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35 内緒話ですか?
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平介がトイレに行っている間、ヒートアップする二人のやり取りを洋介はただ黙って見ていた。冷静に考えれば、こんな人が来そうな場所での言い合いは好ましくない。止めるべきだったがその時は思い付きもしなかった。
一方、コンシェルジュの小林は止めようか逡巡していた。洋介と違い英語を理解していたせいだった。一応フォローしておくと、小林は若いながらもプロとして誇りを持って働いている。今の時間フロントにいるのは小林だけだが、バックヤードには男性職員も控えている。自分だけで手に負えない場合は呼べば来てくれる。
マンションの敷地内は、決まった時間帯を除くと、案外人は通らないものである。沢山の住民が住んでいる筈なのに、朝のウォーキングやランニング、通勤通学、子供の送り迎えやスーパーへの買い出し、児童の下校時間等、普通の生活から外れてしまうと、マンションの住民に全く会わずに外に出かけて帰って来るなんて珍しくもなかったりする。今もそういう普通の生活からずれた時間帯だった為に、ずっと他の住民の姿はなかった。
もし誰か一人でも住民が通り掛かったら迷わず小林は止めていただろう。ただ不幸にも誰も通り掛からなかった為に、小林は躊躇ってしまっていた。
(まるで、怒った彼女と、その機嫌を取ろうとしている彼氏みたいだ)
外人がさっきからしきりに星に対してスキンシップを取ろうとしているのと、その顔がニヤついているのが、洋介にそんな連想をさせた。なあ、いいじゃないか、拗ねるなよとでも言いたげなのだ。
そのせいで疎外感というか、外人がこの場に星しかいないみたいな態度だからというのもあるが、二人の世界というか、見ていてなんか嫌な気分になる……。
「戻った」
背後からポンと背中を叩かれて、洋介は我に返った。すごく長い時間が経った様な気がしたが、実際は平介が小を済ませて帰って来る間だから、5分も経っていないだろう。
平介はそのままスタスタと言い争っている二人の所まで行くと、星と外人の背中にもポンと手を当て、
「もう止めなさい。こんな他の住民が通る場所で良くない」
と、日本語で言った。
親父、バリバリ日本語じゃねえか!と洋介は焦ったが、星は勿論、外人も平介の言葉にサッと会話を止める。
星は気まずそうに俯き、外人はニヤケ顔を止めて真顔で平介を見下ろした。
「真一君、この人は友達かい?」
「……、はい。アメリカの大学で……一緒でした」
平介はやけに堂々としていた。昔取った杵柄というやつなのか。
平介は元中学教師だ。丁度校内暴力が問題となっていた時代で、平介の赴任先も荒れた学校が多かった。
休日にお礼参りと言って特攻服を着た生徒達が家に押し掛けて来た事もあった。洋介はまだ小学生で富士子に家から出るなと厳命されてしまい、行介と二人ビクビクと聞き耳を立てた。が、外で話している筈なのに何も聞こえない。しばらくすると平介が戻って来て「もう帰ったぞ」と飄々とした顔で言う。直ぐに行介と外を見に行ったら本当に誰も居なかった。どうやって帰って貰ったのかと平介に迫ったらきょとんとして「別に普通に話したら納得して帰って言ったぞ」と答えたっけ。
そんな事を思い出してしまったのは、項垂れている星が、教師に叱られている生徒に見えたからだろうか。
「そうかい。それは、家に招いてもいい友達かい?」
「……」
「招いてもいい友達なら、こんな所で話さずに上がって貰うべきだと思うんだ。だけど、もし、真一君がこの人を家に上げたくないなら帰って貰いなさい」
「……」
星は俯いたまま何故かチラリと洋介を見た。それから、顔を上げ平介に向き合うとキッパリと言い切った。
「帰って貰いたいです」
平介は「そうかい」と頷くと外人を見上げた。
「だ、そうだよ。帰りなさい。これ以上しつこくするなら、警察を呼ぶよ」
淡々とした平介の言葉に外人は唇をギュッと噛み締めた。もう外人が日本語を理解しているのは明らかだった。何故か全く喋ろうとしないけれど。
外人は星をじいっと見たが、頑なに星が自分と目を合わせようとしないので、やれやれという様に首を振る。そして平介に軽く礼をすると、コンシェルジュに手を振って去って行った。最後まで洋介の方は一度も見ようとしなかった。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
平介がコンシェルジュに頭を下げると、星はハッと気が付いてバツの悪そうな顔をした。
