我が名は魔王豚ゴブリンなり! ~豚ゴブリンと蔑まされた少年はVRMMOイアンカムスで魔王となり最強プレイヤーを目指す~

ぱいん

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豚ゴブリンと呼ばれた少年

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 目の前には幻想的で神秘的な光景が広がっていた。
 見たことも無い煌びやかな植物に神話にしか出てこないような幻獣が存在し、凶悪なモンスターが跋扈する剣と魔法の世界。
 ここは異世界イアンカムス。と言っても本物の異世界じゃない。10年前に開発されたフルダイブ型のVRMMOイアンカムスの世界だ。現在、全世界で30億人ものプレイヤーが存在するといわれ、年間数十兆円規模の売り上げを稼ぐ怪物コンテンツである。
 今やイアンカムスというコンテンツは世界中の人々の日常と化していた。老若男女問わず全ての世代の人間が日常的にゲームをプレイし、イアンカムスの情報に触れない日などない。かつていた動画配信者と呼ばれる者達も現在ではほとんどがイアンカムスのゲームプレイ実況に移行している。
 では何故、人々がここまでイアンカムスに熱狂的になっているのか。
 その理由は明白だ。単純にゲームをプレイするだけで金になるからである。
 ゲーム内通貨に『G』というものがあり、これはモンスターを倒したらドロップする魔石やアイテムを売れば入手出来る。それ以外にもクエストをクリアしても報酬として基本入手可能だ。そして、このGは現実世界で実際に使用可能なのである。
 円に換算するとGは約十分の一の価値がある。100G稼ぐと10円の価値があるということだ。
 ただゲームをするだけで金を稼ぐことが出来るという情報は瞬く間に世界中に拡散した。そしてゲームをプレイした者のほとんどがこのゲームの世界に魅了される。気づけば誰もがイアンカムスの虜になっていた。
 ここは本物の異世界なのかもしれない。
 それがゲームをプレイする者が抱く共通の感想だろうとオレは思う。

