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第一章 勇者と魔王と伝説ジュエル
2話 ここはどこですか?
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周囲を山々と木々に囲まれた森には、腰ほどの背の高さの草花が生い茂る場所があった。
そこには可憐な草花を褥に眠る2人の姿がある。
その内の1人、青みがかった銀色の髪をもつ少年は、うっすらと目を開けると、きょろきょろと視線をさ迷わせる。
年の程は14~15歳だろうか。幼さの残るその目は、くりっとしていて可愛らしい。
「……どこだ、ここ?」
いやいや、思い出すんだ俺。確か俺は魔王と戦っていた最中だった。
魔王達は俺達の予想より強くて、それで…
そう、賭けに出たんだ。
抜刀術「息吹」、確かに俺はそれを放った。
なのに…………なんで俺は、生きている?
ハルトは自分が未だ生きている事が不思議だった。抜刀術「息吹」、その技の本質は自爆技に近い。込める力は覇気でもなく、魔力でもない。
ただただ、自分の生命力を使用して、範囲内の命ある者をマナと魂に分解し、昇天させる技。
ハルトはこれ迄の敵と戦うなかで、幾度か使用し、次に放てば死ぬであろうことを感じていた。
しかし、良く見れば、ここは草花に囲まれているし、自分が技を放った後とはとても思えない。
「もしかして、不発した?」
生命力が足りなかったのか?いや、もし仮に不発だとしたら、確実に魔王は生きている。
それは、不味い!!
ハルトは普段以上に重い体を叱咤し、とにかく仲間達の戻ろうと考えた。
その時だった、腰ほどの草花から淡いピンクの髪を持つ少女の顔がひょっこり現れ、ハルトは声を上げて驚く。
「うわぁ!!」
魔王アズライールが目を覚まし、起き上がり顔だけを覗かせて見ると、そこには、驚き声を上げた人間の少年がいた。
そこで、アズライールは思案にふける。
何故こんな場所に人間の子供が?
いや、まて。そもそもここは何処だ?
確か、私は勇者と戦い、不利を悟って滅魔法「褥」を使ったはず。
あの魔法は、私の全魔力を呼び水に死界の空気を噴出させ、周囲の生命を輪廻へと誘う魔法。
その対象は私も、例外じゃない。
なのに…………なんで私は、生きているの?――
魔法アズライールは、目の前に人間の子供が居ることなど忘れて、思考に没頭していた。
意志の強そうなはっきりとした、目鼻に皺をよせ、手は頭より覗かせる少し内側にくりっと曲がった小さな角をカリカリと掻いていた。
「……魔族」
ハルトは、目の前の美少女とも呼べる存在の頭に生える角を見て、この存在が決して気を許してはならない存在であることに気付く。
「お前、魔族だな!!!!」
ハルトは腰に携えた剣の柄に手をかけ、何時でも斬りかかれるよう身構えた。その剣気はとても少年のものとは思えない程、鋭い。
アズライールは、ハルトから敵意を感じると、ポリポリと角を掻いていた手で、地面に転がっている杖を持ち徐に立ち上がる。
「わざわざ確認をしなくても良かろう。余のこの角が魔族である証。そして…」
そういうと、アズライールは杖を持ち、魔力を高める為に集中を始めた。
「ん?」
アズライールは首を傾げる。
おかしい。自身の体から魔力をほとんど感じない。この魔力では使えても手の平程度の魔法がせいぜい。
アズライールが戸惑っているのを隙と捉え、ハルトは先手をとろうと動き出す。
「そして、なんだってんだよ!」
普段より体が重く感じられ、自分の思ったとおりの速さこそなかったものの、ハルトは自分の間合いに踏み込んだ。
「もらった!!」
ハルトは鞘より剣を抜き、目の前の魔族を切り裂かんと腕を振り抜く。
その鍛えられた斬撃は、容易く少女の体を切り裂く………………はずだった。
「おもーーーーーーーーーーい!!!!」
ハルトは魔族の目の前で、盛大に転んだ。
「何この剣!めっちゃ重いんですけど!」
これ、俺の剣だよね?