「小林さん、すみませんでした」
「いいえ、わたくしの方こそ申し訳ありませんでした。止めるべきか迷ってしまって……。星様大丈夫ですか?」
「はい…」と星は平介の顔を見てから頷いた。
「大丈夫です」
「あの方は、今後はお取り継ぎしなくてよろしいでしょうか?」
「はい、……もう来ないと思いますが、よろしくお願いします」
「かしこまりました」
「本当にすみません」
「いいえ、お気になさらず」
項垂れる星の背中を平介が押し、洋介はコンシェルジュに頭を下げながらその場を離れた。
「どうぞ座って下さい」
エレベーターでは三人無言だった。気持ちを切り替えられないまま着いた星の家はまるでショールームみたいに片付いて生活感がない。
そして広い。三人家族だと聞いてるが、五人、いやもっと居ても余裕そうだ。マンションなのに、千葉の洋介の家よりも広いんじゃないだろうか? 学生時代、千葉の家に遊びに来た友人は大抵「流石田舎の一軒家、広い」と感心していたが、星のマンションの方が遥かに広く感じる。
アイランドキッチンから、六人掛けのガラス製ダイニングテーブルの置かれた食堂、革張りの大きなソファが置かれた居間迄ワンフロアなので余計に広く感じる。家具はご両親の趣味なのか銀と黒色で統一され、都会的な冷たさを感じて落ち着かない。
無論千葉の家みたいに物で溢れ返っていない。無駄な物は一切ないし、空間の使い方というか部屋の余白の取り方が映画や雑誌で見た海外の豪邸っぽい。ゆったりというか、がらんとしているというか。千葉の家みたいにすれ違う時に家具と人の間を横になってやり過ごすなんて必要は絶対にないし、ダイニングテーブル上半分を物が占めている……ペン立てやドライフルーツが入った瓶とかが、なんて事もない。
星は今は一人暮らしの筈だが、この広さ、寂しくならないのだろうか。慣れているから平気なのか?
窓からの景色を眺めていた平介は、星の言葉に戻って来た。だが、ダイニングテーブルとソファのどちらに落ち着くべきか迷ってるので星が「どちらでもお好きな方へどうぞ」と勧めるけど、余計に困惑顔になる。
(分かる。分かるぞ)
ガラス製のテーブルは割りそうで怖いし、革張りのソファも恐らく海外の物で高そう傷でも付けたらどうしようと不安で座り辛いのだ。洋介もテーブルとソファの間で所在無く立ち尽くしていた。
平介が窓に直行したのも景色を眺めたかったというより、どこに座っていいか分からなかったからだろう。
「お茶淹れますね。コーヒーと紅茶どちらがよろしいですか?」
「コーヒー」
無理に出した様な明るい声で星がキッチンから聞くのに、平介が間髪入れずに答える。
「洋介さんはどちらにされますか?」
「俺も親父と同じでいいよ」
「うちはポーションなので、お茶とコーヒー同時に選んでも大丈夫ですよ」
「ポーション?」
星の言葉に平介が不思議顔だ。
「あー、あれだよ。ハリウッド俳優がCMしてるやつ」
洋介はすぐ分かったが、平介はまだ分からない様子だ。
気を利かせた星がポーションを持って来てガラステーブルの上に広げる。
「こういうのを機械にセットしてボタンを押すと出来るんです」
「なるほど」
「甘いのもあります。抹茶オレとかカフェモカとか」
「これで」
平介が選んだのは抹茶オレだ。甘党だからだが、恐らくカフェモカがどういう物か分からなかったからだろう。
「洋介さんはどうされますか?」
「えっと、じゃあこれで」
エスプレッソを選んだ。単純に量が少ないから。早く飲み終わったらそれだけ早く帰れるし、水分が少ない分だけ後でトイレに行きたくなる可能性が低いだろうと。
「はい。では少々お待ち下さい」
星がキッチンに戻ろうとするのを、待った、と平介が止める。
「真一君はどれにするんだ?」
「僕ですか? えーと、僕はこれにします」
星が選ぶと、平介は星の手首を掴んだ。
「自動で淹れられるなら、洋介にも出来るだろう? お前がやれ。真一君は少し、俺と話をしよう、な?」
「え、幾ら自動でも初めて使うし、他所のお宅だし、分かんないよ」
「そうですよ。すぐに出来ますから、お話しならその後でも……」
洋介は驚き呆れ、星は戸惑っていたが、平介は早くやれ、と顎でしゃくって洋介を急かす。こうなると絶対に譲らない性格なのは分かっている。
「俺がやるよ」
渋々頷くと、平介はまだ困惑している星を引っ張ってソファの方へ向かう。
「一応使う物は出してありますから、水は冷蔵庫にあるミネラルウォーターを使って下さい。もしカップが足りなければ、探して出して頂いて構わないので……」
