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異変
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狂戦士〈バーサーカー〉レベル1のスキルを発動後、オレの意識は混濁し、どのくらいの時間か分からないが自我を失っていったようだった。
正気に戻るといつの間にか周辺は焼け野原となり、レベルも20になっていた。
地面に散乱している魔石の数はゆうに二百を超えている。魔石は冒険者ギルドに行けばGと交換することが可能だ。ゴブリンが落とす魔石は一個につき10~20G程度の価値はある。これで初期装備くらいは入手出来そうだ。無一文の状況でこの世界に放り込まれたが、ようやくまとまったGが手に入れられそうなので内心ホッとした。
「それにしても何が起きたのか全く覚えていない」
スキル発動後、何となく自分が戦っているという感覚はあった。しかし、身体の自由はなく、自動的にアバターが戦闘を行っているという認識が朧気ながらあるだけだった。時間の経過も何と戦っているのかも認識することは出来なかった。
この状況を察するに狂戦士のスキルとは、ステータスを大幅に上昇させる代わりに自我を失う自動攻撃スキルなのだろう。
ゴブリン一匹相手にもあんなに苦戦していたのが嘘のようだ。地面に転がっている魔石は間違いなくオレがゴブリンを討伐した証だ。他のプレイヤーが討伐した魔石なら、今もこうしてオレの目の前で転がっていることはない。魔石は一定時間が経過すると、自動的に討伐したプレイヤーの道具袋の中に吸い込まれる仕組みになっているからだ。
そう思っていると、魔石は淡い光を放ち、流星群のごとくオレの道具袋の中に吸い込まれていった。間違いなくオレは魔石の数だけモンスターを討伐したのだ。
「あれからどのくらいの時間が経過したんだろうか?」
オレはステータス画面を開き、ゲームプレイ時間を確認する。
試験開始からまだ1時間も経過していないことが分かり、オレは愕然となった。
よもやこんな短時間で、しかも初心者の森での戦闘だけでここまでレベルが上がるとは予想すらしていなかった。通常、初心者の森だけでここまでレベルを上げるとしたら、まるまる一か月間はかかっていたと思う。それだけゴブリンから得られる経験値は乏しいのだ。これではまるでこのフィールド上に湧いていた全てのゴブリンをオレ一人だけで討伐したかのような状況だった。いや、恐らくオレが一人で全てのゴブリンを討伐してしまったのだろう。
その時、オレはようやくステータス画面が真っ赤に点滅していることに気づく。これは残りのHPが2割以下になった時に現れるアラートだ。
「もしかして、狂戦士のスキルはHPの残量によって解除される仕様なのかな?」
この初心者の森は一度モンスターが狩りつくされるとクールタイムが発生し、しばらくの間はモンスターが湧かないようになっている。しかし、他のフィールドではこうはいかない。ここ以外での狩場では無限にモンスターが湧いて出て来るので、夢中になってモンスターを狩り続けて行ったらいつの間にかモンスターに囲まれていたってことは誰しもが経験することだった。それは初心者のやりがちなミスだが、そうして一度アバターを死亡させたりしてプレイヤーは心身ともに成長していくのだ。
「狂戦士のスキルの解除方法がいまいち分からない以上、他のフィールドでの使用は控えた方が良さそうだな」
スキル解除の条件が分からない以上、他の狩場でこのスキルを使用するのは自殺行為だろう。そもそも自我を失うようなスキルは常時使用するようなものではない。これはいざという時の切り札にしておこう。調子に乗ってこのスキルを使いまくって万が一にもHP残量が2割以下の状況でモンスターの群れの中で孤立したら目も当てられない。今のオレは無職なのだ。多少レベルが上がったとしてもソロでは未だにゴブリンを相手にするのが精一杯だった。
「もうしばらく初心者の森でレベル上げするとしても装備は必要だな」
オレは取得した大量の魔石を思い浮かべた。これを全て売却すれば多少はマシな装備を購入することが出来る。
とにかく武器と盾。これは必須だった。盾が無ければゴブリンの攻撃を防ぐことも出来ない。安物のショートソードでも徒手空拳よりは遥かにマシになるだろう。
「とにかく始まりの街アタホナムで装備を整えよう」
街に行けば減少したHPも一瞬で全回復する。可能なら今後の戦闘に備えてポーションも購入したいところだ。
そんなことを考えながらオレは始まりの街アタホナムに向かった。
