ひまつぶせ

逆転の発想

ある町に、どうしても成功したい若者がいた。彼の名前はタクミ。彼は自分のビジネスを立ち上げるために、全財産を投資する決意を固めていた。しかし、彼は特別なアイデアが必要だと考えていた。

そんなある日、彼は街の古びた書店で一冊の本を見つけた。表紙には「成功の秘訣」と大きく書かれており、ページをめくると、数々の成功者のストーリーが載っていた。しかし、最後のページには、「本当に成功したいなら、逆のことをしなさい」とだけ書かれていた。

タクミはその言葉に興味を引かれ、自分のビジネスに応用できるのではないかと考えた。彼は早速、自分のビジネスプランを見直し、周囲の常識とは真逆の方向に舵を切ることに決めた。

彼のプランは、まず「高い価格をつける」というものだった。人々が「安い」と思う商品は、売れないはずだと考えた彼は、自分の商品の価格を市場価格の倍に設定した。その結果、予想外のことが起きた。人々は「高い」という理由で商品に興味を持ち、次々と買い求めるようになったのだ。

次に、タクミは「広告を出さない」ことにした。誰もが広告を出す中、彼は一切宣伝せずに口コミだけで広めることにした。この大胆な選択は、逆に人々の好奇心をそそり、ますます彼のビジネスは注目を浴びることになった。

しかし、成功の道は平坦ではなかった。タクミは自分のアイデアが通用するか疑問を抱き始めた。そんな時、ある大企業のCEOから連絡が入った。彼は「あなたのビジネスモデルに興味がある。ぜひ会って話がしたい」と言った。

タクミは心を躍らせながらCEOと会った。すると、CEOは「あなたの戦略は素晴らしいが、何か特別な秘訣があるのか？」と尋ねた。タクミは、あの本に書かれていたことを思い出し、「逆のことをするだけです」と自信を持って答えた。

その言葉を聞いたCEOは、ニヤリと笑い、「実は我々もそう考えていた。君の成功は、我々の新たな戦略の参考にさせてもらう」と言い残し、去って行った。

タクミはその後、自分のビジネスをさらに発展させ、成功を収めた。しかし、彼の心の中には疑問が残っていた。果たして「逆転の発想」が本当に成功の秘訣だったのか？それとも単なる偶然の産物だったのか？

数年後、彼はあの本を再び手に取り、最後のページをもう一度読み返した。

「本当に成功したいなら、逆のことをしなさい。」

タクミは微笑みながら思った。「次は、成功をあきらめることにしてみようかな。」