 周囲は煌びやかな森。近くには始まりの街と呼ばれる『アタホナムの街』があり、この森は通称初心者の森と呼ばれる狩場だ。
 湧いて来るモンスターはゴブリンなどRPGではおなじみの雑魚しか出現しない。ゲーム初心者はこの森で戦い方を覚え、そして次の街に行きそれぞれ冒険者ギルドでクエストを受注したりしてゲームを進行していく。
 つまり、現在に至ってはこの森にいる初心者のほとんどはゲーム未経験の子供くらいなものだ。
 だが、オレは未だにこの初心者の森から抜け出せずにいる。
 オレの名前は澄川シュウト17歳。今時幼稚園児すらゲームをプレイしているこのご時世に高校生のオレは初心者同然のレベル12なのだ。一般的に3年もプレイしていれば自ずとレベルは100を超すのが普通であった。
 もちろん、世の中には経済的な問題や宗教上の理由など色々な事情があってイアンカムス未プレイ者がいても不思議なことではない。
 そしてオレがゲーム初心者同然の状態になってしまった最たる理由は家庭の事情であった。
 物心ついた頃には既に実母は他界していて長い間オレは実父と広い屋敷で暮らしていた。
 オレの実父は会社を経営していて生活は裕福だった。
 2年前のことである。オレが15歳の頃、父は再婚した。
 それが後の悲劇になろうとはこの時のオレは微塵も思いもしなかった。
 継母の礼子には二人の息子と一人娘がいた。義兄の礼一と義弟の礼二に義妹の礼香だ。
 新しい家族を迎えてオレは嬉しかった。父はオレに愛情を注いでくれてはいたが仕事が忙しくいつもオレは家で一人ぼっち。
 そんな時に新しい家族が四人も出来たのだ。当時のオレは相当舞い上がっていた。
 優しい義母。頼りになる義兄。自分を慕ってくれる義弟と義妹。
 しかし、それも実父が亡くなるまでの話だった。
 ある日、実父は突然病死してしまった。それが去年の話である。だが、オレは悲しみに暮れる暇すら与えられなかった。
 実父が亡くなると同時に、義理の家族は本性を剥き出したからだ。
 オレは家から追い出されると庭にあるごみ置き場に使われていた物置小屋に押し込められた。
 食事は与えられず、物置部屋に放り込まれる生ごみの袋を漁るより生きる術はなかった。
 家の中に入ろうものなら義家族から殴る蹴るの暴行を受け、何日も残飯すら与えられない日々が続いたこともあった。
 そんな時、オレを救ってくれたのがイアンカムス内にあるゲーム通貨であった。
 オレはそれまで貯め続けて来たゲーム通貨で日々の糧を得て何とか命をつなぎとめていた。ゲーム自体は小学生の頃からプレイしており、それなりのGの貯蓄もあったのだが、あの日、事件は起きた。
 先日、オレのアカウントが義理の兄弟達に奪われたのだ。もちろん、G目当てだ。
 奴らはオレからGを奪い取った後、アカウント自体を消し去ってしまった。
 それから、オレは新たにアカウントを作り直し、レベル1から必死になって毎日生活費を稼がざるを得なくなったのだ。
 元々のアカウントも大したレベルではなかったが、小学生のころから大切に育てて来たアバターが消されたのは死にたくなるほどのショックだった。
 本来ならアルバイトでもすればいいのだろうが、それが出来ない理由があった。
 オレには夢がある。それとは、イアンカムスのプロゲーマーになること。
 ゲーム世界にはトップランカーが様々な企業と提携してギルドを作っている。
 プロゲーマーになるにはいずれかのギルドに入りスポンサー契約を結ぶことが必要条件だ。
 そして、ギルド加入の必要条件として高校卒業があった。
 これは子供が学業そっちのけでゲームにのめり込むのを防ぐ効果がある。
 アバターのレベルも最低100あることが必須条件。最初からゲームをやり直しているオレには時間が無いのだ。卒業に必要な単位とギルド加入に必要な試験を受けるのに必要なレベル100の条件を満たすには不眠不休でレベル上げをしなくてはならない。だから、今のオレにはアルバイトをする余裕が無いのだ。
 そんなこんなで、オレは今日も学校が終わって物置小屋という名の家に帰って来てからずっとゲームをプレイしていた。
 寝るのは毎晩朝陽が昇ろうとしている頃だ。
 オレは30匹目のゴブリンを狩り終わった後、ステータス画面を開きGを確認する。
 
「ようやくこれで1000Gか。レベルもようやく30になった」

 オレは安堵の息を洩らす。今は6月上旬。夏休みをずっとレベル上げに使えば何とかレベルも70くらいには上げられるだろう。
 もう少しGを貯めれば現実世界で6枚入りの食パンが一袋買えるな。それは三日分の食料になる。つまり三日は餓えずにゲームに専念出来るのだ。こんなに嬉しいことはなかった。
 ギルド試験に合格すればオレの将来も多少は安泰になる。
 その時、オレの脳裏に現実世界の光景がフラッシュバックした。
 義家族からは虐待され、物置部屋という名の我が家には義家族が出した生ごみの袋が並べられ、仮想世界にいる今でもその悪臭で、むせそうになった。
 学校では不良グループ達からいわれのない暴行を受け毎日のように虐げられている。抵抗する勇気も力もないオレはただ黙って嵐が去るのを待つより術がない。
 不意に耳の奥から『豚ゴブリン』という台詞が聞こえて来た。それに続いて嘲笑が響いて来る。
 オレは胸の奥に鈍痛を覚え、思わず顔をしかめる。
 それは現実世界でのオレの蔑称だった。背も低く身体も醜く肥え太っていて、見た目がオークの様なゴブリンということからその蔑称で呼ばれるようになった。
 イアンカムスはオレにとって唯一安らげる場所だった。あっちの世界は地獄と呼ぶのすら生温かった。 
 でも、もう少しであの地獄の様な生活から抜け出すことが出来る。プロゲーマーにさえなれればオレの人生も大きく変わることだろう。
 そう自分に言い聞かせ、新たな獲物を探しに行こうとした瞬間だった。
 突如として周囲の画面が真っ暗になり、オレは衝撃を受けたのだ。
 何が起きたんだ⁉ オレは事態の把握よりもログアウトせずにゲームが終了されたことによるデータの破損に恐怖した。
 またアカウントがリセットでもされようものなら、ギルド試験に合格するどころか受験の資格すら喪失するのだ。そうなるとオレの人生は闇に包まれてしまう。希望など微塵も残されはしないだろう。