アタホナムは初心者の森から街道沿いに歩けばすぐの場所にある。モンスターもあまり出現しない為、真っ赤に染まったHPゲージでも無事に街まで辿り着くことが出来るはずだ。
しかし、オレはその予測が甘かったことをすぐに思い知ることになる。
街道を歩いて行くと、遠目にアナホタムの街が見えて来た。それと同時に複数の人影も見えた。初心者パーティーだろうか? 彼等は初心者の森に向かっているようだった。
レベル上げかゴブリン討伐のクエストかな? などと考えていると、彼等はオレを見て何やら騒ぎ始めた。
何事だ? と思いつつも無警戒のまま彼等の横を通り過ぎようとした時だった。
突然、戦士風のプレイヤーにショートソードで斬りかかられたのだ。
「危ない!」
オレは咄嗟に斬撃を回避する。
「何をするんだ⁉」
オレは慌てて叫んだ。冗談じゃない。イアンカムスではPKも可能なゲームシステムになっている。今のオレは初心者プレイヤーの一撃でも瀕死の状態になるほど弱り切っているのだ。
「おい、ゴブリンが喋ったぞ?」
魔法使い風のプレイヤーが驚きの声を上げた。その他の仲間達も一様に動揺の眼差しでオレを見た。
まずい。彼等はオレをゴブリンだと勘違いしているみたいだ。この姿じゃ仕方ないが、流石にモンスターとプレイヤーの区別くらいは簡単に出来るだろう。それは彼等が初心者であることの証でもあった。ここはちゃんと誤解を解いておかなければ。
「オレはゴブリンじゃない! ほら見ろ。頭上にプレイヤーネームも表示されているだろ?」
彼等は「本当だ」と驚きの声を洩らした。どうやら本当にオレのことをゴブリンだと誤認していたみたいだ。
「でも、そんなアバター、初めて見る。ゴブリンにもオークにも見えるよな?」
「ああ、豚ゴブリンって感じの不細工なアバターだぜ」
彼等はそう言うとクスクスと嘲笑を洩らした。
嘲りは聞きなれている。今更初対面の人間に何を言われようがどうでもいい。ただオレは早く街に行って装備を整え、次のレベル上げの準備をしたいだけだ。特に彼等に謝罪を求めようとは微塵も思わなかった。
「誤解が解けたならオレは行くよ」
その時、ヒーラー風のプレイヤーがボソリと呟いた。
「そう言えばこのゲームってPKしてもOKだったよね?」
彼の一言で場の空気が豹変する。
オレはこの空気を知っている。そして、オレを見る彼等の眼差しにも見覚えがあった。獲物を見つけた狩人。弱ったネズミを見つけた猫。そして、オレを虐めの標的にした学校の奴らと偽の家族達と同じ目をしていた。
彼等は強者は弱者をいたぶるのが当然の権利だと言わんばかりの腐り切った目でオレを見ていた。心なしか興奮したような表情をしていた。
「馬鹿な真似は止せ!」
オレは彼等から逃げるように後退った。
しかし、彼等は興奮した様子でオレににじり寄ってくる。
「どうせゲームなんだし、殺しても大丈夫でしょ?」
その一言が決定打だった。彼等はお互いに目を見合わせると、確認するかのように頷いた。その顔には狂気めいた笑みが浮かんでいた。
たちまち周囲に殺気が立ち込める。それは遊びの殺意。ゲームなんだし実際に死ぬわけじゃないんだから、いくら惨たらしく殺しても問題はないだろうと彼等は思っているに違いない。
「それに一度、こういうことやってみたかったんだ。現実では無理だけど、ゲームならいいんでしょ? 人殺し」
人殺し、の一言を聞いてオレの背筋が凍てついた。彼等にとってはたかがゲームでも、オレにとっては生死に関わる問題なのだ。アバターが死亡すれば即アカウントは永久ban。そうなればオレは生きる希望を失ってしまう。ゲーム内とはいえ遊びで殺されるわけにはいかないのだ。
ここはひとまず逃げなくては。街の中に入ればPKをすることは出来ない。可能なら街の中に避難したかったがここからでは距離があり過ぎる。すぐに捕まってしまうだろう。
こんなことならHPを完全に回復させてから街に行くのだった。自然回復に要する時間を惜しんだことが裏目に出るとは思いもしなかった。それ以上に、まさかこんな初心者丸出しのプレイヤーにからPKの危機にさらされるとは誰が想像しただろうか。
オレはひとまず初心者の森に逃げようと思い踵を返した。だが、すぐに背中に衝撃を受けた。彼等に攻撃を受けたのだ。恐らく戦士風のプレイヤーに背中を斬られたのだろう。
レベルが20に上がっても敏捷値は彼等の方が上回っているみたいだ。逃げても追いつかれる。ここはもう戦うしかないのだろうか。