律儀に教えてくれる星の言葉に頷くと、一体親父は何なんだ? 俺に聞かせたくない話でもあるのか? みえみえだぞ。まあ最悪ネットで調べたらやり方は分かるだろ、と洋介は首を傾げながらもキッチンに向かった。
一方、コンシェルジュの小林は止めようか逡巡していた。洋介と違い英語を理解していたせいだった。一応フォローしておくと、小林は若いながらもプロとして誇りを持って働いている。今の時間フロントにいるのは小林だけだが、バックヤードには男性職員も控えている。自分だけで手に負えない場合は呼べば来てくれる。
マンションの敷地内は、決まった時間帯を除くと、案外人は通らないものである。沢山の住民が住んでいる筈なのに、朝のウォーキングやランニング、通勤通学、子供の送り迎えやスーパーへの買い出し、児童の下校時間等、普通の生活から外れてしまうと、マンションの住民に全く会わずに外に出かけて帰って来るなんて珍しくもなかったりする。今もそういう普通の生活からずれた時間帯だった為に、ずっと他の住民の姿はなかった。
もし誰か一人でも住民が通り掛かったら迷わず小林は止めていただろう。ただ不幸にも誰も通り掛からなかった為に、小林は躊躇ってしまっていた。
(まるで、怒った彼女と、その機嫌を取ろうとしている彼氏みたいだ)
外人がさっきからしきりに星に対してスキンシップを取ろうとしているのと、その顔がニヤついているのが、洋介にそんな連想をさせた。なあ、いいじゃないか、拗ねるなよとでも言いたげなのだ。
そのせいで疎外感というか、外人がこの場に星しかいないみたいな態度だからというのもあるが、二人の世界というか、見ていてなんか嫌な気分になる……。
「戻った」
背後からポンと背中を叩かれて、洋介は我に返った。すごく長い時間が経った様な気がしたが、実際は平介が小を済ませて帰って来る間だから、5分も経っていないだろう。
平介はそのままスタスタと言い争っている二人の所まで行くと、星と外人の背中にもポンと手を当て、
「もう止めなさい。こんな他の住民が通る場所で良くない」
と、日本語で言った。
親父、バリバリ日本語じゃねえか!と洋介は焦ったが、星は勿論、外人も平介の言葉にサッと会話を止める。
星は気まずそうに俯き、外人はニヤケ顔を止めて真顔で平介を見下ろした。
「真一君、この人は友達かい?」
「……、はい。アメリカの大学で……一緒でした」
平介はやけに堂々としていた。昔取った杵柄というやつなのか。
平介は元中学教師だ。丁度校内暴力が問題となっていた時代で、平介の赴任先も荒れた学校が多かった。
休日にお礼参りと言って特攻服を着た生徒達が家に押し掛けて来た事もあった。洋介はまだ小学生で富士子に家から出るなと厳命されてしまい、行介と二人ビクビクと聞き耳を立てた。が、外で話している筈なのに何も聞こえない。しばらくすると平介が戻って来て「もう帰ったぞ」と飄々とした顔で言う。直ぐに行介と外を見に行ったら本当に誰も居なかった。どうやって帰って貰ったのかと平介に迫ったらきょとんとして「別に普通に話したら納得して帰って言ったぞ」と答えたっけ。
そんな事を思い出してしまったのは、項垂れている星が、教師に叱られている生徒に見えたからだろうか。
「そうかい。それは、家に招いてもいい友達かい?」
「……」
「招いてもいい友達なら、こんな所で話さずに上がって貰うべきだと思うんだ。だけど、もし、真一君がこの人を家に上げたくないなら帰って貰いなさい」
「……」
星は俯いたまま何故かチラリと洋介を見た。それから、顔を上げ平介に向き合うとキッパリと言い切った。
「帰って貰いたいです」
平介は「そうかい」と頷くと外人を見上げた。
「だ、そうだよ。帰りなさい。これ以上しつこくするなら、警察を呼ぶよ」
淡々とした平介の言葉に外人は唇をギュッと噛み締めた。もう外人が日本語を理解しているのは明らかだった。何故か全く喋ろうとしないけれど。
外人は星をじいっと見たが、頑なに星が自分と目を合わせようとしないので、やれやれという様に首を振る。そして平介に軽く礼をすると、コンシェルジュに手を振って去って行った。最後まで洋介の方は一度も見ようとしなかった。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
平介がコンシェルジュに頭を下げると、星はハッと気が付いてバツの悪そうな顔をした。
「小林さん、すみませんでした」
「いいえ、わたくしの方こそ申し訳ありませんでした。止めるべきか迷ってしまって……。星様大丈夫ですか?」
「はい…」と星は平介の顔を見てから頷いた。
「大丈夫です」
「あの方は、今後はお取り継ぎしなくてよろしいでしょうか?」
