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42 ヒート不順ですか?
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それでどうしてうちに来る事になるんだと、洋介は助けを求めて婚活アドバイザーを見る。
「色々と違和感はおありと存じますが、まずは岬洋介様が長くお家にいらっしゃるので、とご理解ください」
「は、はあ?」
「今回のHKD47事業ですが、何分初の試みでして、政府も手探りで進めております」
「はあ」
「その為、各アドバイザーには自由裁量権がございまして、それぞれのご家庭、個人に対して必要だろうと判断しましたら、一般的ではない事柄でも犯罪でない限りは試みる事になっております」
要は俺が引きこもりだから、常識外れだがこの二人が会いたいと言って来たのを受け入れた、って事だろうか?
それでも腑に落ちない、というのが顔に出ていたのだろう。
「まず最初にお話ししておくべきでした。星真一様ですが、体調を崩されて入院されております」
「へっ!?」
婚活アドバイザーの言葉に驚いて、洋介は奇声を上げてしまう。
星の部下二人はしんみりした様子で下を向く。慌てて富士子を見ると、頷かれた。そうなんだ。聞いてないよ。てっきりアメリカに戻ったとばかり、ってアメリカで入院してるのか?
「それは……、知りませんでした。アメリカでですか?大丈夫なんですか?」
「日本の病院です。入院理由はヒート不順です。女性の生理と同じ、と例えて男性の岬洋介様にご理解頂けるか分からないのですが、強いストレスによって女性は生理の周期がずれたり重い生理痛に悩まされる事がございます。第三の性のヒートもストレスに影響を受ける事が近年の研究で明らかにされております。ヒート不順は、生理不順と同様に周期がずれたり重いヒートに悩まされる事です。
ただ、ヒートが生理とは違うのはその在り方です。生理が受精しなかった卵子を身体から排出する…謂わば次の機会に備えての仕組みであるのとは反対に、ヒートは今この機会での受精を求めて強い性衝動を催す仕組みであります。その為、生理と違い本人だけで完結せず、周りを巻き込みます。母体が望まない妊娠を引き起こしてしまう可能性が高いのです。以上の理由から、ヒート不順は重症の場合には入院が必要になるのです」
「……」
うおお。この人息継ぎしないで一気に言い切ったよ。まあアンドロイドなら息継ぎなんて必要ないか。
じゃなくて。
そうか、それは大変だな。頭では分かっているんだけど、知識として知っているんだけど。え、どういう状況? 実際には見た事がないから想像付かない。いや、本作っておいて何言ってるんだ、ってなるけど、大昔だし。それも赤の他人の話だから、第三者としての目線で見てだから知識として理解出来た。
けど、この前の星のヒートの時も思ったけど、知っている人、それも星の事だとやっぱり生々しくて、逆に脳が理解を拒否するというか、字面以上の事を考えようとすると頭がおかしくなりそうになる。
何を言っていいのか分からなくて、相槌も打てずに洋介は押し黙った。
「病院に連絡したのは私達です」
「ヒートの場合、救急車って来てくれないんですよ」
と小畑さんと鈴木さんが話を引き継ぐ。
「専門のスタッフでないとヒートに引き摺られちゃうので」
「社長は『普段は家でやり過ごすから大丈夫』って言ってましたけど、今回はほんとに重症で。密閉性の高いマンションなのに外の廊下まで匂ってましたから、私達の判断で入院して貰いました」
「匂う……」
「ご存じかと思いますが、ヒートのフェロモンです」
「ああ」
洋介の呟きに鈴木さんが答えてくれる。
「私は結婚してるので普段は社長のフェロモンには影響されないんですけど、今回はキツかったです」と小畑さん。
「私は、私は未婚ですけど、社長はあくまでも『推し』なので、そこの住み分けはきちんと出来ていますので大丈夫です! 安心して下さい!」とは鈴木さん。
「は、はあ」
なんかまた熱量がぶり返してきたみたいな早口に思わず洋介は腰が引けてしまう。だがなおも鈴木さんは語る。
「その辺りは信念を持って働いております。推し活は私のアイデンティティーですから、何があろうとも揺るぎません! 確かに、今回の社長のフェロモンは強かったですけれど、それは社長が岬さんを想うが故の事。それなのに変な虫がついてはいけませんから、社長はちゃんと守りました。それでなくても今回はウザイ虫がウロウロしたせいだからっ」
「んんっ」
小畑さんが変な咳?をして、鈴木さんがハッと口をつぐんだ。
「色々と違和感はおありと存じますが、まずは岬洋介様が長くお家にいらっしゃるので、とご理解ください」
「は、はあ?」
「今回のHKD47事業ですが、何分初の試みでして、政府も手探りで進めております」
「はあ」
「その為、各アドバイザーには自由裁量権がございまして、それぞれのご家庭、個人に対して必要だろうと判断しましたら、一般的ではない事柄でも犯罪でない限りは試みる事になっております」
要は俺が引きこもりだから、常識外れだがこの二人が会いたいと言って来たのを受け入れた、って事だろうか?