オレの脳裏に狂戦士〈バーサーカー〉のスキルが過る。プレイヤー相手にも使用可能なら、きっと奴らを殲滅することは容易いだろう。でも、オレの矜持としてPKだけはしたくなかった。ゲームは皆で楽しくプレイするもの。そこで互いに高みを目指して競争は発生しても殺し合いなどもってのほかだった。
そんなオレの想いなど露ほども思っていないのか、彼等は疑似的な殺人に愉悦を感じてオレに刃を振るってきた。
「こんな馬鹿な真似は止すんだ! PKの履歴は決して消えることはない。そうしたら、今後のプレイにも影響を及ぼすことになるんだぞ⁉」
本来、イアンカムス内でもPKはタブー視されている。もし一度でもそれを行えばギルド加入は不可能になるし、様々な大会にも出場出来なくなる。何より嫌われ者のレッテルを張られ、ゲーム内では肩身の狭い思いをすることは確実だった。それでもあえてPKを専門にプレイする者もいるが、あまりに酷い場合は運営から永久banの刑に処せられることもあるのだ。
「大丈夫。いざとなったらパパに頼んで別のアカウントを買ってもらうから。これはPK専門のアカウントにでもするよ」
魔法使い風のプレイヤーはそう言うと、仲間達と共にゲラゲラと笑い出した。その口調から察するに、どうやら彼等は小学生くらいなのだろう。その年齢なら善悪の区別はついているはず。子供の頃に腐った性根は外科手術でも施さない限り治ることはない。彼等はこのまま歪んだ大人になるのだろうとオレは確信した。
彼等は気づいているのだろうか? それがサイコパスと同じ思考になっていることに。ここはゲームの世界だ。だからこそ人間の本性が現れる。いずれ彼等の腐り切った性根は現実世界でも弱者を傷つけることになるだろう。オレはそれに思い当たる人間も何人も知っていた。脳裏に過るのは偽の家族と学校でオレを虐めの標的にしている奴らの嘲笑った顔だった。
こんな腐った奴らにオレの夢を潰させるわけにいくか! オレは心の裡でそう叫んでいた。
オレは怒りに任せ拳を全力で握り締めると身構えた。
「あれあれ? まさか武器も何にも持っていないの?」
オレは装備を持っていないことに気づいた奴らは、キャハハハハ! と甲高い笑い声を上げて大いにオレを侮辱する。
「そんじゃ豚ゴブリン。可哀想だから一発だけ殴らせてあげるよ。素手でどのくらいダメージを与えられるか見てあげるからさ!」
戦士風のプレイヤーは両手を上げてオレをそう挑発して来た。いざとなったら盾でオレの攻撃を防ごうという気が見え見えだった。
「ほら、やれよ、豚野郎」
ああ、いいぜ。お前達が子供だろうと関係ない。ゲームの中でまで誰かに馬鹿にされるのはもううんざりだ。
オレは狂戦士〈バーサーカー〉レベル1のスキルを発動しようとするが、エラーメッセージが表示された。
『HP残量が少ないためスキルを発動出来ません』
やっぱり狂戦士のスキルはHPの残量が発動条件になっているみたいだ。
今までのオレならここで絶望していたかもしれないが、そんなことは関係ない。意地でもこいつらをぶちのめしてやるという激しい怒りが心の底から噴き出した。
その瞬間、オレの目の前にメッセージ画面が表示される。
うるさい! そんなの後にしろ! 今はこいつらをぶちのめすのが先だ!
「豚豚うるせえんだよ! オレには澄川シュウトって親からもらった立派な名前があるんだ! 豚ゴブリンなんかじゃねえええええええええ!」
オレは拳を大きく振りかぶり戦士風のプレイヤーに全力の拳を繰り出した。
予想通り、奴は持っていた盾を身構えた。見るとそれは中級装備のアイアンシールドだった。初心者でその装備を持っているってことはパパにでも買ってもらった課金アイテムってことだろう。初期装備のウッドシールドと比べて防御値が5倍以上はある中級装備だ。きっとそれ以外の装備も課金アイテムに違いない。課金アイテムでアバターが強化され、それで自分が強くなったと錯覚して弱者をいたぶって弄ぼうという思考に至ったのだろうか。愚かしいにもほどがある。
奴の勝ち誇った笑顔が垣間見えた。それが更にオレの怒りに油を注いだ。オレの攻撃力ではアイアンシールドの防御値を貫くことは出来ないだろう。本来な惨めに命乞いでもしてHP回復の時間稼ぎでもすれば良かったのだが、頭に血が上った人間に冷静な判断など出来るはずもない。それでも今は自分のプライドを守るために殴ることを止めることは出来なかった。
オレの拳がアイアンシールドに炸裂する。きっとオレの拳は弾かれ反撃を受けるだろう。
しかし、オレの拳がアイアンシールドに弾かれることはなかった。何故なら、オレの一撃を食らったアイアンシールドはただの一撃で耐久値を失い消滅してしまったからだ。
「パパから買ってもらったアイアンシールドが、こんな豚ゴブリン野郎の一撃で壊されちゃった⁉」