「お、ようやく起きたか」

 突然、何か強い衝撃を頭と腹部に受けた後、眩い光が目に飛び込んできた。
 目を開くと、そこには穏やかな笑みを浮かべた義兄の礼一の姿が見えた。

「礼一義兄さん⁉ ど、どうしてここに?」

「いいからとっとと外に出ろ。この豚小屋は臭くてたまらないからな!」

 見ると礼一義兄の片手にはオレのVRギアが握られていた。それがないとオレは二度とゲームにログインすることが出来ない。
 だが、オレは礼一義兄に首の後ろを掴まれ、そのまま物置小屋の外に引きずり出されていった。
 礼一義兄は乱暴にオレを地面に放り投げた。
 オレの肥えた身体はバウンドし、一回転して止まる。
 地面に這いつくばった状態で全身に痛みを感じながら、オレは顔を上げた。視線の先には残りの義家族の姿が見えた。全員の顔に嘲笑が浮かんでいた。
 
「あ、ようやく出て来たんだ豚ゴブリン。相変わらずあり得ないくらい臭いんですけど」

 義妹の礼香が目を細めながら、きゃはははは! と甲高い嘲笑を張り上げた。

「相変わらず不細工な面をしてやがんな、豚ゴブリンはよ。見てるだけで反吐が出るぜ」

 そう言って義弟の礼二は鼻で笑って見せるとオレに向かって唾を吐きかけた。その唾はオレの額に降りかかる。
 あまりの屈辱に怒りがこみあげて来る。しかし、それを爆発すればオレはこいつらにリンチを受けるだろう。一度それで死にかけたこともあり、オレはグッと堪えた。今は耐えるしかないと自分に言い聞かせ、地面を抉る様に爪を立てた。

「何の……御用ですか?」

 オレは声を震わせながら奴らに静かに問いかけた。
 すると、義母の礼子が前に出て来る。確か義母は今年で50歳のはずだ。金髪で濃い目の化粧をしている。年齢には不相応な黒くて薄めの胸元の開けた服を着ていて若作りが痛々しかった。思わず年齢を考えろと思ってしまい笑いが込み上げて来た。それが唯一オレに出来た抵抗だった。

「今日はシュウト君にお願いがあって来たの。これを見てくれる?」

 そう言って義母の礼子は口元に柔和な笑みを浮かべながら一枚の紙をオレに手渡してきた。
 紙には誓約書の文字が大きく書かれていた。
 
「これは……?」

「実はね、シュウト君にはお父さんの遺産を放棄してもらいたくて。遺産放棄の誓約書にサインをしてもらいたいのよ」

「遺産放棄だって?」

 オレは一瞬呆気にとられた。既にオレから何もかも全て奪っておいてどういうつもりだ? 義母の意図が全く理解できず、オレは返す言葉を見失う。
 すると、苛ついた義兄の声が聞こえてくると、オレは背中に衝撃を受けて顔面を雨でぬかるんだ地面に突っ込んでしまった。泥の味が口内に広がり吐き気を覚えると咳き込みながら泥を吐き出した。