それでも腑に落ちない、というのが顔に出ていたのだろう。
「まず最初にお話ししておくべきでした。星真一様ですが、体調を崩されて入院されております」
「へっ!?」
婚活アドバイザーの言葉に驚いて、洋介は奇声を上げてしまう。
星の部下二人はしんみりした様子で下を向く。慌てて富士子を見ると、頷かれた。そうなんだ。聞いてないよ。てっきりアメリカに戻ったとばかり、ってアメリカで入院してるのか?
「それは……、知りませんでした。アメリカでですか?大丈夫なんですか?」
「日本の病院です。入院理由はヒート不順です。女性の生理と同じ、と例えて男性の岬洋介様にご理解頂けるか分からないのですが、強いストレスによって女性は生理の周期がずれたり重い生理痛に悩まされる事がございます。第三の性のヒートもストレスに影響を受ける事が近年の研究で明らかにされております。ヒート不順は、生理不順と同様に周期がずれたり重いヒートに悩まされる事です。
ただ、ヒートが生理とは違うのはその在り方です。生理が受精しなかった卵子を身体から排出する…謂わば次の機会に備えての仕組みであるのとは反対に、ヒートは今この機会での受精を求めて強い性衝動を催す仕組みであります。その為、生理と違い本人だけで完結せず、周りを巻き込みます。母体が望まない妊娠を引き起こしてしまう可能性が高いのです。以上の理由から、ヒート不順は重症の場合には入院が必要になるのです」
「……」
うおお。この人息継ぎしないで一気に言い切ったよ。まあアンドロイドなら息継ぎなんて必要ないか。
じゃなくて。
そうか、それは大変だな。頭では分かっているんだけど、知識として知っているんだけど。え、どういう状況? 実際には見た事がないから想像付かない。いや、本作っておいて何言ってるんだ、ってなるけど、大昔だし。それも赤の他人の話だから、第三者としての目線で見てだから知識として理解出来た。
けど、この前の星のヒートの時も思ったけど、知っている人、それも星の事だとやっぱり生々しくて、逆に脳が理解を拒否するというか、字面以上の事を考えようとすると頭がおかしくなりそうになる。
何を言っていいのか分からなくて、相槌も打てずに洋介は押し黙った。
「病院に連絡したのは私達です」
「ヒートの場合、救急車って来てくれないんですよ」
と小畑さんと鈴木さんが話を引き継ぐ。
「専門のスタッフでないとヒートに引き摺られちゃうので」
「社長は『普段は家でやり過ごすから大丈夫』って言ってましたけど、今回はほんとに重症で。密閉性の高いマンションなのに外の廊下まで匂ってましたから、私達の判断で入院して貰いました」
「匂う……」
「ご存じかと思いますが、ヒートのフェロモンです」
「ああ」
洋介の呟きに鈴木さんが答えてくれる。
「私は結婚してるので普段は社長のフェロモンには影響されないんですけど、今回はキツかったです」と小畑さん。
「私は、私は未婚ですけど、社長はあくまでも『推し』なので、そこの住み分けはきちんと出来ていますので大丈夫です! 安心して下さい!」とは鈴木さん。
「は、はあ」
なんかまた熱量がぶり返してきたみたいな早口に思わず洋介は腰が引けてしまう。だがなおも鈴木さんは語る。
「その辺りは信念を持って働いております。推し活は私のアイデンティティーですから、何があろうとも揺るぎません! 確かに、今回の社長のフェロモンは強かったですけれど、それは社長が岬さんを想うが故の事。それなのに変な虫がついてはいけませんから、社長はちゃんと守りました。それでなくても今回はウザイ虫がウロウロしたせいだからっ」
「んんっ」
小畑さんが変な咳?をして、鈴木さんがハッと口をつぐんだ。
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