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第1話
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私の事を婚約者として迎え入れてくれたアルカ伯爵様。
けれどその裏にあったのは、愛情関係などではなくただの彼の政略的な都合だけだった。
「アルカ様、お話と言うのは何でしょうか?」
ある日の事、私は突然にアルカ様から自分の部屋まで来るよう言われ、彼のもとに向かった。
すると彼は、やれやれと言った表情を浮かべながら私に対してこう言葉を発した。
「ジュリア、君との婚約関係だが、今日をもって終わりにすることに決めたよ」
「……」
…それが、私が愛されていない事の何よりの証明。
だって、伯爵様が本当に私の事を愛してくださっているというのなら、こんな一方的な言葉をかけてきたりは絶対にしないのだから…。
「ジュリア、ルーレから毎日のようにクレームが入っているんだよ。その話を聞くに、彼女はどうしても君と家族になることが受け入れられないらしい」
ルーレと言うのは、正真正銘伯爵様の妹であり、私にとっては将来の義理の妹にあたる存在。
そんな彼女が、私たちの婚約関係に横やりを入れてきているのだと言う…。
「彼女いわく、君との関係をどうしても前向きにとらえることが出来ないと言っているんだ。もちろん僕としては君の事も愛しているから、二人がうまくやっていってくれることを一番望んではいるのだが、彼女が無理だと言っているものを強引に進めるわけにもいかない。そこで僕は泣く泣く、君との関係を切り捨てることを選んだ」
「……」
…正直、こうなるであろう未来は私には以前から想像できていた。
というのも、伯爵様は客観的に見ても過剰と言えるほどの愛情をルーレにかけていて、ルーレもまたそんな伯爵様の思いを利用していた。
そこに私の入り込むすきなんてなくって、私とルーレが言い争いになったなら伯爵様は間違いなく向こうの味方をし続けてきたし、私の言葉を聞いてくれたことなんて一度もなかった。
…私たちは本当に婚約関係にあるのかと疑いたくなったことだって、これまでに一度や二度ではなかった。
「…少々鈍感なところがある君にはわからないかもしれないが、ルーレはあれでも少し目に涙を浮かべていたんだぞ?本当につらそうな顔をしていたんだぞ?それを僕たちに気を遣って、今まで隠し続けてきたんだぞ?その健気な思いを君に理解でいるか?」
「……」
…そんなもの、全て彼女の演技に決まっているではありませんか…。
伯爵様、どうしてそんな簡単な演技に気づくことが出来ないのですか…?
あなたがもっとも愛するべき存在は、婚約者であるはずの私なのではないのですか…?
「…伯爵様、ルーレは私に向けて毎日のように嘘ばかりを言ってきます…。それを訂正しようと私が優しく反論しても、自分には伯爵様が付いているんだと言って全く聞き入れてはくれません…。でも私は伯爵様の事を信じて、彼女との関係をあまり口にすることもなくここまでやってきました…。それなのに、すべて私の方に責任があるとおっしゃるのですか…?」
「おっと、なにか勘違いしているようだが…」
思わず心の声をこぼしてしまった私。
すると伯爵様はそれに対し、非常に冷たい口調でこう言葉を発し始めた。
「ジュリア、君の存在はルーレの二の次だという事をまだ分かっていないのか?僕にとって最も大切なのはルーレの方であり、君はその次、二番目だ。だから二人が衝突するようなことになったなら、僕は当然ルーレの方に味方をする。なぜなら、僕はルーレのいない人生を考えることはできないが、君のいない人生は別になんら特段の問題などないのだからね。そのうえで君には婚約者としての振る舞いを、分かりやすく言えばルーレの相手と僕の暇つぶしを両立してくれることを求めていたのだが、まさかここまで恥ずかしい勘違いをしているとは思ってもいなかったよ。君はまさか、僕から愛されるのが当然だとでも思っているのかい?」
それが、伯爵様が私に対して告げた真実だった。
…半ば強引な形で仕組まれた今回の婚約は、全て彼とルーレの暇つぶしのために存在していたというのだ。
そして、婚約関係にあると言うのに愛されることを望むのは、筋違いだとも…。
「やはり婚約破棄を決めたのは正解だったようだ。そんな恥ずかしいほどの勘違いをするような君には、婚約関係を続けるほどの価値なんてないことは明らかだからね。早く荷物をまとめて、ここから出ていってもらおうか。それで僕もルーレももと通りの生活に戻り、再び君よりも都合のいい婚約者を探しに行くことができるのだからね」
「……」
私はなにも言い返す気力がなくなっていた。
…一応これでも、伯爵様の夫人になるものとして恥ずかしくないよう、毎日必死に番場って来たつもりだった。
それが伯爵様のためになることだと信じて、ここまでやってきた。