ご自慢のアイアンシールドが一撃で破壊され、奴はパニック状態に陥っていた。相当狼狽えた様子で粉々になったアイアンシールドの破片をかき集めようとうずくまった。しかし、破壊されたアイアンシールドの残骸は間もなく消滅した。
「豚ゴブリン野郎、お前は絶対に許さない。ボクのパパはな、イアンカムス運営の重役でとっても偉いんだ! だから、パパに言いつけてお前なんか永久banにしてやるんだからな⁉ 」
奴は立ち上がると怒り狂った様子でそう叫んだ。異変はその直後に起こった。
突然、奴の身に纏っていた高価そうな鎧が粉々に砕け散ったのだ。布の服だけの状態になった奴の身体に亀裂の様なものが走る。それは瞬く間に全身に広がり、やがて陶器人形が砕け散る様にパリン、と呆気なく砕け散ってしまった。
オレを含め、その場で衝撃的な光景を目の当たりにした者達は、ただ茫然となった。
長年イアンカムスをプレイし続けて来たオレでさえ、今の状況は理解出来なかった。装備が耐久値を失い消滅するのはゲームのシステム通りだ。だが、アバターが砕け散って消滅するなど見たことも聞いたこともなかった。通常、戦闘で死亡判定を受けたアバターは透明になるような感じで消滅し、近くの街にある神殿で復活する。しかし、今のはどう見ても『破壊』されたようにしか見えなかった。
「う、うわあああああん!」
泣き叫ぶ声が響き渡った。見ると、オレを襲ってきたキッズパーティーが街に向かって逃げ去るのが見えた。やはり中身は子供だったのだろう。ゲームとはいえ自分達が殺されるのは恐ろしかったに違いない。これで多少なりとも痛みを覚えて他人にも優しくなってくれればいいのに、とオレは心の底から切に願った。
1人のプレイヤーの消滅を目の当たりにして、ようやくオレも冷静を取り戻すことが出来た。たちまち罪悪感が湧いて来る。オレは初めてPKをしてしまった。ゲーム内とはいえ相手を殺してしまった罪悪感はとてつもなく重くオレにのしかかった。これで三日間は心が病むだろう。こういう時、オレは迷惑系動画配信者の図太い神経が羨ましいと思う。小心者にPKは心の負担があまりにも大きすぎた。
「もしかしたら、あいつらが報復に来るかもしれない。その前に買い物を済ませて初心者の森に引きこもるとしよう」
オレは急いで奴らを追いかけるような形で街に向かった。
そこで異変が発生する。これまたオレの予想外の出来事だった。
街に入ろうとオレが近寄ると、数メートル手前で何故かオレのアバターが弾かれてしまったのだ。
「何で街に入れないんだ⁉」
オレは慌てて何度も街に入ろうと体当たりするように前に進むが、どうやっても身体が弾かれ街に入ることが出来なかった。まるで見えない壁に阻まれているかのようである。
「まさか、ソロプレイ禁止の上、街に入ることも禁止なのか⁉ そんなのバカげている!」
街に入れない以上、装備を整えることも回復アイテムを購入することも出来ない。しかもPKをしてしまい、無駄に敵を作ってしまった。状況は悪化の一途をたどるばかりだった。
オレが動揺していると、メッセージ画面が現れた。
『PK達成により魂食いのスキルが解放されました。捕食対象者のレベルの吸収に成功しました。レベルが8上がります』
「たった一回の戦闘でレベルが8も上がっただって⁉ そんな馬鹿な⁉」
オレの知る限り、PKでいくら勝利しても経験値は上がらない仕様のはずだ。そんなことをすれば不正が横行するし、PKの方がレベル上げの効率が良くなってしまってイアンカムスの世界は秩序を失ってしまうだろう。ゲームの世界とはいえ法は不要でも秩序は必要不可欠な要素だ。最悪ゲームが破綻してしまう恐れもあるぞ。
「魂食いのスキルの説明は無いのか⁉」
オレは慌ててスキルの説明欄を探すが、狂戦士のスキル同様、スキルの説明文は見つけることが出来なかった。
何故、プレイヤー自身にもスキルの内容を秘密にするんだ? あまりにも理不尽な仕様に憤りを感じた。それと同時に今まで気づかないふりをしていたエレウスに対する怒りも込み上げて来た。
その時、オレはもう一つスキルがあるのに気づく。そう言えば、奴を殴ろうとした時、何かメッセージ画面が出ていたことを思い出す。
『憤怒レベル1』
あの時のオレの心情を表すなら、これ以上相応しい二字熟語は存在しないだろう。だが、相変わらずスキルの説明が無いので内容は理解出来なかった。
色々な出来事が重なり混乱状態に陥ったオレは、ひとまずログアウトすることにした。
いった現実世界に戻って状況を整理しよう。色々とエレウスに問い質したいこともあるし。