「はい、……もう来ないと思いますが、よろしくお願いします」
「かしこまりました」
「本当にすみません」
「いいえ、お気になさらず」
項垂れる星の背中を平介が押し、洋介はコンシェルジュに頭を下げながらその場を離れた。
「どうぞ座って下さい」
エレベーターでは三人無言だった。気持ちを切り替えられないまま着いた星の家はまるでショールームみたいに片付いて生活感がない。
そして広い。三人家族だと聞いてるが、五人、いやもっと居ても余裕そうだ。マンションなのに、千葉の洋介の家よりも広いんじゃないだろうか? 学生時代、千葉の家に遊びに来た友人は大抵「流石田舎の一軒家、広い」と感心していたが、星のマンションの方が遥かに広く感じる。
アイランドキッチンから、六人掛けのガラス製ダイニングテーブルの置かれた食堂、革張りの大きなソファが置かれた居間迄ワンフロアなので余計に広く感じる。家具はご両親の趣味なのか銀と黒色で統一され、都会的な冷たさを感じて落ち着かない。
無論千葉の家みたいに物で溢れ返っていない。無駄な物は一切ないし、空間の使い方というか部屋の余白の取り方が映画や雑誌で見た海外の豪邸っぽい。ゆったりというか、がらんとしているというか。千葉の家みたいにすれ違う時に家具と人の間を横になってやり過ごすなんて必要は絶対にないし、ダイニングテーブル上半分を物が占めている……ペン立てやドライフルーツが入った瓶とかが、なんて事もない。
星は今は一人暮らしの筈だが、この広さ、寂しくならないのだろうか。慣れているから平気なのか?
窓からの景色を眺めていた平介は、星の言葉に戻って来た。だが、ダイニングテーブルとソファのどちらに落ち着くべきか迷ってるので星が「どちらでもお好きな方へどうぞ」と勧めるけど、余計に困惑顔になる。
(分かる。分かるぞ)
ガラス製のテーブルは割りそうで怖いし、革張りのソファも恐らく海外の物で高そう傷でも付けたらどうしようと不安で座り辛いのだ。洋介もテーブルとソファの間で所在無く立ち尽くしていた。
平介が窓に直行したのも景色を眺めたかったというより、どこに座っていいか分からなかったからだろう。
「お茶淹れますね。コーヒーと紅茶どちらがよろしいですか?」
「コーヒー」
無理に出した様な明るい声で星がキッチンから聞くのに、平介が間髪入れずに答える。
「洋介さんはどちらにされますか?」
「俺も親父と同じでいいよ」
「うちはポーションなので、お茶とコーヒー同時に選んでも大丈夫ですよ」
「ポーション?」
星の言葉に平介が不思議顔だ。
「あー、あれだよ。ハリウッド俳優がCMしてるやつ」
洋介はすぐ分かったが、平介はまだ分からない様子だ。
気を利かせた星がポーションを持って来てガラステーブルの上に広げる。
「こういうのを機械にセットしてボタンを押すと出来るんです」
「なるほど」
「甘いのもあります。抹茶オレとかカフェモカとか」
「これで」
平介が選んだのは抹茶オレだ。甘党だからだが、恐らくカフェモカがどういう物か分からなかったからだろう。
「洋介さんはどうされますか?」
「えっと、じゃあこれで」
エスプレッソを選んだ。単純に量が少ないから。早く飲み終わったらそれだけ早く帰れるし、水分が少ない分だけ後でトイレに行きたくなる可能性が低いだろうと。
「はい。では少々お待ち下さい」
星がキッチンに戻ろうとするのを、待った、と平介が止める。
「真一君はどれにするんだ?」
「僕ですか? えーと、僕はこれにします」
星が選ぶと、平介は星の手首を掴んだ。
「自動で淹れられるなら、洋介にも出来るだろう? お前がやれ。真一君は少し、俺と話をしよう、な?」
「え、幾ら自動でも初めて使うし、他所のお宅だし、分かんないよ」
「そうですよ。すぐに出来ますから、お話しならその後でも……」
洋介は驚き呆れ、星は戸惑っていたが、平介は早くやれ、と顎でしゃくって洋介を急かす。こうなると絶対に譲らない性格なのは分かっている。
「俺がやるよ」
渋々頷くと、平介はまだ困惑している星を引っ張ってソファの方へ向かう。
「一応使う物は出してありますから、水は冷蔵庫にあるミネラルウォーターを使って下さい。もしカップが足りなければ、探して出して頂いて構わないので……」
律儀に教えてくれる星の言葉に頷くと、一体親父は何なんだ? 俺に聞かせたくない話でもあるのか? みえみえだぞ。まあ最悪ネットで調べたらやり方は分かるだろ、と洋介は首を傾げながらもキッチンに向かった。
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