異世界で織り成す運命の織物

椿空

文字の大きさ
25 / 27

第24話 裏切りの影

しおりを挟む
遺跡へと向かう道のりは険しく、健二たちは数日間、疲労と不安を抱えながら進んでいた。周囲の景色は、静けさを保ちながらも、彼らの心に重苦しい空気を運んできた。健二は、仲間の顔を見つめ、みんなが無事であることを願った。

「もうすぐだ、遺跡はこの先だ。」健二は仲間たちに声をかけるが、彼の声には疲れが滲んでいた。

仲間の一人、リナが口を開いた。「健二、もし聖石を手に入れたら、影の者たちに勝てると思うの?」

健二は思案にふける。「聖石があれば、彼らの力を弱めることができるはずだ。でも、戦うのは私たちだから、簡単にはいかないかもしれない。」

リナは彼の言葉を真剣に受け止めた。「それなら、私たちが協力し合って、少しでも勝てるようにしよう。」

その時、突然、前方から不穏な気配が漂ってきた。健二たちは警戒し、周囲を見回した。すると、視界に何か影が動くのが見えた。健二は手に持った剣を握りしめ、緊張感が高まった。

「誰かいるのか?」健二は大声で問いかける。しかし、返事はなかった。ただ、風が冷たく吹き抜けるだけだった。

遺跡の入り口が見え始めると、仲間たちの顔に緊張が走った。古びた石の構造物が、時間の流れを感じさせる。健二は仲間に目を向け、「準備はいいか?中に入るぞ。」

遺跡の中は暗く、石壁には奇妙な模様が彫られていた。薄暗い中、健二たちは注意深く進んでいく。突然、後ろから大きな音が響いた。振り向くと、道が崩れていた。

「まずい、戻れなくなる!」仲間たちは驚き、健二の指示を待つ。

「冷静に!前へ進もう。」健二は声を張り上げ、仲間たちを導いた。

進むにつれて、遺跡の奥からかすかに光が見えてきた。その光が、健二たちの心に希望をもたらす。やがて、彼らは広間に辿り着いた。中心には、聖石と思われる輝く石が置かれていた。

「これが聖石だ!」リナが目を輝かせて指さす。

しかし、健二は違和感を覚えた。「待って、何かおかしい。」彼は周囲を見回した。突然、周囲の石壁が動き出し、隠れていたトラップが露呈した。

「避けろ!」健二は仲間たちに叫び、全員が反射的に避ける。トラップが発動し、石の刃が激しく動き出した。

彼らはなんとかトラップを避けながら、聖石に近づいた。その瞬間、仲間の一人であるカズキが大声をあげた。「健二、早く聖石を取って!」

だが、健二は一瞬ためらった。カズキの目には何か冷たい光が宿っていた。「お前、どうしたんだ?急いで!」

カズキは不敵な笑みを浮かべた。「ああ、急ぐ必要はないさ。私たちが聖石を手に入れる必要なんて、もうないんだ。」

その言葉に、健二は驚愕した。「何を言っている?影の者たちが来る前に、私たちが手に入れなきゃ!」

カズキはゆっくりと後退し、仲間たちを見渡す。彼の背後には、影の者たちが静かに近づいてきた。その様子に仲間たちは驚き、逃げ出そうとした。

「お前たち、どうする?影の者たちと共に戦うのか、それとも私と共に聖石を手に入れ、真の力を得るのか。」カズキの言葉に、仲間たちは動揺する。

健二は冷静さを取り戻し、叫んだ。「カズキ、お前は何を考えている?村を裏切るのか?」

カズキは薄く笑った。「裏切りなんて、ただの選択だ。お前は本当に力を求めているのか?なら、私と手を組もう。」

仲間たちは混乱し、意見が分かれ始めた。カズキの言葉に影響を受け、一部の者は彼に賛同しようとしていた。

「健二、どうするの?」リナは不安に駆られ、彼を見つめる。

健二は心の中で葛藤した。裏切り者と戦うべきなのか、それとも彼の申し出に耳を傾けるべきなのか。だが、彼の心には村を守る責任があった。

「俺は、村を守るために戦う!」健二は叫び、仲間たちに向かって強い意志を示した。

その瞬間、影の者たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。カズキはその中に混じり、健二に向かって攻撃を放つ。

健二は急いで剣を構え、仲間たちと共に反撃した。戦いの中で、健二はカズキとの絆が崩れたことを痛感し、胸が締め付けられる思いを抱えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

処理中です...