しかし、次の瞬間、オレは更なる混乱に見舞われる。
『現在、ログアウトは出来ません』
オレはそのメッセージ画面をただただ凝視するのだった。
正気に戻るといつの間にか周辺は焼け野原となり、レベルも20になっていた。
地面に散乱している魔石の数はゆうに二百を超えている。魔石は冒険者ギルドに行けばGと交換することが可能だ。ゴブリンが落とす魔石は一個につき10~20G程度の価値はある。これで初期装備くらいは入手出来そうだ。無一文の状況でこの世界に放り込まれたが、ようやくまとまったGが手に入れられそうなので内心ホッとした。
「それにしても何が起きたのか全く覚えていない」
スキル発動後、何となく自分が戦っているという感覚はあった。しかし、身体の自由はなく、自動的にアバターが戦闘を行っているという認識が朧気ながらあるだけだった。時間の経過も何と戦っているのかも認識することは出来なかった。
この状況を察するに狂戦士のスキルとは、ステータスを大幅に上昇させる代わりに自我を失う自動攻撃スキルなのだろう。
ゴブリン一匹相手にもあんなに苦戦していたのが嘘のようだ。地面に転がっている魔石は間違いなくオレがゴブリンを討伐した証だ。他のプレイヤーが討伐した魔石なら、今もこうしてオレの目の前で転がっていることはない。魔石は一定時間が経過すると、自動的に討伐したプレイヤーの道具袋の中に吸い込まれる仕組みになっているからだ。
そう思っていると、魔石は淡い光を放ち、流星群のごとくオレの道具袋の中に吸い込まれていった。間違いなくオレは魔石の数だけモンスターを討伐したのだ。
「あれからどのくらいの時間が経過したんだろうか?」
オレはステータス画面を開き、ゲームプレイ時間を確認する。
試験開始からまだ1時間も経過していないことが分かり、オレは愕然となった。
よもやこんな短時間で、しかも初心者の森での戦闘だけでここまでレベルが上がるとは予想すらしていなかった。通常、初心者の森だけでここまでレベルを上げるとしたら、まるまる一か月間はかかっていたと思う。それだけゴブリンから得られる経験値は乏しいのだ。これではまるでこのフィールド上に湧いていた全てのゴブリンをオレ一人だけで討伐したかのような状況だった。いや、恐らくオレが一人で全てのゴブリンを討伐してしまったのだろう。
その時、オレはようやくステータス画面が真っ赤に点滅していることに気づく。これは残りのHPが2割以下になった時に現れるアラートだ。
「もしかして、狂戦士のスキルはHPの残量によって解除される仕様なのかな?」
この初心者の森は一度モンスターが狩りつくされるとクールタイムが発生し、しばらくの間はモンスターが湧かないようになっている。しかし、他のフィールドではこうはいかない。ここ以外での狩場では無限にモンスターが湧いて出て来るので、夢中になってモンスターを狩り続けて行ったらいつの間にかモンスターに囲まれていたってことは誰しもが経験することだった。それは初心者のやりがちなミスだが、そうして一度アバターを死亡させたりしてプレイヤーは心身ともに成長していくのだ。
「狂戦士のスキルの解除方法がいまいち分からない以上、他のフィールドでの使用は控えた方が良さそうだな」
スキル解除の条件が分からない以上、他の狩場でこのスキルを使用するのは自殺行為だろう。そもそも自我を失うようなスキルは常時使用するようなものではない。これはいざという時の切り札にしておこう。調子に乗ってこのスキルを使いまくって万が一にもHP残量が2割以下の状況でモンスターの群れの中で孤立したら目も当てられない。今のオレは無職なのだ。多少レベルが上がったとしてもソロでは未だにゴブリンを相手にするのが精一杯だった。
「もうしばらく初心者の森でレベル上げするとしても装備は必要だな」
オレは取得した大量の魔石を思い浮かべた。これを全て売却すれば多少はマシな装備を購入することが出来る。
とにかく武器と盾。これは必須だった。盾が無ければゴブリンの攻撃を防ぐことも出来ない。安物のショートソードでも徒手空拳よりは遥かにマシになるだろう。
「とにかく始まりの街アタホナムで装備を整えよう」
街に行けば減少したHPも一瞬で全回復する。可能なら今後の戦闘に備えてポーションも購入したいところだ。
そんなことを考えながらオレは始まりの街アタホナムに向かった。
アタホナムは初心者の森から街道沿いに歩けばすぐの場所にある。モンスターもあまり出現しない為、真っ赤に染まったHPゲージでも無事に街まで辿り着くことが出来るはずだ。
しかし、オレはその予測が甘かったことをすぐに思い知ることになる。