うん、見れば見るほど、数々の苦難を共にしてきた俺の愛剣だ。
ざりっ。
地面を歩く音が聞こえ、ハルトは恐る恐るそちらに顔を向ける。
そこには、魔法杖を肩でトントン叩きながら近付いてくる魔族の姿があった。
危なかった。
アズライールは内心の恐怖を押し殺し、精一杯余裕な顔で目の前の少年に歩を進める。
まさか、私の魔力がこんなに、小さくなってるなんて。正直死ぬかと思った。
でも如何に魔力は使えなくても、私は魔王だ。それなりに力はあるし、何よりこの杖は軽くそして、何より硬い。
魔力は使えなくても、この杖で頭でもたたいてやれば、陥没は必須。そしてアズライールは杖を上段に構える。
「おい、ちょっと待て魔族!そんなに、にこやかに近付いてくるな。怖い、逆に恐いよ!てか、さっきまで魔法使おうとしてたじゃん!早く俺から距離を取れ、そして魔法でも何でも打てばいいでしょ!杖は鈍器じゃありませんよ!!」
「魔王流杖術「スイカ割り」」
「スカイ割りはそんなに物騒じゃありません!!」
「うるさい、黙れ、即興だ!!」
そういうと、アズライールは一歩大きく踏み込みハルトの頭目掛けて、自慢の杖を振り落とさんとした。
ぐにゃり。
アズライールの踏み込んだ足元より、柔い何かを踏んづけた音が聞こえる。
「ぷっ、ぷりゅーん!」
足元にいた何かは突然の事に驚き、自分を踏みつけたアズライールの足を全力で跳ね返した。
そして、アズライールはハルトの頭上を超え天高く舞った。
「いったぁぁーーーーーーーーい!!」
アズライールの絶叫に、辺りを彩る草花達は楽しげに揺れていた。
そこには可憐な草花を褥に眠る2人の姿がある。
その内の1人、青みがかった銀色の髪をもつ少年は、うっすらと目を開けると、きょろきょろと視線をさ迷わせる。
年の程は14~15歳だろうか。幼さの残るその目は、くりっとしていて可愛らしい。
「……どこだ、ここ?」
いやいや、思い出すんだ俺。確か俺は魔王と戦っていた最中だった。
魔王達は俺達の予想より強くて、それで…
そう、賭けに出たんだ。
抜刀術「息吹」、確かに俺はそれを放った。
なのに…………なんで俺は、生きている?
ハルトは自分が未だ生きている事が不思議だった。抜刀術「息吹」、その技の本質は自爆技に近い。込める力は覇気でもなく、魔力でもない。
ただただ、自分の生命力を使用して、範囲内の命ある者をマナと魂に分解し、昇天させる技。
ハルトはこれ迄の敵と戦うなかで、幾度か使用し、次に放てば死ぬであろうことを感じていた。
しかし、良く見れば、ここは草花に囲まれているし、自分が技を放った後とはとても思えない。
「もしかして、不発した?」
生命力が足りなかったのか?いや、もし仮に不発だとしたら、確実に魔王は生きている。
それは、不味い!!
ハルトは普段以上に重い体を叱咤し、とにかく仲間達の戻ろうと考えた。
その時だった、腰ほどの草花から淡いピンクの髪を持つ少女の顔がひょっこり現れ、ハルトは声を上げて驚く。
「うわぁ!!」
魔王アズライールが目を覚まし、起き上がり顔だけを覗かせて見ると、そこには、驚き声を上げた人間の少年がいた。
そこで、アズライールは思案にふける。
何故こんな場所に人間の子供が?
いや、まて。そもそもここは何処だ?