「とろとろしていないで、お前はさっさと書類にサインすればいいんだよ」

「いや、でも、何で今更……」

 その時、オレはハッとなる。よくよく考えれば何故、こいつらはオレを完全に家から追い出さないのだろうか。オレをこの家から追い出す方法はいくらでもあるし、何故かそれはせずこの物置小屋に留めていた。そして遺産放棄の誓約書である。
 もしかしたら、こいつらはまだ完全に父さんの遺産を自分の物に出来ていないのかもしれない。例えば父さんはオレが18歳になったら遺産の一部を譲るとでも遺言書に残しているとか。義母が遺産を相続するには成人するまでオレと一緒に住むことが条件とか、色々と可能性は考えられた。
 だとすれば、この誓約書にサインしたが最後、オレは亡き者にされる危険がある。オレみたいな社会に必要とされない人間が消えたところで誰も騒ぎはしないだろう。万が一にも警察が動いたとしても、偽りの家族共がオレは家出したとでも告げれば警察の捜査も適当なものになるに違いない。
 だとしたら、言われるがままにこの誓約書にサインすれば、オレは明日にでも行方不明者になるかもしれないのだ。

「豚ゴブリン……いやシュウト兄さん。お前もあのおっさんみたいに病死したくなければ大人しくサインしておいた方が身のためだぜ?」

 義弟の礼二はそう言って口の両端を吊り上げながらほくそ笑んだ。
 
 あのおっさんみたいに病死したくなければ、だって? それは父さんのことか⁉

 義弟の一言でオレは確信した。それと同時に衝撃的な事実を知ってしまった。
 間違いない。あんなに元気だった父さんがいきなり病死するなんておかしいと思っていたんだ。つまり父さんはこいつらに何らかの方法で殺されたに違いない。

 逃げなければ。

 だが、どうやって? 走って逃げてもすぐに追いつかれてしまうだろう。短足胴長でぶくぶく肥え太ったこの身体では小学生からも逃げられる自信はなかった。
 オレが迷っていると、義兄の礼一がオレの前にやって来て右手に持っていたVRギアを見せて来る。

「大事な物なんだろう? これが無いとお前は明日のパンすら食えなくなるはずだ。もしサインするなら返してやってもいいぜ?」

 オレは返せ! と叫ぶのを必死にこらえた。VRギアを運よく取り返すことが出来ても、最後は奪い返されてボコボコにされるのがオチだと思った。抵抗は無意味だと瞬時に悟ったのだ。

「分かり、ました……サインします」

 ここはサインをしてVRギアを取り戻せれば十分だ。 
 オレがそう言うと、義母の礼子はボールペンを放り投げて来る。

「分かればいいのよ、分かれば。あと、高校を卒業するまではその豚小屋は好きに使っていいわよ。ご飯も残飯なら犬のエサ入れに入れておいてあげるから遠慮せず食べてね」

 オレは下唇を噛みしめながら震えた手で誓約書にサインする。

「これでいいですか?」

 オレは近くにいた義兄の礼一に誓約書を手渡す。
 
「おお、サンキュな。確認したぜ」

「オレのVRギアを返してください」

「おっと、そうだったな。ほら、返してやるよ」

 義兄の礼一はそう言うとVRギアを両手で掴み上げた。

「ちょ、何を……⁉」

 次の瞬間、オレが止める間もなく義兄の礼一はVRギアをオレの目の前で真っ二つにへし折った。バキっという乾いた音が響き渡った。

「反抗した罰だ。でも明日からは飯の心配をする必要はないぜ。オレ達の食い残しを腹いっぱい食わせてやるからな」

 義兄の礼一は二つに割れたVRギアをオレの目の前に落とすと、とどめと言わんばかりにそれを足で踏みつけた。一度ではなく粉々になるまで何度も何度もVRギアを踏みにじる。オレはただ呆然と悪夢の光景を凝視するより術はなかった。
 夢も人生も奪われたオレはしばらくの間放心状態になっていた。
 気づけば偽りの家族共の姿は既に消えていた。オレはどのくらい放心していたんだろうか?
 そんなことはどうでもいい。どうせオレはこのまま徐々に奴らに命を奪われるんだろう。きっと父さんにしたようにじっくりと死んでいく毒を豪勢な食い残しに盛るつもりに違いない。だから、奴らはオレの飯のタネでもあるVRギアを破壊してイアンカムスをプレイ出来ないようにしたのだ。