…だというのに、最後の最後に告げられた言葉は私に対する感謝の言葉でもなく、愛情の言葉でもなく、ただただ都合の悪い存在を切り捨てるというものだった…。
けれどその裏にあったのは、愛情関係などではなくただの彼の政略的な都合だけだった。
「アルカ様、お話と言うのは何でしょうか?」
ある日の事、私は突然にアルカ様から自分の部屋まで来るよう言われ、彼のもとに向かった。
すると彼は、やれやれと言った表情を浮かべながら私に対してこう言葉を発した。
「ジュリア、君との婚約関係だが、今日をもって終わりにすることに決めたよ」
「……」
…それが、私が愛されていない事の何よりの証明。
だって、伯爵様が本当に私の事を愛してくださっているというのなら、こんな一方的な言葉をかけてきたりは絶対にしないのだから…。
「ジュリア、ルーレから毎日のようにクレームが入っているんだよ。その話を聞くに、彼女はどうしても君と家族になることが受け入れられないらしい」
ルーレと言うのは、正真正銘伯爵様の妹であり、私にとっては将来の義理の妹にあたる存在。
そんな彼女が、私たちの婚約関係に横やりを入れてきているのだと言う…。
「彼女いわく、君との関係をどうしても前向きにとらえることが出来ないと言っているんだ。もちろん僕としては君の事も愛しているから、二人がうまくやっていってくれることを一番望んではいるのだが、彼女が無理だと言っているものを強引に進めるわけにもいかない。そこで僕は泣く泣く、君との関係を切り捨てることを選んだ」
「……」
…正直、こうなるであろう未来は私には以前から想像できていた。
というのも、伯爵様は客観的に見ても過剰と言えるほどの愛情をルーレにかけていて、ルーレもまたそんな伯爵様の思いを利用していた。
そこに私の入り込むすきなんてなくって、私とルーレが言い争いになったなら伯爵様は間違いなく向こうの味方をし続けてきたし、私の言葉を聞いてくれたことなんて一度もなかった。
…私たちは本当に婚約関係にあるのかと疑いたくなったことだって、これまでに一度や二度ではなかった。
「…少々鈍感なところがある君にはわからないかもしれないが、ルーレはあれでも少し目に涙を浮かべていたんだぞ?本当につらそうな顔をしていたんだぞ?それを僕たちに気を遣って、今まで隠し続けてきたんだぞ?その健気な思いを君に理解でいるか?」
「……」
…そんなもの、全て彼女の演技に決まっているではありませんか…。
伯爵様、どうしてそんな簡単な演技に気づくことが出来ないのですか…?
あなたがもっとも愛するべき存在は、婚約者であるはずの私なのではないのですか…?
「…伯爵様、ルーレは私に向けて毎日のように嘘ばかりを言ってきます…。それを訂正しようと私が優しく反論しても、自分には伯爵様が付いているんだと言って全く聞き入れてはくれません…。でも私は伯爵様の事を信じて、彼女との関係をあまり口にすることもなくここまでやってきました…。それなのに、すべて私の方に責任があるとおっしゃるのですか…?」
「おっと、なにか勘違いしているようだが…」
思わず心の声をこぼしてしまった私。
すると伯爵様はそれに対し、非常に冷たい口調でこう言葉を発し始めた。
「ジュリア、君の存在はルーレの二の次だという事をまだ分かっていないのか?僕にとって最も大切なのはルーレの方であり、君はその次、二番目だ。だから二人が衝突するようなことになったなら、僕は当然ルーレの方に味方をする。なぜなら、僕はルーレのいない人生を考えることはできないが、君のいない人生は別になんら特段の問題などないのだからね。そのうえで君には婚約者としての振る舞いを、分かりやすく言えばルーレの相手と僕の暇つぶしを両立してくれることを求めていたのだが、まさかここまで恥ずかしい勘違いをしているとは思ってもいなかったよ。君はまさか、僕から愛されるのが当然だとでも思っているのかい?」
それが、伯爵様が私に対して告げた真実だった。
…半ば強引な形で仕組まれた今回の婚約は、全て彼とルーレの暇つぶしのために存在していたというのだ。
そして、婚約関係にあると言うのに愛されることを望むのは、筋違いだとも…。
「やはり婚約破棄を決めたのは正解だったようだ。そんな恥ずかしいほどの勘違いをするような君には、婚約関係を続けるほどの価値なんてないことは明らかだからね。早く荷物をまとめて、ここから出ていってもらおうか。それで僕もルーレももと通りの生活に戻り、再び君よりも都合のいい婚約者を探しに行くことができるのだからね」
「……」
私はなにも言い返す気力がなくなっていた。
…一応これでも、伯爵様の夫人になるものとして恥ずかしくないよう、毎日必死に番場って来たつもりだった。
それが伯爵様のためになることだと信じて、ここまでやってきた。
…だというのに、最後の最後に告げられた言葉は私に対する感謝の言葉でもなく、愛情の言葉でもなく、ただただ都合の悪い存在を切り捨てるというものだった…。
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