街道を歩いて行くと、遠目にアナホタムの街が見えて来た。それと同時に複数の人影も見えた。初心者パーティーだろうか? 彼等は初心者の森に向かっているようだった。
レベル上げかゴブリン討伐のクエストかな? などと考えていると、彼等はオレを見て何やら騒ぎ始めた。
何事だ? と思いつつも無警戒のまま彼等の横を通り過ぎようとした時だった。
突然、戦士風のプレイヤーにショートソードで斬りかかられたのだ。
「危ない!」
オレは咄嗟に斬撃を回避する。
「何をするんだ⁉」
オレは慌てて叫んだ。冗談じゃない。イアンカムスではPKも可能なゲームシステムになっている。今のオレは初心者プレイヤーの一撃でも瀕死の状態になるほど弱り切っているのだ。
「おい、ゴブリンが喋ったぞ?」
魔法使い風のプレイヤーが驚きの声を上げた。その他の仲間達も一様に動揺の眼差しでオレを見た。
まずい。彼等はオレをゴブリンだと勘違いしているみたいだ。この姿じゃ仕方ないが、流石にモンスターとプレイヤーの区別くらいは簡単に出来るだろう。それは彼等が初心者であることの証でもあった。ここはちゃんと誤解を解いておかなければ。
「オレはゴブリンじゃない! ほら見ろ。頭上にプレイヤーネームも表示されているだろ?」
彼等は「本当だ」と驚きの声を洩らした。どうやら本当にオレのことをゴブリンだと誤認していたみたいだ。
「でも、そんなアバター、初めて見る。ゴブリンにもオークにも見えるよな?」
「ああ、豚ゴブリンって感じの不細工なアバターだぜ」
彼等はそう言うとクスクスと嘲笑を洩らした。
嘲りは聞きなれている。今更初対面の人間に何を言われようがどうでもいい。ただオレは早く街に行って装備を整え、次のレベル上げの準備をしたいだけだ。特に彼等に謝罪を求めようとは微塵も思わなかった。
「誤解が解けたならオレは行くよ」
その時、ヒーラー風のプレイヤーがボソリと呟いた。
「そう言えばこのゲームってPKしてもOKだったよね?」
彼の一言で場の空気が豹変する。
オレはこの空気を知っている。そして、オレを見る彼等の眼差しにも見覚えがあった。獲物を見つけた狩人。弱ったネズミを見つけた猫。そして、オレを虐めの標的にした学校の奴らと偽の家族達と同じ目をしていた。
彼等は強者は弱者をいたぶるのが当然の権利だと言わんばかりの腐り切った目でオレを見ていた。心なしか興奮したような表情をしていた。
「馬鹿な真似は止せ!」
オレは彼等から逃げるように後退った。
しかし、彼等は興奮した様子でオレににじり寄ってくる。
「どうせゲームなんだし、殺しても大丈夫でしょ?」
その一言が決定打だった。彼等はお互いに目を見合わせると、確認するかのように頷いた。その顔には狂気めいた笑みが浮かんでいた。
たちまち周囲に殺気が立ち込める。それは遊びの殺意。ゲームなんだし実際に死ぬわけじゃないんだから、いくら惨たらしく殺しても問題はないだろうと彼等は思っているに違いない。
「それに一度、こういうことやってみたかったんだ。現実では無理だけど、ゲームならいいんでしょ? 人殺し」
人殺し、の一言を聞いてオレの背筋が凍てついた。彼等にとってはたかがゲームでも、オレにとっては生死に関わる問題なのだ。アバターが死亡すれば即アカウントは永久ban。そうなればオレは生きる希望を失ってしまう。ゲーム内とはいえ遊びで殺されるわけにはいかないのだ。
ここはひとまず逃げなくては。街の中に入ればPKをすることは出来ない。可能なら街の中に避難したかったがここからでは距離があり過ぎる。すぐに捕まってしまうだろう。
こんなことならHPを完全に回復させてから街に行くのだった。自然回復に要する時間を惜しんだことが裏目に出るとは思いもしなかった。それ以上に、まさかこんな初心者丸出しのプレイヤーにからPKの危機にさらされるとは誰が想像しただろうか。
オレはひとまず初心者の森に逃げようと思い踵を返した。だが、すぐに背中に衝撃を受けた。彼等に攻撃を受けたのだ。恐らく戦士風のプレイヤーに背中を斬られたのだろう。
レベルが20に上がっても敏捷値は彼等の方が上回っているみたいだ。逃げても追いつかれる。ここはもう戦うしかないのだろうか。
オレの脳裏に狂戦士〈バーサーカー〉のスキルが過る。プレイヤー相手にも使用可能なら、きっと奴らを殲滅することは容易いだろう。でも、オレの矜持としてPKだけはしたくなかった。ゲームは皆で楽しくプレイするもの。そこで互いに高みを目指して競争は発生しても殺し合いなどもってのほかだった。
そんなオレの想いなど露ほども思っていないのか、彼等は疑似的な殺人に愉悦を感じてオレに刃を振るってきた。