確か、私は勇者と戦い、不利を悟って滅魔法「褥」を使ったはず。
あの魔法は、私の全魔力を呼び水に死界の空気を噴出させ、周囲の生命を輪廻へと誘う魔法。
その対象は私も、例外じゃない。
なのに…………なんで私は、生きているの?――
魔法アズライールは、目の前に人間の子供が居ることなど忘れて、思考に没頭していた。
意志の強そうなはっきりとした、目鼻に皺をよせ、手は頭より覗かせる少し内側にくりっと曲がった小さな角をカリカリと掻いていた。
「……魔族」
ハルトは、目の前の美少女とも呼べる存在の頭に生える角を見て、この存在が決して気を許してはならない存在であることに気付く。
「お前、魔族だな!!!!」
ハルトは腰に携えた剣の柄に手をかけ、何時でも斬りかかれるよう身構えた。その剣気はとても少年のものとは思えない程、鋭い。
アズライールは、ハルトから敵意を感じると、ポリポリと角を掻いていた手で、地面に転がっている杖を持ち徐に立ち上がる。
「わざわざ確認をしなくても良かろう。余のこの角が魔族である証。そして…」
そういうと、アズライールは杖を持ち、魔力を高める為に集中を始めた。
「ん?」
アズライールは首を傾げる。
おかしい。自身の体から魔力をほとんど感じない。この魔力では使えても手の平程度の魔法がせいぜい。
アズライールが戸惑っているのを隙と捉え、ハルトは先手をとろうと動き出す。
「そして、なんだってんだよ!」
普段より体が重く感じられ、自分の思ったとおりの速さこそなかったものの、ハルトは自分の間合いに踏み込んだ。
「もらった!!」
ハルトは鞘より剣を抜き、目の前の魔族を切り裂かんと腕を振り抜く。
その鍛えられた斬撃は、容易く少女の体を切り裂く………………はずだった。
「おもーーーーーーーーーーい!!!!」
ハルトは魔族の目の前で、盛大に転んだ。
「何この剣!めっちゃ重いんですけど!」
これ、俺の剣だよね?
うん、見れば見るほど、数々の苦難を共にしてきた俺の愛剣だ。
ざりっ。
地面を歩く音が聞こえ、ハルトは恐る恐るそちらに顔を向ける。
そこには、魔法杖を肩でトントン叩きながら近付いてくる魔族の姿があった。
危なかった。
アズライールは内心の恐怖を押し殺し、精一杯余裕な顔で目の前の少年に歩を進める。
まさか、私の魔力がこんなに、小さくなってるなんて。正直死ぬかと思った。
でも如何に魔力は使えなくても、私は魔王だ。それなりに力はあるし、何よりこの杖は軽くそして、何より硬い。
魔力は使えなくても、この杖で頭でもたたいてやれば、陥没は必須。そしてアズライールは杖を上段に構える。
「おい、ちょっと待て魔族!そんなに、にこやかに近付いてくるな。怖い、逆に恐いよ!てか、さっきまで魔法使おうとしてたじゃん!早く俺から距離を取れ、そして魔法でも何でも打てばいいでしょ!杖は鈍器じゃありませんよ!!」
「魔王流杖術「スイカ割り」」
「スカイ割りはそんなに物騒じゃありません!!」
「うるさい、黙れ、即興だ!!」
そういうと、アズライールは一歩大きく踏み込みハルトの頭目掛けて、自慢の杖を振り落とさんとした。
ぐにゃり。
アズライールの踏み込んだ足元より、柔い何かを踏んづけた音が聞こえる。
「ぷっ、ぷりゅーん!」
足元にいた何かは突然の事に驚き、自分を踏みつけたアズライールの足を全力で跳ね返した。
そして、アズライールはハルトの頭上を超え天高く舞った。
「いったぁぁーーーーーーーーい!!」
アズライールの絶叫に、辺りを彩る草花達は楽しげに揺れていた。
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