一滴も零さずに形の良い口に吸い込まれていく。話してる最中に、くちゃくちゃと食べてる物が見えたりも、カトラリーの音もしない。間違っても食後に楊枝は使わないだろう。
前の職場の昼飯は、結構ストレスだった。上司に汚い食べ方をする人がいて。時々口端に泡がついてるのが非常に気になった。食べカスもだ。洋介はその人となるべく一緒に食べに出ない様にしていたが、時々捕まってしまった。そういう時は奢ってくれなくていいから、頼む、一人で食わせてくれと、心の底から思ったが、口には出せなかった。
じいっと星の手元を見ていたら、不審に思われたのか「どうしました?」と訊かれた。「食べ方綺麗ですね」と褒めると、「岬さんの方こそ」と返された。お世辞だろうか? こうやって相手の良いところを見つけて褒め合うのって、なんかアレみたいと洋介は考える。
アレって何だっけ? アレ……そう、デートだ。そういや、これってデートだったっけ。お見合いだもんな、一応。洋介はこそばゆくなった。落ち着かない。
「山菜、お好きなんですか?」
今度は、星が洋介の手元を見ながら訊いて来た。
「はい。蕎麦とかでも、山菜蕎麦とか頼んじゃいます。星さんは?」
「あまり。でも、岬さんがお好きなら、今度頼んでみます」
「いやあ、無理して食べるもんじゃないですよ。人によっては味がないって嫌う人もいますし」
「そのパスタ、味しないんですか?」
星が眉を顰める。
「お店の人呼びましょうか?」
吃驚だ。店の失敗?みたいにとられたようだ。まずいまずい、なんでそんな風に取るんだ? アメリカナイズされているのか? アメリカ人って直ぐ店にクレームとかつけちゃいそうだからそのせいか? アメリカの大学出たって言ってたけど、卒業して大分経ってるだろ? 何でそんな日本語通じないんだ、訂正しなくちゃと洋介は慌てた。
「あ、いやあ。言い方が悪かったな。パスタの味はちゃんとしますよ。バター醤油味です。俺好きなんです。バター醤油。山菜の話ですよ、味がないってのは」
「あ、勘違いしました」
照れ隠しのように笑う顔が幼く見えて、ちょっと好感が持てた。
「味がしないのに、お好きなんですね。山菜」
「ええ、まあ」
不思議そうな顔をするので、もうちょっと付け足すことにした。
「あんまり大きな声では言えないんですけどね」
と洋介はちょっと声を潜めて、星に顔を近づけた。内緒話のようになって、星も洋介に顔を近づけてくる。その肌がやけにツルツルとしてシミ一つ、毛穴一つない。若い。
「山菜っていうだけあって、山で採れるもんでしょう? 本物は美味いけどあんまりたくさん採れるもんじゃないし鮮度もある、都会で買うと高いんですよ、こういう店で出るのは安い中国産なんじゃないのかな? 山から採ってきたのか、畑で育ててるのかは分かりませんが工場で缶詰とかにした水煮を使ってるんです。でないと店の方が採算が取れません。だから山菜そのものの味はどうしても薄くなるんですよ。まあ元々味が濃いってものでもないですけど」
「え、偽物なんですか?」
顔を近づけていたお陰か、元々の育ちの良さからか、大声ではなかったので助かった。これが富士子だったら、店に響くくらいの声を張り上げて周りの客を振り向かせ、店に居づらくなっただろう。
洋介は慌てて訂正する。
「あ、本物って言ったって、中国産が偽物って言ってる訳じゃないですよ。日本産じゃないとか、採れたてでないって意味です」
「あ、そうでしたか、失礼しました」
「いえ」
安心して、洋介はそっと星から顔を離した。気のせいか、星が一瞬残念そうな顔をしたような気がした。気のせい、だよな?
「岬さんは物知りですね」
「そうですか?」
日本人だったら誰でも知ってる常識だと思う。アメリカ生活が長いからなのか、若いからなのか。キラキラとした目で、感心したように見上げられると、照れる。俺、教えたがりのオヤジになってるかもと思いながらも洋介は満更でもなかった。
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