「こんな馬鹿な真似は止すんだ! PKの履歴は決して消えることはない。そうしたら、今後のプレイにも影響を及ぼすことになるんだぞ⁉」
本来、イアンカムス内でもPKはタブー視されている。もし一度でもそれを行えばギルド加入は不可能になるし、様々な大会にも出場出来なくなる。何より嫌われ者のレッテルを張られ、ゲーム内では肩身の狭い思いをすることは確実だった。それでもあえてPKを専門にプレイする者もいるが、あまりに酷い場合は運営から永久banの刑に処せられることもあるのだ。
「大丈夫。いざとなったらパパに頼んで別のアカウントを買ってもらうから。これはPK専門のアカウントにでもするよ」
魔法使い風のプレイヤーはそう言うと、仲間達と共にゲラゲラと笑い出した。その口調から察するに、どうやら彼等は小学生くらいなのだろう。その年齢なら善悪の区別はついているはず。子供の頃に腐った性根は外科手術でも施さない限り治ることはない。彼等はこのまま歪んだ大人になるのだろうとオレは確信した。
彼等は気づいているのだろうか? それがサイコパスと同じ思考になっていることに。ここはゲームの世界だ。だからこそ人間の本性が現れる。いずれ彼等の腐り切った性根は現実世界でも弱者を傷つけることになるだろう。オレはそれに思い当たる人間も何人も知っていた。脳裏に過るのは偽の家族と学校でオレを虐めの標的にしている奴らの嘲笑った顔だった。
こんな腐った奴らにオレの夢を潰させるわけにいくか! オレは心の裡でそう叫んでいた。
オレは怒りに任せ拳を全力で握り締めると身構えた。
「あれあれ? まさか武器も何にも持っていないの?」
オレは装備を持っていないことに気づいた奴らは、キャハハハハ! と甲高い笑い声を上げて大いにオレを侮辱する。
「そんじゃ豚ゴブリン。可哀想だから一発だけ殴らせてあげるよ。素手でどのくらいダメージを与えられるか見てあげるからさ!」
戦士風のプレイヤーは両手を上げてオレをそう挑発して来た。いざとなったら盾でオレの攻撃を防ごうという気が見え見えだった。
「ほら、やれよ、豚野郎」
ああ、いいぜ。お前達が子供だろうと関係ない。ゲームの中でまで誰かに馬鹿にされるのはもううんざりだ。
オレは狂戦士〈バーサーカー〉レベル1のスキルを発動しようとするが、エラーメッセージが表示された。
『HP残量が少ないためスキルを発動出来ません』
やっぱり狂戦士のスキルはHPの残量が発動条件になっているみたいだ。
今までのオレならここで絶望していたかもしれないが、そんなことは関係ない。意地でもこいつらをぶちのめしてやるという激しい怒りが心の底から噴き出した。
その瞬間、オレの目の前にメッセージ画面が表示される。
うるさい! そんなの後にしろ! 今はこいつらをぶちのめすのが先だ!
「豚豚うるせえんだよ! オレには澄川シュウトって親からもらった立派な名前があるんだ! 豚ゴブリンなんかじゃねえええええええええ!」
オレは拳を大きく振りかぶり戦士風のプレイヤーに全力の拳を繰り出した。
予想通り、奴は持っていた盾を身構えた。見るとそれは中級装備のアイアンシールドだった。初心者でその装備を持っているってことはパパにでも買ってもらった課金アイテムってことだろう。初期装備のウッドシールドと比べて防御値が5倍以上はある中級装備だ。きっとそれ以外の装備も課金アイテムに違いない。課金アイテムでアバターが強化され、それで自分が強くなったと錯覚して弱者をいたぶって弄ぼうという思考に至ったのだろうか。愚かしいにもほどがある。
奴の勝ち誇った笑顔が垣間見えた。それが更にオレの怒りに油を注いだ。オレの攻撃力ではアイアンシールドの防御値を貫くことは出来ないだろう。本来な惨めに命乞いでもしてHP回復の時間稼ぎでもすれば良かったのだが、頭に血が上った人間に冷静な判断など出来るはずもない。それでも今は自分のプライドを守るために殴ることを止めることは出来なかった。
オレの拳がアイアンシールドに炸裂する。きっとオレの拳は弾かれ反撃を受けるだろう。
しかし、オレの拳がアイアンシールドに弾かれることはなかった。何故なら、オレの一撃を食らったアイアンシールドはただの一撃で耐久値を失い消滅してしまったからだ。
「パパから買ってもらったアイアンシールドが、こんな豚ゴブリン野郎の一撃で壊されちゃった⁉」
ご自慢のアイアンシールドが一撃で破壊され、奴はパニック状態に陥っていた。相当狼狽えた様子で粉々になったアイアンシールドの破片をかき集めようとうずくまった。しかし、破壊されたアイアンシールドの残骸は間もなく消滅した。