「もういい。疲れた……」

 いっそのこと苦しまずに殺してくれるなら、今すぐにでもそれを実行してもらいたいと思った。
 そう言えば近くに川があったな。昨日の雨で今日は増水していて水の勢いも速いはずだ。
 オレはそう思いながら立ち上がった。
 もう楽になろう。そう思った時だった。
 懐に入れていたスマホから着信音が鳴り響いた。オレには友達はいない。連絡が来るとすれば、イアンカムスの運営からだろう。いつものゲーム内イベントの情報だろうか。
 オレは自然とスマホの画面を覗いていた。これから命を絶とうとしているのに、身体が反応してしまったのだ。

「プロゲーマーになりたかったな」

 そんなことを呟きながらメールを開くと、そこには思わず目を点にしてしまうメッセージが表示された。

『生きたければ紋章をタップしたまえ』と。

 メッセージ画面の下には見たことも無い紋章のイラストが表示されていた。美しい姫の周囲に蛇と髑髏があしらわれた紋章だ。

「生きたければだって? 好きで死にたいやつなんているわけないだろう⁉」

 神経を逆なでするようなメッセージに促されるがまま、オレは荒々しく紋章の部分をタップした。
 刹那、周囲の景色がセピア色に変わると、オレの意識は混濁して闇に包まれた。気絶するのとは違う不思議な感覚だった。まるで時間が停止しているような、何十年、何百年と長い時間が経過したような錯覚も受けた。
 何が起きているんだ? と心の裡で呟くのと同時に、オレの目の前には見慣れた景色が広がっていた。

「イアンカムス……? 間違いない。ここはゲームの景色だ!」

 ここは間違いなくいつもプレイしているイアンカムスの世界だった。でもいつもの見慣れたゲームの景色とは違い色彩がセピア色に変化していて、まるで時間が静止しているような錯覚を受けた。

「ゲームのバグか? いや、そんなことよりもオレはログインに必要なVRギアを装着していないんだぞ? 何故、オレはここにいるんだ?」

 もしかしたらオレは絶望のあまり頭が錯乱状態に陥ってしまっているのだろうか? いや、もしくは現実の自分は既に死んでしまっていて、ここは死後の世界なのかも。
 そんなことを心の裡で呟いていると、目の前に眩い光の球が現れた。

「残念ながらここは地獄〈タルタロス〉でもなければ天国〈エリュシオン〉でもない。間違いなくシュウト君の愛する異世界イアンカムスの電脳世界さ」

 目の前に現れた光球が陽気な口調でオレに話しかけて来た。

「君は誰だ?」

 オレは身構えながら光球に話しかけた。

「おっと失敬。ちょっと待っていてくれ。姿を見せるから」

 光球がそう呟くと、突然、光が弾けた。粒子の様な細かい光が周囲に散らばり、それは一か所に集まって人の形になっていった。
 そこに見慣れた少女の姿が佇んでいた。イアンカムスをプレイしたことがある者なら誰もが知っている存在だった。
 神々しく輝く亜麻色の髪は後ろで束ねている。三枚の銀翼の肩当に白いドレスを身に纏い片手には魔法の杖を持っている。あどけなさの残る端正な顔立ちは少年のようにも見えた。
 彼女の名は女神エレウス。この異世界イアンカムスを創世したという設定のキャラである。キャラメイク時やチュートリアルの際に現れるキャラであり、誰もが最初に知ることになるキャラでもあった。
 
「初めまして、澄川シュウト君。ボクの名前は女神エレウスだよ」

 エレウスは目を細めると薄く口元に艶めかしい笑みを浮かべた。
 
「単刀直入に言う。君、ボクと一緒に世界を滅ぼさないかい?」

 そう言って女神エレウスはオレに手を差し伸べて来るのだった。
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