「豚ゴブリン野郎、お前は絶対に許さない。ボクのパパはな、イアンカムス運営の重役でとっても偉いんだ! だから、パパに言いつけてお前なんか永久banにしてやるんだからな⁉ 」
奴は立ち上がると怒り狂った様子でそう叫んだ。異変はその直後に起こった。
突然、奴の身に纏っていた高価そうな鎧が粉々に砕け散ったのだ。布の服だけの状態になった奴の身体に亀裂の様なものが走る。それは瞬く間に全身に広がり、やがて陶器人形が砕け散る様にパリン、と呆気なく砕け散ってしまった。
オレを含め、その場で衝撃的な光景を目の当たりにした者達は、ただ茫然となった。
長年イアンカムスをプレイし続けて来たオレでさえ、今の状況は理解出来なかった。装備が耐久値を失い消滅するのはゲームのシステム通りだ。だが、アバターが砕け散って消滅するなど見たことも聞いたこともなかった。通常、戦闘で死亡判定を受けたアバターは透明になるような感じで消滅し、近くの街にある神殿で復活する。しかし、今のはどう見ても『破壊』されたようにしか見えなかった。
「う、うわあああああん!」
泣き叫ぶ声が響き渡った。見ると、オレを襲ってきたキッズパーティーが街に向かって逃げ去るのが見えた。やはり中身は子供だったのだろう。ゲームとはいえ自分達が殺されるのは恐ろしかったに違いない。これで多少なりとも痛みを覚えて他人にも優しくなってくれればいいのに、とオレは心の底から切に願った。
1人のプレイヤーの消滅を目の当たりにして、ようやくオレも冷静を取り戻すことが出来た。たちまち罪悪感が湧いて来る。オレは初めてPKをしてしまった。ゲーム内とはいえ相手を殺してしまった罪悪感はとてつもなく重くオレにのしかかった。これで三日間は心が病むだろう。こういう時、オレは迷惑系動画配信者の図太い神経が羨ましいと思う。小心者にPKは心の負担があまりにも大きすぎた。
「もしかしたら、あいつらが報復に来るかもしれない。その前に買い物を済ませて初心者の森に引きこもるとしよう」
オレは急いで奴らを追いかけるような形で街に向かった。
そこで異変が発生する。これまたオレの予想外の出来事だった。
街に入ろうとオレが近寄ると、数メートル手前で何故かオレのアバターが弾かれてしまったのだ。
「何で街に入れないんだ⁉」
オレは慌てて何度も街に入ろうと体当たりするように前に進むが、どうやっても身体が弾かれ街に入ることが出来なかった。まるで見えない壁に阻まれているかのようである。
「まさか、ソロプレイ禁止の上、街に入ることも禁止なのか⁉ そんなのバカげている!」
街に入れない以上、装備を整えることも回復アイテムを購入することも出来ない。しかもPKをしてしまい、無駄に敵を作ってしまった。状況は悪化の一途をたどるばかりだった。
オレが動揺していると、メッセージ画面が現れた。
『PK達成により魂食いのスキルが解放されました。捕食対象者のレベルの吸収に成功しました。レベルが8上がります』
「たった一回の戦闘でレベルが8も上がっただって⁉ そんな馬鹿な⁉」
オレの知る限り、PKでいくら勝利しても経験値は上がらない仕様のはずだ。そんなことをすれば不正が横行するし、PKの方がレベル上げの効率が良くなってしまってイアンカムスの世界は秩序を失ってしまうだろう。ゲームの世界とはいえ法は不要でも秩序は必要不可欠な要素だ。最悪ゲームが破綻してしまう恐れもあるぞ。
「魂食いのスキルの説明は無いのか⁉」
オレは慌ててスキルの説明欄を探すが、狂戦士のスキル同様、スキルの説明文は見つけることが出来なかった。
何故、プレイヤー自身にもスキルの内容を秘密にするんだ? あまりにも理不尽な仕様に憤りを感じた。それと同時に今まで気づかないふりをしていたエレウスに対する怒りも込み上げて来た。
その時、オレはもう一つスキルがあるのに気づく。そう言えば、奴を殴ろうとした時、何かメッセージ画面が出ていたことを思い出す。
『憤怒レベル1』
あの時のオレの心情を表すなら、これ以上相応しい二字熟語は存在しないだろう。だが、相変わらずスキルの説明が無いので内容は理解出来なかった。
色々な出来事が重なり混乱状態に陥ったオレは、ひとまずログアウトすることにした。
いった現実世界に戻って状況を整理しよう。色々とエレウスに問い質したいこともあるし。
しかし、次の瞬間、オレは更なる混乱に見舞われる。
『現在、ログアウトは出来ません』
オレはそのメッセージ画面をただただ凝視するのだった。
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